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―→広間―
[それからどれくらい部屋にいただろうか。
皆が一眠りした後だったかもしれないし、そんなに時間は経ってなかったかもしれない。
廊下にはすでに人がいなくなっていて、広間に降りていく。
人の少なくなった元宿屋は来たときよりも大分静かだった。
誰もいないのを確認してから、厨房に向かい包丁を一本タオルにくるみ、懐にしまい込む]
誰に、しよう…
[最初はエーファを守るためにだった。
でも守れずに、エーファは死んだ。自分に力がないせいで。
それから、エーファを殺した人狼が憎くて、探して殺すつもりで。
今は、ただ殺すのが目的になっている]
アーベル以外なら…
[彼だけ外れたのは最後の理性だったのかもしれない。
最初に出会った相手にしようと、広間の隅の方の椅子に*腰かけた*]
─浴室─
…私は、皆に守られて、生かされてきたから。
エステル先生に、ヴァルタに、屋敷の皆に─…ゼルに、貴方に。
私の命は、皆に与えてもらったもの。
だからね、アーベル。
貴方が、私を殺したいと思ったら、殺して、良いのよ?
[浴室も暖まり、入浴出来るようになって。
アーベルが外へ出ようとするその背中に、穏やかな声でそう言った。
彼は刃を持っているから、そうしようと思えば簡単に出来るだろう。
殺してとは、言えない。
己が人狼であったなら、そう頼んだろうと思うけれど。
でも、自分は人、だから。
だから、殺されても良いとだけ、伝えて。戸を閉めた。]
[服を脱ごうとすれば、ところどころ血が乾いて張り付いていて。
肌から離そうとすれば、多少の痛みが走った。
その痛みは、自分が生きている証拠。
そして、この血はゼルが流し、命を落とした証。
目を閉じて、また零れそうになる涙を堪え。
アーベルに準備してもらった浴室へと入り、身体を洗い流した。
お湯の温かさに、強張る身体が緩く解けて行くのが解る。
じわりと、目に熱さを感じたのは。
湯の温かさに解けて、滲んだ。]
そう、なのかな。
[自分の気持ちを語るというには、少し不安定な声。
考え込むように目を伏せたけれど、すぐにナターリエをじっと見詰める。
蒼花として――違う。わかっている。だけれど、そう言うことはない。
痛みはあるけれど、それに蓋をする]
そうだね、きっと君も――僕と同じように、役目が望むのだろう。
シスター…ナターリエが彼を庇っている間、苦しかったんじゃないかな。
[彼、といって、視線はライヒアルトの体へと落ちる]
責めていいんだよ、僕のことを。
……僕は君にも言っていないことがあるんだ。
僕は、彼に詳しくないよ。シスター。
ただね、"朱花"なら、
……許さないんじゃないかな。
[言葉を出せば、首筋の痛みがわずか、引いた。
それが答えだった]
……ごめんね、ナターリエ。
僕は、花より人で居たいんだ。
[少し笑って、それから、落としてしまったストールを取る。
自分の手から離れてしまった猫はどこにいったのだろうか。
少し考えるけれど、すぐに首筋を、花を隠した]
エルが戻ってきたら、ちゃんと運ぼう。ライヒアルトの部屋は、どこだろう?
それとも君か、…司祭の部屋かな。
[そう尋ねて、首をかしげた]
アーベル、寒いところに居させてごめんなさいね。
待っていてくれて、ありがとう。
アーベルも、お風呂頂いたら?
[血に濡れた服は、ひとまず水につけ目立たぬ隅に置いておいた。
入浴自体には然程時間をかけることはなく、程なく着替えも済ませると外で待っていてくれたアーベルに声をかけた。
廊下は冷えただろうと、彼にも入浴を勧めたが何と返されたろうか。
今入るのか、後でか。
どちらにしても自分は暖炉の熱で髪を乾かそうと、広間に向かい。]
…フォルカー、ちゃん?
