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[自室に向かう前に自衛団員の一人を捕まえて、父の――村長の真意を問うた。
答えは「村長は自衛団の判断に同意した」と、ただ、それだけだった]
……そう、ですか。
[教えてくれたことには礼を言い、唇を噛み締め、部屋へと戻った]
―二階:自室―
[室内に入ると、先ずは備え付けの暖炉に火を点した。
荷物の中から取り出したナイフは小さく、護身用にすらなるか怪しかったが、鞘に収めたままポケットに入れ込む]
……………、
[上着を脱いだだけで眠る支度はしない。
寝台の上に腰を落ち着けると、首元から外したブローチを両の手で握り込んだ]
……エーファ、今度こそは、
[祈るにも似た姿勢で呟き、*視界を閉ざした*]
―自室―
[その日はそのまま自室に戻りベッドに横になる]
何事もなく、ずっといけるのが一番なんだけどな…。
[呟く声、その願いはかなわないことだと、すぐに思い知らされるのだが]
―翌朝・自室―
[翌朝目覚めると、ぼさぼさの頭をかく。
すっきりとしない、目覚めの悪い朝]
はぁ……。
[ため息を付きながら身支度を整え、部屋をでると開けられた扉にもたれかかるようにローザが倒れていた。]
どうした?
[嫌な予感がしてそちらに駆け寄る。]
―翌朝・エルザの部屋前―
[近くによると鼻に付く匂い、部屋の中を見ると]
……っ…。
[エルザにすがるユリアンの姿、部屋いっぱいに広がる赤い……、
その状況からエルザがもうこの世にいないことは見て分かった]
ユリアン…。
[気遣わしげにそっと声を*かけた。*]
─広間─
[もぐ、もぐ、と食べるペースは遅い。不意にフォルカーから訊ねられると、ぇ、と小さく声を漏らした]
……………。
[しばらくの間、言うかどうかを迷う。長めの沈黙の後、口にしたのは]
……前に言った”絶対”が、出来なくなりそうな、気がして……。
あれだけ大口叩いたのに、出来ないってなったら、フォルに嘘ついたことになっちゃうから。
それで……。
[言おうとして言えなかったのだと、そう告げる。それはあの時言おうとしていたことの半分だけ。残りの半分はまだ、隠したまま。答えた後はお互い口数少なく、黙々と料理を口にする。フォルカーが広間を出た頃に食事を終え、使った食器を片付けた]
―翌朝―
[いつの間にか、少年は意識を失っていたらしかった。
気怠さを覚えながら身を起こし、手のうちのブローチに目を落とす。変わらずにある赤色に漏らしかけた安堵の息は、咳に取って代わる。幾度か繰り返したあと、胸を押さえながら寝台を下りた]
だい、じょうぶ――… 今日は、でも、
[蘇るのは自衛団から下された通達。
見つけないと。
呟き、若干ふらつきながら廊下へと出て行き、]
……………?
