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……お、やる気、かな?
それなら、ボクも、ちゃんとお返ししないと、なぁ……。
[懐に手を入れる姿に、小さく呟いて。
自身も、胸ポケットに手を触れた]
よく分かっていらっしゃる。
[スッと空色が縦に細まった]
『The Magician』起動。
来たれ起源なる力の一、嵐となりて吹き荒れよ。
“ Ravage ”
[身を守るための幕も氷剣も消え失せる。
代わりに掲げた『魔術師』を中心として氷雪の風が生まれ、周囲を巻き込み暴れまわる]
フーッ!
[極短時間の嵐が消えるのとほぼ同時。
目となる位置から四足の獣が飛び出した]
[相手を、視覚で認知する事は出来ない。
相手を、聴覚で認知する事は出来ない。
だが。
今もまた運命の歯車は回り続ける]
どぉらぁぁぁっ!!
[男が放つのはシンプルな"正拳突き"。
しかし、来るべき運命を。
加速する事によって新しい運命を呼びよせる。
そう。
詠唱が終わり、全てが終わった"はず"のスティーヴへと、男は力任せに正拳突きを放った]
……っっ!?
[口を開き、最後の宣言を告げようとした瞬間、関係の無い場所に放たれたはずの正拳が男の胸を打ち貫いた]
が……っ!
[カードの力も加味されたその一撃は凄まじく、宙にぶら下がっていた男の体がくの字に折れあがり───そのまま、ワイヤーがぶち切れて、地面へと叩きつけられる]
……So as……I pray "unlimited ……。
[それでも、ブラウンへと右手を伸ばして、最後の宣言を唱え続けたが]
……weapons……ぐ……ふ!
[胸から込みあがる血の塊を吐き出したことにより、その宣言は破られた]
[氷雪の嵐が生み出される様を眼下に見つつ、手に取るのは、盟を結んだ『審判』のカード。
それに軽く口付け、天へと翳す]
……さて、天使の審判は、どっちに転がる……かな?
下れ、『終焉の審判』!
[響く、凛とした、声。
翳されたカードから光が零れ、それは羽根の形を取りながら、散る]
……勝つか、負けるか……二つに、一つ。
……Sturm,Kombination…….
[舞い散った羽根は白の翼に宿り、光の一対を生み出す。
そして、銀の戦輪は再び一つとなり]
……Das Gericht!
[宣と共に、飛び出した獣へ、それを操る氷華へ向けて、放たれた]
――終わりだ《デッドエンド》…!
[ブシュウッ。
左腕から勢いよく白い湯気が噴き出した]
…だから我は願う。
無限の武器を…
か?俺、死んでたんじゃないか、ソレ。
[力任せに鋼鉄の腕を振るった男の言う言葉ではない事を重々承知しながらも、小さく呟いた]
と、其処にいたのか。
おい、生きてるか…!
[我に帰ると、辺りを見回して蹲る男へと駆け寄った]
……。
[血を口から流したまま、無表情に男は横たわったまま、ブラウンを見つめた]
……おかしなことを。
貴様までもが、人の心配か。
[それはいつの頃からなのか。
男にとって、言葉を長く喋るのは、戦闘を終えてからのほうが多くなっていた。
それが何故なのか、何の為なのかは、誰にも分からない]
…そんだけ減らず口叩けりゃ充分か。
『魂の檻』で、誰かに治してもらいな。
[横たわる男に、小さく息をつきつつ]
何。
『猟犬』が『仕事人』を屠った、なんて噂が流れてくれちゃあ。
俺は『闇金の猟犬』として生きてけねぇだろうが。
厄介事はごめんだねぇ。
[これでも、一線からは退いた身だ、と。
中指で眼鏡を直しつつ言った]
……ふん。
減らず口はどっちだ。
[言いつつ、無理やりに片膝の状態になると、ビルへと背中を預け、懐の4枚のカードを適当に放り投げると、煙草を1本だけ火をつけ、その残りもブラウンに投げ捨てた]
……仕掛けは空振りか。
[結局、最後に仕込んでおいた最大の仕掛けは使わず仕舞いに終わる結果となった。
いや……ブラウンならば、気づくだろうか。
先程の爆発がその仕込みの軽いジャブであることを。
最後の仕掛け。
それは、この廃墟のビル郡、全てを吹き飛ばすという恐ろしく大掛かりな仕掛けであるということを。
そして、それを成すための手段までもが、ブラウンならばすぐに思いつくことだろう。
最も、使用するかどうかは男にさえ分からないが]
[氷の虎は名残の風を蹴り宙を駆けてゆく。
態の一つをそのまま写した虎と意識は一体化して、本人は元の位置に立っていた]
ガッ!!
[獣は銀の輪を避けもせずに受けながら天使へと踊りかかる。脚を一本失いながらも、天から叩き落そうと身体全体で圧し掛かった]
っ!
[怪我そのものは共有しないが、衝撃は同じく氷華にも届く。
左肩から再び血を溢れさせながら片膝をついた]
空振りで結構。
お前さんの仕掛けと言われると、物騒な物しか思い浮かばん。
それこそ、俺諸共吹っ飛ぶ、みたいな、ねぇ。
[まさかとは思うが、と付け加えて釘を刺す]
ま。
俺が言っちゃあ難かも知れないが。
――引退には未だ早いぜ。『地獄への案内人』?
[そう言葉を投げかけると、カードを拾い上げる]
って、直進!?
[銀を避けずに突き進む、虎。
予想外が動きを鈍らせたか、圧し掛かる体躯を避ける事はできず]
……っく!
[残された足が肩を捕らえ、爪がそこを引き裂くのが感じられた。
光の羽根が、ひら、はら、と散る]
……堕ちる……もんかっ!
[衝撃に地へと叩き落されつつ、それでも。
直前の回転で体勢を整え、着地を決めたのは翼あるものの矜持か。
着地したその傍らに、手を離れていた輪ががつ、と音を立てて突き刺さる]
ったぁ……きっつい、なぁ、もぉ……。
……勝手に吹っ飛べ。
[元々、人をターゲットにしたかった訳ではない。
この廃墟となった町を吹っ飛ばしたかっただけだ。
そのついでに、策として利用できただけに過ぎない。
この廃墟の至る所に巧妙に仕組まれた爆薬は、誰かが取り除くことが無い限りいつまでも存在し、そして、いつか吹っ飛んで消えていくことだろう。
この町を題材にしたこと、そこがどうしても気に食わなかった。
仕事人として、最初であり、いまだにやらなければいけない依頼の為にも、此処───いや、この外にあるものを守りたかった。
ただ、ロボットのように一途に。
だからこそ───]
……引退など、するか。
[男は、生涯現役で、仕事人であり続ける]
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