[隅に座る、彼女に気付き名を呼んだ。**]
[人狼は誰か。
――自分を蒼花だと知っているのは、誰か。
知らないのは誰か。
頭の中では理解してしまう。
だから蒼花は、意識を苛んでゆく。
痛みが止まることは――無い**]
―一階・広間―
[ただなにをするでもなく、ぼーっと席に座っている。
ここしばらく、ろくに何も口にしていなかったけど、気にならなかった]
ああ、ブリジット……
[声をかけられて、向ける赤の相貌はどこか朧気な様子だった。
アーベルの姿も一緒にあるならば、そちらを見る時に感情のあらわれを見せるだろうか*]
[向けられるゲルダの眸>>79。
彼女の心の内は知れないから今はその言葉に意識を傾ける]
双花に伝えられたらと何度も思いました。
けれど、私の苦しみなど比べ物にならぬほどに
私がおとうとを選んだことで……
それ以上の苦しみを、他の方々に負わすことになりました。
[苦しみを理解する彼女もまた同じ苦しみを負うのかも知れない]
苦しい、などと私が言ってはならないのです。
[ゲルダの視線がおとうとへと向けば釣られるように其方をみる。
伝えることで大事なひとを苦しめたことも何処かで理解していた。
伝えないことで犠牲を増やし誰かを苦しめたことも理解している]
ゲルダさんを責めたいとは思いません。
誰しも秘密を抱えるもの――…朱花――…神のいとし子たる兄も、
あなたを責めようとは思わぬと思います。
自分よりも他を心配してばかりいる、優しいひと、でしたから。
[悩んでいたことに気付いていただろうあに。
手を差し伸べようとしてくれたのに彼の手を取る機会を逃した。
もう一度会いたいと思うが仮令どのような道を辿ろうとも
会えぬだろうこと――顔向けできぬことを知っている]
――…“朱花”が許さぬなら“蒼花”は…
[クレメンスであれば許してしまいそうだったが
双花である片方が許さぬことをもう片方が許すのだろうか。
花か人か、ゲルダの応え>>80に微かに目を細める]
分かりました。
[これ以上彼女に義兄の影を重ねるのは酷か。
先に花を手放したのは支えるべき自分なのだ]
私にはもう“役目”しかないのです。
[部屋を聞かれれば階段から二番目にあるライヒアルトの部屋の扉を指し示す。本当なら自分で運びたいがそれをするだけの気力も体力も無かった]
[ナターリエという“個”があれたのは其処に兄と弟が居たから。
教会には父と子供達もいるけれど、今は喪失感から其れを見失う。
血は繋がらずとも本当の家族のような人たちがずっと傍に居た。
その存在が傍に無いことがこれほど寂しいとは知らなかった]
ラーイ、ごめんね。
[そ、とライヒアルトの頬に掛かる髪を撫でる]
おにいさま、ごめんなさい。
[守りたいと思ったふたり。
おとうとが人狼であると知りあにが朱花であると知った時、
おとうとの苦しみを和らげ、尚且つ、導き手たるあにを少しでもながらえさせる術を考えて、おとうとを引き止めた。
それなのに、今、こうしてながらえてるのは自分。
ふたりの想いが嬉しくも、哀しい。
女もまた同じかそれ以上に、ふたりを想っていたから――]
― 浴室 ―
ん、昔はネ。そう思ってた。
俺は人狼に会った事があるのサ。
綺麗な銀色した、狼二匹に。
そいつらは人を食った残骸だけ残して、森の中に消えていった。
…俺そん時、子供心にちょっと人生に絶望しててさ。
そんな中で、圧倒的っていうのかな…とにかく凄いモン見せられて、惹かれた。魂取られたんじゃないかってくらい、魅せられたネ。
[狼になりたかったかと問う、幼い瞳に返すのは語る事が無かった過去の一端。それは放浪する直前、転換期の訪れの事。
子供の頃の強い憧れ、なんてぬるい物ではない、強い執着だった。
今は狼に成りたいと思ってはいないけれど――なぜなら彼らとは違いすぎる自分を知ったから。
それでも執着はささやかなユメへと変わり、今も胸にある黒い小瓶にほの暗く収まっている。]
ま、今は大人だシ?あんまり思ってないケドね。
それにさほら、俺人狼じゃないから、俺が死んでも終わらない。
終わらなければ、まだ死ぬから。
悲しいねェ。
[言いながら、口元には軽い笑みがあった。
そうなったらその時だネ、と。
内心はそんなもの。]
勿体ない事言うネお嬢。
[殺されてめいいと言う主には、微かな笑みを浮かべて、小さく息をつきながら撫でた。]
俺は気紛れだから。
どうしたいとか、するとかは言わないヨ。
[確約はせずに、ただ主の心を受けとめた。
そして浴室を出て、背を扉に預け主を待った。]
とりあえず、ここは旦那にあやかるかネ。
秘密ってのは、過ぎると良くない……だったっけ?
[主を待つ間、何をするか、考え出た結論はそれ。
自ら殺した男の言葉を思い出し、口の端を上げた。
主の勧めに、自身は簡単に手と顔を洗うだけに留めると、伴い広間へと向かう。]
―広間―
[どこか憔悴したようにも見えるフォルカーを見つければ、頭を撫でた。]
悪いな、ほったらかしで。師匠は忙しいや。男手、もう2つしかないし。
[そう軽口を叩きながら、暫くは頭を撫でていた。]
…お嬢、フォルカーのこと頼んでいい?
