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―墓標前―
[ごめんなさい、と眉が下げるフォルカーを見て、たまらずその頭に手を伸ばす]
謝らんでいい。
…俺にもな、もしかしたら今頃お前さんよりもすこぉし小さいくらいのがきんちょがいたかもしれないんだ。
そう思うとつい構っちまうんだよ。
[軽い調子で言って笑うが、妙な力ではなく護る力だと言われて、ああ、そうだったと頷いた]
お空のせんせいはな、人間と人狼の区別が付いたらしい。
俺は人間だと太鼓判押してもらったよ。
[安心しろ、と言い、フォルカーの頭をぽふぽふと。
石の由来を聞いた後、行きましょうと言われて同意を示し、スコップを手に集会場へと歩きながら]
へえ、そいつはまたすげえもんだな。
だったら…今回の結果は出さねえ方がいいかもしれないな。
[と無精髭をぽりぽりとした]
―外―
……なんつーか。
生きたい生きたい言ってたから、死んだ今は苦痛か?
[墓の前で呟く。そこにエーリッヒの魂は見えない―単に今は目に映っていないだけかもしれない―が。]
死んだら、痛いのは無くなって、代わりに未練とか無念とか、それとも願いだけが残るって、婆ちゃんがいってたけど。
…やっぱり生きたかったって、俺らを恨んでるのかな。
それとも、生きることから解放されて、少しは楽になったかな。
[答えはない。]
─二階・自室─
[はたり、縹色が瞬く。金の髪が瞳に映った]
……ん。
だいじょう、ぶ。
ありが、と。
[問いかけに頷きを返す。先程ユリアンと居た時とはまた違った雰囲気、ぼうとした様子。それは偽りであり真の姿。ゆらりと立ち上がると、受け取ろうと扉の傍へ。その動きは緩慢でふらついていたが]
かったいなぁ。
イレーネが赤ん坊の頃おむつだって変えたことあるっつーのに
[そんなこと事実は一切ありません。]
ま、ウェンデルらしいっちゃウェンデルらしいけどな。
[扉を開け放ったまま、ウェンデルの頭をなでる]
疲れてるっちゃ疲れてる。
けど、こんな状況で疲れてないやつなんていねーし、それに…
[頭をガシリと掴む]
俺…人の肉意外喰えないし
[大嘘もここまでくるとなんとやら、そのまま掴んだ頭を壁にぶつけるように振るった。
…だが壁にぶつかる音のわりには、ウェンデルにとっては衝撃は少ないものとなるだろう]
―2階・イレーネの部屋―
大丈夫なら良かったです。
いえ、入れたばかりなので、熱いですから。
[と言って、それでも近づいてくるのを待つ。
ふらついている様子に、心配そうに眉を寄せた。
が、ユリアンのとんでもない(嘘の)告白に、まじまじと見詰め]
……ユリアンさんっておいくつです?
僕は背が小さくても、一応16歳なんですけど、わかってます?
[撫でるのに、紅茶が危ないなぁ、と思いつつも軽く睨む]
まぁ、撫でられるのは別に良いんですけど。
疲れてない人がいたら確かにそれはおかし、
[いきなりつかまれて言葉が止まる。は?と間抜けな声が出た時、振るわれて、
渡そうと伸ばしていたマグカップは、当然ながら中身を撒き散らし、落ちる。
どんっという音がした。のにそんなに痛くなかったから余計にきょとり、目を瞬かせる]
……わ、
[頭に触れる手に小さく声をあげ、目を大きく見開いた。
ハインリヒの語る事柄に何かしらの相槌を打とうとしたものの、過去形であったがために、何も言うことは出来なかった。代わりにというわけでもないが、撫でる手には、大人しくしていた]
せんせい……
それで、エーリッヒさんが、
[人狼だと分かったのかと、内心、独り言ちた]
どう、なんでしょう。
それでも、僕は――……村が活気づくのなら、見てみたい。
[結果を出さない方がいいというハインリヒに返すのは、以前の問いに、答える形になるような台詞。
しかし、それについて深く語ることはせず、止まないどころか強まる胸騒ぎに焦燥感を覚え、集会所へと進む足は、自然、速まった]
―外―
……俺は、グラーツ殿が居なくなってほっとした。
[ぽつりと呟けば、頭のなかがすっと晴れるような感覚がくる。]
……でも、あんたを恨んだり憎んだりするのは……違うのかな。
[その呟きには、ずきりとした痛みがくる。
顔をしかめて、がんと頭を格子の傷がついた樹に叩きつけた。]
うっさい頭痛。
ちょっと黙っとけ。
[外からの痛みが強かったので、頭の内側の痛みには、暫くの間耐えられた。]
あんたを恨んだりしていいのって、あんたが殺した人か、その人の家族とか恋人とかだけなのかなって、ちょっと思ったよ。
……あーまー、なんだ。
とりあえずローザとかオトフリートさんに怒られてこい?
