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――ニキータ、は……ちがう、のに……
[うめくように、呟く。
もっとちゃんと、言っておけば。
――そうすれば、なにか違ったのだろうかと。
イヴァンへと視線を向け。
ふるりと首を振った時に、ベルナルトの視線を感じて瞳を向けた]
……――わかっていても、意味なかった、わね……
[口元に、皮肉な笑みが浮かぶ]
―広間―
怪我だ、馬鹿。
[頭が、なんていうのに、一言で返す。
見上げてくるアリョールの視線を、しっかりと合わせて]
――手を出せ。手当てする。
使えなくなったら、本を読むのにも障る。
[イヴァンにかける言葉も今はなかった。
ニキータに対しての感情は、何を言ってもかわるものはないのだろうから。
深入りしないほうが良い。
そうでなければ、
誰も殺せなくなってしまう]
[ これで良かったのだと自分を納得させるしかなかった。]
フィグネリア、
大丈夫かい。
[ イヴァンとニキータから離れ、この場では一番不安がそうに見える彼女に話しかけながら、膝をつき目線を合わせ肩に手を置く。]
[ニキータからは、「人狼」のような匂いはしなかった。
それが全員に匂うわけでないのは、母の言葉から何となくわかっていて。
それからタチアナを見る。
最初にニキータを人狼でないといったのは彼女だった。イヴァンの言葉もあったけれど。
タチアナに聞くかどうか迷って、やっぱり口にする]
タチアナさんは、ニキータさんを人狼じゃないと言っていたけど……ただ近しいからの信用というわけじゃないのなら、他に、そう思う方はいらっしゃいますか?
[意味がない、と言う言葉が聞こえて少し俯いた]
―広間―
馬鹿、とは、失礼な。
[向けた視線にも、言葉にも棘は無い。
すう、と、深く呼吸をするも肺に入るのは血の薫りばかり]
すまないが、頼めると有難い。
――…気にするのは、そこなのか。
[らしい、とは思いつつも、指摘せずにはいられなかった。
ふっと一度、顔を伏せて、唇の血を舐めとる。
その時の表情は、きっと誰にも見えない。
それから、手当てを頼むためアレクセイに素直に右腕を差し出した]
ヴィクトールさん……。私は、大丈夫です。
驚きはしたけど、……それだけで。
[肩に置かれる手に小さく首を振って]
タチアナさんが言ったように、私もニキータさんが人狼ではない、と思うから。もっと早くに確信が持てれば、止められたかも知れないのに。
……。
[死んだ後でわかったところで、何になるというのか。
頭を振った拍子に落ちた髪が俯いた顔を隠す]
[微かに零れる、熱混じりの聲]
アレクセイは、狙わない。
――…本当に惜しいけれど。
[少なくとも、ヴィレムが居る間には、と。
その点については聲に乗せない]
……、
僕は確信が持てなかった。
イヴァンの言葉に説得力はあったけれど。
僕の方が君より村に居て長いのに。
本当は誰も疑いたくないのに。
……、
君の方が、聡いみたいだね。
[ 村の人間を知っている分、疑いを向けきれないのもあった。]
[ イヴァンを選んだのは理由がなかった訳ではない。
強く飢えを感じる相手として三名がいた。
アレクセイ
タチアナ
そして、イヴァン。
このうち、アレクセイと、そしてタチアナもまた殺したくないという気持ちがあったために、イヴァンが選ばれた。]
言われたくないなら、阿呆な事を言うな。
――せっかくの客をそんな事で失うのは惜しい。
[軽口めいた言葉。
差し出された右手を見て、ここに来た時、使った救急箱の方へと視線をやった。
アリョールの動作は見ていたけれど、それを気にする事はなく]
少し待ってろ。
消毒する。
[そう言って、救急箱を取りにいく。
持ってくると、その場で消毒し、それから包帯を巻きつける。
痛いだの言われても手加減なんてするつもりはなく。
ただ治療を終える時、小さく、彼女にだけ囁いた**]
お前に背負わせた、ごめん。
もしアレクセイを狙えば、
君の命もないものと思ってほしい。
[ 暗に告発すると聲に含ませる。]
イヴァンを選んだが、
襲うのはどうするんだ。
[ 昨晩のマグダラの襲撃の様子は見たが。
襲う相手を選んだだけで終わるとは流石に楽観していない。]
―広間―
馬鹿の次は、阿呆か。
なんだか散々な言われ様だな。
[手当てを受ける頃になり、漸く周囲を見回せる余裕が生まれる。
幾つか漏れ聞こえてくる話の断片を聞きつつも、口を挟めるまでの余裕はまだ無い。
ただ、垣間見えるタチアナの表情と声音に少しの後悔を覚えるだけだ]
――…。
[抗議の声ひとつ上げず、無言でアレクセイを見遣る。
一つだけ、彼には聞いてみたい事があった。
けれど、それを口にする前に小さな囁きが聞こえてしまって。
少しだけ胸が苦しくなり、聞く機会を逃してしまった。
代わりにぽつりと零すのは]
君が、謝る必要など、無いんだ。
[聞こえるかどうか定かでないほどに本当に本当に小さな声]
……その通り、だね。
それでも人狼ではないと確信出来る相手はいるよ。
アレクセイだ。
彼は僕を昨晩ずっと看病してくれていた。
彼が狼なら僕を襲えた筈だ。
[ ヴィクトールは、
フィグネリアの額にかかった金糸を指で寄せた。]
君も狼でなければ良いと思ってる。
[ 眸の奥を見る。]
アレクセイさんを信用しているのは、付き合いが長いから?
