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呼び寄せたのは果たして何か。
その意を誰一人知る由もないまま、人々は集い始める。
1人目、自衛団長 ギュンター がやってきました。
召集をかけたものの、まだ集まってはおらぬか……。
とはいえ、どこまで真実かもわからぬ噂、焦る事もなかろうて。
全員集まるまで、ゆっくり待つとするかの。
そんな小さな田舎村の、引退した自衛団長の許に届けられた一通の書簡。
そこに記された内容に戸惑うものの、彼はそれを書簡箱へとしまい込む。
本格的な冬直前、彼の住まう湖上の館には、冬を越す準備や、館の周囲に生じる氷の堤を観るためなど、様々な理由で人々が集い始めていた。
そんな来客の中にいた旅の歌い手。
彼は、世話になった礼をしたい、と場にいる人のために演奏会を開きたい、と申し出る。
その日は晴天──月の光の下で歌いたい、と。
そんな、ささやかな趣向が、始まりを導く事となるとは。
その時には、一人を除いて知る由もないままに。
☆業務連絡
基本的な設定は、以下のwikiに記載されています。
なので、下記ページは必ずお読みください。
・『氷面鏡に映る彩』wikiページ
http://werewolf.rash.jp/index.php?%C9%B9%CC%CC%B6%C0%A4%CB%B1%C7%A4%EB%BA%CC
・『氷面鏡に映る彩』進行中ページ
http://werewolf.rash.jp/index.php?%C9%B9%CC%CC%B6%C0%A4%CB%B1%C7%A4%EB%BA%CC%2F%BF%CA%B9%D4%C3%E6%A5%DA%A1%BC%A5%B8
設定などに関する質問は、プロ〜1dの間は、メモでいただければ村建てがダミーメモでお返しします。
以降は、進行中ページの質問所へどうぞ。
村の設定が変更されました。
2人目、演奏家 オトフリート がやってきました。
―湖へと向かう道で―
[さくり、さくりと道を踏みしめながら一人の男が歩く。
手には大きめの鞄とバイオリンケースが一つ。
村を見渡せるところまで来ると立ち止まって息を吐いた]
……変わっていませんね、この村は。
[そう呟いて男は感慨深げな表情を浮かべた。
親の反対を押し切り家出同然にこの村を出て十年余り、その間一度も帰って来る事はなかった故郷。
今日ここに来たのだって、次の演奏会の場所の途中にあった、それだけのこと。
途中でどこかに一度宿を取らなければならないのなら、長年不義理をしていた知人に挨拶でもと思った、それだけのこと。]
いつまでもこういているわけにも行きません。
手が霜焼けにでもなったら仕事にならないですし。
[しっかりと厚手の皮手袋に包んだ手で荷物を持ち直して歩き出す。
目的は実家ではなく、湖の小島にある一つの館]
―→湖上の館へ―
今年も見事に凍りましたね。
堤の見ごろもそろそろですか。
[寒さが厳しいこの村の名物でもある氷の堤は態々見に来る人もいるほどで、演奏先でこの村の出身と言えば必ず話に出る。
その様子を横目で見ながら、小島へと結ぶ橋を渡れば、目的の館は目の前だ。
玄関に着いたならノックをして声をかける。
ドアが開いたなら一礼して]
お久しぶりです。長いことご無沙汰してすみません。
[と、連絡の一つも入れなかった不義理を詫びる。館の主はそのような事を咎めるような人ではなく、再会を喜び中へと招き入れてくれた。
その様子に安堵して、男は一つ頼み事をする。
この村の滞在中、館に泊めてもらえないだろうか、と。]
だって、実家に帰っても嫌な思いするだけじゃないですか。
[と告げれば、主も苦笑してそれを承諾するだろう]
―→広間―
[部屋の用意ができるまで広間で暖を取る事を勧められ、荷物を持ったまま広間へと向かう。
先客があれば挨拶をして、ソファーの片隅に腰掛ける。
男について、役場に残された記録にはこう記されている。**]
―――――――――――――――
■名前:オトフリート・ベッカー Otfried=Becker