[一方的に話をしてると、ちょっと怪しい人に見えるかもしれない。いや誰もいないが。
そう思い、最後にそれだけ告げると、道具を持って集会場へと戻っていった。]
23
[年齢について、端的にこたえ、飛び散ったカップから降りかかる紅茶が顔のかかるのを庇うように覆って]
ぁあ…疲れた…だから…終わりたいんだ。
なぁ?エリ兄が人間なら、俺はなんだろうな?
[頭を掴んだまま、取り出したナイフをその額目掛けて、突きたてようとする。その際、頭を掴んでる手の力が僅かに緩む]
─二階・自室─
[近付いた先、カップを受け取ろうとした矢先にカップが宙に舞った。中身が腕にかかる]
───っ!
[伸ばしかけた手が引かれた。反対の手で腕を押さえ込む。予期せぬ痛みに縹色が金に光ったのは、刹那]
[オトフリートがなぜエーリッヒが人狼と察したのかに気付いたらしい様子に]
ああ、そうさ。
で、自分で突っ込んでいっちまった…
…無茶しやがって…。
[最後の呟きは本当に心底から悔やんでいたのがぽろっと漏れたもの。
ふう、と煙草をくわえたまま煙をはいた]
活気付く結果になるかどうかは…わからねえさ。
次期村長が、もちょっと調査させてくれんだったら―結果を出してみせるけどな。
[村の可能性についてはそんな風に言いながらも、集会場へ向かう足は早くなる。
不安に背中を押されるように、一歩、また一歩と。
集会場に着けばスコップをしまおうと納屋を覗き―ふ、と黙った。
そこには他のものに埋もれながら鈍い光を放つ、鉈の刃が見えていた]
[近くまで来ていたイレーネも視界には入っていた。
一瞬の違和感。何があったかわかるよりも前に、ユリアンの言葉を聞くために、視線を合わせる]
ユリアンさん、なんか
変です、よ?
人間、じゃ、ないですか。
[さっきまでの様子と違うのに、思わずそんな事を言って。
だけれど、ナイフを見てさすがに息を飲んだ。
落ちたマグカップは、割れているのも見て取れる。
あ、殺されるのかもしれない。
そんな風に思った瞬間、ふっと頭にかかっていた力がゆるんだ]
――っ
[目をぎゅっと瞑って、しゃがみこむ。手の感覚が頭に残っている。髪の何本かは、ナイフの刃に散ったろうか]
な、んで! いきなり!
[命が無事だった、と分かれば、下からユリアンのことを睨みあげる]
その話は、いずれ。
[オトフリートに関する話題のときには、僅かの間、背後に視線を投げたきりで、黙り込んでいた。
可能性についてを語るのは後に――未来に、回す]
……ウェンデルさんに、レーネのこと、お願いしてたんです。
先、行っています。
[納屋に向かおうとするハインリヒに声をかけ、一足先に、室内へと入る]
ぁーあ。逃げちゃった。
[突きたてたナイフはぎぃんと揺れている。予想以上の力がこもってるのが察せられるだろう。それを抜く気は起きない。変わりはあるし、めんどうくさい]
…人間か。
…ってか俺ってば元々ウェンデルから見たって変なやつじゃないのか?
