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[自棄]
[虚無]
[くだらない]
[ただ一つのあるべき死を望むだけだったはずなのに]
───めんどくさい宿題だな。
[呟く]
[生きる]
[考えることすら]
それで───『ピューリトゥーイ』に何の用。
[52年]
[思ったよりも短い年月]
[声に問いかける]
[瞳はすでに見えないけれど]
[ナターリエの声には
それでも不安げな眼を向けた。
そうだ、そんな風には作っていないと謂った。
幻想の奔流過ぎ去りしあと
アーベルに歩み寄ると
いつかのように手を振り上げ――止められなければ平手打が飛ぶ。]
私……宣言してましたわよね。
[――打てようと、打てなくとも、
睨むのは変わらない。
いばらの葉色の眼。
カメラを手渡そうとした後、銀の男が待つ部屋へ]
―ゼルギウスの下―
[扉向こうは、
なお現実味の薄い世界だった。
銀の男。幻想生物。白。]
ゼルギウス…。
[52年。
告げられた年月に目眩がする。]
[ナターリエがアーベルに向ける言葉。
ふ、と掠めたのは、笑み。
歩みは、銀の男の待つ部屋へと。
踏み込んだ先、投げられた言葉、三日月の笑み。
は、と一つ息を吐いた]
……呼びつけておいて、何の用、と来るか。
[52年。
長いと取るか、短いと取るか。
いずれにせよ──残してきたものたちは、既にない、と。
それだけは、確たる事実として、認識できた]
あ、そうそう、
ピューリトゥーイの君。
君はもうここからは出られないから、よろしくね。
まずは、測らなくちゃ……
君がどれだけメデューサウィルスと同化したか。
ね。
愉しいな、君からは何が生まれるんだろう。
まずは、数値が50越えるのを楽しみに待ってよう。
[銀髪は笑う]
[アーベルから離した手。不安げにライヒアルトに差し出す。彼の笑みにほっとして手をつなぎ、歩き。
扉をくぐり抜け、ゼルギウスを見つけて睨む。]
少ないって言うなら、ヘリ二台くらい用意しておけばいいのに。
[ムスッとふくれ。52年と聞いてライヒアルトを見る。
父母はすでにこの世の人ではなかった。兄弟はいない。友達も疎遠になり、修道院にはもう帰れないと思っていたから残して来たものはないけど、ライヒアルトは。]
───っ。
[僅かばかりの視界が揺れる]
[緑が滲んで見えて]
[苦笑]
[返されかけたカメラ]
持ってて。
[自分の手ではもう支えるのは難しくて]
[ゆっくりゆっくり、瞬く]
―ゼルギウス部屋―
[「たった7人」。
目覚められた人は一握りでしかなく、目覚めて最初に見たのは赤い無数の星達。思い出して、奥歯を噛む。]
貴方が…ゼルギウス。
[奥に見える銀の髪の男。幻想生物の群。
ぐ、と拳に力が籠った。]
……
[52年。長いようで短い眠り。
52年たっても――病は、――。]
50?
―― 生まれる…?
[アーベルを見る。首の数値の事だろうかと。
まだそこまでは達していなかった。]
…何が、…
[ゼルギウスを見て、周囲の生物を見て]
まさ、か ―――
───生まれる?
[頭をよぎる]
[背に洞のあいた石像]
[指先が、冷たいと感じた]
[とっくに石に等しいはずの指先]
[数値]
[もう自分では、見えない]
―ゼルギウスの下―
なん ですって…?
[ざり、と一歩踏み出した。
ここから出られない?
何が、生まれる?
50を越えるまで待つ?
――ゼルギウスを信じるな。
過るのは名も知らぬ老人の――]
孔の空いた石像は……
――まさか、皆“私たちと同じ”…?
[胸元で手を握りしめた。
白いいばらの花は娘の裡より咲く]
もう一度訊くわ。
―――ゼルギウス。御前は何者なの。
[男は話を続ける。
実はメデューサウィルス感染者から、ある日、ナニカが生まれた。
いや、それまでも、今僕の周りにいるような幻想生物が生まれる症例はあったんだけど、その症例ははじめてだった。
メデューサがその肉体を自分に取り込んで、生命体として小さなヒヨコが石像から生まれたんだから。]
[これは奇跡だった。
そのヒヨコが親鳥になって、卵を産む。
そして、その卵たちが……ワクチンにつながった。
メデューサの環境でも細胞が石にならない。]
[そう今、メデューサは完治する病になったんだ。]
[アーベルの数値があがっていくのを満足そうに見ている。]
そして、今、もう、外にはメデューサ病を持つものはいなくなった。
そう、君たちは最後のメデューサなんだ。
[ナターリエの視線>>141。
ふ、と笑って、握る手に力を込めた。
両親は健在だったが、研究に没頭した時点で縁を切られていた。
弟がいたから、後は任せて。
自身の帰りを待つものは、いない。
強いて言うなら──紫、青、蒼、茜、夜蒼、紫黒の花たちだが。
自ら生み出した原種は、既に失われているだろう]
……同化?
ウィルス……と?
[笑う銀髪が告げる、言葉>>#13。
天鵞絨は、瞬いて。
続けられる話。いろの険しさが、増した]
[ゼルギウスの話を聞きながら、不機嫌絶頂な顔。]
メデューサを治すって、そういう意味なの。背中に穴を開けて死ぬんじゃ、治ったって言わない。
……いなくなった。
ならば、何故、俺たちは。
[取り残されたのか、と。
問う前に、返された、答え>>#16]
……あくまで。
人を、サンプルとして、使う気か、貴様……!
>>146
・・・・・・・僕かい?
僕は、メデューサ育成プログラム……
[そして、その姿が、青年から少女へと、それからまた少年、老人、貴婦人、などかわりはじめる……]
コンニチハ…僕はメデューサ育成プログラム……。
ゼルギウス
───ッ!
[みしり]
[それは体のうちから聞こえた音だ]
[ゆっくりゆっくり]
[緩やかに]
[花が萎れてゆくように]
[膝をつく]
[蹲る]
[左の眼]
[深い色の青灰簾石]
[右の眼]
[淡い色の青灰簾石]
[世界は真っ暗で]
[息が───詰まって]
[まるで胎児のように]
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