■年齢:27歳
■職業:バイオリン奏者。他の楽器も少々
■経歴:各地を演奏して回る楽団の一員。十年ほど前に音楽の道を反対する両親を置いて村を出ている。人当たりは良い方だが興味のないことには無頓着。
―――――――――――――――
3人目、薬師見習い エーファ がやってきました。
─ ギュンターの屋敷・庭園 ─
……さっむ。
[雪に覆われた庭園を歩くと、口をつくのはこんな言葉。
寒い、冷える。当たり前だけど慣れない感覚に、巻き付けたマフラーを引っ張り上げ。
目指すのは、庭園の一角に植えられた薔薇の所]
……ほんと、頑張るよなあ。
[やって来た場所で、緑を失わない葉に口をつくのはこんな呟き。
それから、大きく息を吐いて手入れに取り掛かる。
自分の名前の由来となったという花。
それに対する複雑な思いは色々とある]
大体。
どう考えても男につける名前じゃないだろ……。
何をどうすれば、こうなるんだってーの。
[中でも一番の突っ込み所──物心ついてから幾度も繰り返したそれをため息とともに吐き出した後。
遠くから響く氷の音に、ふ、と、目を細めた]
さて、もう一息っと。
[気を取り直して、手入れを再開する。
そんな彼の住民票は、こんな感じで記されている。**]
──────────────────
■名前:エーファ・フィクスシュテルン Eva Fixstern
■年齢:19歳
■職業:薬師見習い
■経歴:村に住む薬師見習い。女性名だが、男性。
名前の由来は両親の思い出の薔薇の花らしく、本人はその事をよく思ってはいない部分がある。なお、当の両親は既に故人。
ギュンターは母方の祖父に当たり、身寄りのない現状、彼の屋敷で共に暮らしている。
名前とやや幼い外見のため、性別を誤認される事が多い。
──────────────────
4人目、大工 イヴァン がやってきました。
─ ギュンターの屋敷・テラス ─
ギュンじっちゃん、用ってなんだ?
[仕事道具と材料を抱え、ひょいとギュンターの居るところへ顔を出す。
呼ばれたからには修理か何かなんだろうとは思っていたが、その推測は間違っていなかったようだ]
ありゃりゃ、限界だなこの手摺り。
新しく接いだ方が良いよ。
壊れてんのここだけ?
ま、今日中には終わるんじゃねぇかな、任しといてよ。
[ギュンターに示されたのはテラスを囲う柵で、手摺りにもなる部分。
長年、雨風雪に晒されてきたために傷んでしまったらしい。
修理箇所を確認すると、イヴァンは仕事道具と材料を広げ、手摺りの修理に取り掛かった]
礼なんて良いよ、俺らの方がずっと世話んなってんだから。
あ、そんじゃあ礼代わりに後で大浴場使わせてくれよ。
ここで作業してたら絶対ぇ冷えるからさ。
[礼を告げてくるギュンターに笑いながら軽く首を横に振りつつ、それならば、と願いを一つ口にする。
それには快い是が返り、イヴァンはまた、にかっと笑った]
ほら、じっちゃんは中入ってて。
風邪引いて倒れでもしたらエーファに呆れられるぞ?
[揶揄いを含んで言うと、ギュンターもまた笑ってその場を立ち去って行った。
それを見送り、イヴァンは材料を適切な長さに切り始める。
作業に没頭するあまり、知った顔が屋敷を訪れた>>3ことに全く気付いていなかった**]
─ ギュンターの屋敷・庭園 ─
よっし、終わりおわりー。
さってと、次はー。
[薔薇の手入れを一通り終え、ぱんぱん、と手を叩く。
後は、室内に対比させた一部のハーブの調子を見て、と思いながらふと、母屋の方を振り返り]
……あれ。
[広間の窓越しに見えた人影>>3に、蒼い瞳が瞬く]
いつもの事だけど、またお客さんか。
……今年の冬も多いのかなぁ。
[それ自体は嫌じゃない。
自分の知らぬ場所の話を聞けるのは楽しいから。
ただ、名前とか性別とか、説明するのが面倒なだけで。*]
―ギュンターの屋敷・広間―
[広間へと腰を落ち着け、用意されたお茶に礼を言って一口含む。
毎年湖が凍る季節になると堤を見に来た客がこの館を訪れるのだが、今はどうやらあまり客はいないらしい。]
おや?
