4 赤き雨降る崖の上で
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見習いメイド ネリー
[少女の言葉には、微笑みのまま一つ頷いた。
それから踵を返す。
玄関のほうへと向き直る。
その顔から、既に表情は消えていた]
酒場の看板娘 ローズマリー
［彼の言葉がわたしの中に入ってくる。
拒絶ではなくて］
……ひかれ？
わたしに？
駄目、よ。わたしは汚れているのだもの
［口は勝手に音をつくり］
お嬢様 ヘンリエッタ
-広間・戸口-
［悲鳴に肩を強張らせて、音のした方を見た。
手は縋るように扉にかけたまま、顔だけを向けると、青い髪の少女が崩れ落ちるところだった。
とっさに、また何かあったのかと辺りを見回す。］
牧師 ルーサー
[アーヴァインの部屋まで移動する途中、ネリーとばったり出くわした。]
おや、ネリーさん。どうされました？
[聖書を抱えていない方の手には、例の足が握られて。]
書生 ハーヴェイ
[ 顔を上げたかと思えば動きの止まる様子に、幾度目かの瞬きを返す。然し数瞬の後にあがる拒絶の悲鳴。他者には見えぬものを視る其の姿は彼には到底理解の及ばぬであったけれども、意識を失ったか頽れるのを目に止めれば自然手が伸びて、]
て、メイっ！？
[地に倒れ伏す間際に抱き留めれば現実にか悪夢にか魘されているようではあれど、取り敢えず呼吸だけは確りとしていて、小さく吐いた息は安堵を孕んだものか。]
見習いメイド ネリー
[牧師の声に会釈をして、抱えられた足を凝視する]
ご主人様、は？
[蒼褪めた唇が紡ぎ出したのはそれだけだった。
けれど彼女が何を聞きたいのかを理解するには、それだけで十分な筈だった]
冒険家 ナサニエル
[ローズの言葉は何となく予想がついて。
それでも変わる事のない視線を向ける]
汚れて？どうして？
俺はそうは思っていないから。
心まで汚れてはいない…だろう？
それとも…俺に…旅人に好かれるのは困る？
書生 ハーヴェイ
……俺は、運搬屋じゃないっての……。
[ 余程熱が高いのか先程の悲鳴にも睡りに落ちた儘の男を横目で見れば、其れでも流石に此の場に放置していく事は出来ないと判断したか、青年の腕に収まる躰を抱え直し、メイの背と膝の裏付近とに手を宛がって其の儘抱き上げる。
体勢を整えて視線を扉の方へと遣れば、赤髪の少女の姿が見えた。然れど其の問い掛けは彼にも解らず、左右に首を振るしかなかった。]
直接の原因は解らない……けども、……あんな事があれば、ね。
[ 金髪の少女へとは異なり、其れはトビーに対するのと同様に子供に向ける口調。直接は見ていないとは云えど状況は察せ、曖昧にそんな言葉を返す。]
酒場の看板娘 ローズマリー
汚れているの
わたしはあの子をころしたの。
客をとるためにころしたの。
……わたしは許されちゃいけないの。
［だから、嫌って。
そう願う。
困るどころか、
それが嬉しく感じてしまうから］
牧師 ルーサー
どう見ても助かりそうにありませんでしたので、これで。
[懐の銃をちらりと見せ、すぐにしまう。]
苦しき生を生きるよりも、よほどましでしょう。
[顔色も声色も、冷静そのものだ。]
吟遊詩人 コーネリアス
[見につけた服は、すっかり血を吸って紅く染まってしまい、
そのままの姿でふらりと廊下へ歩みだす。
おぼつかない足取りで階段を降り、
心ここにあらずといった呈で、浴場へと。]
お嬢様 ヘンリエッタ
［どうやら、メイに危害を加えたものがいたわけでないことは理解し、ヘンリエッタはとりあえず青年の言葉に頷いた。
室内を見回して残った面々を確認し、後ろを振り返る。］
他の皆はどうしたのかな……。
見習いメイド ネリー
…そうでしたか。
[拳銃にちらりと目を遣り、すぐに伏せる。
それ以上は何も問わずに会釈をして、彼女は玄関へと向かった。
牧師の抱えた、切断された足の切り口の鮮やかな赤が目に残った]
冒険家 ナサニエル
[あの子を殺した…それの意味する所は察しが付いて。
苦笑…それがローズの罪ならば
自分も恐らくは同罪、いや、それ以上か]
…それが君の罪？
ならば俺も一つ懺悔をしよう…。
俺の手も汚れている、と。
俺は、昔…自分を守る為に、人を……
[生死の確認はしていない、だからそいつがどうなったかは知らないけれど]
……俺を、嫌うかい？
書生 ハーヴェイ
……さあ。
[ 続く問い掛けもまた彼の知らぬ事ではあれど、若干の予想はついた。彼れが館の主の“一部分”であったのなれば、目的は一つしかなく向かう先は一箇所しか無い。然し相手が幼い少女、其れもアーヴァインの娘だと名乗っていた事を思えば、其れを告げるのは残酷であろうか。]
取り敢えず俺は、此奴を運ばないといけないんだが……、
手伝って貰えると有り難い、かな。
[ 一度メイへと視線を落としてから、再び少女の方を見て云う。]
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