というか…なぁ?…そろそろ察しろよ
[呆れたというような態度でしゃがみこんだウェンデルを蹴り飛ばそうと足を振るう。
それは階段から落とされるほどではないが、相当な痛みを被るだろう]
─二階・自室─
[金は直ぐに消え、元の縹色へと戻る。腕を押さえ込んだまま、再び床に座り込んだ]
ユリ、さん、何を……。
[ナイフを振るう相手にかける声。震えたのは表層の意識。訝しんだのは深層の意識]
―集会場・納屋―
[道具を納屋にしまおうとしたら、ハインリヒと出くわした。]
ルディン殿。そっちも丁度終わったのか。
[言いながら、こっちも穴掘りに使った道具を中にしまう。]
後で俺もそっちの墓に顔出しに行くよ。
オトフリートさんとヘルミーネさん…ちゃんと見てなかったしな。
[それは魂を見る、という意味よりは、見送る的な意味合いが深かった。]
―納屋―
あぁ……気をつけろよ。
[先に集会場の中へいくフォルカーへ、どうしてそんな言葉を向けたのかはわからない。
しかし、あの時声が聞こえてから、じっとりと嫌な汗が掌に滲んでいた]
―何考えてるんだ、俺は。
[スコップを置いて、鉈に手をかけようとした自分に思わず苦笑した。
それでも胸の不安は取れぬままならば、何か身を守るものをと見回した。
丁度、そこへダーヴィッドがやってきたか]
ああ、まあな。…埋めてきたのか。
[誰をとは聞かずともわかる事。
答えを求めぬ問いを投げ、集会場のある方を目線で示し]
…嫌な予感がするんだ。あんた、なんか感じないか?
その、なんだ、俺なんかよりも妙な力があるんだから―
[また、妙な力と言った。
しかしそう思っているのだからしょうがない]
背に腹はかえられねえか。
[そう呟いて鉈の刃を掴んで引きずり上げる。
小振りのそれは、思ったよりぼろかった]
[踏み入れた集会所内は静寂に包まれていて、数日前の賑わいが嘘のようだと思った。
視線を彷徨わせた後、ひとまずは上へ行こうと、階段へと足を向けて上っていく。
近付くに連れて、一室での出来事も意識のうちに入って来ようか]
元々、変ですけど!
[思いきり本音で言った。
頭の上で、ナイフが戸につきささっているのがわかる。
察しろ、と言われても、すぐに結びつけられないのは]
だって、ユリアンさん…!
終わりかもしれない、のに、いきなりやる意味がわからない――っ!!
[飛んできた足を避けられるわけもない。
思わず身を丸めたけれど、飛ばされる。痛い。
視界の端にマグカップの破片が入り、けられた拍子に外れた手が伸びた。
手のひらに食い込み、血は溢れるけれど、
蹴られた痛みに涙をためながら、睨みあげた。
声は出ないし、震えているけれど。カップの破片で対抗できるわけもないけれど。
死にたくないから]
―納屋前―
ん、まぁ適当にそのうち養分になりそうな所に。
[向こうが名前を言わなかったので、こっちも名を口にはしなかった。
妙な力、にはまぁその通りなので特に言及せず、何か感じないか、には少し首をかしげた。]
何か…?
うーん、さっきから頭が痛い。
[自分で樹にぶつかったから、ではなく。]
嫌な予感っていうか……終わってよかったなーって思ってるんだけど。
そう思うとちょっと頭痛くなるんだよな。
そういえばこないだから、頭痛がするとその先にだいたい俺が見なきゃいけないものがあるって事が多々あったなぁ。
[と、自分でその意味する所の重大性に気づかないまま口にした。]
―納屋―
お前さん……。
今自分で言った事に気付いてるか?
[思い切り苦笑しながら表情を引き攣らせた]
それって、まだ終わってねえかもって事じゃねえか。
[あの時聞こえた声が言っていたのと同じだ]
中行くぞ!
[錆びた小鉈を手に集会場の中へと納屋前にいるダーヴィッドを促し、
自分も納屋を出て集会場の玄関へ。
何かを言ったウェンデルの声が聞こえて、表情を強張らせた]
[イレーネはそれが、嘘であることはしるだろうけれど]
何って…みてわからない?
[とイレーネにはあっさりと言った後]
ちょっとは否定しろやっ
[思わず突っ込んだ。なんでこんなやりとりの最中にこんな言葉が出るのでしょう]
ああ、やっと抵抗しはじめた。
[死にたくないという意志からくる姿にどこか楽しげに嬉しげにしつつ]
だから…終わってないんだよ。
おまえ俺が過去にあったこと知ってるだろう。どうやって…生き延びたと思ってるんだ?
…殺して生き残ったんだよ
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