……人狼であることに意識が薄いのなら、見知った相手を、仲がいい相手を襲いたくはない気がする……から。
――ごめんなさい。アレクセイさんを疑っているわけではないのだけど。
[髪に触れる指にヴィクトールの方を見て。
こちらを見てくる視線に向けるのは翡翠色]
私は、人狼じゃ、ない。違うわ。
[言葉で否定したところで、何になるというのか。それから目を一度伏せて]
それで構わないとは言っただろう?
それに――…、命と引換にでも口にするのはタチアナと決めている。
[静かに笑う響き。
"彼女"はあんなにも切ない表情をしているというのに]
イヴァンは、あの様子だ。
そんなに難しいことでもないだろう。
[下手をすれば、一晩中でも地下室に居るのではないだろうかとそう推察して]
[痛みが強いのか、苦しそうな、或いは切なそうにも取れる表情。
眼差しを伏せて、しばし広間に居る。
今度は、地下室に遺体を運ぶ役目は出来ない。
話しかけられれば応じもするだろうが、体力が戻るまで2階に戻ることは*ないだろう*]
君が死ぬことがあるなら、
タチアナを襲ってからであれば良いな。
[ 口喧嘩にしては下手な言葉で。
もしマグダラが死ぬことがあるなら、
タチアナも共に死んでいる状況なのかもしれないと振る。
そんな状況が可能であるかは分からない。]
僕の場合は御免被るが。
……、
僕一人でやれと。
[ 質問とも確認とも取れぬ聲。]
[受け止める手に掛かる力が酷く重く感じられたのは、
タチアナが気絶していた所為であり、自身の腕が細い所為。
目を逸らさずに胸元を確かめれば、きちんと上下して見えて、
眠っているだけだとは察したから、安堵の息を吐く。]
………僕は彼女を、部屋で休ませてくる。
[それでもベルナルトの顔色は優れない。
それでも、己一人でも、彼女を抱き上げて階上へと向かう。
記憶を頼りにタチアナの部屋までなんとか辿り着いて、
ベッドにその身を横たえた。]
そうだね。
アレクセイとは家族包みの付き合いをしてきたんだ。
小さい頃から、まるで本当の兄弟みたいに。
彼の両親にもとてもお世話になった。
[ 束の間、遠くを見る眼差しになった。]
ごめん。
僕のも勘でしかないんだ。
でも、確信出来る勘だ。
[ 翡翠色の眸に烏羽色の眸が微笑んだ。]
こちらを見て。
僕の眸を。
[ 一度伏せたきり上がらない視線に、
フィグネリアに声をかける。]
兄弟……。そう。だからあんなに気安く見えるのね。
私そういった人がいたことないから、良くわからないの。
[ヴィクトールの視線が遠くを見る。
微笑みに、応える笑みは微かに。
それから伏せた眼は、ヴィクトールの声に再び開いて彼の眼を見た]
そうだな。
そうでなければ、俺は死んでも死にきれない。
[御免被る。
その言葉に、憐れむように呟く]
――…耐えるのは、かなり難しいと思うがな。
この香がある限り。
[反論が返るだろう事は予想しつつも口に出さざるを得なかった]
ふむ。
逆に聞くが、怪我人にやらせる気なのか?
まぁ、手伝いはするし、喰らいもする気ではある。
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