[と、どこからか聞こえてくる大工仕事の音>>8を耳で追いかける。
すぐに浮かぶのはこの村で頼りにされている大工の名前]
アルホフさんが来ているのかな?
ご挨拶ができるといいのですが。
[呟いて浮かべるのは壮年の親方の方だ。
そういえばあの家はうちと違って仲がよかったな、などと考えて、一つ年上の息子の事を思い出す。
今来ているのが、一人前になった息子の方だと知るのは、まだ少し先の話。]
[ちらりと窓越しに外へと目を向けると庭園に人の姿>>9が見えたが、それが誰かまですぐに思い出すことは出来なかった。
きっと後で顔をあわせる事があるだろうと視線を戻し、鞄の中から楽譜を取り出すとそれを眺める]
もう大体覚えたつもりですけど、暇ですし。
[本番で譜面を思い出せないのは困る。もちろん譜面台はあるけれど、いちいち確認していては演奏が遅れてしまう。
紅茶を口に含みながら、ぺらりとめくった譜面に視線を落とす。
暗譜に没頭してしまえば、声を掛けられるまで気づくことはないだろう。*]
─ ギュンターの屋敷・庭園 ─
[視線が向けられていた事>>11に気づく事はなく、中に戻ろうと歩き出す]
ん……?
[途中、足が止まったのはテラスの方から物音が聞こえたから。
あれ、と思って見に行けば、作業に勤しむ姿>>8があって]
あー、そこ、傷んでたもんねぇ。
[などとぽつり、呟いた後]
寒い中、お疲れさまー。
[作業が一段落するのを見計らってそう、声をかけた。*]
─ ギュンターの屋敷・テラス ─
[ギュンターの住む屋敷は元々、ある権力者の別荘だったらしく、建物や家具はそれに見合った装飾が施されていることがある。
テラスの柵も例外ではなく、手摺り部分や支柱はただ木を接ぎ合わせたものではなく、きちんと整形・装飾されたものだった。
無事な部分を凝視して、同じような形に作り上げるのはイヴァンの持つ拘り。
必要な分の整形を終わらせ、傷んだ部分に鋸を入れようと柵へ向かった時、その声>>12を聞いた]
よーぅエーファ。
邪魔してるぜー。
[眼下の姿に手を振り、にこやかに笑みを向ける]
真新しくしてやっからな、待ってろ。
そーだ、他になんかあるか?
修理でも棚付けでも。
[大工仕事や手が必要なものがあれば手伝うとエーファに告げた*]
─ ギュンターの屋敷・庭園 ─
[呼びかけに気付いて手を振る姿>>13に、こちらも手をぱたぱた振り返す]
うん、そこ傷んでるとモリオンが歩き難そうだから、頼むねー。
[今は屋敷内のどこかで寛いでいると思われる、飼い猫の名を上げてそう返し。
他に、と言われてんー、と首を傾げた]
あ、厨房の勝手口の立て付けがちょっと心配なんだよね。
隙間風入ってくるから、ご飯作ってるとたまにひやっとしてさぁ。
そっちも見てくれる?
