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自警団員 ガウェイン に 2人が投票した。
学生 エリカ に 1人が投票した。
雑貨屋 フラン に 4人が投票した。
雑貨屋 フラン は村人達の手により処刑された。
今日は犠牲者がいないようだ。人狼は襲撃に失敗したのだろうか。
現在の生存者は、自警団員 ガウェイン、烏賊 ラス、孤児 オーフェン、学生 エリカ、くの一 アヤメ、少年 ネロ の 6 名。
〔瞼を下ろせば烏より眼差し外して、
空に見遣れば七色の光は消え失せ、
後には星のなき真白の夜ぞ残らむ。
眠りに落ちし揺藍の傍へと行けば、
膝を落としてしゃがみて巾着揺らす。
……りぃん、りぃん……
鳴りし音色は神巫の其れより小さきが、
薄く霧の広がりて彼の地へと導かむ。
好き夢をとの言の葉は届きしかわからねど、
唯ただ彼の者の望みし願ひの叶ふことの、
己等が桃源の卿にては雨止めば好いと願ふ。〕
[森の中]
[樹の上]
[うとうとと]
[眠りにおちていた]
[夢はまだ見ず]
[仔うさぎに呼ばれたねえさまが]
[訪れた時にも変わらずに]
[やがてうつつのゆめが開く]
[見たくはないのに]
[今日も見える]
[こわくない]
[いいきかせても]
[こわい]
[だけれどそれは]
[夢の始まりに息をひそめ]
……違わん
よかったぁ
こわぁないん
[ふわり]
[うれしそうに笑う]
[ちがうものはこわい]
[ちがわないものはこわくない]
[ただ、それだけ]
[意思と逆になれば]
[それは混乱もひきおこそうが]
[意思と同じなれば]
[真実知るのみ]
誰もこわいんなんてあらん
よかったぁ
[呪にも似た]
[恐怖の植え付けは起きず]
朝の食事とらんとなぁ
[童子たちの用意してくれた食事に]
[*ありがとうといただきます*]
[ゆら、と眠りの淵より浮かび上がり。
数度、紅緋をまばたかす]
……揺藍のにいさま?
[小さく、ちいさく名を呟く。
慕わしきひと、思い起こさす空のいろ]
…………。
[あの時──天狗の神巫が消えたときのよな。
強き力は見えなかったと。
そんなことを思いつ。
再び、*眠りの淵に、囚われて*]
[消えた者にも鈴の音にも―
気付く事なく夢の中]
[ただ鈴鳴りしその時に―
小さく身動ぎしたろうか]
[やがて夜は明け朝が来て―
眠りの内から目覚めしは―
眠りし前と同じか否か―]
[目を覚ませば枕元に、童子からの届け物。
しゅるり衣擦れ音高く、纏うは白の直垂、白袴。
なないろの下に干されても、いずれのいろにも染まらずや。]
[縁側行けどその先に、昨夜見かけたあおはなし。
朝餉を運ぶ童子らに、問わば答えは返ろうか。]
ん……ぅん…。
[もぞり、床から身を起こし、辺りを見回すその姿、どうやら事態を把握出来ておらぬか]
ここ、は――?
俺は――
[ゆるり、目を閉じ何事か理解に勤める事暫し―やはりゆるりと瞼を開く]
――ああ、倒れたんだな。
[それはどこか他人事の様な響きを伴って―]
―謝らなくちゃあな。
[呟けばそのまま座敷に向かうか―]
…ゆかれたか。
[しばし瞑目して空仰ぎ、ゆると瞼は開かれる。]
ひとりはさみし…ふたりはこいし…。
よう似た定め持つなれば、さみしもこいしに変わろうか…。
[小さな呟き、*風に流れ消えゆかん*]
[座敷に着けば早々に、朝餉を取り終え向かいしは、未だ眠りし紫苑の元か―]
――――
[そっと傍らに座りて消えそうな声で謝罪を告げん]
〔深き森にて風吹きて森のざわめかむ。
鳥も獣も虫もなくは歌をうたふやうに。
梢から梢へと跳びて袖の飄揺せしは、
さながら黒き翼の鳥が飛ぶに似たり。
其は妖の力を持ちしがゆえか、
唯人でありし頃の名残ゆえか。
樹のひとつにて止まり天を仰げば、
平時より近くに陽ぞ輝きてありける。〕
[小さな祠に歩み寄り、静かにそを見下ろして。
ふわり衣翻し膝つけば、舞扇を供へたり。]
やれ、天狗の術は見事なものよ。
雨に濡れたが嘘のよじゃ。
されど既に奉げし舞じゃ。
我の元に留めるはさみしかろう。
[代わりにと言うは不躾じゃろが…そう呟くも応えなし。
鳥と獣と虫の音が、ときおり聞こえ来るだけか。]
[白き足が揺れたなら、かさりかさりと木の葉鳴く。
俯き祈る面を上げて、音のある先探そうか。]
[されどその先見つける前に、傍に佇むおのこに気付く。
琥珀きょとりと瞬いて、首を僅かに傾げよう。]
…おや、そなた。いつの間に…。
[紫黒は上から全て見みておるや。]
はてさて、我はそんなに深う祈っておったや。
…もしやそなた、天狗の使いではあるまいな。
[抑揚なけれど、問いつめしものでもなく。
あるいは笑みあれば、冗談とも聞こえたろう。]
…よいのじゃ。
川に流したとて、天狗の里の理なれば何処に往くやわかりゃせぬ。
[ついと指先扇を撫でて、果たせし役目労おう。]
――もし、そうだと言ったら?
[抑揚もなく、焦りや戸惑いの色もなく、笑みも浮かべず―ただ純粋に問いを返す。
どう受け取られるかは分からねど―]
いや、もう使わぬのかと―
[問い返されれば、しばし静寂訪れて。
琥珀はじいと面を見上げやる。]
…もし、そうであるならば。
何故に還したかを聞こか、何故に呼んだかを聞こか。
――何故にそなたがおるかを聞こか。
[琥珀ゆらりゆらりとゆれて、ふいと扇に移りゆく。]
…役目終われば、休むがよかろ。
[呟けば、撫でる手をそと離しやる。]
――すまぬがそれには答えられぬ。
[前の二つは既に答えが出ておるし、後の一つは―]
―何故、俺はこのように居るのであろうな―
[伏せし眼は何処を見やるか]
終わったとは―?
