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褒め言葉として受け取っておこう。
[漏れたゼルギウスの本音には笑顔で返しておいた。
傍目からは容易に迎撃しているように見えても、攻撃が攻撃故に外傷は少なく、どちらかと言えば打撲が多い。
向けられる眼つきの悪い三白眼に動じることも無く見返し。
光る結晶体へ包まれる姿を見つめた]
ほほぅ、なかなかどうして。
接近の覚悟を決めたというところか。
良い覚悟だ、面白い。
[愉しげに瞳が細められる。
為していた集中はとうに終え、後は呪を紡ぐのみ]
異界開門、介盟友、喚、如地重力。
[握った剣の剣先から、練成特有の火花が散り。
姿を現したのは一番最初の剣と似た幅広の両手剣。
違って居るのは鈍い光を宿す、灰銀の刀身。
ずしりとした感触が柄を握る手に感じられる]
どうなっても知らねぇ、ぜ!!
[笑みと共に振るう重き剣。
男でさえも両手でやっと掲げられるそれをぐるりと回し。
弾丸の如く迫るゼルギウスに合わせ、下から上へと振り回す。
斬り上げると言うよりは、叩き上げると言った方が正しいか]
それは目上に対して使う言葉ではありませんねえ。
[言葉の使い方を諭すような言い様は、学長らしいと言えば言えるか。仕掛けようとする気配を感じ、目を細める。傷はまだ再生しきってはおらず、朱の雫が腕から絶え間なく零れ落ちていた]
そろそろ終わりにしますか?
[けれど笑みは消えず、足を止めずに、両手を目の前に掲げる]
[返事もせず突撃、同時に紅蓮の雪崩を放つ]
ああぁぁぁぁぁ!!!
[そして連撃、ナターリエを沈黙せしめた死の舞踏]
[隠し玉も何もない、いつも通りの、真っ正面から最強の攻撃力を叩きつける]
[切り払われた青と朱。しかしそれは予測済みのこと。青は砕けて消えるが、命の水より成る朱は、砕けることなく刃にまといつき、流れ落ちる]
[そして、腕の傷から直接零れ落ちた朱の色は、男の動きに従い地に落ちて、大きな円をその場に描き切ってていた]
『朱の力、弾けよ』
[すでに呪をこめられていた命の水は、短い詠唱と、意志をこめた手の平の一閃で、その命を果たす]
[ゲルダの腕に伝い落ちた血と、地に描かれた円、一つはゲルダの力を奪い、一つは術者の身を守るために、同時に赤い衝撃波を放った]
[振り抜いた重量ある剣は狙い違わず向かって来たゼルギウスの胴を殴り上げる。
鎧で威力は殺がれるだろうが、振り抜いた剣は重力を付与した特殊な剣。
その衝撃は計り知れない。
剣と拳、リーチの差が勝敗を分けたか。
それでも突き出された拳が、僅かに頬を掠った]
っ……ぶねぇ〜!
あれ食らってたらただじゃ済まねぇぜ。
[掠ったダメージからその特性を察し、振り抜いた体勢のまま冷や汗をかいた]
[圧縮空気は左右の景色を一瞬で後ろへと流れていく。その中でただ一点の目標に向けて拳を振り切った。
だが、その拳が届く前に、腹部へっ到達した衝撃が視界をブレさせた。マテウスの顔面を狙っていた拳は、彼の頬を掠めるに留まる]
が、は、ふ……。
[それよりも自らが付与した魔法による移動は、想像以上だったのか、マテウスの一撃はいとも簡単に精霊の結晶体を破壊し、生身の体に命中していた。
ゼルの口から逆流した胃液が吐き出されるのを気に、鎧はガラスが砕けるように全て割れ、そのまま大気に溶け消えていった]
……あ、やっべ。
[砕け散り消えゆく鎧の欠片。
ゼルギウスが衝撃をまともに食らったと言うのは明白だった。
剣の特性上、切り傷の類は無いが、内臓へのダメージが大きいだろう。
重き剣を異界へと戻し、ゼルギウスへと駆け寄る]
ゼルギウス、大丈夫か?
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