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[声を掛けられれば、はっとした様子で顔を上げ]
何でもありませんわ、神父様…。
…アーヴァインさんは無事…神の元へ辿り着けるのでしょうか…
[唇に乗せた言葉は、目の前の彼が無事天国へとたどり着けたかという心配――]
−客室−
[”あれから”どうやって部屋に戻ったのかも定かではなく。
ただ、恐怖に満たされて、しっかと掛けられた内鍵を睨むように布団に包まっていたけれど。
空腹のまま長い時間放置された胃が、きりきりと痛みを訴えて。
飢え死にするよりは――と。怯えながらも、部屋を出る。]
うん、そうですね。
……お腹も空いたし。
[ほとんど何も食べずにいたのだから、ある意味では当たり前といえる呟きをもらし。
鍵盤に蓋をしてから、自分も音楽室を出て、広間へと向かう]
─音楽室→廊下─
ああ、済みませんが御願いします。
……矢張り、着慣れた服の方が動き易くて。
[ 軽く頭を下げて少女を見送り、次いだ言葉には解りましたと声を返す。ふと何かに気付いたかの如く緩やかに瞬き視線を巡らせるも、直ぐに首を振った。]
ひどいこと?
[言われた言葉が少しわからなくて。
それから、理解できたとき、なんだかとても――
あぁ、わたしの仕事をもう知っているはずなのに、彼は気を使ってくれているのか、と
嬉しい、のか、なんだか少し、恥ずかしくて。]
もし、あなたがそうしても。
わたしは、それをひどいこととは思わないわ。
あなたなら。
[それはいつもの睦言でもあり――だけど他の誰に対したときより]
―回想・釣り橋前―
[青い空を揺らめかせる赤い線。
炎は揺らめきながら、彼女の視界を埋め尽くし、緩やかに谷底へと消えた。
煙のせいだろうか走ったせいだろうか。喉が痛い。]
[返ってきた言葉には、安堵のため息――]
そう解れば…安心します。
[少女は既に神の存在を信じては居なかったが、アーヴァインの事を思うとおのずと縋りたくなるのは、彼女の血筋の所為だろうか――]
それでは神父様…そろそろ広間に戻りませんか?
この場所は…あまりにも――
[「悲しすぎる――」
最後の句は告げずに…。少女はルーサーの手を再び握った。]
―使用人の部屋―
失礼致します。
[部屋の主はもういないけれど、一応そう告げて部屋へと入る。彼女よりずっと家事に手慣れていた女性が居なくなってからというもの、当然ながら仕事は格段に増えた。それでも彼女にとっては橋を見た時に告げた感謝の気持ちのままで、恨む気持ちなどは起こらなかった。
火の消えた暖炉の傍に目的のものを見つけると、手袋を外して確かめる。粗方乾いているのを確認してそれを手に取り、頭を下げてそこを出た]
―…→廊下―
ええ、戻りましょうか。
……そうだ。
食後にチェスなどどうでしょう?
最近、なかなか相手をしてくれる人がいなくて。
[にこりと笑んでから果物の入った籠を拾い、ウェンディと手を繋ぎなおして部屋を出た。]
―アーヴァインの部屋→広間―
[ゆるゆると]
[廊下を進み]
[足を止め、]
[立ち去った部屋の中より][あえかな歌声][鎮魂歌]
[耳を澄ますが]
……ちが、う。
−廊下−
[幼い少女のソプラノの声に、ぎこちないながらもそちらに顔を向ければ。館の主――だったモノ――の部屋の扉が目に入り、ビクリと身体を竦ませる。
彼は見てはいなかったけれど、何があるかは大人の会話から概ね想像は付いていた。
――彼が想像するより、遥かに凄惨な光景であったが。]
………っぅ。
[微かに上がってきた胃液を飲み下し、ゆるく首を振るも。眠り続けたのが不幸中の幸いか、既に痛みは引いていて。]
……ぁれ? あの…人……?
[代わりに気付いたのは、かの人の部屋を後にするように動く、茶色の髪の青年の姿。]
チェスですか?
神父さんのお手に敵うかどうかは解りませんが…私でよかったら…
[ほのかに笑みを取り戻し。空になった花籠を持って、少女は手を繋ぎ、アーヴァインの部屋を後にする]
さよなら…アーヴァインさん…。
あなたを……ごめんなさい…。
[立ち去り際、小さく落とされた言葉は誰の耳にも届かず、床で弾けて――]
――アーヴァインの部屋→広間へ――
[壁を伝い、廊下を進む姿は、館の主を物言わぬ死体へと変えた(と彼は思っている)犯人像とは結びがたくて。
心の奥底では怯えをはらみつつも、少しづつ近づいて声を掛ける。]
…ぁの、どこへ…行きたいんですか…?
[必要とされるなら、手を貸そうと。]
…俺?
[ローズの事を思えばそれは「よくある事」なのかも知れないけれど。
それでも彼女を傷つけるような事は出来なくて]
…望まない事を無理強いをする気はないよ、俺。
……俺なら…良いの?
[確認するように訊く。
気持ちが騒ぐ…それは今まで感じなかった感情]
―一階・廊下―
[ 広間へと入ろうとすればニ階へ上がって行った筈の男と少女の姿が見え、一瞥すれば頬笑んで頭を下げる。扉は未だ開けておらずに、立ち止まり手を掛けた儘。]
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