お礼はこれから、パイ焼くからそれでー。
[思案の後、ぽん、と手を打ちながら思いついた修理箇所と対価を告げた。*]
─ ギュンターの屋敷・庭園 ─
うん、じゃ、頼むねー。
[頼み事への了承>>13に、にぱ、と浮かべる笑みは子供っぽい]
はぁいはい、こう寒いとお茶ほしいもんね。
それもわかってるよー。
[付け加えられた要望にもこう返し、じゃ、また、と手を振り勝手口へと足を向ける。
さすがに外で作業した後すぐに料理、というわけにはいかないから、まず目指すのは三階の自室なのだが]
あ、じっちゃん。
[部屋に入ろうとした所で祖父に呼び止められた。
曰く、客人が来ているからご挨拶を、という言葉にはいはい、と頷きを返す]
わかってるよ、じっちゃん。
俺だって、そこまで子供じゃありませんからー。
[しれっとこんな言葉を返し、更に何か言われる前にと部屋へ入る。
扉を閉める間際にため息が聞こえたような気がしたのは強引に気のせいにしておいて]
……ほんとにもー、最近るっさいんだから。
[なんて、愚痴っぽいため息を落とした後、身支度を整えて厨房へ]
[そんなやり取りの一方。
話題に上がっていた漆黒の猫は広間の片隅で、譜面をめくる来客>>11をじぃ、と見ていたりした。*]
─ 厨房 ─
[厨房に入る前に寄り道するのは地下の食糧庫。
湖の氷と雪を利用した氷室に寝かせて置いた生地と、甘く煮ておいた林檎を持ち出して行く。
なお、レシピは薬草学の師から伝授されたもの。
薬作りの師は、料理の師でもあった]
あー……お客きてるし、これからも来るなら多目に作っといた方がいいかなぁ。
[なんて呟きながら材料と道具をそろえ、手際よく作っていく。
食べたければ作るしかない、という環境故に身に着けたものだが、誤認される理由の一つでもあるのはなんとも複雑だった。*]
―ギュンターの屋敷・広間―
[ふと顔をあげると残っていたお茶は冷めてしまっていた。
本を読んでいる時はそうでもないのに、いざ楽譜に向かうと周りが見えなくなるのは仕事故だろうか。
ぱさりと楽譜を脇に置いて、ほ、と一息ついた]
あぁ、駄目ですね、他所様の家でこんな事をしていては。
[もしかしたら誰かが様子を見たかもしれない。失礼な事になっていないといいのだけどと思いながら、残っていたお茶を飲み干した。
窓の外ではなにやら話す声が聞こえる。>>14>>15
はっきりとは聞き取れないが、自分以外にも人が居るとなれば非礼は避けなければいけない。
必要以上に評価を気にするのは仕事柄ではなく、やたらと息子を抑えようとする親の顔色を伺っていた名残だ。
それが他所からの客人ではなく、古い馴染みの声と気付けばそこまで緊張する必要も無いけれど]
どちらにしても、何してたんだとは言われそうですね。
[ふと口元を緩めて、これからあるだろう再会の時を思う。
親との再会が過ぎれば、やはり眉を寄せてしまうのだけど。]
育ての親とはいえ、親は親ですけど、ねぇ……
[男が赤子の時に引き取られた養子である事は、村の大人たちや同世代のものなら知っていることだ。
なかなか子供ができなかったと言う両親が町まで行って引き取ってきた子供。
だけど、そのすぐ後に懐妊し、実の息子が生まれ、引き取られた意味をなくした子供。
実子ばかりを可愛がる親を見かねて可愛がってくれた祖父が、与えてくれたバイオリンに子供は夢中になった。
いつか、色んな所を回る演奏家になりたいと抱いた夢を、両親は一蹴した。
「「そんなもの」にするためにお前を引き取ったわけじゃない」
跡継ぎは実子である弟と決まっているのに、それでも自分たちの都合で縛る親が嫌いだった。
男を応援し可愛がってくれていた祖父が亡くなった時、こつこつ貯めていた僅かなお金を持って村を出た。
それから、親に連絡を入れたのは、楽団に参加が決まった事を伝える手紙、一通だけ]
待っているとも思えないんですよねぇ。
[などと溜め息をつけば、部屋の隅から「にゃあ」と声がした。>>18]
おや、猫さん。聞かれてしまいましたか?
