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[十二年前倒れていた娘を拾ってくれたのは先代の医師。
真っ白な記憶にハモンド家の人たちが刻まれる。
発見された当初は首筋にうっすらと手の跡らしきものがあり
酷く水を飲んでいたがそれ以外に目立つ外傷もなく
今はその名残さえも消え失せている。
まだ子供であり必要とされる知識さえ空白となっていたから
身の振り方はすぐに決められず短くない時間を其処で過ごした。
つ、と布で覆った喉を撫でる今。
旅人の滅多に訪れぬ村の宿屋の
余りがちになる客室のひとつを借りて其処で世話になっている]
料理よりも力仕事任せてくれていいのに。
[何でも無難にこなしてしまう性質ではあるが
料理や裁縫などは似合わないと思っているから
仕事として頼まれぬ限りは進んでしようとはしない。
空に伸ばした手を下して、は、と息を吐く。
ちらり宿屋の扉を見詰めて、用心棒は軽く肩を竦めた]
─ 診療所 ─
ドジも何も、お前が俺の所に来る理由を挙げただけだが。
[むくれ顔>>32を見ても表情は変わらないまま、言葉を返す。
後者だった用件に対して差し出したメモの返答>>33には軽く頷きを返して]
あぁ、今ある分で一週間程度は保つだろうから焦らんで良い。
どこぞの阿呆が集まって喧嘩でもしたら解らんが。
[そう答えたのは、昨夜の宿屋での一件>>41を耳にしたから。
用心棒が仲裁したお陰で怪我人は出なかったのは幸いだったが、下手をすれば仲裁に入った者も怪我をしていたかもしれない。
一度宿屋に行って諸々釘を刺しておくべきかと思考が逸れたところで空腹に気付き]
ソーヤ、お前飯はもう食ったか?
[まだなら一緒に食べに行くかと問いかけた*]
[真っ白な記憶を埋めていくのは人との触れあい。
そしてたくさんの本。
最初こそは文字の読み方さえ知れなかったけれど
おさなごと同じように一つ一つ教えて貰い
読み書きも出来るようになった]
……返せているのかな。
[何を、と言わぬままぽつとひとりごちる。
手の跡は、必要ないとされた証と思う。
証は消えても、心にはそんな思いが密やかに残り]
─ 本屋 ─
[呆れられた当人はそんなこと言っても眠いしなぁ、なんてあくまで呑気に考えているのだった]
りょーかい。
[購入する旨に頷いて。
カウンター下から算盤を取り出し]
ポーラにはいつも世話になってるし、少しおまけしとくよ。
[少しの時間弾いた後、金額を示す]
[帰り道は少し、遠回りをした。人があまり近付かない睡蓮の咲く泉の方へ]
今日も綺麗だな。
[何も言わず咲く花は、何の為にそこに在るのだろう?]
― 本屋 ―
ううん、そんなことない、リィには絶対覚えられないもん。
[暇だから、と言う声>>48に首をぶんぶん振ってそう返した
そうして、お金について返ってきた言葉に目を丸くして]
いいの?
うん、あとで絶対にちゃんと持ってくるね。
クレイグお兄ちゃん、優しいから、リィ、大好き。
[にっこりと、嬉しそうに笑って見せる
また、ここに来る理由が出来た、と言うのも嬉しかったから]
迷惑じゃないなら、感想聞いてくれると嬉しい、な。
[そう言って本を受け取ると、大事そうに抱え込んだ]
[案じてくれる人がいる事を知っている。
よもや昨夜の件まで、とは思いもよらないけれど。
危ない仕事でどちらかと言えば
男性向きの仕事というのもわかっている。
けれど盲目の女性の外出を補佐し守る際には
同性であることに安心して貰えもしたのだけど]
……はふ。
[ぼんやりと過去が過るのは眠い証拠か。
意味為さぬ音を紡ぎ口許をおさえる]
[結局、しばらく睡蓮に見蕩れて、家に戻ったのは更に時間が経ってから]
あ、
[思い出したのは、玄関まで数歩のところ]
しまった、薬。
[出かけたついでに、テレーズのと自分の分と、足りなくなりそうな薬を二人分、医師のところへ受け取りに行く様に頼まれていたのに忘れていた]
おや、商人 アルカ が来たようです。
―村の入り口を望んで―
よいっ しょっ と!
[村の入り口が見える場所までやってきて、背に担いだ荷物を置く。
思いきり背を伸ばし、それから傍らの騾馬の背を軽く撫でた]
やっと見えたー!
今回はちょーっと遠かったね。それに重かったし。
[水筒の水を一口含んでごくん]
さー、着いたらゆっくり休もうね、アレッキオ。
今回は休暇も兼ねてるから、思いっきりのんびりするよ!
[もう一息とまた荷を背負い、荷箱を乗せた騾馬を引いて村へ。
村生まれ村育ちの定期便請負人は半月ぶりの故郷へと戻ってきたところだった]
[最近、テレーズに本を読んであげたり、自分が読みふけってしまっていたりで夜更かし気味で、体調がいまいちなのを、ヒューゴに見透かされたら困る、と思って、無意識に避けようとした、なんてことは、多分ない.........]
今度、ソーヤに頼もう。
[あるかもしれない*]
─ 診療所 ─
[男の態度は子供の頃から殆ど変わらない。
何度繰り返したかしれないやり取りに不機嫌を引き摺らないソーヤの存在はありがたかった。
昨夜の一件へと切り替わった会話>>55に落ちたため息には、眉を顰めて同意を返し]
酒に飲まれる馬鹿なぞ、放っておけるなら放っておきたいが。
そういう訳にもいかんからな。
[理由はどうあれ患者となれば手当てするのが仕事だ。
本当に昨夜は怪我人が出なくて良かったと思いながら、続けた問いの答えを聞いて一つ頷き]
なら行くか。
俺もついでに爺さん達回りに行かんとならんし。
[食事に出るついでに足腰の弱い年配者の家を訪問するつもりで回診鞄を手にして食事に向かった*]
[常に腰にくくりつけているバッグから運んでいる荷物の一覧を取りだして、
騾馬を引きつつそれに目を落とした]
いくらボクが休暇取るからって、みんな荷物押し付けすぎだよね。
何カ月も休むわけじゃないんだから、焦らなくてもいいのにさ。
[ぼそ、と呟いて少々むくれた表情を浮かべる。
休暇前の仕事というのはなんであれ早く片付けたいものだというのに―]
ま、いっか。
アレッキオもおふくろの御馳走楽しみだろ?
[にーっと笑うと、騾馬はふるふるっと小さく鼻を鳴らしたのだった]
─ 診療所 ─
[ありがたい、と思われているとは知る由もない。
家同士の付き合いもあって、子供の頃はちょこまか後ろをついて歩いていたから、自然とヒューゴの態度に慣れたが故──だが、当人にその自覚もなく]
それは、じっちゃんも言ってるなぁ。
[うんうん、と返すのは同意の頷き。
なお、二日酔いに陥った村の者が薬師を頼ってくるのはよくある事で。
それに対し、特別に苦い薬が処方されるのも日常茶飯事である]
ん、そっか、外回りもあるもんね。
……俺も、ハーブティ作って届けにいかないと。
[回診鞄を手に取る様子に、ふと思い出すのは。
これまた幼い頃からの通い先の一つの事。*]
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