……そうか、それは残念じゃ。
[答えが出ておるなど知らぬまま、重く溜息を零す。]
天狗であれどわからぬか、天狗でなくばわからぬか。
そなたがわかりはせぬものを、我がわかるはずもなし。
[琥珀を上げれども、男が何処を見るやは知れぬ。
次いだ問いには、瞼半ば伏せ。]
…そなたが答えぬなれば、我も答えずにおこう。
なに、気に掛けることでもあるまいよ。
[すと立ち上がり、衣を払う。
歩み出すは何処へか。]
〔音につられて眼は天を仰がむか、
されども女の姿はそこにはあらず、
木の葉の静かに風に揺らるばかり。
音なく枝より舞ひ下りしは蝶の如く、
祠のありし方に一度眼は向けらるも、
踵返して歩の進む先は人の住まぬ家。
*辿り着けば戸を開きて中へと入らむ*〕
[去り行く琥珀に何も言わず、ただその場に立ち尽くす。
零れる言の葉は紫黒にのみ届くか―]
本当に何故俺が居て――――がいないんだろうな。
―俺なんぞより余程資格があるはずなのに―何故―
[紫黒の、女の姿は目に残ったか、象牙の男の言の葉は、耳にしたか]
さてさて、何を望むやら。
[薄茶で喉を潤して、しばし遠くの空を見る]
[やがて、傍らの木箱から、紙風船のいくつかを取り出すと、ひとつ、ふたつと吐息を吹き込み、てん、てん、てん、と、弄ぶ]
[歌は無くとも鈴の音に、ふわりふわりと、五色の玉の浮いては躍る]
[―戻り着いた館にて、紫苑はそろそろ目覚めたかと、一直線に向かわれば、五色の玉が空を舞う。
―暫し見蕩れてしもうたか、はっと気付いて頭を下げる]
―お早う、烏。
[りぃん]
[かすかな音をきくか]
[館の中をうろうろと]
[あちらこちら]
[探検して]
[童子らに見付かれば]
[あわてて逃げゆく森の中]
〔きぃ――
軋む戸は閉まり切らず透き間風ぞ入り込む。
りぃん――
澄みたる鈴の音は遠くまで響き誰そ呼ばわる。
天狗の住まひし隠れ里は、
此の世にて此の世に非ず、
此岸にありて彼岸にあり。
訪れし者ら依りて作らると、
己等の記憶から成るものと、
仰せしは月白の神巫でありしか。
古き家の内には埃も積りて居らず、
今迄人の住みたるやうにも見えゆ。〕
そういえば
[館の中を回ったというのに]
[一人の姿がそこにはあらず]
[どこかへ出かけているのかと]
[白い花の方へ]
[考えこむから見えないのか]
[寧ろ見ていないのか]
[そのそばにいる人の姿]
[白の衣の袖翻し、白の花咲くの野を歩みゆく。
やがて白しか見えなくなれば、歩みを止めて空仰ぐ。]
揺藍殿は、いかれたのみや。
…なれば、怖くはなかろうか。
いきはよいよい、かえりはこわい…
[青を見上げて目を細めれば、小さな足音聞こえやる。]
〔細き指は壁をなぞり、
しゃがみて床に触れる。
水底を探るかのやうに、
記憶を辿るかのやうに。
……りぃん、りぃん……
起こさむと鳴る鈴の音に、
伏せし睫毛は震えを抱く。〕
[きょろ、きょろと見回して]
[はたと気付くその姿]
えいかねえさま
鈴の音、きこえるん!
きれいねぇ!
[にこにこと]
[興奮のままか]
[かけよって]
…やれ、そなたか。
[駆け寄る姿に琥珀細むるは、なにが眩しき故であろうか。]
ああ、美しい音じゃ。
何処へか招いておるや否や…。
[目を伏せて、耳澄ます。
も一度鳴れば、そのままに歩み出そうか。]
[きれいな目は細まって]
[不思議そうな顔になる]
[ものの]
[次いだ言葉にこくこくうなずき]
どこで鳴っておるんじゃろう?
神巫さまはどこぞ行かれたんじゃろ?
誰が鳴らしておるのかな
きれいな人じゃと思うけんど
[とことこ]
[後をおうように歩く]
[すこしずつ音は近付くか]
〔はてさて物思ふて居たからか、
手にする巾着地へと滑り落ち、
――りいぃぃぃん……
転がる鈴はいと高き音鳴らす、
其はまるで人の子がなくやうに。〕
[問う言葉に伏せし瞼を上げ、雛のごとく後ろ追う童を振り返り、]
…ああ、そなた眠っておったかえ。
天狗の神巫殿は、先日の夜にゆかれたのじゃ。
[きれいな人との言の葉には、琥珀きょとりと見つめやる。]
誰そかも姿もゆけばわかるであろが…なにゆえに美しきと?
[歩みは童に合わせるように、やや遅くなるだろか。
言の葉交わす間にも、鈴の音少しづつ近づいて。]
どこぞ?
[ゆかれた]
[言葉に首かしげ]
天狗さまが寂しうなったんかのう?
[遅くなった歩みに]
[すこし楽になったのか]
じゃってきれいな音じゃもの
きれいな音を奏でるひとは、きれいなひとなんよ
鈴も、笛も、声も、
みぃんなきれいじゃ
[にこにこと笑って]
[そして鈴は悲鳴をあげる]
[驚いて見る先に、古い家]
…さて、どうであろ。
[童の無邪気な笑顔に、返すは苦笑であったろう。]
とまれ、どうやら鈴の主はあそこのようじゃ。
真か否か、確かめにゆこうかの。
[驚いているねいろを手招いて、古き家へと歩み寄る。
隙間開く戸に握り拳あて、ほとほとと二度叩こうか。]
誰そ、おるか。
〔紫黒の眼は大きく開かれて、
揺らげば今にも零れ落ちそうに。
されど廻る川の溢れぬやうに、
そこより滴の流るることもない。
戸を叩く音に我に返りて袋を拾ひ、
気配のする方へゆうらり歩みゆく。〕
きれいな音はきれいな人なんよ
ぜったいじゃも
[感じのかわった笑みにも笑い]
[招かれかけよりその隣]
うん
たしかめよ
[戸をたたくねえさまとは逆に]
[こそり]
[隙間から中を覗こうか]
あやめねえさま!
