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[ティルを見送り。ふと、気配に気づいてそちらを見やる]
ああ、イレーネ。
[外、出てたのか、と笑って。
何があったのか、大丈夫か、と問われたなら、勝負してた、と大雑把な説明をして、怪我はないから大丈夫、と。
多少、疲れがあるのは、いつもの事。
糸を操る念動力は、獣化能力程ではないものの、心身に負荷をかける。
その辺りは念動力の覚醒が中途半端なためであり、設備の整った場所で十分な鍛錬を積めば疲労は段違いになる、と。
そんな話を聞いた事はあるが、当然の如く、実行に至ってはいなかった]
[話が終われば、また、ふらりと廃墟の奥へ。
目指すのは、先日見つけたピアノの所。
イレーネが一緒に来るなら、例によって好きにさせて。
ふらり、やって来た場所で鍵盤から音を紡ぐ。
零れて落ちる、柔らかな旋律]
―地下―
[カツン、 高い音を響かせて歩みを止めた。
もぞ、と僅かに動く白のシーツに、気付いて
ゆるりと視線を向ける。]
――…、嗚呼。気がつきました?
[静けさの漂う地下に、僅かに反響して、消える。
その口調には、何の色も見えずに]
/*
折角なので、鳩から絡みに(まっすぐ歩いて帰れ)
*/
[向けられる指には翠をすぅと細めるも、咎めることはせずに。
薄らと笑みを浮べたまま、僅かに首を傾ぐ。 さらりと金が揺れて。]
俺の事を知る必要は、無いですよ。「エンジェルリッパー」
――いや、クリューガーと呼んだ方が良いのかな。
[俺は、ある程度データを貰ってるから知ってますけど。
相手を見据えたまま、浮かべた笑みを深める。
組んだ腕を解いて、口許を隠すようにへと手を添えた。
――リィン、と。
何処かで、小さく音が響く。]
/*
だいじょうぶ!
さかみちは うかいすることに したよ!
もうこけない!(…)
*/
[鳴る鈴から聞こえる声は――
ああ、そうか。
歪められていた記憶が正されていく。
己の真実は虚実であったと知る。]
…ック、ハァ。
[廃墟の一角、周囲に気配が無い事を確認してずるりと座り込んだ。
背中の打ち身そのものもだが、それより無理矢理に身体強化をかけたのが響いていた。ジンジンと鈍い痛みが走る。
死に掛けてから成長していない身体。瞬時の能力は引き上げることが出来ても、耐久度は低い]
長引かせるのは拙い、な。
どうせ監視者もいるんだろうし。一度賭けに出ておくしかないか…?
[今はとにかく回復を図る。建物まで戻った方が良さそうなのは分かっていたが、その途次に何かあった時に対応できるところまでは現状でどうにかするしかなかった]
さぁ、如何でしょう?俺は此処から出られますけど
…貴女は、無理なんじゃないですかね。
――尤も、知ってても教えるつもりは有りませんし。
[敗者は敗者らしく、大人しくしていて頂かないと。
くつりと喉を鳴らして、相手と同じようにゆるりと首を傾ぐ。
向けられる視線にも、薄く笑みを浮べたまま。
ふと、耳へと直接響く声に、ゆるりと視線を向ける。
ポケットからねじ込んだままの携帯端末を引っ張り出すと
碧の紐で結ばれた小さな鈴を、軽く指先で弾く。
ちりりと、音が鳴った。]
…ああ、まぁ。良かったですね。
これで眼を覚まさないとなると、色々問題ですし。
[痛手を負った目の前の少女には、
何たる会話かさっぱりと理解出来ないだろうが。]
/*
いや、本当大丈夫です!(ぐっ
坂道登ろうとしたら、思いっきり前のめりにコケただけで。
膝も着かずにコケるとか、小学生以来でうふふ(おまえ)
怪我も無いんで、平気ですよー。
*/
[薄く、空を覆う雲。湿り気を帯びた空気。
それはこの地帯の特性であって、雨の前兆ではない。
天のひかりは覗いている。
けれど、]
……降るかな?
[ぽつりと呟いて、鞄に目を落とした。]
[咽元へと迫る黒い其れへ、ゆるりと視線を落として。
再び、目の前の相手へと翠を向ける。…小さく、溜息を零して]
――大人しくしていろと言ってるじゃないですか。
[冷やかに、ぽつりと言葉を零す。
同時に袖上から、内へと隠された留め具パチリと外して。
滑り落ちた細身のナイフを左掌へと素早く収めると、
相手へ向けて、振り下ろした。
腕から放たれた白銀は、光を残して真直ぐに。
少女の腕へと繋がれた点滴のコードを掠めて壁へと突き刺さる。]
――次は、当てますけど?
[向ける響きは、冷たい壁に反響して冷やかに。]
…「ご主人様」?
[響く声に、一度ゆるりと首を傾いで。
――嗚呼、そういえばモニタに残る記録で
その様な事を言っていたか。と思い当たる。]
……ご主人様に捨てられていないか。だそうですよ。
尤も、それだけ元気なら聞くまでも無く大丈夫そうですけどね。
[咽元へ黒を向けられたまま。
相手へと視線を向けて。聞かれたままの問いを投げる。
響きを聞く限り、本人に然程興味は無い様だけれど]
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