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[問いにすぐには答えず、水道の蛇口を捻る。
温い水が流れ出した]
……。
[ポケットを探り、流れる水の真下へ置いた。
すいと目を細め、手を翳す。
――ぴし、と音が鳴る。
ナイフの上に咲く、白い氷花]
と、見ての通りだが。
[そこで漸く、巫女を振り返った]
最初は礼斗緋文。次に黒江瑶子。
どちらも白。
回答はこれでいいか。
手を組む、ねぇ。
……囮になれって意味なら、お断りだが。
[探るように、その目を見る]
……まぁ、確かに厄介じゃぁあるな。
[ぽつぽつと歩く。
神楽を追うのは、こころの何処かが『つかさ』と囁いているからでもあった。
つかさ、ひょーま、どちらもわるもの。
少なくとも、自分の中ではそのままで。
さっき聞こえた言葉も、ちらりと首をもたげる。
千恵か、伽矢がひょーま。
かやにいちゃがひょーま?
ちえも、ひょーま?
頭の中ではてながたくさん飛んでゆく。]
ううん、違うの。
瑞穂ねえちゃんは帰ったんじゃないの。
おしごと、しにいったんだよ。
[せめて、安らかな最期だったらいいのだけれど。
姪が一生懸命歩いているのはわかっていたから、彼女に合わせて歩む。
が、私は途中ではたと立ち止まる。
この子は瑞穂ちゃんの死を知らない……?
いえ、憑魔が死を知っているとは限らない。
それとも知らないフリをしているだけ?
でも、この子が憑魔なら、何故二人きりなのに私を襲わない?
……いいえ、伽矢だって私を襲わなかった。
そうよ、子供達はきっと憑魔じゃなくって、残る彼が……
立ち止まったまま、頭をぐるぐると思考がめぐる]
[史人の行動を眺め]
───そういう芸当ね。
[納得はした。
憑魔がそういうことが出来ないという可能性は無いのだが、とりあえず信用はしよう]
ええ。
私もそのどちらかで考えていた。
もし、あなたがどちらかを判断していれば、分かりやすかったんですけどねえ?
ま。泣き言はいいわ。
あなたはどちらが怪しいと思う?少し判断材料があるならちょうだい。
ああ。私の能力からの判断材料もあげる。
無表情な女の子───黒……江って言ったっけ?あの子は普通の子じゃなく、憑魔には殺されなかった。
ひふみんとみずちーは憑魔に殺された。
さて。思い浮かぶことはあるかしら?
─ビジネス街・ビルの屋上─
[周囲の空気を細かく震わせる。
その震わせる速度を速めたり遅めたりしながら、オレは調整を取って行った]
………あまり遠すぎるのは無理、だな。
人が居そうなのは……中央広場か。
[はっきりした声や音は掴むことが出来なかった。
かろうじて捉えたのは、人が動く時に空気を震わせる、物理的なもの。
翠の瞳は、先程立ち去った中央広場へと向いた]
…近くまで行って様子見るか。
[再びオレは足元で圧縮した空気を破裂させる。
宙を翔け、中央広場傍の高めの建物の上へと降り立った]
─ →ビジネス街・中央広場傍─
それから、囮になんてしないわよ。
手を組むってのはそのまま、後ろを預けるに近いまでをお願いするの。
……もしも、あなたが憑魔ならば、他の全員がいなくなってから改めて勝負しましょう?
はん。
んなこと言われてもねぇ。
憑魔はお前が全て浄化するんじゃなかったのか。
[どちらかを見ていれば、などと言われれば鼻を鳴らす]
……そうかい。
[瑶子の名前が出され、内側に揺れる気配。
軽く息を吐いた]
……あぁ。
あの女のガキはよく知らねぇが。
礼斗緋文を殺したのは、男のガキの方だった。
おしごと?そっかぁ……じゃぁ、しょうがないね。
[言われると納得したというように、微笑んで見上げる。
百華の表情の変化は、不思議そうにきょとと見上げるだけ。
胸中を窺い知る事が出来るはずもなく。
途中で足が止まったので、自分も一緒に足を止める。
何やら考えている伯母をじっと見つめて。]
ももおばちゃ?
[くいくいと、繋いだ手を引いて呼んだ。
じーっと、伽矢と同じ色の大きな瞳が百華を覗き込んだ。]
─ビジネス街・中央広場傍の建物─
[屋上から中央広場を見下ろす。
桜から離れた場所に、二つの人影を見つけた]
……眼鏡の野郎と巫女か。
一人だったら隙をついて喰ってやるんだが。
[短い舌打ちが漏れた。
彼らの会話までは耳に届いていない。
先程の方法は慣れないのもあって、酷く体力を使う。
ここでチカラを使いすぎるのは抑えておきたかった]
浄化はともかく、判断には困るってことよ。
私だって、無駄に人を殺して確かめたいわけじゃないわよ。
[そう言い返した後に、聞こえる答えには]
充分すぎる判断材料ね。
憑魔に殺された。
伽矢に殺された。
=に近いなら、伽矢を憑魔だと仮定するにはおかしくない。
後は、他の人が納得してくれればいいんですけどね。邪魔が入るようならば、多少厳しいかな。
ん、ごめんね。
ぼーっとしてたみたい。
[手を何度か引っ張られ、ようやく姪の視線に気付いた。
あぁ。この子もそっくり。
……夫の瞳も翠色だった。私は無意識に、唇を舐めた。
再び歩き出してしばらくすると、公園の入り口がかすかに見えた]
[そこまで語り、彼女は初めて]
……ふ!
[司として、人を殺すための能力を発動させた。
先程まで、史人に突きつけていた扇子が、まるで真剣であるかのような迫力をまとわせる。
身体能力も、普段とは比べ物にならないほど高くなっているであろう。
それでも、人を、もしかしたら、司までも食らって力をつけている憑魔に肉薄できるのかは、厳しいであろうことは予想できる事態ではあったが]
─ビジネス街・中央広場傍の建物─
[反対側の通りに視線を向けると、その先からも二つの人影が見えた。
大小ひとつずつの姿。
母親と居たのか、と胸中で思いながら、オレは建物の上から路地裏へと飛び降りる。
足元で弾ける圧縮された空気。
それにより落下速度を減じて危なげなく地面へと降り立った。
そうして、路地から通りへと出て中央広場へ向い歩いて行く]
(この場で襲うのは得策じゃない、か…?
速度を上げて連れ去ればあるいは……。
いや、それも限度があるか)
[声には出さず思案しながら、中央広場へと入って行った]
―中央公園―
[唇を舐める仕草を気に留める事もなく、中央公園に入ると、桜の木の下に人の姿を見かけた。
手を繋いでいるので走り出すことは出来なかったが。]
かぐねえちゃと………ええと、ふみにいちゃ?
[遠いのとあまり会った事がないので識別がきちんと出来ないまま、遠くに居る二人に手を振った。]
……直接あのガキを確かめたわけじゃねぇから、なんとも言えねぇけど。
あいつが言うにゃ「襲われたから殺した」らしいが。
お前の言うことを信じるなら、そういうことになるか。
[女の気配が変わる。
ふ、と息を吐いた]
無茶すんなよ。
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