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[それは、昨夜のお話。
やって来た小川には、先客がいらっしゃいました。]
あらら?
ルイさんに、牧師様。お二人も、蛍を見に?
[なんて、呑気に尋ねます。
そうして無事を安堵されてようやく、心配をかけた事に気づくのでした。]
あら、あらら。
申し訳ありません、わたくしったら……。
[少し慌てて謝って。
ルイを見送った後、蛍の舞を眺めてから、教会へと戻ったのでした。]
[そうして、次の日。
いつものように、ご飯の支度から始まって、お掃除、お洗濯、と仕事は続きます。]
さて、後はお買い物ね。
[呟きながら手に取る買い物籠の持ち手には、薄紫の花が一輪、挿されていました。]
[翌朝、ドミニクは頭の痛みで目を覚ましました。]
ぐうう、飲みすぎた……。
つまみも酒の話も旨かったもんなあ。
[老人二人のせいにして、億劫そうに起き出します。
二日酔いの頭にゼルマのお小言はたまらないからです。]
[真夜中、おじいさんのベッドに潜った狼は、不思議な遠吠えを聞きました。
それはきっと、彼のお仲間の声でしょう]
ホラントか、それは良い考えじゃ。
最初に人狼の話を始めたのはあいつじゃよ。
何やら感付いておるかもしれぬ。
[しかし、そんなことよりも。
狼の頭の中は、今晩の素敵なご馳走のことでいっぱいなのでした]
――ベリエスのおうち――
ふああ、良く寝たのう。
[おじいさんが目を覚ましたのは、まだ夜が明けて間もない頃のことです。
どこかの木こりさんとは違い、おじいさんは頭も体もしゃっきりとして、ベッドを抜け出すなり朝の体操を始めました]
まだまだ、若いもんには負けられんからのう。
[そんな口癖をつぶやくと、おじいさんはかまどに薪をくべて、朝ごはんのパンを焼く準備を始めました]
ええと、買い足さないとならないものは、と。
[頭の中で色々と考えながら、村へと向かって歩きます。]
またお菓子を作りたいし、その材料も揃えないと、かしら。
[木こりはいつもよりものっそりのっそり歩きます。
頭に響くからです。
朝の体操なんてとんでもない状態なのでした。]
ゼルマさんのスープ貰えばよかった。
だけど、お小言もついてくるのはたまらんしなあ。
…帰ってチーズでも齧るか。
〜 村の道 〜
ん……っしょ!
〔ちいさな両手におおきな荷物を抱えて、アナは行く。
積み上がった荷のおかげで前は見えないし、ふらふらするし、危なっかしいこと、この上ない。
危ないよ、
そんな、すぐそばのお店のひとの声にも、アナはだいじょうぶって言い張るんだった。〕
[お菓子作りの事を考えながら、歩いていくと、のっそり歩く大きな人影が見えました。]
あら? あれは……。
ドミニクさん?
具合でも悪いんですの?
[いつもと違って元気のない様子に、ちょっと首を傾げます。]
[しばらく行くと、首を傾げるドロテアの姿が見えました。
しかしいつものような大声で挨拶すると頭に響きます。]
…ぉぅ。
[軽く片手を挙げての挨拶は、とても小さなものでした。]
――村の小道――
[朝ごはんを美味しく頂いた後、おじいさんは朝の散歩へと出かけました]
おお、朝は冷えるのう。
[マフラーを首に巻きつけて、おじいさんは道を歩きます。
と、道の向こうから、お日さまの下だというのにランタンを持った男がやってきたのでした]
おや、ホラント。相変わらずふらふらしておるのか?
[お小言を言おうと近寄ったおじいさんは驚きました。ホラントのランタンが、火もないのに光っているように見えたのです]
「狼だ、狼だ。やっぱり人狼はいたんだよ」
[ホラントは、またいつもの噂話を始めました。
けれど今日は、そのお話に続きがあったのです]
「だけど占い師も、霊能者もいるんだ。
不思議な力を持つ人二人。
この村にもいるんだよ」
占い師? 霊能者?
そいつは一体……。
[不思議に思ったおじいさんはたずねますが、ホラントはそれ以上教えようとはしないのです]
「そいつは後のお楽しみさ。きっとびっくりするんだから」
――宿の戸口にて――
[ゼルマは手紙を握りしめて扉に寄り掛かっていました。女将さんの出先のこころあたりに出した連絡はかたっぱしから期待外れのものばかりで、ついさっき一番遠い村からの返事が届いたのでした。
どこであれ女将さんは行っていなかったのです。]
困ったわねぇ。あたしは唯の年寄りだってのに。
[老猫のヴァイスも寂しげに、尻尾まで所在なさげです。]
[小さな声での挨拶に、きょとり、と一つ瞬きます。]
なんだか、元気がないみたいですけれど。
……どうか、なさいましたの?
調子がよくないなら、お医者様にかかった方が。
〔ふらふらとした足取りのアナは、別の意味でふらふらの木こりに、知らず、近づいていく。
誰かの注意する声とぶつかるの、
さて、どっちが早いだろう?〕
いや、ちと飲みすぎただけさ。
薬は効くけど苦えからなあ…いらねえ。
[ドロテアに苦笑交じりに声を返します。
が、無精髭で三割り増しくらい無愛想に見えるのでした。
後ろからの危機にも気付きません。
アナの小さな足音よりも、頭痛の音が大きいのです。]
[翌日になりました。
復活したとんがりぼうしとマントを身に着けて、昨日のように目的地はないのですけれど、旅人は村を見て回ります。]
こんなときは、まず落ち着くことだわね。
お茶で一服するに限るわ。
[誰にともなく呟くと扉を閉めようとして、ゼルマははたと*外を見やりました。*]
螢……?
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