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いやいや、これは正直な気持ち。
嘘をつこうにも、ほら、裏も表も今は見えませんのでね。
[口がうまいと言われれば、けらりと笑って、そんな答え。]
そう、そう、それです。
[得たりとばかりに手を打って]
まさに世に幸を撒くのが、貴女の仕事やもしれません。
風と音とも似合いだが、これも似合いと、思いませぬか?
[確かに嘘ではないのだが、遊ぶような言の葉で]
おうたにあわせるん?
[すこし考えて]
てんてんてん。
[鞠を一つ、二つ、三つ]
[ついて、うたがわからない]
[口からついたのは]
……おうた、教えてくれん……?
おら、ようわからん
[朝餉を終えて一思案の末、まずは館の中を見て回ろうかとぶらり足を向けてみれば]
ん―?
[縁側に見た事ある顔がひとつと見た事のない顔がみっつ並んでいて―自然、足はそこに向かう]
なんだ―随分と賑やかじゃあないか。
うん、そう。
[こくり、頷いて。
教えて、と言われ、あ、と声を上げる]
ひいや ふうや
みいや ようや
いつやの むさし
ななやの やくし
ここのや とおや
[澄んだ声が、ゆる、と唄を響かせる]
[また一人増えた顔に、如才なく笑みを向ける]
おや、こんにちは。
ええ、可愛い坊達と、綺麗なお嬢のおかげで、賑やかですよ。
俺は烏と申します。どうぞお見知りおきください。
旦那はこちらの家の方…ではなさそうですねえ。
[どうやら、見分けがつくようになってきた]
ひいや ふうや
[小兄の優しい歌声]
[くりかえすように声をあわせて]
[とん、とん、とん]
みいや ようや
[鞠が軽く音をたてて]
いつやの むさし
ななやの やくし
ここのや とおや
……あ!
[最後の一つ]
[鞠が手を離れて、ころげてゆく]
童らは手鞠か、懐かしきかな。
さても今は記憶の欠片もあらねども。
心の隅には何かが残っているらしい。
[てん、てん、跳ねる朱と金のいろ]
ひふみよいむなやここのたり、
……はてさて、これは違うたかな。
〔童二人が庭にて遊び、稚い歌声響く。
思い起こさせるは望郷の念か、
さてもはてもやはりわからず、
白い霧の中に沈み込むように。
ただただ、貌に浮かぶは笑みばかり。〕
なれば紫苑の旦那の仕事は、
そうして他を煽るものかも知れぬね。
似合いと思えば似合いとなり、
不揃いと思えば不揃いとなるよ。
少なくとも悪くはないと思うけれど。
[縁側に腰掛けながら頷いて]
ああ―って事はお前さんもか。
しかし烏とはまた変わった名前だな―。まあ俺もあまり人の事は言えぬが―。
[思わず苦笑が洩れるか]
[唄に合わせて回る華の紋。
それを、楽しげに見つめ]
……あ。
[鞠がそれ、転げていくのを見ればそちらに駆ける]
残念、ざんねん。
[もう少しだったぁ、と言いつ、鞠をそう、と拾い上げ]
そちらの旦那も今日和。
[ころ、ころ、転がる鞠を眺めつつ]
名が必要ならば“あやめ”と呼べば好い、
名が不要ならば其方の好きに呼ぶと好いさ。
ふう坊は、良い声をしているねえ。
[感心したように呟いて、真似て鞠つくねいろを見やり]
おっと…
[転げた鞠に肩をすくめる]
残念残念、けど上手なものだよ。
[あやめの言葉には、笑みを深めて]
仕事は思い出せませんが、こうして話すのには慣れているような気がします。
悪くはないと思って頂けるなら重畳。
[男に変わった名だと言われると、ふむ、と首を捻る]
言われてみれば、変わった名でしょうかねえ?
ですが、覚えているのは、この名ばかり。
思うに、旦那も同じでは?
鞠……
すごくはねるんじゃなぁ
[拾うのを見て。]
ふうれんにいさま、すごいんじゃのぅ……
鞠、いっぱいできるんじゃろ?
[小兄に尋ねて]
[まわりの言葉に、*てれわらい*]
[烏の言葉に少しばかり目を見張り]
―そこまで同じとはな。もしやあやめの姐さんやそこの2人も―
[―と、童2人に目をやって]
ああ、ああ。
宜しく頼むよ、象牙の旦那。
[ひらひらり、伸ばした手は空を切る]
奇遇だね、此方も己の仕事が思い出せぬ。
そもそもどこからどうしてここへ来たのやら。
誰も彼も、そのような状態なのだろうかな。
もしかすると、これは夢なのかも知れぬね。
[いっぱい、という問いに、やや首を傾げ]
鞠、好きだよ?
[答えになっているような、いないような、そんな言葉を返し]
ひいや ふうや
みいや ようや……
[唄いつ、てん、てん、と鞠をつく。
唄の終わりに手に戻った鞠を一度、ひょう、と空へ投げ。
伸ばした手に受け止めたなら、ふわりと笑って。
縁側で語らう大人たちを*不思議そうに見やろうか*]
夢か―確かにそうやもしれんな。
[ふむりと一つ頷いて―ふと顔を上げ]
なあ、ひとつばかり聞きてぇんだが―
あやめの姐さんと烏の兄さんはほしまつり―ってのにいた覚えはねぇかい?
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