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―元宿屋・広間―
え、……っと。
[おろり]
[言い方を変えられ、相手の顔とトランクを幾度も見比べ]
それ、じゃあ、いただきま、す。
[尚も迷った挙句、おずおずと頷いた]
[続いて名前を尋ねられ、一度瞬いてから]
エーファ・リンク、です。
[ゲルダの記憶にその名前はあるだろうか]
[彼女が村を出る前から、人見知りは変わらなかったけれど]
[その頃には慕っていた祖母も生きていて、外に出るときは大概一緒だった]
[手を引かれるまま、ぎこちない動きでカウンターに着いた]
[慣れない場所に年上の男女ばかり、視線はあちこちに動き落ち着きなく]
[やがて見せられた茶葉の種類の多さに、驚いたように目を見張った]
えっと、……その、
あまり、苦くないと、嬉しいです……
[ゲルダから好みを聞かれたが、茶葉については詳しくは知らない]
[曖昧な返事を恥じるように逸らした視線の端に、一匹の白猫が映った**]
8人目、小説家 ブリジット がやってきました。
─自宅─
えぇと…眩い朝の光が、二人をいつまでも、照らし続け、た…と。
これで良いかしら。
[かりかりと音を立てて走らせていたペンを置き、軽く息をつく。
何か飲み物でも頼もうと思った矢先、この別荘に住むようになってからずっと側についてもらっている執事の声が聞こえた。]
あら、丁度良い所に。
ヴァルター、悪いのだけれど紅茶を…え?
自衛団の方が、私に?
…何の用かしら、珍しいわね。
良いわ、今行きます。
[飲み物を頼もうとしたところに、自分に思わぬ来客を告げられて。
不思議に思ったものの、話を聞く為に執事と共に応接間へと向かった。]
─自宅・応接間─
え……あの、その日の夜は、家から出ませんでしたが。
えぇ、此処に居るヴァルターが証人に…え?
他の使用人達でも、駄目…と、なると、そうですね。
私がその日の夜に此処にいた証人は、居りません。
[自衛団員からの問いは、ある日の夜、己の身が此処にあったと証明できる人間がいるかというもので。
執事や使用人達は出入りの商人などの証言を得られたらしいが、皮肉にも主人である自分を証明してくれる者は居なかったということだった。]
それで、その日の夜に、なにか?
よう、ぎしゃ?私が?
─自宅・応接間─
[告げられた言葉は、日頃自分が書き連ねている空想の中でしか聞いたことのない其で。
己とその言葉が結びつかず、数秒の間が開いた。
それを破ったのは、憤慨した執事の声。]
あ…あの、ヴァルター、落ち着いて。
申し訳ありません、怒鳴りつけたりして。
それで私に何かお聞きになりたいことでも?
…え?あ、はい、以前宿をされていたところなら知っております。
そこへ伺えばよろしいのですね?解りました。
あ…でも、その…少し遅れてもよろしいですか?
えぇ、日差しが少し和らいでから。
ありがとうございます。では、お気をつけてお帰り下さい。
[用件を伝えて屋敷を後にする自衛団員を見送って、いまだ憤慨冷めやらぬ執事をなだめようと声をかけた。]
─自宅・応接間─
そんなに怒らないで、ヴァルター。
誤解だもの、すぐに解けるわ。
そんな、私もうそんな子供でもないのよ。
それに今の季節はそこまで日も強くないし、平気。
そんなことよりも、私はヴァルター達が心配だわ。
ただでさえ私のことで色々とお父様に言われているのに…
えぇ、お父様には内緒にしておきましょう?
さ、それじゃ悪いけれど出かける準備を手伝ってちょうだい?
