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[しばし、壁を睨むように見た後。
東殿には戻らず、庭園の木の上へ]
…………。
[そのまましばし、枝の上から雫をこぼす空を*睨むように見つめ続け*]
―東殿/食堂―
[大地の老竜と翠樹の仔竜の話は内緒なので当然聞こえない。
風を聞く疾風の竜ならまだしも、青年では何か冒険めいた仔竜の心の動きを感じる程度だった。
そちらに意識を向けながらも開け放された窓へと歩き、雨風が入らぬように閉じる。
そして振り向いた時、意気消沈した若焔が食堂へと入って来た]
……エルザ殿が?
それは…どのようにしてですか?
[飛び出した疾風竜の言葉により概ねわかっていたが、正しく刻む為に問いかける]
―戻る前、結界内でのこと―
干渉?ああ、まぁ一応な。
[力が増えた事の自覚はある。散々揺れるものの話は聞いてきたので、予想くらいはすぐ出来た。
よもや精神面まで干渉されたとは思っていないのだが。]
あいつらお前さんを襲うた言ってなかったな。
虚竜王のあれに巻き込まれたか。
[近いうちにばれるとは思いはしたが、アーベルとオティーリエの名は伏せた。
こちらの調子は常のまま。
睨む眼差しにもへらり、笑みを湛えて受け返す。]
―東殿・廊下―
ごきげんようかしら、命竜殿。
[意味無く同じ呼び方で返した後には、ふるりと首を振り]
騒がしいほど、騒がしいのかは分からないけれど……
今、ティルが結界のほうに駆けて行ったみたいなの。
……もしかしたら、また誰か「引き込まれた」か。
それとも、揺らされたものに襲われたか。とにかく、何か起きたのかも。
[ふるり、首を振るう]
―― 食堂 ――
[飛び出していく風竜をただ見送ったのは、恐らく珍しいことだろう。ダーヴが食堂に現れてから、ようやく、息を吐く]
…他は、無事かな?
結界を見に行くか、人の集まっているところに行こうかと思ったんだけれど。
貴方は?少し、疲れているようだけれど……。
[どこか疲れているような命竜に向かい、尋ねる。
また探査の為に力を使ったのだろうか。そんな風に、気遣うように]
振り向いた時にはもう、無限の輪に捕まってた。
十中八九、虚竜王様の手によるものだと…。
[半ば鱗の生えた手をきつくきつく握り締める。]
えぇ、わかりました。
気を付けておきましょう。
[オティーリエの頼みに頷いて、仔竜を視界の端に留めながらエルザの送られた時の様子を若焔に尋ねる]
ですが、ちょうどいいとも言えます。
あの結界内で暴れる事が何を引き起こすか、剣にも想像がついているでしょうから。
[剣の力で中から切り裂けたとしても、危うく稀な均衡を保つ結界は衝撃に弾け飛ぶだろう。それこそ竜都崩壊の危機だ]
後ほど、ゆっくりとお伺いしますよ。
……どうもせぬ。
出来ぬ、というが正しいか。
此の器に、我の震える力は無きが故に。
陽光の仔竜が囚われし今となっては尚更にな。
[ 素直な肯定に、胸に手を当てつ吐息を零す。
細い滴が肌を伝い、纏う布を濡らしてゆく。]
好きなようにするがよかろ。
お前も、あれも。
願いの在るならば。
―東殿・廊下―
うむ、ごきげんよう。…って言うと偉そうだな俺。
[へらり、笑みを返すも、続いた言葉には眉を顰める。]
…引き込まれ、ってまたか。
どっちだったとしても厄介だな…とにかく行ってみるか?
[外は雨だが、そうも言ってられないだろうかと。
それでも一応尋ねてみる。]
[心底嬉しそうな感情があらわになる。
それから結界の方へと目をやった。]
なるほど。
それでしたら剣も力を出せずに――簡単に奪えるかもしれませんね。
ですが、老君もお持ちとか。
もしも剣の形状をご存知なら、ばれぬようにせねばなりませんね。
―東殿・廊下―
あら、なんだか似合ってたけれど。
[へらりとした笑みを見ると、少しだけ笑みが零れたが]
……虚竜の王が機嫌。
結界の中に引き込まれたユディとかでも、治せないのかしらね。
[ほぅと息を零したところで、命竜の問いかけに頷く]
……雨が気になるなら、私の周りだけ雪や雹に変えられるけれど?