[見れば黒猫がじぃぃぃっとこちらを見ていて、何をしているのかと言いたげに首を傾げていた。
内緒ですよ?と、猫相手に口元に人差し指を当てて内緒のポーズ。
そうして]
移動が多いと動物は飼えないんですよねぇ。
[などと言いながら、おいでと言うように手を差し出したなら、黒猫を撫でる事は叶うかどうか。**]
─ ギュンターの屋敷・テラス ─
おぅ、任せとけ。
[手を振り屋敷の中へ戻って行くエーファ>>16に手を振り返して、見送った後に作業を再開する]
[傷んだ部分に鋸を入れ、手摺りと支柱をそれぞれ切り離し。
次いで支柱を差し込む穴を開け、柵側の手摺りの目立たない部分に四角い切れ込みを入れる。
それぞれを紐等で仮止めすると、手摺りに入れた切れ込みが新たに接いだ部分につけた切れ込みと合わさり一つの穴となった。
その穴に板材を嵌め込み、余分な部分を鋸で切り取る。
軽くヤスリ掛けをして凹凸をなくせば、きっちりと固定された手摺りの出来上がりだ。
真新しい木であるために色の違和感はどうしても残るが、それも時間が経てば解消される]
よーし、こんなもんかな。
上出来上出来。
[自分で自分の作業を褒めて、満足げに笑みを浮かべる。
道具を片付け残った材料を抱え込むと、一旦屋敷の中へと引っ込んだ]
―ギュンターの屋敷・広間―
[黒猫との接触を試みていると、なにやら驚いたような、そして知っている声が聞こえて顔を上げ。そうして、姿を確認すると、その懐かしい姿に笑みが零れた。>>25]
イヴァンか?
そうそう、俺だよ。
いやぁ、本当に懐かしいっていうか、久しぶり。
ギュンターさんはご自分の部屋かもしれないな。
[仕事柄身についた丁寧な物言いも、旧知の相手であればすぐに崩れて昔の口調に戻る。
何よりこの村の人間の前で「私」というのは少し気恥ずかしい。
そうして、黒猫に声をかけるのにもう一度イヴァンを見て]
大工仕事の音が聞こえてたの、イヴァンだったのかい?
おじさんは一緒に来ていないの?
[なんて尋ねてみる。
相変わらず手は黒猫に向かって伸びたままだったけれど。**]
─ ギュンターの屋敷・広間 ─
うわ、マジでオトフリートだ、久し振りだなー!
今まで何してたんだよお前。
今日帰って来たのか?
[笑みと共に返された肯定>>26に破顔しながら、扉から顔を覗かせた状態から身体を部屋の中へと滑り込ませ、オトフリートへと近付いて行く。
矢継ぎ早に質問が飛ぶのは致し方ないこと]
あー、じっちゃん部屋か。
んじゃあ報告は後にするかな。
ん?
あぁ、俺がやってた。
親父は別んとこの修理に行ってるよ。
この時期は冬支度のために引く手数多でなー。
[作業音について問われると、自慢げににかっと笑ってみせる。
大工になって早10年。
父親にはまだまだだと言われることが多いが、仕事は丁寧に行っている心算だ]
いやーホント懐かしい。
出てってからどうしてんだろう、ってずっと心配してたんだぜ。
元気な姿見れて安心したよ。
[ホッとするように短く息を吐いてイヴァンは笑みを浮かべる。
楽団へ入った話などの途中経過を、彼の養い親から聞いたことなど一度もなかった**]
[呼ばれた猫は、差し伸べられた手>>22をじぃ、と見てしばし、思案するよに尾を揺らす。
その内、こちらは見知った者がやって来て、親し気に話しかける様子>>25に警戒を緩めたのか、とてとて、そちらに近づきにぃ、と一鳴き。
撫でる手はそのまま受け入れた]
─ 厨房 ─
……ってーと。
焼けるまでの間にお茶も沸かさないと、っと。
来てるお客さんのお茶も新しくした方がいいだろうし……。
[言いながら、食器棚を開けて使われているポットを確かめる]
あー、やっぱ少人数用か。
じっちゃんがやるとこうだからなぁ……大きいのに替えとこっと。
[なんて呑気に言いながら、てきぱきと動いて行く]
……っかし、さっむいなぁ。
[その最中。ぼやきが落ちるのは隙間風のせい。*]
―ギュンターの屋敷・広間―
あの時は何も言わないで出て行ってごめんな。
音楽の仕事目指して町に行ったけど、失敗した時が怖いから黙ってたんだ。
ちょうどさっき帰ってきたところ。
と言っても、仕事があるから数日だけだけど。
[ぽんぽんと投げられる質問>>27は予想していたから、返す言葉は苦笑混じり。
心配させていたかと思えば、やっぱりどこか申し訳ないと思ってしまうけれど、不用意に深く突っ込んでこないところに、彼らしいなと思うのもやはりどこか懐かしかった。
そうして、先ほどの仕事を一人でしていたと聞いて、素直に驚きを顔に出す。]
イヴァンが一人で?