[体を心配してあれこれと問いかける執事に、困ったように微笑んだものの。
離れた地に住む父のことを思えば、その表情は憂いに染まった。
とにもかくにも、元宿屋へと向かう為に衣服や必需品の用意をし始めた。]
[あれもこれもと持たせようとする執事を宥めたり諭したりして、準備を済んだのは結構な時間が経った後。
岬にある元宿屋にて書かれた身上書には、以下のように記入された。**]
――――――――――――――――――――――――
■名前:ブリジット=ドルージュ Brigitte=Dreujou
■年齢:22
■職業:小説家
■経歴:村から遠く離れた都会で生まれたものの生まれつき気管支が弱く、養生の為に12年前から元々父の別荘があったこの村に住むようになった。
日光にも弱い為日中は屋外には滅多に出ないが、成長するにつれ冬の弱い日差しには多少耐えられるようになった。
小説を書き始めたのはこの村に越してきてからで、何冊かは出版もされているが父に秘密にしている為に偽名を使用している。
父の決めた婚約者がいるが相手の顔も名前も知らず、当人には婚約者が居るらしいという認識。
――――――――――――――――――――――――
― 元宿屋・広間 ―
[少女が承諾してくれるのを見ては、口元を緩める。
名前を聞いてはすこし考える顔]
エーファ。
……あぁ、リンクというと。
[記憶には引っかかった。懐かしそうに目を細める]
小さなエーファ。
こんなに立派に可愛く育っていたのは予想外だった。そうか、八年も経つから、そうだね。
お祖母さんは元気かな?
[今現在の村の状況など、あまり知るはずもなく。
思い浮かぶのは彼女の祖母と一緒の姿で、自然とそう尋ねた。それからカウンターへと少女を誘い]
僕らを呼ぶのは実に合理的じゃないか。
あんまり村に居ない人を、関わりの弱い人を容疑者とした方が、自衛団にとっても後味悪くないだろうし。
…そういえばつけてはくれないのか。良く似合うだろうと思ったのに、あの可愛い髪飾り。
[気心知れた彼には、軽く言葉で返す。
それからじっと見て言った言葉は、やはりからかうよう。
口紅や女物の首飾り、そんなものを外に出てから幾度か手紙と一緒に送っている。反応が楽しいからととても楽しそうに言われては、周囲も止めるに止められなかったようだ]
いっつもとは人聞きの悪い。反応が面白いのが悪い。
[反省の色などまったくない。しゃあしゃあと言ってのけて、口の端を持ち上げた]
でも、そんなにお願いされたら仕方ないなぁ。
折角僕がしてあげるというサービスをいらないと言うなんて、エルザはとんだ罰当たりだ。罰としてせめてお湯を沸かすくらいは手伝わない? うん、ありがとう。お願いするね。
[エーファの言葉>>48には頷いて]
わかった。まぁ、お茶が本職というわけでもないから、僕もそんなに詳しくないけど。
大丈夫、苦くはないよ。
少し酸っぱいかもしれないけれど、蜂蜜を入れて飲むと飲みやすいんだ。
[しっかり鞄ごと厨房へと持ち込んで、缶を幾つか選ぶ。
落ち着く方が良いだろうかと、手書きの番号を確かめてから、飲みやすいと覚えている一つに決めた。カモミールと、レモングラス、それからミント。他にも幾つかブレンドしてあるが、細かい配合などゲルダは知らない。ただ、売るだけだ。
試飲の時にいつもするように、しっかりと梱包された硝子の茶器を用意する。
小さな蜜入れには蜂蜜をたっぷりと。
お湯が沸いたら、ハーブティを全員に振舞おう**]
─元宿屋・広間─
[ゲルダと一緒に居た少女の記憶はオレには無かった。
村を出たのは12年前のことだし、8年前まで比較的頻繁に戻って来ていたのだってゲルダや老灯台守など親しかった人に会うためだったし。
仮に姿を見たことがあっても、幼かったせいで一致しなかったのかもしれない]
そりゃそうだけどよ。
あーあ、やだねぇ。お前なんか村の人間じゃねぇって言われた気分だ。
まぁ事実村から出てったんだから仕方ねぇだろうけどさ。
……ってぇ、お前オレを何だと思ってんだ?
