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[…暗くなり始めた窓の外を見ながら、少女はベッドに腰を下ろしていた。
何かがあったわけではない。
昨日は久しい友人との歓談も弾み、料理も非の打ちようがなかった。
だから、気分的には優れていてもおかしくはない…のだが]
…んー…
[何故だろう。嫌な予感がする。
そう、漠然とした何かしか感じない。
忘れ物をしただろうか。最初はそう思ったのだが…鞄の中を確かめてみても。
祖母の暮らす街での用事を思い返してみても。
引っかかることは一つもなかった]
…あーん、もうっ。
[ぽふっ、と、ベッドの上に大の字で寝っ転がる。
天井をぼんやり見つめ、なんとか気を紛らわそうとしていた]
[こちらに気付き、慌てふためく青年にくすりと笑うと]
いえ、まだもう暫く時間のほうはございます
ただ、アーベル様の口ずさむ曲にわたくしが惹かれてきただけでございますから
もしかして、昨日こちらでピアノを弾かれていたのは……
[…しかし、言いようのない、やり場のない軽い鬱憤は少女の中から出ていこうとはしなかった。
口をとがらせ、ゆっくりと起きあがると手串で髪の毛を梳かす]
…別に、何か、悪い事が有るわけじゃないのに。
そうそ、今日はオルゴールを見せて貰えるんだから…
[身だしなみを整えると、ちょうど良い時間だろうか、と廊下へと出た。
…少女の中の嫌な予感は部屋に置いていくことは出来なかったのだが]
[一通り歌い終えて、ふう、と一つ息を吐く]
……かわらないここから、飛び立とう……か。
それで飛び立った挙句。
何をしてるんだか……俺は。
[呟きには、どことなく自嘲的な響きが込められて。
その呟きに不安げな声を上げるカーバンクルを、ふわり、と撫でる]
[そしてあとは売り言葉に買い言葉。
ならやってみろ。
おう。――だ。
嫌がらせのように高名な細工師が作った。上等な。
普通ならとてもできないようなものを作れ。と資料を渡すとともにいわれる。
だが、...の言っていたことは負け惜しみでも生意気言葉でもないことが、すぐ後にわかったことだろう。
所詮レプリカはレプリカ。ではあったが、見る目のないものならばあっさり騙されるであろう。出来栄えはかなり高かった。
それをみて、悔しさなのか教師は顔を赤黒くしていたが、そんなことは関係なかった。
...はむきになって作ったまではよかったが、それはただ作ったというだけで。外観があるだけの無であった。
見ていて気持ちが悪い。そして自分で作ったと思うと尚気分が悪い。
…結局...は翌日に家に帰ることを決めたのであった]
――客室→一階・ホール――
[身支度を終えて、さて、と思いつつ。
このまま部屋に居るよりは、と、階下へと向かって。
ホールへと顔を出すも未だそこに人は揃わぬようで]
おや、まだ早かったようですな。
[そう近くに居た召使いに声を掛け、今暫く、との返事を得れば頷いて]
では、ここで待たせてもらってもよろしいか?
[その問いに肯定の意が帰ればソファへと腰掛けて。
運ばれてきた茶に一つ礼を言いながら、人が揃うまではと静かに持ち込んだ本に目を落とす]
……さて。
いつまでもここにいても、仕方ない。
お楽しみはお楽しみ、しっかりと拝んでおかないと、な。
[呟きつつ、ホールへと足を向ける]
─…→ホール─
[時間はある、との侍女の言葉に小さく安堵の息を吐いて。
しかし、続く言葉を聞けば一瞬目を見開き、
次の瞬間には口許に手を当て、居心地が悪そうに視線を逸らす。
その態度が、肯定していると同意になるのだがそれに気付く様子も無く]
……何処まで、知られてるんだろ。
[知られたのは昨日の2人のみだと思っていたらしい、
如何言葉を返せば良いのか、思案するように。]
……もしかして歌、好きなんだ?
昨日も歌聞いてたよね。
[楽譜を戻しながら、苦笑交じりに問いを投げ]
あぁ、確か。
今日は、食事会、だったかしら?