[覗き見はだめと怒られた]
[そんな戸が開いたその中に]
[姿をみとめてうれしそう]
鈴がきれいじゃったん
ねえさまが鳴らしとってん?
[童が言い切れば、もはや返す言葉もなく。
隣にくるを見てから戸を叩く。覗いているとは気付きもせぬ。]
……あやめ殿。
[戸を開けて笑む黒と紫に、琥珀はやや見開かれて。
問われる言葉にも、返すは何も浮かばず。]
…そなたの言う通りじゃったな。
[ぽつりと紡がれた言葉は、ねいろの「美しい人」へと。]
おやまあ、何の話かな。
[開け放ちつつ言の葉を返して]
……そうだね、
此方の鳴らしていたものだよ。
それほど遠くまで聞こえたかい。
きれいな鈴のおとじゃったから
きれいなひとが鳴らしとるっていうことじゃ!
あやめねえさまじゃもん
鈴もきれいになるけ
[素直にそう答えて]
うん、よう聞こえたよ
きれいじゃったん
森がすんでおるからかのぉ?
[ねいろの勢いに、気圧されるよに頷いて。
開け放たれた戸の内へと。
白き外から中に入れば、目が慣れるのにしばしかかる。]
[何の話かは言うに言えずに、ねいろへ視線合わせよう。]
おやおや、それは光栄だね。
褒めても生憎、何も出やしないけれど。
よぅく聞こえたのはね、
きっと、鈴が誰そを呼んでいたからだろう。
さみしい、こいしいと、ないていたのだろうよ。
鈴もさみしいん?
[えいかねえさまににこっと笑って]
[一歩踏み出す薄闇の中]
[なんどもぱたぱた瞬いて]
天狗さまも鈴もさみしいんかなぁ?
みんな、みいんな、さみしいんかなぁ
…水面が。
[ゆうるり、瞼に残る、深紫の残像]
ひとりはさみし…ふたりはこいし…
鈴がさみしいと鳴くのなら、
呼ばれる人もさみしかろか。
……呼ぶ人もさみしかろか。
[みんなさみしという童の頭を、白い袖の中の手がぽんと叩く。
*促すように、頷くように、宥めるように*]
さぁて。
誰その代わりになくやも知れぬ。
[使われておらぬ囲炉裏の傍に腰下ろす]
さみしいのは、誰だろうね。
此方も其方も、何方もか。
[そのままじっとその場に座して、五色の玉が行き来する様を見ていたが、気付けば夕餉の時刻かな]
ああ、もうこの様な時間か―
[えいかねえさまとあやめねえさま]
[ふたりのねえさまを追って囲炉裏のそばへ]
ねえさまがたも、さみしいん?
おらぁ、ねえさまがたと一緒おれるけん、さびしうなかよ
みんな、みんな
さみしいんがなくなればよか
[頭をなでられば*うれしげか*]
そうだね――
共にあれば、さみしくはなかろう。
こいしくなるやも知れぬけれど。
やれさて、ひとのこころは難しいか、
それとも、そう思うているだけか。
〔深紫の女に、臙脂の子、笑みつつ語り、
ふたりの話を白の君は聞いていよう。
火のない囲炉裏に爆ぜる音はなく、
今は鈴も音を奏でるを止めてゐる。
代わりに人の声の満ちれば、
刻の止まりし家は息衝きて、
在りし日の姿へかえりしやう。
けれど其も僅かに一時に過ぎず、
白き夜の訪れに語らいも止みて、
帳のやうにしじまが下りる。 ]
[眠りの淵より立ち返り、ふと見やれば、部屋の隅には見慣れた衣。
藍白を滑り落として白花色に袖通し。
ふと、こぼれるのは小さな息]
……どちらでも、ないのだよね。
[小さな呟き。
それごと白花色に覆い尽くして瑠璃紺で括り。
鞠を抱えてゆうらりと、館の外へと彷徨い出る]
[野で仔うさぎに草食ませ。
水車の傍ら、その音聞きつ。
てん、てん、と鞠をつく。
唄はなく、紅緋は茫、と華を見て。
否、見やるは華か、それを託せしとおき者か。
それは何者も知る由無く]
おらぁ、むずかしかと思うんよ
[闇色のねえさまに]
[したりがお]
じゃけん、おらぁ、好きじゃよぉ。
みんな、みんな好きなんじゃ。
あやめねえさまも、えいかねえさまもじゃよ。
それがこいしい、言うことかのぅ?
[古い家はどこか嬉しげか]
[囲炉裏のそばで]
[にこにこ笑って]
[館に戻り、座敷へ向かえば、目に入るのは色とりどりの紙風船。
その色彩、視界の隅に止めつ、縁側に座り、傍らには仔うさぎを。
庭に投げ出す足を揺らしつ、茫、と思うは目覚めの記憶か]
……揺藍のにいさま、どうしておられるかな……。
[小さく呟き、そう、と小さき獣を撫でて]
[時がたち]
[やがて静かに]
んー、あやめねえさまはもどらんの?
[首を傾げてそう尋ね]
[戻るというなら、嬉しげに一緒に戻るか]
[戻らぬというなら、白のねえさまを見上げて]
[困った顔をしただろうか]
[駆けられし声に、ゆる、と顔上げそちらを見やる]
気になる……のだろか。
よく、わからないの。
ただ、揺藍のにいさまは、少しだけ舞弥のにいさまに似てらしたから。
だから、お元気でおられるといいなあ、て、思って。
……それに……。
[小さく呟き、わずか、紅緋を伏せ]
そうか―
[それ以上の言葉は出て来ない、何故なら―
『にいさま』に似ている―
その思いが痛い程分かる―分かってしまうが故に―]
―それに?