そうかぁ、昔から仕事に関しては特に真面目だったもんな。
おじさんに会えなかったのは残念だけど、確かに冬支度で忙しい時期か。
村にいる間に挨拶に行くって、帰ったら伝えておいてくれる?
[仕事が終わったなら一休みの後で家に帰るだろうと、伝言を一つ頼んでみる。
親と上手く行っていない男にとって、彼ら親子はどこか憧れのような物でもあったから。]
一度も連絡しなかったもんなぁ。ほんとごめん。
今は、町の楽団に混ぜてもらって、あちこち演奏して回ってるんだ。
病気とかはしてないから大丈夫だよ。
[簡単に今何をしているかを伝えて、傍らにおいた楽器ケースを見せて、ほっとした様子>>28のイヴァンに笑みを返す。
あの人たちのことだから、男の事などそうそう話題にすることはないだろうということはわかっていたし、昔世話になった人には報告にいくつもりでいた。
こうしてイヴァンに話したことで、彼から他の村人にも話しは伝わっていく事を少し期待して。
話している間に警戒が薄くなったのか、近寄ってきた黒猫>>29を撫でて毛並みなどを密かに堪能する。
もふもふは正義、と心の中で思っていたとかいないとか。*]
─ 厨房 ─
[あれこれと動き回りつつ、ふと、外を見る。
窓の向こうに見えるのは氷の堤。
わざわざこれを見にやって来る者もいるという、自然の造詣]
そーいや、あの歌い手さんもこれ見に来たって言ってたっけ。
[数日前から滞在している旅の歌い手。
噂に聞く光景を見たい、とはしゃいでいたが、物心ついた時から見続けてきた身にはあまり新鮮さはなくて]
そーいや、また寒い、ってこもってんのかなあ?
薪、足りてるか聞いてこないと。
[なんて、あれやこれやとやる事を積み上げて行くうちに、オーブンの中では綺麗な焼き色が生み出されて行く。
その焼き加減を確かめつつ、大き目のポットに紅茶、多目のカップを用意して。
焼き上がったパイと一緒にワゴンに乗せて、広間へと移動開始]
─ ギュンターの屋敷・広間 ─
よいしょっと、お邪魔しまーす。
[広間の扉を押し開け、軽く呼びかけながら中へと入る。
大人しく撫でられていた黒猫が、声に反応するようににぃ、と一声鳴いた]
あー、ここにいたのかモリオン。
っと、イヴァンにーさんも。
お茶とお菓子、用意できたよー。
[軽い口調で呼びかける。
10年前は今とは比べ物にならないくらい大人しかった少年と、今の姿は容易に結びつかないかも知れない。*]
―ギュンターの屋敷・広間―
[イヴァンと話しながら黒猫の毛並みを堪能していると、ワゴンと共に現れた姿>>34に顔を上げる。
掛けられた言葉と黒猫がそちらを伺って鳴く様子に飼い主なのだろうとすぐに気付いて。]
お茶ですか、ありがとうございま…
あ、れ?
[見知った顔のようではあるけれどどこか雰囲気が違った気がした。
十年と言えば子供が大人になる頃だ、だから外見が変わっているのはわかるけれど、名前が一致するまで少しの間が空いた。]
え、っと
もしかして、君……
[誰、とは訊かない。ただ、覚えている姿とはやっぱり雰囲気が違っていたから。
確認に見せかけた問い掛けを一つ。**]
─ ギュンターの屋敷・広間 ─
[呼びかけに、こちらを向いた客人は、どうやら自分を知っているようで。
あれ? と思いながら首を傾げた]
えーと……俺、エーファですけど。
あれ、前にも来た事ありましたっけ?