[瞬くその内は普段と変わらず]
服、変えないといけないわね。
さすがにこのままでは、汚れているもの。
[鞄を開ける。
ほとんどが画材であるものの、そこには黒のカクテルドレス。
ブラウスの釦に指をかける。
そのときに手の汚れに気づいて、それを*洗うことだろう*]
[あれは本当に気分が悪かった。と。深く息を吐く。]
まーだ。俺も気にしているんだな
[改めて思う。
でも、そのおかげで、自分がどうしたいか決まった。
この気分の悪さが存在する限り、どうしたいか迷うこともないだろう。
そう思うと忘れてはならないことなのかもしれない。
ただ、帰った後、父に怒られるかと思ったら、遅かったな。もっと早く戻ってくるかと思った。という。
あのときの事だけは忘れたい。
漠然とやってきた自分に。本当はどうしたいか。それに気づかせるためにわざとあそこに放り込んだのだな。
という。あっさり父の真意がわかってしまったことと、その思惑にあっさり嵌ってしまったということ。
今でもあれは恥ずかしい]
[今度こそは迷わない。
三回も行けば…流石の少女も足取りは軽い]
…それにしても広いよね…
[…あまり屋敷の中を歩き回らないのは、迷ってしまうから…だったのだが。
しかし、この中を歩いていればまた気分も変わったのかな、と思うと少し惜しい]
…折角だから、見て回れば良かったかな…
[お食事会とお披露目が終わると、普通はみんな帰るんだろうな、と、心の中でぼやきつつ、その足は階段を降りきっていた]
いずれ思い出してもあっさりと済ませれる日がくるのかね。
[なんて独り言をもらしつつ、窓を見て、ぎょっとする。暗い。
お披露目というのに行かなければな。と気持ちを切り替えてとりあえず着替える。
服装はやはり同じようなもの。お披露目があるのは覚えているが、着飾るという思考まではもっていなかったようだ]
さーて、オルゴールとやらは、俺にどんなことを抱かせてくれるか
[こめられた想いはどのようなものか。
せめて期待はずれでいないでくれよ。と。挑戦的な笑みを浮かべながら
ホールへと向かった]
─ホール─
[たどり着いたホールには、まだ人はさほど集まってはいなかった]
ちょっと早かった……かな?
ま、遅れるよりはマシか。
[それから、小さくこんな呟きをもらし]
[視線を逸らす仕草に、再びくすくすと微笑むと]
昨日は偶然通りがかりに耳に入りまして
本日の準備がまだ終わっておりませんでしたので、その場は立ち去らせていただいたのですが、そのあとにもう一度通りがかった際にエーリッヒ様とザムエル様が出てこられて、お伺いするとお二人とも違う、と
ああ、アーベル様でしたか
歌……ですか?
……そうですね。歌うのも聞くのも好き、ですね
あまり上手くはないですが
[そう言い、はにかみながら微笑]
─3階・主私室─
[ゆっくりと、読んでいた本を閉じて、机の上に置く。
読んでいたのは、伝承の記された書物。それには、シンプルなデザインの栞が一枚挟まれている]
……ふむ。
そろそろ、時間か。
これ以上、皆を待たせては申し訳ないからの。
[予想以上に手間取ってしまったわ、とぼやくように呟きつつ、主はゆっくりと私室を後にする。
机の上には、二冊の本。
一冊は、先ほどまで読んでいた伝承の書物。
もう一冊は、主の日記。
日記には、オルゴールを偶然手に入れてからの事が記されているが、それを知るのは書いた当人のみ。
……その中には、彼の亡き妻が、一度でいいからオルゴールの音を聴いてみたいと。
そう言って彼を困らせた時の思い出なども記されているだろうか]
[ホールへと向かうために、階段へ向かい、そして降りようとすると。
何かひょこひょこと。ちびっこい…じゃなくてブリジットが階段の降りたところが見える。
それに、まだ大きくなっていないかーと。そんな当たり前のことをぼけーっと思いつつ、向かう場所は同じだろうからいいや。と、特に声もかけずに、移動する]
[…ホールへと向かう少女は、部屋から引きずっていた感覚が気になっていた。
やはり、というよりも、その感覚が強くなっていく気がしてならない]
…あたしの嫌いな野菜とか出るのかしら。
[…ぼそ、と小さく呟く。
どうやら、後ろにいるユリアンには気付いていないようで、んー、と唸ったり、小さく息をついたり…せわしなく見えるかも知れない。
やがて、その手はホールへと続く扉に手をかける]
…こんばんはっ。
遅刻じゃないみたい…ね。
[微笑んで挨拶を行うと、昨晩の食事の時に座っていた席へと]
……そう人に聞かせられるほどの腕前でも無いけどね。
[弾くのは好きだから、と小さく息を吐きながらも笑みを浮べ。
楽譜を元の位置へ一冊ずつ戻しながら、続く言葉に僅か視線を向ける。]
―――へぇ、歌うのも好きなんだ?
[最後の一冊を本棚へ収めれば、そちらへと身体を向ける。
折角なら聞いてみたいけど、とへらり笑みを向けて。]
[会釈するザムエルに、礼を返して]
ああ、どうもこんばんは。
……なんだか、やる事もなくてヒマだったもので。
でもまあ、遅刻して御大に小言言われるよりは、マシですからね。
[くすり、と冗談めかした様子で微笑みながらこう返す。
その間にも、ホールには人が集まってくるだろうか。
華やかな銀と深紅の装いや、それとは対照的な黒のドレスの女性たち。
それ以外の面々も、少しずつ集まってきて]
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