[ただ続きを促す事しか出来ぬ―]
子供は好く食べて好く寝て好く遊ばぬと、
背も伸びぬようになってしまうよ。
[後の問いには敢えてはぐらかすように]
さぁて、どうだろうね。
[続きを促され、ひとつ、まばたく。
それは、困ったようにも見えようか]
うん……うまくね、言えぬのだけれど。
揺藍のにいさまは、いつか、お見かけした神巫様のよな強き力はお持ちでないよう……だったから。
……慣れぬ場所においでになって、辛くなければよいのだけれど……て。
[途切れがちに言いつつ、くるり、手の中で鞠を回す]
……背は伸びんのいやじゃぁ
[真剣な顔]
[まるで一大事だというように]
[だがそれよりも]
[闇のねえさまの答えにむぅっと]
[頬をふくらませ]
あやめねえさま、おなかすいとったらあかんのよ。
おなかすいとると、かなしうなるんじゃよ!
[―ふっと柔らかな笑みを浮かべ縁側に腰を下ろせばくしゃりと頭を撫でよるか]
―きっと大丈夫さ、仲間にしようと言うのならそういう事にも気を使ってるだろう。
ねえさまはね、
そうそう腹が減らんのよ。
[くすくす笑いつつ、ぽんと頭を撫でる]
けれども、かなしゅうなるのは好くないね。
はてさて、困った、どうしようかな。
[頭を撫でられ、わ、と声を上げつ目を細め]
大丈夫……?
それなら、よいね。
[小さく呟き。
仲間に、という言葉に、またひとつ、ゆる、とまばたくか]
……仲間になったら……どうなるのだろ。
[それは、問うというより、独り言めいて]
えええ!
ねえさま、すごかぁ!
[驚いた顔]
[撫でられては嬉しそうだが]
うん、ようないよ!
ぜんぜん、ようないよ!
いっぱいいっぱい、ようないよ!
[必死に真剣に]
[闇のねえさまに向かって言い募る]
[ふわりふわりと投げあげて、宙に弧を描く紙風船…やがて、ぽとりと畳の上にふたつみっつと転がして]
[童子が運ぶ酒杯を取れば、男と子供の声を聞く]
ああ、きっとな。
[もう一度ふうわりと笑んで―]
―どうなるかはなった者次第ではないのか?まあ今までと違う暮らしが待っているのは確かだろうけどな。
[独り言には独り言で返すといった調子で]
[向けられた笑み、それに安堵したよにふわ、と笑んで]
なったもの次第……。
…………かわってしまうのは、嫌だな…………。
[その言葉は、本当に小さな、小さな声にて紡がれ]
うん、そうじゃよ!
[白のねえさまに同意を求めるように笑って]
館、きっと、おいしい食事があるけん。
食べにもどろ。
何があるんかなぁ……
[闇のねえさまと白のねえさまと]
[同じように立ち上がり]
[聞かれていてもいなくても、恐らく童は気にかけず。
ただ、撫でられるぬくもりに、くすぐったそうに紅緋を細め。
座敷に戻る姿を見送れば、いまだ、何も食べていないと思い出し。
さざめく童子に導かれるよに座敷へ向かい、夕餉の膳へと向かおうか]
さんしょくずし?
お寿司がみっつなん?
しいたけ。
椎茸は嫌いじゃぁ……
ぶにぶにしとるん
[白い白い花の中]
[闇の姉さまは浮かびあがるよう]
[天に輝いていた虹は今はもうあるわけなく]
たからものを、てるてるぼうずが手にいれたんかなぁ?
[こぼすはそんな一言]
[夕餉が済めば、目を引くは。
畳に転がる色とりどり。
膳が片付けられるのを横目に見つつ。
仔うさぎと共に、じい、とそれを見つめ]
稲荷寿司に、
海苔巻き寿司に、
青紫蘇の巻き寿司さ。
好き嫌いせずに食べぬと大きくなれぬよ。
[からかうように言って眼差しは空へと向く]
どのような宝物だったのだろうね、
聞いてみたいな。
坊には欲しい物はあるのかい。
[膳についた風漣を見遣ると、悪戯めいた笑みを浮かべ、その足元に紙風船をひとつ転がしてみせる]
坊の鞠より、ちと貧相だが、記念にひとつ持っておいきな。
[転がってきた紙風船に、紅緋はきょとり、とまばたくか]
……風漣に、くれるの?
[問う声は嬉しげでもあり、また、どこか不安げでもあり]
へぇぇ。あやめねえさまは物知りじゃぁ
[三つの寿司の名に、きらきら]
[楽しみというように笑って]
じゃ、じゃって嫌いなんじゃもんっ
[椎茸を思い出して苦い顔]
……てるてる坊主、おしえてくれんかなぁ
おらのほしいもん、は……
おらぁ
みぃんな、一緒におれれば、それだけで良いよ
なぁんも、かわらんと、
なぁんも、こわぁないんなら、
それだけが良いよ
ほしいん、それだけじゃぁ
あやめねえさまは?
[くれるのか、と問われると、柔らかく笑みを浮かべる]
ああ、薬を売るついでに、坊のような御子達に配って回る風船さね。安物だから遠慮することはない。
[雅詠の言葉には、けらりと笑う]
いえいえ、薬屋でしたら、このくらいのものは、良ければ旦那もひとつ、手慰みにいかがです?
[ぽん、とひとつを手玉に取って、問いかける]
[笑みを向けられ、不安はようやく影を潜めるか。
そう、と紙風船を掬い上げ]
すごい、きれいだぁ……。
烏のにいさま、ありがとうっ。
[はしゃいだよな声上げ、ふわりと投げる。
くるりと回る、色追う紅緋は。
邪気なき光を映そうか]
そうかい。
ゆくもかえるも、皆次第ということかな。
[ゆるり首を傾いで紡ぐ言葉は独り言か]
他方の望みの叶うが、此方の望みだよ。
それ以外にはあるまいさ。
ゆくもかえるも?