[髪飾りの話>>55をされて、オレは引き攣った笑みを浮かべた。
コイツはほんっとこの手の贈り物が多い。
エルザって呼ぶのも直させても直さないからオレが折れる形になった。
ぜってぇオレで遊んでんだろ。
悲しいことに、貰ったものでバーに居るお姉さん方に遊ばれるのも事実だけどな]
………反応が面白いのが悪いって、おい。
ホントにお前はオレを何だと思ってんだ?
[大事なので二度聞いた。
ゲルダに反省の色は見えない。
確かにこれもいつものことだ、いつものことだけど。
何故か言い包められて負けてしまう]
おいちょっと待て! 全面的にオレが悪いのかっ!
しかも既にやること確定してっし!!
[ああまた押し付けられた。
ったく、あんな言い方しなくても普通に言や湯沸かしくらい手伝うっての]
─ →厨房及び勝手口─
[オレはぶつぶつ文句を言いながらカウンターを通って奥の厨房へと入る。
運搬用の木桶を持つと、勝手口から外に出た。
寒空の下、ひゅるりと風が吹いて結わえた長い髪を揺らす]
井戸はーっと。お、ちゃんと生きてんな。
しばらく使われてなかったはずだけど、掃除したんかな、これ。
[井戸を見つけて、汲み上げ用の桶で水を汲み上げて濁りが無いかのチェック。
大丈夫っぽいな、継続して使ってたかのように澄んでる。
…灯台守の爺さんが使ってたりしたんかな? あそこから比較的近いし]
汲み上げついでにいくらか厨房に運んどくか。
……男手足りねぇ。
[汲み上げて、運んでの繰り返しをしなければならないのは明白。
汲み置き用の樽を運んで来て入れたら戻せなくなるのがオチだ]
まぁ良いか、湯を沸かしてる間に出来る分だけやっとこ。
[まずは茶を淹れるに足りる分だけ水を汲んで、厨房に戻って火を熾し湯を沸かす。
厨房ではゲルダが茶を淹れる準備>>56をしていた。
湯が沸くまで水を運ぶことを伝えて、オレは作業に戻る。
運搬用に木桶に汲み上げた水を移して厨房との往復。
複数回行って、湯が沸いた頃には汲み置き樽には4分の3くらいの水が満たされていた]
─ →元宿屋・広間─
[茶の用意が出来たとゲルダから声がかかったかどうか。
無くても少し遅れる程度の時間差で広間に戻り、暖炉から少し離れた場所にあるソファーにオレは腰かける。
外は寒かったが、動いていたお陰で暖炉にあたる必要はなかった。
て言うか、暑い]
……何で水道通って無いのここ。
[少しぐったりした様子でオレは小さく呟いた。
都会のバーなら水道や製氷機だって普通にある。
つーかそれが無きゃ、オレが各地で学んだカクテルが作れない。
ここじゃホットカクテルくらいしか出来ないかな、なんて考えながら、オレは茶が用意されるのを*待った*]
― 元宿屋・広間 ―
そうだね、仕方ない。
君は飛び出たんだろうし、僕は帰るつもりもなかったんだから、村の人間じゃないと思われてなんら可笑しいところはないと思うけど。
小さなエーファにとってなんかは、特に僕らは「村の人」ではないかもしれないね。
悪いことじゃない。普通のことだよ。
[エーファへと視線を向けるが、咎める風でもない。ただ、笑って。
それからエルザへと視線を移すと、にっこりと、まるで裏表なんてないように笑ってみせた]
得がたい大切な友人だと思ってるけど。
ほら、遊ぶのも愛情表現っていうことだよ。
たまに手紙に「楽しみにしてる」って書かれてたから、てっきり喜んでくれてるものだと。
[エルゼ、と。確か昔はそう呼んでいたこともあった。
十頃だったか、年齢の記憶は定かでないけれど、「僕」が「わたし」だった頃。
文句を言われたことも覚えているけれど、結局のところ、現時点までずっとエルザと呼んでいることが物語っている。