[違和感を覚えた。
歩んでいくと、階段のすぐ傍、開いた扉の一つに気付く。内へと向けた眼差しが捉えるのは、兄のように慕う青年の姿と、周りを彩る、異質な色彩]
ユリにい――……………
[か細く名を呼び、室内に一歩、足を踏み入れる。蹲る青年の影に隠れ、よく見えなかった、色彩――生命の赤の持ち主が誰であるかは、そのときに知れた。
命を奪われた女の名を象ろうと唇が動くが、音にならない]
――……………っ、
[元鉱山夫の時も、自衛団長の時も、死を、しっかりと目にしたことはなかった。
凄惨な光景に息を飲み、口許を押さえる。
咄嗟に振り返った先には流れの修道士が居て、彼にぶつかりかけた。
そのとき、ライヒアルトがどんな反応を示したか、少年は覚えていない。
遠かった]
人、狼、
……………れても、……さなきゃ、意味な……
[自衛団を呼ぼうとしてか、階下に向かおうとした黒衣の背を見つめ、無意識に呟きを漏らす。聞きつけ、足を止めた彼へと、足は動き、手は伸びていた。
普段の少年からは考えられない力で持って突き飛ばす]
[その直ぐ先は、階段だった]
[ゆっくりと、一段一段、下っていく。
まだ、息はあった。
しかし表情の失った少年は地に伏す男を見下ろし、
その手でもって、生命の炎を掻き消した。
喉へと付きたてられたナイフ。
引き抜くと、想像以上に多い血が溢れ出て、
少年の衣服を、顔を、床板を赤く染めていく]
[悲鳴はあがらない。
物音に、目を覚ました人物はいたかもしれない。
呼吸が途絶えたことを悟ると、少年は修道士の傍を離れて、玄関の外へと出る。以前より遠巻きに集会所を見張る、自衛団の姿が見えた]
……新たに、犠牲者が出ました。
それとは別に、容疑者の一人の処分を。人狼かは、判明していませんが。
遺体の検分と処置を、望みます。
[まだ幼さを残す、なのに淡々とした声が紡がれていく。
犠牲者は機織りの女性、容疑者は流れの修道士。死者の情報を口にする少年の普段との違いにたじろぐ彼らを見据える瞳は、血の赤よりもずっと、深かった]
――次期村長、フォルカー・アルトマンとして命じます。
早急な、処置を。
[有無を言わせぬ気迫を持って言い渡し、フォルカーは集会所の内へと戻る。
浴室で「汚れ」を洗い落とす少年の目に、*涙はなかった*]
─ →二階・自室─
[部屋に戻ると、先につけて行った暖炉の暖かみがまだ残っていて。その中に薪を放り込むと再び煌々と燃え上がる]
………言えるわけないじゃないか。
[暖炉の火を見ながらの呟きは、壁を隔てた隣には届くこと無く。パチリと弾ける薪の音に紛れて消えて*行った*]
―翌朝―
[結局寝付いたのはいつごろだろう。空がずいぶん白んでからの気がした。
一気に深い眠りに落ちた体は感覚すら麻痺したように微動だにしなかったが、
声にならぬ悲鳴に深淵から引きずり上げられ、何かが転げる物音で目を覚ました。
…なん、だ?
どうした?
[寝ぼけ眼で部屋を出て、ざわざわした気配を感じる方へ。
エルザの部屋に入って血の匂いに顔をしかめ…広がる朱に口元を手で覆った。
『エルザ』が、死んだ。
記憶の中の朱と、現実に見ている朱が重なる]
どうして、また、俺を、置いて…。
[違うとわかっているのに重なる姿。意識が混乱する。
とにかくエルザの肩を撫で続けているユリアンをどかそうとして、予想以上の力で振り払われた。
そこで体の向きが変わり、意識を失っているローザに気付いてはっとして駆け寄った]
ローザ、ローザ!
[頬に触れ、温かいことに安堵する。
念のため口元に顔を近づけ、呼吸があることを確認した]
お前さんまで逝っちまったら…俺は。
[気を失ったままのローザを抱き上げて、部屋に運ぼうとしてはて、と悩む。
女性の部屋に入っていいものだろうか。
かといって、自分の部屋で寝かせてもいいものだろうか。
やはり男の部屋よりはと隣の部屋に向かい、ベッドの上に横たえた。
それから女性陣―ヘルミーネか、イレーネか―を探し、気がつくまでついてあげてくれと頼む。
自衛団員は知っているだろうかと階下へ向かおうとしたら階段の下に自衛団員の姿。
横たわった人物は見たことのある黒衣を纏っていて、昨日姿を見せなかったその人と知る]
二人も、なのか?
[ライヒアルトはフォルカーによるものとは知らぬまま、沈痛な面持ちで台所へ。
グラスに水を汲んで、何杯も、何杯も*飲み干した*]
―エルザの部屋の前―
[ハインリヒがやってくるのが見えて]
ハインリヒか……。
[その様子に、こちらの声が聞こえていないようだった。
事実、自分の前を通り過ぎて一直線にエルザの元に向かう。
止める暇もなくユリアンの元に向かい、振り払われていた。
その様子に、ユリアンにそれ以上の声がかけられなかった。
その後、ローザの元に向かうハインリヒ。]
ローザちゃんのこと頼む。
俺はユリアンが落ち着くのをここで待つ。
[ハインリヒからの返答はあっただろうか?