[首を傾げる]
……?
あやめねえさまは、優しいんね?
[何か少しわからなく]
[だけれどそう言って]
[見えた館に*椎茸を思って口をへの字にした*]
〔皆で連れ立ちて館に辿り着きてみれば、
童子らの用意せし夕餉は女の言ふ通り。
苦手な茸に臙脂の子は苦い顔をせむか、
くすりくすり深紫の女は笑ふばかりなり。
けれども座敷に広がる取り取りの風船に、
すぐさま眼はきらきら光るやも知れず。〕
[しばし、楽しげに紙風船を空に舞わせるも。
何か思い出したかのよに、その手が止まる。
受け止めた紙風船、その色しばし、じい、と見つめ。
思いはどこか、遠くへ飛ぶか]
…………。
[唇が、小さく動いて、何かを紡ぐ。
声にならない、小さな名前]
[座敷へと、新たに来たりし人の気配に、は、と物思いから立ち返る。
鞠と風船、どちらも大事にかき抱き。
自分は済ませたから、と新たに来た者たちのため場所空ける。
仔うさぎそれ従うよに、小さく跳ねて、共に隅へと]
[戻ってきた者達に目を向けて]
ああ、おかえりなさい。
[常に変わらず笑みを浮かべる。あやめの上にただ少し、視線はゆると彷徨うか]
おや、好い物を貰うているね。
[濃色の子の、鞠と風船の抱くを見て、声をかけ]
どうかしたかな、紫苑の旦那。
[察しているは気づけども此方も敢えて常と同じ]
[あやめの声に、そちらを見、にこり、と嬉しげに笑んで見せ]
うん、烏のにいさまにいただいたの。
[答える声もまた、笑みと同じく嬉しげな響きを帯びるか]
[怪訝そうな顔に思わずくすりと笑い]
それはよく分かってるさ―
[そうしてひとしきり笑った後で]
ああ、昨日は言い忘れてたんだが―
[ふっと真剣な顔になり―]
―俺もここは初めてじゃないのさ。
[雅詠の顔を見つめる様子は、驚くというより不思議そうで]
それはまた、奇遇なことで…
ですが、旦那の名に心当たりはございませんが。
[その昔、里にいた子は己の他に、二人きり。一人は「れく」で、今一人は…雅詠では有り得ない]
はてなさてな、
やはり口の上手きおのこだね、
昨日と変わらぬと思うのだけれども。
[それだけ返して、眼差しは濃色へと]
そうかい、
取り取りの風船らは、
彼方が作ったものだったか。
これはまた、綺麗なものだ。
うん、ものすごくきれい。
こういうの、作れるのって、すごいと思うのだよ。
[あやめの言に答えつつ。
また、紙風船をふわりと投げて]
本当に奇遇だよな―
[またくつくつと笑い]
ああ、憶えてないのも無理は無い―あの時は名前も違ったしな。
[言って、人差し指を立て己が口元に持っていき―果たしてその仕草に見覚えはあろうか]
[風漣が席を譲ってくれれば、運ばれし膳の一つに座して。
変わらず酒精からは遠くを選ぼう。]
…おや、あやめ殿の言うた通りじゃな。
神通力でもお持ちじゃろか。
[膳の中身にそう呟いて、箸とり口へと運び出す。
烏と雅詠の言葉交わすを、見やりはせねど聞き耳立てる。]
坊も学べば、作れるだろうよ。
少々話は変わるけれど、
此方は昔は歌を知らねども、
好く教えて貰うたものだから。
[細まる紫黒は外の陽が眩しきゆえか]
[覚えのない様子に幾分落ち込みながらも指を下ろし]
少し思う所があってな、名を変えたんだ―最もその事も忘れてしまってたがな。
風漣も、作れる……?
[両手で紙風船をふわり、と受け止め、あやめの言葉にゆる、と首を傾げ]
教えてもらえば……唄と、同じよに?
[唄に準えられれば、理解は及ぶか。
紅緋はきょと、とひとつまばたく]
ううん、作れるのはすごいの!
[烏の言葉には、勢い込んでこう答え]
……風漣が喜ぶと、嬉しいの……?
[続いた言にまた、ゆる、と首を傾げる]
呑気も呑気、何せ自分の事すら忘れてた程だからな―
[笑みは自嘲に歪みしか―
昔の名を問われればただ笑って]
―それはもう知ってるだろう?
はてなさてな、
童子の言葉がわかるだけかも知れぬよ。
[えいかに笑みかけてはそんなことを]
濃色の子、風の坊。
誰だって、初めから作れた訳ではないだろうさ。
なんなら、当人に聞いてみるといい。
[他のものは食べられたけれど]
[椎茸だけは箸の先]
……うー
[いつしか見てくる仔うさぎに]
[ちろと目をやって]
…………食べん?
