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これが…なんか。
[息を呑んで絵を見る。考えても見れば絵師…が描いたわけではないだろうが、心を封じたという絵を見るのはこれが初めてだろうか]
…ん、この絵もちゃんと持っておかないと、だよな。
[自分の手で、肩を抱いて視線を絵から逸らす。
そしてじいっと、オトフリートを見つめて]
キノコ畑に。
[口の中で、繰り返した。]
うん、そうする。
あのね、司書さまが、絵を見つけたんだって。
キノコ畑で見つけたって言ってた。
あたしたちが描いた、絵。
[布の動く音。
そちらに目を向ける]
はい。
[言葉に頷き。
被せられた白に、青が焼き付いて離れなかった]
…え。
[小さな呟きはよくは聞き取れず、瞬いた]
そんなとこにあったんか。誰か見て…るのがいたら言い出すよな
[いいながらも視線は絵に。そしてほとんど無意識に手を伸ばしたところで、自身で気づいて止まる]
なにか。わかることあるか?
[それはミハエルでありオトフリートにであり、この場に居るもの皆に聞いて]
…ヒカリコケと、綿毛。
[アーベルの言葉には、
ちょっと首を傾げて絵を指差した。
そして、]
ここ、ちょっと…寒い。
[肩を抱いた手にきゅっと力を入れ
ふる、と震えてそっと扉の方へと寄る。
後ろを向いて読書室の扉を開け、外へと出ると
ゆるやかに風が、部屋の中へと入った。
寒さを感じたのは、
気温だけのせいでは無いのだけれど、
それを言葉にすることは、無い。]
じゃあ、やっぱり隠してくれてるんだわ。
あたしたちの、内緒のひみつ。
半分じゃなくて、みっつぶんの、いち、ね。
[布を掛け終えると、ミハエルの方に振り向いて、笑みを浮かべた]
意外に穏やかな顔だと言ったんだ。案外、絵師としての重荷を下ろしてせいせいしているのかもしれないな。
この馬鹿には、元々向かない仕事だった。
[海の青は、ふかいあおは、すこしきらきらしているようにもみえるのだと少女は語ったことがある。
手のひらについた、キャンパスに重ねられた、その青は海のふかくの色。
そこにすこし、金のこけがうつったか、
それとも少女の手がそうしたのか、
かすかに濃い青のあいだに、細かなひかりが輝いていた。
本当に弱いそれは、
金の前ではくらむようだけれど。]
尤も、代わりにその重荷をお前に負わせるのは不本意だったろうが。
[次の瞬間には笑みを消し、キャンバスの縁を撫でる]
ああ、そうだ、ミハエル。薬師殿の絵を描いてくれないか?
どうやら、彼女の心も身体から離れているようだが、絵がなければ留めるものが無いように思える。
ヒカリコケと綿毛?
[エルザに言われ指を指されるままに見る。確かにキャンバスの端にはヒカリコケがついているが]
あ?そんな寒いか?…いや、俺がしょっちゅう海に入ってるから慣れてるだけかもしれんけどよ
…、
[オトフリートの笑みを見て。
一瞬、言葉を失った]
重荷…ですか。
…でも、そうだとしても。
このままでいいわけがない。
[ふる、と頭を振った]
[読書室の扉を大きく開けはなしたまま
まっすぐの先の図書館の入り口近くまで来る。
そちらの扉も両手で大きく開けると、リディの姿が見えて]
ごきげんよぅ。
[大きく、手を振った。]
……え? エル、ザ?
[エルザの呟き(何を言ったかまでは聞き取れず)と、突如寒いと言って読書室を出て行くのを呆然と見送る。
だが、はっと気を取り戻すと]
ちょ、待って。
[そう言って、エルザの後を追って読書室を後にする。]
なんでかしら?
こっそり、聞いてみたいわ。
今はこっそり、出来ないんだけれど。
中にみんな、居るのよ。
来る?
[続いた言葉には、唇を噛み。
『月』の在処を知らせた時の、兄の表情が浮かんだ]
…ああ。
そう、でしたね。
後で描きます。
[ミリィの名には一つ頷く]
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