[年の差はあるし、昔は進んで人と関わる事もなかったから、すぐに誰とは出てこない。
だから、前にも来た人かな、なんて思いながら名を告げる。
ちゃんと挨拶を、と言われた事は、見事に記憶から飛んでいた。**]
―ギュンターの屋敷・広間―
[村を出た理由に納得の言葉>>37が返ったならやはり笑って]
うちの親は反対してたからね。
家にいたんじゃ本当に触れることさえ出来なかったからさ。
[唯一の味方だった祖父が亡くなったこともきっかけではあるけれど、それは言う必要はないと胸の内にしまう。
仕事について感心を向けたなら、それはとても良い笑顔が返ってきた。]
十年、って事は、俺が出て行ってすぐなんだな。
おじさんも仕事には厳しかったと思うけど、そのおじさんが仕事を任せるんだからやっぱり凄いと思うよ。
ありがとう、よろしく頼むね。
[快く伝言を引き受けてくれたことに礼を言って、笑う。]
誰にも理由言わなかったから、上手く行かなかったら帰って来辛かっただろうな。
それなりに夢が叶ってきたからこうしていられるしね。
[音楽で収入を得る事が出来ている、それを聞いたら両親はどんな顔をするだろう]
ん、いいよ、俺の音でよかったらいくらでも。
毎日少しでも弾いた方がいいし、聴いてもらえたら嬉しいから。
[演奏を、と言われたなら>>38二つ返事で引き受ける。
そうして、ワゴンを運んできた姿に声を掛け、頼まれているらしい勝手口へと向かうのを見送る。]
本当に、一人前の大工になったんだな、イヴァン。
[十年と言う月日はやっぱり長いと、昔馴染みを見て思う。
その長さは、ワゴンを運んできた彼>>34にも言えることだったか、こちらが声をかけるのに不思議そうに首を傾げて自分の名を告げた。>>36
その名前にやはり覚えがあって、少し考えて]
エーファ、って、フィクスシュテルンさんの所の……?
確か、ギュンターさんのお孫さん、だっけ?
[ぽつぽつと思い当たる事を口にして見るけれど自信が無かった。
向こうがこちらを覚えていないのは、男がすぐに思い出せなかったことを考えれば自然な事と受け止めた。
彼との歳の差もあるけれど、男自身もそう付き合いが広いほうではなかったから。]
前にも、って言うか、十年前までこの村に住んでたんだ。
俺も大人しい方だったから覚えて無くても仕方がないかな。
ん、と……雑貨屋のベッカーのところの、オトフリートだよ。
[そんな風に自分の身元を明かしてエーファを見る。
実家のことはあまり触れたく無いけれど、今回ばかりは仕方がない。*]
─ ギュンターの屋敷・広間 ─
あ、はーい、行ってらっしゃーい。
[すぐ戻る、というイヴァン>>38は元気にお見送りして。
それから、自分の名を聞いて、考える素振りを見せる人>>40をじぃ、と見た]
あ、うん、そうだよ。
今は、いろいろあってじっちゃんと暮らしてるけど。
[確かめるような問いかけ>>41に、こくん、と一つ頷き。
続けられた名乗りに二、三度瞬いた]
あー……十年前。
その頃は俺、特に籠ってたからなあ……。
[色々あって引きこもりになっていたのが丁度その頃で。
だから、彼の旅立ちの事も知らないままでいた、けれど]
んでも、名前は覚えてる……か、な。
と、なると、挨拶は初めましてじゃなくて、お帰りなさいの方がいいのかな?