[白のねえさまに見られていても]
[気にせぬほどに、あげたいらしい]
[えいかの言に、手の中の紙風船をふと見つめ]
虹の七色……。
そうなら、よいな。
[小さく呟き、また、上へと投げて]
初めからは、できない……うん。
[それは、ここではないどこかで、誰かに言われた覚えもあるか。
再び手に戻りし色彩を見やりて、こくり、頷く]
一足早う聞いたのかな。
…そなたが言葉は謎掛けのようじゃ。
[あやめの笑みにはやや眉寄せて、返す声音は淡々と。
膳の中身はあらかた消えて、残るは稲荷寿司のみか。]
天狗の用意し膳なれば。
あまつきつねというだけに、稲荷を好んで決めたのやもな。
[ささめく童子らちらり見て、はくり大きく噛み付いた。]
[雅詠に沈黙を返されれば、ぽりと頭を掻いて見せる]
はてさて、では旦那は天狗ということになる。
[さらりと言って、肩を竦めた]
まあ、だとしても、驚きはしませんが。
[今の敵は、椎茸]
[箸の先で、弾力のあるそれが踊る]
[美味しそうに色のついた]
[好きな者には極上品だろうか]
……椎茸。
しいたけ。
…………
[食事を取る白のねえさまを見るのは]
[何を期待してだろうか]
[音彩の様子に、仔うさぎきょとりとしていようか。
それでも、手助けする気はないらしく]
てるてる坊主……あのこらの、宝物……。
[空の虹を思い浮かべつ。
ぽつり、呟く]
謎に思うならば、
解いてみてはいかがかな。
[控える童子らはくすくすと笑うばかり]
狐の好むが稲荷寿司とは、
なるほど、確かに言うたもの。
此方も嫌いではないけれどね。
[あやめに咎められ、慌てる様に、湯のみ傾け僅か笑む。
期待込めて見やれれば、ひょいと箸が伸びようか。]
[はくり、もぐもぐ。]
[まるで自分の膳から食らうたように、視線もやらず咀嚼した。]
[目が思わずきらきらと]
[白のねえさまの食べる様子に]
[とても嬉しそうで]
えいかねえさま大好きじゃぁっ!
[それでもそれは内緒ごと]
[ちかよって、にこっと笑う]
さて、我がそう思っただけなのじゃが。
うつくしきは似ておろう。
…おすそわけならば、少々色が足りぬも仕方なしじゃな。
[風漣へとそう呟きかえし、あやめの言葉に一つ頷いて。
きれいに全て食べ終えれば、童子ら膳を下げてゆく。]
〔臙脂の子と白の君との秘密ごとは知りけるか、
座敷に背を向けていてはそれは定かならず。
縁側に腰を下ろして足を宙に遊ばせて、
仰ぎし天には星は昇らず陽ぞありける。
庭の緑に混じるは風に揺れし梔子の布、
されど女の紫黒は未だそれを捉えはせず。〕
[膳の上の椎茸の行く末に、紅緋をひとつ、まばたかせ]
……好き嫌いをいうと、大きくなれぬと聞いたけれど。
[ぽつり、小さく呟いて。
側に戻りし小さき獣をそう、と撫ぜる]
色彩……確かに、虹の色には足りないね。
[えいかの言葉に、小さく笑めば。
紅緋は再び、紙風船へと]
[びくぅっ]
[大きくなれぬという言葉にか]
[それとも、悪いことを見られてしまったということか]
[ぢぃっと、うかがうように]
じゃ、じゃって。
どうしても駄目なんじゃっ……
[小兄を見る目は]
[少しうるんでもいようか]
[暫し待ってからすうと息を吸い語り始める]
―俺の故郷は山の麓の小さな農村でな、山が近いからかな、天狗を信仰していたんだ。
ただ―その村は神隠しから帰りし者を『天狗に忌まれた者』と呼んでな―
[暗くなるのはその時の事を思い出してか―]
[琥珀はすぐにおのこらから外されて、あやめへと移る。]
解けとは簡単に言うたものじゃ。
…答えあわせはなかろうに。
[童子らが笑いには、変なこと言うたかと怪訝な面になったろか。]
[伺うように見られ、紅緋はきょとりとひとつまばたく]
でも、好き嫌いを言っていては強くなれぬのだよ?
[そも、何故椎茸如きがだめなのか。
小首傾げる様は、そう、問うているよにも見えようか]
ふうれん、食べられるん……?
[ぢぃぃ]
[まるで椎茸は食べ物ではないというような]
強うなりたいと思うん
でも。
でも椎茸はいやじゃぁっ……!
[ねいろに好きと言われれば、琥珀きょとりと瞬いて。
にこり向けられる笑みに、肩を小さく竦めやる。]
ああ、そなたが言うは正しいな。
じゃが、美味しゅう食べてもらいたかろ。
食べられしものも作りしものも。
[風漣にはそう苦笑を返し、手の内の紙風船に目を細め。]
足りずともじゅうぶんにうつくしや。
食べれるよ?
好き嫌いは、大地のお恵みを無駄にしてしまうと、母様も、舞弥のにいさまもおっしゃるもの。
[さも当然、と言わんばかりにさらりと告げるか。
叫ぶよな様にはくすくすと、楽しげな笑みをこぼしてみせ]
いやいやよりは、望まれての方がよいのかな。
でも、好き嫌いはよくないの。
[えいかの苦笑には、真面目な様子でこう返し。
紙風船を見やっての言には、うん、と楽しげに*頷いてみせ*]
はてさて、どうだろうね。
もしかすると、あるかも知れぬよ。
左様に望むのであれば。
[えいかへと返す言の葉はどこか軽く]
それ程に嫌われては、椎茸も可哀想だ。
[庭に下り立ち座敷へと眼差し向ける]
[―ややして続きを語り始めた時にはまた何時もの様子に戻っていた]
――俺が音彩と同じかもう少し小さい時分の時もそうした者が居てな―一人っ子の俺にとっては兄の様な人だった。何時も村一番高い木の上まで連れて行ってくれてな、ここの事を語って聞かせてくれたんだ。それがまた楽しくてな―親の言う事も聞かずに度々遊びに行った物だ。
[楽しき事を思い出してか何所か夢見る様な目で―だが、それも長くは続かなかった―]
[やや俯けば、くせのある前髪がその面を陰に隠して。
す、と立ち上がれば童たちと離れ、縁側へと歩み出る。]
[されど話は気になるのか、座敷からそう遠くないところ
――ちょうどあやめの傍近くの梁へと背を預けやる。]
