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[親しくなりたいと思ったはずの少女の謝罪の言葉に、反射的に罪悪感を覚える。
なんで、この子を疑わなくちゃいけないのだろう。自分と同じ子供で、同じように不安でいっぱいだろうに。
やり場のないいら立ちに唇を噛み締めた。]
あなたは、私が怖くない……?
[聞きかけて、少女の背の傷跡が目に入る。
水音のなか、ヘンリエッタの息を飲む音が小さく響いた。]
ん、ありがとう。
[トビーの後ろについていく。
そっと、荷物を左手に寄せ、右手を口元に近づけた。
メイからも見えないだろう]
[髪に泡を絡ませ、少女はヘンリエッタの様子など気にも留めずに指を滑らす――]
[と、聞こえた質問に。少女は指を止めて――]
怖くは――無いわ…。
私はここに来るまでに…散々人を疑ってきたから…だから…もう…。
[言葉を切り。一呼吸置いて。自身に言い聞かせるように――]
私は人を疑いたくは無いの…。
[そして再び指を動かす。
背後で聞こえたヘンリエッタの声には…。静かに静かに微笑んで――]
結局、神を信じ人を疑い続けても…何も救われなかったから…
[その言葉は、背後に居るヘンリエッタに届いただろうか――]
さて、と。
[小さく呟いて、階段を降りて行く。
ここ数日、まともに物を食べた記憶がないから、体力が落ちているのは感じていて]
……お腹空くと、考え、暗くなるもんね……。
[正直な所、食欲はないのだけど。そうも言っていられないだろう、と思いながら]
[ 下に行くとは云えど別に当てがある訳でもなかったのだが、部屋に篭っている気にもなれず広間へと向かう。或いは彼の部屋の鍵が気になっていたのかもしれないが。何処と無く慎重に扉を開けば、昼間からグラスを傾ける神父の姿。]
……何なさっているんですか。
[ 緊張が解けたかやや力の抜けた声。]
−客室−
[部屋では、青年がぼんやりとベットに腰掛けていた。
ドアの開く音に、ぎくりと身を竦ませるも、それが少年と女性と気付いて、身体の力を抜く。
こちらを見るその顔には、ぎこちないながらも笑みが浮かんでいたか。]
……ただいまです。お待たせしましたー。
[ほんの少し茶目っ気をこめてそう言うと、サイドテーブルに残るパンくずを払い、そこに食料を出して。腰に結わえた水袋も乗せた。籠は、また使うかもと横に置いて。]
[入ってきたハーヴェイに対して、グラスを掲げつつ。]
何って、見ての通り酒宴ですよ。一人きりの。
[テーブルの上を指差す。鍵が置いてあった場所には、苺タルトが。]
残念ながら、鍵は苺タルトに化けてしまいました。あはははっ。
[珍しく、かなり酒が回っているようだ。]
―トビーの部屋―
遅くなってごめんなさい。よくわからなかったから、たくさんもってきたわ
[合うサイズ、探してと言って]
着替えるならでていきましょうか?
[ 額に手を宛がい小さく溜息を零す。昨晩の話は夢か何かだったのかと少々疑いたくなった。実は嘘でしたと云い出さないかと期待したいくらいに。]
然様ですか。
酒は飲んでも飲まれるな、と云いましょうに。
[ 一人きりの酒宴と聞けば何と無しに視線は壁に掛けられた絵へと向けられるも、現状では最早此の様な機会を持つ事は有り得ないだろうかと思う。然し卓上へと視線を戻せば、再び洩れる溜息一つ。]
随分な手品ですね。
[ 此の神父が隠し持っている、というのは薄い気がした。――ならば誰が。]
─厨房─
……なんだろ。
誰か、お菓子でも作ったのかなー?
[残り香にこんな呟きをもらしつつ。
お菓子、という言葉にふと、祖母の事を思い出す]
ね、ばーちゃん。
ばーちゃんは……わかってたの?
いつか、こういう事になるって、さ……。
[答えは得られないとわかっている──わかりきっている、問い。
それでも、問わずにはいられなくて、早口に呟く]
[金の髪を洗う水音が、浴室にこだまする。
飛沫と共に立ち上ぼる湯気で痛々しい傷跡が霞む。]
じゃあ、貴方はここに疑わなきゃならない狼はいないと……?
疑わないで、狼を見つけらるの?
[ハーヴェイの言葉に、くすくす笑いつつ。]
ま、正体無くすくらいに飲みたい日もあるってことですよ。
鍵の行方は存じません。
先程ここへ来た時から、消失していました。
どなたかが使っている最中か、あるいは使われないために隠したか。
その二つではないですかな?
[グラスの酒を飲み干す。
床には、空になったワインボトルが3本。]
[昨日と比べ、明らかに意識のはっきりした様子の青年に手伝いを申し出れば、包帯だけ巻きなおすのを手伝ってほしいといわれて。
濡らしたタオルで身体を拭き、持ってきてくれた薬を塗っていく。]
[あわあわするトビーに微笑みがこぼれる]
ん、まあ、良いのだけれどね
[そっと着替えをさしだして]
良い子ね
じゃぁ、トビー君にまかせるわ
[着替を置くと、右の手で、そっとトビーの頭を撫でようと]
何時も飲んでいらっしゃる方の台詞と思って聞くと、微妙な気分です。
[ 声には若干呆れというよりはからかいめいた響きが籠められるも、床へと視線を落とせば眉間には皺が寄せられる。酒に強い事は知っていたが、其れでも相当な酒量だ。斯うして立っていても仕方無いと、机に近寄れば椅子の一つに腰掛ける。]
後者である事を望みますが、ね。
[ 其れは理想に過ぎぬだろうか。呟く様な声を落とすと同時に目は神父の手元の書物へと向けられ、其の中身を知る事はあるまいが僅かに目を細める
―武器庫―
[周囲に視線を巡らせ、誰もいないと判断して。そうと手をポケットの中に忍ばせる。
硬い感触。指先で摘み上げたそれを暫し見やり、鍵穴へ差し込む。
ゆっくり、回す]
…!
[がちゃん。
錠の外れる重々しい音に思わず身を竦ませ、再度辺りを見回す。
――別に悪いことをしているわけではない。…そう思うのだけれど]
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