[こてんと首を微かに傾げ、尋ねる。
濡れるのと冷たいの、どちらがマシ?とでも聞くように]
―東殿/食堂―
[若焔の言葉に静かに耳を傾けて、青年は若焔へと歩み寄った。
握り締められた鱗立つ手に、袖から少しだけ覗く指先を添える]
虚竜王の不機嫌ならば恐らく誰も止められません。
あまり気を落とされぬように。
……エルザ殿に心配されますよ。
[少しだけ痛みを消して、指先を離す。
そして仲の良い様子の機鋼の仔に声を投げて下がった]
エーリッヒ殿、よろしければ若焔殿の側に。
[ダメかと再度訊ね来る様子には、重ねるようにして制止の言葉を紡ぐ]
なりませぬ。
お行儀が悪いですよ?
[告げてから、耳元へ顔を近付けてくる様子に己が耳をそちらへと向ける。その先で紡がれた言葉には少し、動きが止まりかけた]
……剣、じゃと?
[強い剣、幼子はそう繰り返す。常で剣をその身に帯びることはほとんど無い。今帯びていると言えば──]
…いや、儂は持っては居らぬよ。
剣を扱うは苦手でのぅ。
[ややあって紡いだ言葉は否定を含むもの]
―戻る前、結界内でのこと―
まぁな。切欠どうであれ口火切った事に変わりねぇし。
はい俺だけ無関係ー!ってのはな。
…あいつらの胸中は、分からんでもないし。
[張り詰めた空気にも肩を竦めるに留めるのみ。
刻印を傷つけた、には軽く眉をよせ一歩近づき頭に手を当て、そこから癒しを注ぎ込んだ。
全てを知られようとも、対応は何ら変わりない。]
まぁ無茶すんな?
って。
だあああああああ!?
[飛んできたでっかいテントウに思わず叫ぶ。あんまり驚いたので心話にも少し漏れたかもしれない。]
―戻る前、結界内でのこと―
[哀れ潰されかけた所で――エルザに突き飛ばされた。
虚をつかれ、壁に当たるがこちらは大事無く。]
!?エルザ!!
[潰された彼女の傍へ駆け寄る。]
[ちらりと心竜を見上げる顔は、きっととてつもなく情けないもの。]
…けど。
アイツが…アイツの卵見つけたときからさ、絶対守ってやるって思ってたのに。
[口惜しさは、どうすることもできず。]
手伝ってはあなたの望みが叶ったとも言いがたいのでしょうか?
もしも必要でしたら、どうぞおっしゃってください。
[さすがに僅かな沈黙の後、申し出だけはした。]
―― 食堂 ――
[精神竜に声をかけられて、立ち上がる。すたすたとダーヴの傍に歩み寄ると、生身の右手で、いきなりスッパーン!と頭をはたいた]
落ち込んでる場合じゃないだろ!?
早くエルザさんを出してあげたいなら、結界をどうにか出来る相手をとっとと見つけないと!
…?
[地竜の耳元から身体を離した仔は、漸くにして心竜殿に気付いたようであった。
視線を向けられていると判ればその意図は知らねど、幼子は何処か楽しげに小袋を握った左腕を心竜殿に向かって小さく振る。
しかし僅かに首が傾いだのは、その向こうに様子の可笑しい機鋼竜殿と焔竜殿が見えた為か。
その間に漸く仔の足元へと辿り着けば、
私は仔の足を伝って小さな身体へと身を巻きつけた。]
[オティーリエの嬉しげな心に、翠樹の仔竜との仲の良さを感じて口元に微かに笑みが戻る]
[クレメンスから漏れ聞こえた悲鳴のような何かは、命の別状の無いレベルなので何も言わなかった]
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