ぶつぶつ言われる文句は聞き流して、ひらひらと見送りに手を振った]
エーファとエーリッヒは座っていて良いよ。特にエーリッヒ。
倒れたりされたら面倒だから、そこに座ってる。
安心して、はなから力をあてにはしてないよ。
[勿論、エーリッヒを男手には数えていないわけだった]
下手をしたら僕より力がないだろう、君は。
[エルザが厨房へと水を運んでくれば、ありがとうと礼は伝えて。
しかし応援に向かうはずもなく、茶器を調えながらお湯が沸くのを待つ。
ついでに、先日自分で購入したパウンドケーキを取り出して、お茶請けにと切り分ける。さほど多い量が必要なわけでもない。
酒に漬けたフルーツの入ったケーキは、二切れずつ皿に置いて。
お湯が沸けば、外へと顔を覗かせる。水汲みをする姿に、口元を緩めた]
もう用意が出来るから戻ってくると良いよ。
ありがとう。助かる。
[声をかけて厨房へと戻り、たっぷりと葉を入れた硝子のポットに湯を注ぐ。
硝子の器は熱にも強く、試供で出すには少々値も張るが、これで飲む方が美味しく感じる。事実たくさんの人が購入するので問題はない。見目も良い。
他に人が来るのなら、カップを増やして人数分、ハーブティーを割ることにする]
よし。
――お待たせ。どうぞ、エーファ。
このケーキもなかなか美味しいよ。アルコールも控えめだし、しっとりしてるから。
お茶は熱いから気をつけて。
[先に渡すのは勿論少女。ケーキについては一人だと無駄にしそうだったんだ、なんて言いながら勧める。
他の皆にも、カウンターにお茶を用意して、それからバッグから小さな瓶を取り出した。
無色透明、度数は高いがストレートでも美味しいと、幾つか仕入れて既に捌いたキルシュヴァッサーの、200ml程度の小さいもの。試供品扱いのものは、それでも開いてはいない]
労働報酬。次も力仕事を頼むからよろしく、エルザ。
[ソファに近づき、小瓶を渡す。で、お茶あるからと言いのこす。
自分はエーファの隣に腰を落ち着けた。ハーブティーは、*今日も良い出来だった*]
―元宿屋・広間―
[>>43 冗談めかした言葉に、真白の猫はすました様子でにゃあ、と一鳴き。
その様子に思わず顔をしかめるものの、反論の余地はなく]
……あ……お茶?
ありがとう、いただきます。
[>>44 それだけに、お茶の誘いは話題替えの契機、と飛びついた。喉が渇いていたのも事実だが]
……ゲルダ姉さんも久しぶり。
帰ってたんだ、ね。
[それでこの状況とは皮肉なもの、と思いつつ。
指揮を取るのが実の祖父である、と思うとそれは言葉には出せなかった。
言葉の代わりに一つ息を吐くその傍ら。
真白の猫は、自分に向いた少女の視線>>48に、挨拶するよに尾を揺らす]
[ゲルダの淹れるハーブティーの良い香りが鼻腔を擽る。
身上書を書き終わると香りに惹かれるように視線が移ろうが
手にしたままの鞄が声を掛ける邪魔をした。
此方に気付いたエーリッヒの翠>>67に宿る途惑いに
少しだけ困ったような微笑みを浮かべる。
礼拝の度、顔を合わせる歳近い彼までも自分と同じような理由で
自衛団員に呼ばれたのだろうか。
複雑な思いを抱きながらひょことお辞儀して
近くにいた自衛団員の一人に声を掛けた]
あの、荷物を置きたいのですが――…
[空いている部屋なら何処でも好きに使うよう言われ頷く。
階段を一度見上げると手摺りを伝い一段一段ゆっくりと――
左足を庇いながらの其れは何処か不自然な動き。
二階に辿りつくと手前の部屋へと姿を消した**]
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