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……人から生じたものだから、人の手で還せ、と。
そういう事なのかも知れないです、ね。
[どこか、苦笑めいた面持ちで言いつつ。
アズマの手の動きが止まった事に、気づいて。
そのまま、物問いたげな視線を向ける。
『わかって』いた? と。込められているのは、そんな疑問]
………あ。
[仔犬を抱き締めようとして、
緩く手で持っていたビニール袋が、
かさりと地に落ちる。]
スケさん?
[友人を、いつものあだなで呼ぶ。
あの日以来、会っていない人物だった。
フユの口から、その名は聞いていたけれど。
以前と、同じように見えて、
どこかが、違うような気がした]
[なおもサヤカに襲い掛かろうというヨウコに目を細め狙いをつけると弓を引き絞り、放……とうとし]
!?
[フユの声に僅かに標準はズレ、矢は桜の木に突き刺さる
声の聞こえたほうに目をやり、]
…………フユ先輩。何で止めるんです?
[冷たい目でフユを見やる]
[注がれる視線に気付いているのか、小さく溜息を零して。
止めていた掌を、ぐ、と握る。
と、ヒサタカから再び投げられる問いに、
手元へ落としていた視線を、ちらりとマコトへ、
そして、そのままゆるりとヒサタカへと向けて。]
ん。
…そういえば、久しぶりかな。
[実際に顔を合わせるのは、と呟いて。
ビニール袋を拾い上げようと屈みながら、]
……何してんの?んなとこで。
それに…犬?
[抱えられた仔犬を見て、首を傾げた。洋亮は未だその存在を知らない。]
[すたりと着地しながら足元の小石をひとつ手の中に握り締め、ヨウコもそれにあわせて追いかけてくる。]
『嗚呼畜生……人間同士なら、こんな優等生になんて負ける気はしないのに。と言うか眼鏡かけられてちゃアレ使えないじゃない、ったく。』
[彼女らしくない言葉で心の中で毒づきながら、それでも頭の中は妙な冷静さも確かに存在していた。一対一では不利なのは明白。それでも、時間を稼げば、誰かが気づく。気づけば、彼女がそれだとはっきりわかる、と。]
私は、私のままで外に出たいの。
私じゃなきゃ意味がないの。
――化け物なんかと一緒になって出たいなんて思うもんですかっ!!!
[跳躍、そして相変わらず伸ばされた手。嫌悪感を露に叫びながら、更に横へと転がる。]
[その時、風を切る音が聞こえた気がした。]
[投げられた問いに、言葉が詰まる。
『知って』はいる。けれど。
それを口にする事には、微かなためらい]
……人に、憑く前の憑魔であれば……例えば、俺なら。
風の力を借りて、切り払う事もできます、けど。
[それでも、言わないわけにはいかないと。
……逃げないと、決めたからには]
人に、憑いた憑魔を浄化するには……その、拠り代……つまり、心臓を。
司の中に……取り込んで。
残った器は……自然に、還す……。
[それしかないんですよね、と。
呟く声は、小さく、低く]
………そうか。
[ある程度予想していたとはいえ、その言葉の意味するところには、さすがに眉を曇らせて、ため息をつく]
因果なこと、だな……すまなかった。
[言いたくないことを言わせた自覚もあり、静かに一礼する]
ばけもの。
…ひどい。
[傷ついたように顔を歪ませて。
直後、桜の樹に突き立つ矢。
一瞬そちらを振り返り、泣きそうな顔になる]
わたしだってわたしのままでいたかったのに。
たくさんがまんしてきたのに!
[キッと睨む]
わたしもそとにでたいもの。
みとめてほしいもの!!
[それは誰に対する言葉なのか。
横へと逃げるその退路を断とうとスピードを上げて迫る]
[一礼されれば、いいえ、と小さく言いつつ首を横に振り]
……あらかじめ、いっとかないと。
恐らく、そうなった時に、余計に混乱、します、から。
[それでも、返す言葉は、途切れがちになるか]
[フユの言葉に目を白黒させ]
……何、言ってるんです? 私が狙っていたのはヨウコで……!?
[さらにサヤカに襲い掛かろうとするヨウコを目にすると、再び矢を向ける]
たべて、つよくなって。
そうすればみとめてくれるんだもん!
[認めて欲しいのは。
今は遠き地にいる両親か。
それとも音色と呼んだ存在にか。
もう自分でも分からない]
……あ……そう、ですね。
[夕飯、と言われて。完全に忘れていたその存在を思い出す。
それからふと、窓の方を見やり。
……微かに、違和感めいたものを外から感じて一つ、瞬く]
[マコトの返答に、すぃ、と向けていた視線を逸らした。
意識はそちらへと向けたまま、再び手元へと視線を落とす。
──認識は、している。
ただ、余りにも実感が沸かないだけで。
緩く瞬いて、小さく溜息を零す。
ふと。 ピリとした感覚が、走った。
昼間にも感じた、あの]
……、外?
[感覚の辿る先に、ぽつりと]
[視界の端、幹に刺さった矢が目に入る。あぁ、誰かが気づいている。なら更に時間を稼げれば誰かが助けにくるはずと信じ、心を奮い立たせる。]
貴女が何を我慢してたかなんて、私の知ったことじゃないわよ。
そもそも、誰だって我慢なんてしてる。
貴女だけじゃない。
[せせら笑うかのように。]
――化け物に化け物といって何が悪いの。
人を食おうとする、それが化け物じゃなくてなんだって言うの。
[言いながら体勢を整え、すぐさま手の中の小石をヨウコの顔めがけて投げつけた。]
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