[琥珀揺れれば白い足に、緑の葉に、梔子の布に惑おうか。]
それが他の子供達の気に入らなかったのだろうな―ある日、俺が狙われてな―あの人が俺を庇ってそいつらをやっつけたんだが―
[知らず裾を握り締めた手が震えるは怒り故か悔しさ故か―]
―その所為でとうとう村に居られなくなってしまったんだ。
―俺は、あの人の一家が闇に紛れて逃げる様に去っていくのを見送る事さえ出来なかった――
[だが、真に辛いのはそれから後であった―]
―翌朝、村の近くの谷底であの人の親と弟が見つかったと聞いた―あの人だけが奇跡的に助かって、何所かの寺に預けられたとも―
う、うー。
[自分も食べねばならなかったろうかと]
[小兄の言葉にうなり声]
[だけれど既に膳はなく]
[あったとしても食べられなかろう]
……つぎはがんばるけ
[皆の口々の言葉に]
[それだけを口にして]
[がっと立ち上がる]
[長き沈黙の後、三度語りは続けられん]
―その少し後だったな、あのほしまつりの夜が来たのは――それから先の事は烏も良く知ってるだろう?あの時お前の様に戻る事を選ばなかった理由はこれだった訳だ―
[―ふっと笑みを浮かべて]
―烏のお陰で俺は立ち直れた―ありがとう、感謝している。
……否、
[あやめの声が耳に入れば、ふると頭を振って僅かに瞼を開ける。
が、面も眼差しも上げぬまま紡ぐは、先ほどの話の蒸し返し。]
…答えあるなら、考えるもよいかな。
たとえば、そこな色は…揺藍殿の忘れ物じゃろか。
…お話は解りましたが。
[礼を言われれば、尚不思議そうに雅詠を見返す]
俺のおかげ、とは、不思議なことを。
何もした覚えはありませんがね。
[ふるふると首を振り]
――短い間だったが共に居てくれた―それだけで十分俺は癒されたんだ―
[分からないだろうけどなと苦笑しつつ]
はてさて…共にあったは、まこと短き間…
礼を言われるは面映い。
ですが、そうですねえ。
「れく」が元気であったなら、それは俺にも嬉しいことではありますよ。
[静かに言うも、瞳はどこか和もうか]
[話が終わる気配を感じれば、袖の下で小さく息を吐いて。
ゆるり琥珀を上げようか。]
…ああ、目立つ色ゆえにそうかとな。
[ゆらり琥珀揺らし、ぽつり言葉落ちる。]
ゆかれたは…何故じゃろうか。
恐らく帰るよりは…よいのじゃろうがの。
[取ったその布を]
[ぱたぱたぱた]
[幾度かはたいて]
取ったんじゃけど
ゆらにいさま、どこじゃろ?
[こてんと首かしげ]
[二人のねえさまの場所へ]
ゆかれたよ、彼の地にね。
[音彩へと投げる言の葉は短くて]
人の地にて叶わぬ望みも、
人の理なき処なれば叶うかと。
――かなしき雨の止めば好いと思う。
[ねいろの問いに、答えてよいものか迷う。
姿消えて思い出したは、ひとたび呼ばれし時の天狗の選別。
ゆえに、童子らのささめきに、ゆかれたと思うたのだけれど。]
さてな、知るは天狗ばかりなり。
…すべては天狗の掌の上じゃ。
[神巫の告げしは狭間なれど、場所知らぬなら知らぬと同じ。]
天狗さましか、そこのこと知らんの?
[白のねえさまの言葉に]
[目をぱちくりとさせて]
なんもこわいこともあらへんのなら、
とてもよい場所なんね
〔伏せし紫黒の眼をゆるりと開きて、
風に揺れるは藍墨茶の衣の袖ばかり。
白き夜の下にて咲きし、
闇を溶かせしやうな花。
人の形成れども異なるものと映ろうか、
静謐の空間に小さき鈴の音ぞ鳴り響く。〕
[言葉なくしたまま、闇色の花に目を奪われて。
身動きならず、ただみつめ。
小さき鈴の音鳴れば、ようよう金縛り解けようか。]
…そなた、
[ひゅと喉が鳴る。
かつて見た天狗は、どのよな気配であっただろう。]
ひとたび返され
ふたたび呼ばれ
…みたび呼ばれることはあろうか。
なにゆえに還せしか――
なにゆえに呼びしか――
何方へのこたえも同じ、望みしがゆえに。
ゆくもかえるも、望み次第。
貴方が望みのままに、此方はありましょう。
[零れし言の葉は個としてか天狗としてか]
[あやめの言葉に、ひととき目を閉じて、えいかの顔を見遣る]
天狗の里に迷う者は…やはり現世に留まりきらぬものなのでしょうかねえ。
[その視線は、幼き者たちにも、彷徨って]
おらぁ、ここ、迷うてきたん?
[困ったような言葉になって]
迷うてきたんかなぁ……
ここにこれて、おらぁ、うれしかよ
皆にあえてうれしかよ
[大兄の言葉に、首をかしげて]
あやめねえさまは、やっぱりやさしい思うんよ
そうだなねいろ。
[子供の言葉に微笑んで]
天狗は優しい。あやめ嬢もな。
天狗の里も優しかろうよ。
ならば、行くかい?
もとの場所には戻れずとも。
[それは、ねいろに尋ねたものか、それとも己の心にか]
ひとたび返されたも、
ふたたび呼ばれたも…我が望んだがゆえと。
[返るはあやめの言葉か、天狗の答え合わせか。
紫黒を見つめれば、ぽつぽつと心に浮かびしかねてよりの想いが溢れて零るる。]
なれば…我はかえるはおそろしや…。
かつては帰り待つものあれど、今は誰そ待つもなし。
ひとりはかなし…
ここでいかねば――我はとわによばわれよう…
[思い起こすは天狗の唄。
久しく忘れていた、とうの歌詞。]
迷うか否かは、
さて、わかりはせぬけれど。
呼ばわりし音にこたえしは、
皆、それぞれに理由あってのこと。
やさしいと思うならば、
やさしいと貴方の心が感じるからでしょうよ。
此方が真にそうであるかは、縁のなきこと。
……からすにいさま、いくん?
[小さく首をかしげて]
おらぁ、もどっても、うとまれるだけよ
やさしいんなら、いきたいと思うんよ
……からすにいさまが一緒じゃったら、こわぁないかなぁ
[それから思うよに]
天狗さまはおつよいから、したらおらん夢も、見ぃへんようになるかなぁ
[そっと、ねいろの傍に寄り、小さな頭を撫でて笑う]
ゆくかもどるかは、ねいろ坊次第。けど、坊は、ふう坊と離れてしまってもいいのかい?
