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[部屋の前で][暫しの間きょろきょろと]
[辺りを見回す。]
[少年の姿は無く、][少し考え込む仕草]
[そろそろと未だ慣れぬ][屋敷の廊下を歩いて行く]
−廊下→メイの部屋−
[ギィィ]
[扉の開く音は、早朝の廊下にやけに響いた……気がした。]
メイさん…? ねぇ、寝てるの…?
[頭だけをドアの隙間から覗かせて。部屋の中を見やる。
恐れていたような――血の流れる匂いは、霊感のない彼には感じられなくて。少し、ほっとしながら、大きく扉を開けた。]
[メイは、ベットに伏せて眠っているようだった。
けれど、その声を聞くまでは安心できなくて。]
……あの、大丈夫ですか…?
何か…悲鳴が聞こえたような気がしたんですけれど…。
[もしかして、違うのかなとも思いつつ、伏すその傍へと近寄れば、規則正しい呼吸音。
少なくとも、息があることに安堵しつつ、軽く身体を揺すろうと。]
[固く閉ざされた扉の並ぶ廊下に]
[一つだけ、大きく開け放された扉]
[立ち止まる。][迷い]
[しかし、其方へと][静かに歩を進める]
[ 其の儘階下へと降りようかとも思ったが、平時ならば兎も角今は少々の事でも気に掛かり、方向を転換して客室の並ぶ廊下へと歩を進める。]
……あれ?
[ 角を曲がれば其処に在ったのは少々予想外の男――ギルバートの姿。]
[ 直ぐ傍らには開かれた儘の扉。聞き覚えのある少年の声に、其の少年の名を呼び駆け寄る男。其の様相を何かを思わせて、]
……ああ、犬か。
[思わず零れた囁き聲。]
[ 部屋の中から聞えた声と男の呼んだ名にも驚いたが、青年の姿にか立ち止まり迷った様子にキョトリとして緩やかに瞬く。]
えーっと……、御構い無く?
[ 何と無く紡がれたのは其の様な言葉。]
[はっきりと聞こえた自分を呼ぶギルバートの声と、駆け寄る足音に姿に、ぱっと顔を明るくして。
しかし、メイの身じろぐ気配に気付けば、ゆさゆさと軽く揺すり、覚醒を促そうと。]
…メイさん、起きて。怖い夢…見てるの?
[ 矢張り聴こえているらしい。同族とは俄かに異なる様に思える此の男にも、聲は。然れど其れに対して浮かぶのは連帯感等ではなく玩具を弄ぶかの如き感情か。]
気を悪くしたか。
[ 聲には愉しむ様な色合いが含まれる。]
[ムッとした表情で何かを言い掛け]
「お兄さん…?」
[呼び掛けるトビーの声に][開き掛けた口を閉ざし]
[ハーヴェイに些かきつい視線を注ぎつつも]
[部屋へと飛び込んで行く。]
─二階・客室─
[闇に堕ちた意識は覚醒を拒んでいたものの。
呼び声に反応したのか、僅か、それを呼び込んで]
……や……だ。
[しかし。
呼び込まれた覚醒に意識が示したのは、幼い子供のような拒絶の声]
[拒絶するような、幼子のような頼りない声に、眉を寄せて。
少し乱暴かもしれないくらいに、強めに揺する。]
メイさん、メイさんっ!
起きて下さいっ! ねぇっ、朝ですよっ!
[少し不安げな声に、聞こえたろうか?]
[ 男の表情に再び瞬くも部屋へと向かって行くのを見遣れば軽く肩を竦め、然し其の扉の位置に誰の部屋かを悟り、数瞬の後に歩みを進める。]
[駆け込んだ部屋には][トビーと前に一度だけ見た少女]
[真っ直ぐに寝台に近寄り]
トビー。一人で歩くのはあぶない。
[まず第一に出てきたのはそんな言葉]
―肖像画前―
[深夜。薄暗い蝋燭の明かりが、辺りを照らしている。
『仇を打ってくれてありがとう、嬉しいわ。』
『でも、もう少しきちんとした食べ方をマスターした方がいいわね?』
もう、姉さんは厳しいな。仕方ないじゃない。
ちょっと力加減を間違っちゃったみたいで。あんなに食べ散らかしちゃうなんて思わなかったんだ。
でも、ちゃんと見ててくれたんだね。僕の事。ふふっ。
肖像画によりかかり、絵に向かってぶつぶつと呟いている。
まるで、生きている者に話しかけているような。そんな。
そこに、ローマン・カラーに身を包んだ長身の男と小さな少女が現れる。]
ああ、神父様。どうしたの。僕に何かご用事?
[あはは。幼児のように、無邪気な微笑み。]
ええ。貴方を、処刑する為に参りました。
ああそうだ。例の答え合わせを先にやっておきましょう。
『ばらの下で』。この意味は?
『秘密』でしょう?
書庫にあった書物から、ようやく見つけましたよ。
たった一つの言葉を調べる為に、あんなに時間がかかるなんて思いませんでした。
でも、楽しかったですよ。神父様。
……ご名答。すみませんね。しかし残念ながら、ご褒美はあげられそうにありません。
もう、貴方に明日はない。そうでしょう?
あ、そうそう。何故3つのパーツがあのような配置になっていたのかわかったのですよ。
玄関に投げ出された足は大勢の目を引き付ける為のいわばエサにすぎず、
本命はローズマリーさんの部屋にあった左腕とヘンリエッタさんの部屋にあった片目です。
この時私は思ったのです。
何故、親類である貴方の部屋に、パーツが置かれなかったのか、と。
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