[暫くしてからそう頼み、自分は遺体を運ぶ為と称してエルザを*探すだろう*]
[フォルカーは人である事を知っている。
女の中でそれは疑いようもない事実であるから
何があろうと女があの少女に危害を加える事はない。
蒼花であるゲルダもまた候補からは外れる。
その花の存在を知り言葉を聞いたから。
彼女が誰かを庇う為に此方に刃を向けるなら
それさえも女は抗わずにそれを受け入れるだろう。
支えることが出来なかった双花への罪滅ぼしの為に。
疑いが向かぬあと一人はブリジット。
真っ先にゲルダのことを案じた彼女。
彼女が何者か知ると考えれば蒼花が健在なのは不自然。
対たる存在であるゼルギウスを庇おうとしたのも大きな要因。
女に疑える者は少なくある。
信じられる存在を生かす為に自分が出来る事は何か。
如何すれば良いのか、未だ、答えは出ない**]
[アーベルが一緒にいたので、ブリジットを殺しにいくことはためらわれた。
アーベルにだけは嫌われたくもなかったから。
アーベルから頭を撫でられると、わずかながらその表情に感情の兆しは見せるが、
続いた言葉を聞く頃には元の様子に]
大事なもの、優先だろうし…
[ぽつりと言葉を漏らしてから、ブリジットに任せようとするのには]
いい、殺す相手、探してくる…
[二人に告げた言葉は変わらぬ調子のままに。
怪我の具合はもういいのか、それとも感じるものが鈍っていたためか、しっかりとした足取りで広間を後にしようと席を*立った*]
― →二階廊下―
[まだ誰も広間に居ない内にオレはリネン室からシーツを、更に掃除道具を持って二階へと向かう。
腕の中には相変わらず白い塊。
色んなものを持つことになったから、シーツの上に乗せる形になったけどな。
シーツを取りに行ったその時はまだアーベルは火を熾していたのか、浴室の前には居なかった]
持ってきた。
ライヒアルトから運ぶから、離れてて。
[ゲルダとナターリエの話が粗方終わった後。
オレは二人の傍に歩み寄って、どちらかにミーレを手渡した。
コイツ抱えてたら何にも出来ないからな。
オレはライヒアルトの横にシーツを広げてその上にライヒアルトを横たえる。
作業の間はずっと無言。
包み終えると、ナターリエの方に翡翠を向けた]
どこに運べば良い?
[問いは簡潔。
ライヒアルトの部屋へと言われたなら、シーツに包まれたライヒアルト抱え上げて部屋と運んだ。
扉はまぁ、開けてもらうことになったけど]
―ライヒアルトの部屋―
[抱えたライヒアルトをベッドへと寝かせる。
後ろからナターリエとゲルダも部屋に入って来ただろうか]
んじゃ、オレはゼルギウスも運んでくるから。
手伝いは良いよ、掃除もオレがやる。
[ゲルダに血を触れさせまいと、オレはそう言って部屋の扉へと向かって行った。
その思いはエーリッヒの時も見せていたから、ゲルダには伝わったと思う]
― →二階廊下―
[三人でライヒアルトの部屋に居た間にフォルカーが廊下を通って階下へ下りたらしいが、そんなこと気付くはずもなく。
オレは廊下に戻って今度はゼルギウスをシーツに包み始めた]
あーあ、もうだいぶ固まっちまってるな…。
[呟きは床についた汚れを見てのもの。
掃除しても無駄かもしれない。
そんなことを思いながら、オレは作業を続ける。
……あ、でもオレ、ゼルギウスの部屋も*知らねぇぞ*]
―二階廊下―
――聞いてあげられなくて、ごめんね。
[伝えられたら>>84。そう言われても、自分は人に漏らさなかった。言わないようにしようと決めていた。
自分が死んでしまったら――それを考えてブリジットに願っただけ。
それも彼女の負担などは何も考えていない、自分勝手な願いだ]
最初から、覚悟はしていたのだろう?
僕らが痛みを感じることを望むのは、人にとってよくないものだって。
…選んだのが自分なのだから、確かに言うことではないね。
[それは己にあてた言葉でもあり。
しかし続けられる言葉には、そっと笑った。
朱花――クレメンスのことを聞いて、ほっとしたように]
うん。生きていたら痛かったかもしれないけれどね。
きっと、そうだったと思うよ。
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