そっかぁ。
迷うたわけではないかもしれんのね。
理由あったら、ここさくるんか
じゃけん、おらぁ、優しうなんてなかよ
あやめねえさまがお優しいんじゃよ
…………?
あやめねえさまが天狗さま?
[子供はようやくそこに思い至ったようで]
[眼差し受けて、潤む琥珀は烏を見やる。]
…さてな。
我はひとたび呼ばれし時は、帰りたいと願うたが。
されどふたたび呼ばれたは…天狗の見立てが正しきかな。
[切り下げ髪の童であった時を、思いて哀しげに笑む。]
おら、次第?
[それから離れるとの言葉に]
[小兄を見て]
[もう一度、大兄へと視線を戻して]
……からすにいさまとも離れとうないよ?
ふうれんともじゃけど。
えいかねえさまとも、あやめねえさまとも。
三つ目の問い――
[答えられぬと言われるも、すぐには思い当たらずに。]
ここでなくば、答えられるであろうか…
[問いかけるでもなく、呟くように。]
改めて、御挨拶を――
己等(おいら)は妖女と名の授けられしもの。
人の理にてはあまきつねとも呼ばれよう。
ゆくにしても、
かえるにしても、
己等(おんら)次第。
己等(おのら)は何れにしても、望みを叶えよう。
[――くすり、笑みを零せばいつものように]
今更ではあるけれどもね。
みえぬ心を見たきがゆえに、謀るようになって申し訳ない。
[雅詠の眼差し感じれば、潤み湛えた琥珀を向け。]
…なあに、たいしたことでない。
二度あることは三度というなれば、手間かけるはよくなかろうというだけじゃ…。
[抑揚なく淡々と。
されど哀しき笑みのまま。どこか漂泊するように。]
[むぅと、俯いて]
じゃって一緒にいたいん……
[だけれど]
[ちいねえさまがたがお別れになったときを思い出して]
[思い出してしまって]
[口をつぐむ]
[ねいろの言葉聞けば、屈みて瞳見つめ]
…望むであれば、また来られよう。
そなた、会いたき人はおらぬのか…?
[いるであれば、もう会えぬは寂しかろうと。]
あいたいひと?
[えいかの言葉に、首を傾げる]
[かかさまもおらず]
[本当のおやもおらず]
[ちいねえさまがたにとっては]
[平穏をこわしたもので]
[だけれど考えた顔にすべては消えて]
[やがてにこりと笑う]
[だけ]
[あやめの名乗りに目を向けて、小さく笑いを零してみせる]
天狗の謀りは、以前もあった。存ぜぬ振りはこちらも同じさ。
坊らは、もとより気にしますまい。
謝る事などなかろうよ。
〔巾着袋より取り出せしは小さき金の鈴、
鳴り渡るは白銀の其れよりも軽き音色。
……りぃん、……りぃん。
森の声も川のせせらぎも風のそよぎも、
澄みたる音は全てを包み込むやうに響く。〕
とは言えども、
この名は気に入ってはおらぬのだが。
さてはて、刻限にはまだ幾許かあるゆえに、
今すぐに決めろとは申さぬよ。
ただ、後に悔やまぬ選択を――
[りぃん]
[りぃぃん]
[鈴の音に]
[考えるように目を閉じて]
[何一つあらぬうつしよと]
[望むがままの天狗の里と]
[どちらが良いかはわかっていても]
[よきものを選べば はできない]
そこな烏殿の言う通りじゃ。
かつての選別とはやれ異なりしが、我は気にしてはおらぬ。
迷い惑いて…己が心知ること出来たゆえの。
[そう小さく呟いて。
薄き笑みを静かに見返すのみ。]
やれやれ、
食えぬはいったい、何方かな。
[烏へと顔を向ければ唇の端を釣り上げる]
天狗の事をあまきつねとも言うのだよ、坊。
人にて人ならず、
獣にて獣ならず、
鳥にて鳥ならず。
左様に面妖な生き物とでも言おうかな。
―三度目があると限らぬがな。いや、俺が聞いた事がないと言うのが正確か―
[えいかの言葉にそう返し―妖女に習い居住まいを直す]
では、俺も改めて名乗ろう―
雅詠は天狗としての名―
人で在った時の名を烈琥と言う。
こちらから強制はせぬ―よくよく考えて選ぶ様頼む。
てんぐさまがおきつねさま?
[闇のねえさまの言葉に]
[きょとん]
[首をかしげて]
がえいにいさまも、天狗さま? おきつねさま?
いっぱい名前があるんねぇ
[そうして深々と頭を下げ―]
皆、黙っていて済まなかった。
それと―
[烏の方に体を向け]
烏にはまたも救われる事になったな。己を見失っていた俺を真に導いてくれた事、感謝する。
[そうしてまた頭を下げる]
[選ぶ道は]
[なかなか選べず]
[それは]
[己が ねばならぬと思っているからか]
[それとも]
[夢のおそろしさを思うか]
[人と違うものをおそれるのだから]
[天狗に囲われてはおそろしかろうか]
[雅詠の名乗りを聞けば、琥珀は再び見開かれよう。]
やれ、そなたもか…他にもおらなんだや?
[見回すも、それと思えるものはなく。
小さく肩を竦めよう。]
[とうに心決めたがゆえか、面も少し和らいで。
童子ら運びし清水の碗で、喉潤して静かに時を待つ。]
[末期の水のようじゃとは、ふと心に過ぎったか。]
[*リーン…リーン…鈴が鳴る*]
[黒のねえさまのわらいがお]
[つられるようににこりと笑う]
あやめねえさまはあやめねえさま。
それはとっても簡単じゃね!
名前いっぱいでも、
あやめねえさまはひとり、ってことかのぅ?
みんな、代わりなどおらんものね
みんなみんな、ひとりじゃぁ。
じゃけぇ……大事なんじゃねぇ
[ふわり]
[笑みは一つこぼれて何を思うのか]
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