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はてなさてな、
童子の言葉がわかるだけかも知れぬよ。
[えいかに笑みかけてはそんなことを]
濃色の子、風の坊。
誰だって、初めから作れた訳ではないだろうさ。
なんなら、当人に聞いてみるといい。
[他のものは食べられたけれど]
[椎茸だけは箸の先]
……うー
[いつしか見てくる仔うさぎに]
[ちろと目をやって]
…………食べん?
[白のねえさまに見られていても]
[気にせぬほどに、あげたいらしい]
[えいかの言に、手の中の紙風船をふと見つめ]
虹の七色……。
そうなら、よいな。
[小さく呟き、また、上へと投げて]
初めからは、できない……うん。
[それは、ここではないどこかで、誰かに言われた覚えもあるか。
再び手に戻りし色彩を見やりて、こくり、頷く]
一足早う聞いたのかな。
…そなたが言葉は謎掛けのようじゃ。
[あやめの笑みにはやや眉寄せて、返す声音は淡々と。
膳の中身はあらかた消えて、残るは稲荷寿司のみか。]
天狗の用意し膳なれば。
あまつきつねというだけに、稲荷を好んで決めたのやもな。
[ささめく童子らちらり見て、はくり大きく噛み付いた。]
[雅詠に沈黙を返されれば、ぽりと頭を掻いて見せる]
はてさて、では旦那は天狗ということになる。
[さらりと言って、肩を竦めた]
まあ、だとしても、驚きはしませんが。
[今の敵は、椎茸]
[箸の先で、弾力のあるそれが踊る]
[美味しそうに色のついた]
[好きな者には極上品だろうか]
……椎茸。
しいたけ。
…………
[食事を取る白のねえさまを見るのは]
[何を期待してだろうか]
[音彩の様子に、仔うさぎきょとりとしていようか。
それでも、手助けする気はないらしく]
てるてる坊主……あのこらの、宝物……。
[空の虹を思い浮かべつ。
ぽつり、呟く]
謎に思うならば、
解いてみてはいかがかな。
[控える童子らはくすくすと笑うばかり]
狐の好むが稲荷寿司とは、
なるほど、確かに言うたもの。
此方も嫌いではないけれどね。
[あやめに咎められ、慌てる様に、湯のみ傾け僅か笑む。
期待込めて見やれれば、ひょいと箸が伸びようか。]
[はくり、もぐもぐ。]
[まるで自分の膳から食らうたように、視線もやらず咀嚼した。]
[目が思わずきらきらと]
[白のねえさまの食べる様子に]
[とても嬉しそうで]
えいかねえさま大好きじゃぁっ!
[それでもそれは内緒ごと]
[ちかよって、にこっと笑う]
さて、我がそう思っただけなのじゃが。
うつくしきは似ておろう。
…おすそわけならば、少々色が足りぬも仕方なしじゃな。
[風漣へとそう呟きかえし、あやめの言葉に一つ頷いて。
きれいに全て食べ終えれば、童子ら膳を下げてゆく。]
〔臙脂の子と白の君との秘密ごとは知りけるか、
座敷に背を向けていてはそれは定かならず。
縁側に腰を下ろして足を宙に遊ばせて、
仰ぎし天には星は昇らず陽ぞありける。
庭の緑に混じるは風に揺れし梔子の布、
されど女の紫黒は未だそれを捉えはせず。〕
[膳の上の椎茸の行く末に、紅緋をひとつ、まばたかせ]
……好き嫌いをいうと、大きくなれぬと聞いたけれど。
[ぽつり、小さく呟いて。
側に戻りし小さき獣をそう、と撫ぜる]
色彩……確かに、虹の色には足りないね。
[えいかの言葉に、小さく笑めば。
紅緋は再び、紙風船へと]
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