そのときはまだ、階下のライヒアルトには*気付いていなかった*]
─翌朝・自室→二階・廊下─
[昨日日中長く寝てしまっていたためか、夜に寝付けたのはかなり時間が経ってからで。次の日、目が覚めたのはいつもより遅めの時間。目元を擦ってから大きく伸び、顔を洗いに行こうと廊下へと出た。階段へ向かう前、その周辺が俄かに騒いでいることに気付く。懐いている修道士と幼馴染の姿もあった]
フォル、ライさん、何が───。
[何があったのか聞こうとしたが、二人共かけた声には気付かなかったようで。また、フォルカーが漏らした呟きに自分も気付くことは無かった。階段へ向かおうとする二人を追うように歩を進めて、続くフォルカーの行動に思わず足を止める]
─────っ!
[修道士を階段の上から突き飛ばす幼馴染。口に両手をあてて、息を飲んだ。鈍い、重いものが転がる音。階段を下りて行くフォルカーに気付いて、慌ててその後を追った]
[階段の半ばまで来た時には既に止めが刺されていて。フォルカーが玄関で自衛団員相手に指示を出している声が聞こえる。淡々としたそれに足の力が抜け、階段の半ばで座り込んでしまった]
フォル……。
[呟いた名は幼馴染に届くことは無く、ぼうとしている間にフォルカーはどこかへと行ってしまった。その間にも自衛団員が階下で横たわる修道士へと集まって来て、検分やら運び出す算段をし始めて。怖くなって、階上へと逃げた]
[階段の上へ駆け上がった直後、ハインリヒと出会い、エリザベートとローザとの話を聞く]
……分かった、ボクが、傍に居るよ。
[エリザベートのことを聞いて僅か驚くよな表情はしたが、他には何も言わなかった。頼まれたことには頷き、ローザの部屋を教えてもらう。ハインリヒと別れると、エリザベートの部屋の前を通ってからローザの部屋へ。エリザベートの部屋は、ちら、と視線を向けるだけに留めた]
─ →ローザの部屋─
[部屋に入ると直ぐ、ベッドに寝かせられたローザの姿が見える。椅子を一つ持ってきて、ベッドの傍へと置いた。その上に膝を抱えるようにして座る]
……フォル、が、ライさん、を……。
[傍に居ると言っても考えるのは幼馴染のこと。人狼が人を喰らい、人が人を殺す。小規模な生存競争。猜疑の渦が集会場全体を包む]
ボクは、どうしたら良い───?
[呟いた問いの答え。それは既に心の中で*決まっていた*]
―回想:2階・個室―
[エーリッヒの願いとは裏腹に、いやむしろ予想通りに事態をややこしくした少年は、ノックの音を聞いてはぁいと声を上げた。
寧ろ読みながらなので、誰とかの認識はない]
開いてます、どうぞ。
……って
[顔を上げた瞬間に、視界に入った人の姿。すぐに目が釣りあがった]
不潔。
[当然、説得力のない言葉は一言で切り捨てた。
うさんくさいというより、親の敵でも見るような、いや心の神の敵でも見るような顔をしている。
少年の心中そのままだが]
気心知れても、若い男女が二人きりになるときは、部屋の扉を開けておくのがマナーだと聞きました!
[内緒話があったことも知らないが、不潔だというオーラをびんびんに発している]
神の怒りを買う行為ってなんだかご存知なんです?
だったら余計に信用なりません。
悠長じゃない行為ならできるっていってるようなものじゃないですか。
[知ってはいるけど理解していない少年でした。
話が終わってもやっぱり、睨む視線はかわらなかった。
ほんのちょっとの勘違いが、オトフリートにはかなりの災難なこととなりそうである]
まあ、今は、何もしていないってことにしておきます。
何かしてたら、…………許しません。
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