[彼と実家の関係などは知らぬから、呑気な口調でう言った。*]
―ギュンターの屋敷・広間―
[こちらをじぃ、と見る様子>>42は興味なのか警戒なのか。
男が出した答えはどうやら正解だったようで、頷きと共に返された言葉に、今度はこちらが頷いて見せた。
店の手伝いをしながら、客の話は覚えておけと言われた事が少しは役に立ったらしい]
あ、よかった、あってた。
そうか、今はここで暮らしてるんだ。
[色々、の部分には触れないまま。
人には触れられたくない部分があることは、男もよく知っているから]
籠もってた、かぁ。そういう時期はあるよな。
でも、名前だけでも覚えていてくれて嬉しいよ。
[多分、両親はいなくなった男の事はそうそう話すことは無かっただろうから、少しでも覚えていてもらえた事>>43は素直に嬉しかった]
それはどっちでも構わないけど…やっぱり、お帰りなさいの方が嬉しいかな。
[などと、少しばかり感傷的な事を口にしたのは、色々あってもやっぱりここが自分の故郷だと感じているからだ。*]
─ ギュンターの屋敷・広間 ─
[色々、の部分触れられなかったのは幸い。
その辺りや引きこもりの事情はあまり、口に出したいものではなかったから]
まあ、名前だけだけどね、ほんとに。
ん、じゃあ、改めまして、お帰りなさい。
[願いを受けて居住まい正して。
一礼してから、こう告げてそれから]
さて、と。
お茶、冷めちゃってるみたいだし、新しく淹れるねー。
あ、甘いのへーき? アップルパイも焼いてきてるんだけど。
[にぱ、と笑って手際よく始めるのはお茶とお菓子の準備。*]
―ギュンターの屋敷・広間―
[男が家族の事についてあまり触れられたくないように、彼にもきっとそういう物があるんだろうと。
そういう人付き合いの機微は、町に出てから身についたもの]
俺の方も、家に来たお客さんの話しを拾った程度の事しか覚えてなかったし、お互い様じゃないかな。
ん、ただいま、エーファ。
[お帰り、にはただいまを。
頭を下げて見せるのに>>45、こちらも同じように一礼をして
続いた言葉に]
アップルパイ!
[と思わず声にしてから、あ、と言う顔で口元を抑えた]
甘い物は、大丈夫だよ、うん。
よかったら、少し貰っていい?
[と、一応控えめに言ってみるけれど、緩んだ口元が「好物」と言っているような物だった。*]
─ ギュンターの屋敷・広間 ─
[お互い様、という言葉>>46に、掠めた笑みは安堵を帯びていたが、気づかれたかどうか。
挨拶のやり取りの後、上がった声に蒼い瞳はきょと、と瞬いて]
アップルパイ、好きなの?
なら、ちょーど良かった。
[控えめな物言いを気にした様子もなく、そう言って笑って。
切り分けたパイと淹れ直した紅茶を運ぶ]
と、そうそう、そこの黒いのはモリオンね。
[それから思い出したように黒猫の名を伝えると、猫は気だるげな様子でにぃ、と一声鳴いた。*]
―ギュンターの屋敷・広間―
[笑みに紛れた安堵の色>>47には気づかずに、お茶の用意をする彼の手元を見守る。
うっかりを誤魔化したつもりではあったけれど、やっぱり隠しきれていなかったようで
浮かべるのは少しばかりの照れ隠しの苦笑]
お菓子の中で特に好きなんだ、アップルパイ。
エーファが作ったんだ?凄いな。
[楽器は弾けてもそれ以外の器用さとは若干縁遠い男からすれば、お菓子を作れるというのはそれだけで「凄い」ことだった。
パイと紅茶を運びながら、傍にいた黒猫の名前を教えてくれたから]
ありがとう。
[と纏めて礼を言う]
[そうして、気だるげな様子の黒猫を見て]
良い名前を貰ったんだね。
[と言ってはみるけれど、猫にはどこまで通じたか。
受け取ったパイは見た目だけでなく匂いもよかったから、さくりと一口口に運んで]
あ、おいしい。
[と、ありきたりだけど素直な感想を一言零し、笑った。**]
─ ギュンターの屋敷・厨房 ─
[演奏について是を向けられた>>40時は、ありがとな!と礼を言って。
エーファと入れ替わるように広間を出ると厨房へとやってくる。
ひゅるりと隙間風が身を襲った]
うへぇ、こりゃ寒いわ。
[ぶるりと身を震わせ、勝手口へ近付くと、何度か扉を開け閉めしてみる]
んー、やっぱ金具かぁ。
こりゃ付け替えの方が良いかもしんねぇ。
[隙間風が問題、となると開閉がスムーズになるように細部を削る、と言うのは悪化するだけのこと。
歪んだ金具を取り付け直せば隙間もピタリと嵌るようになる、はずである]
お茶貰ってから一旦戻るかね。
ついでにオトフリートのこと伝えてこようっと。
[この後の予定を定めて、イヴァンは広間へと戻って行った]
─ ギュンターの屋敷・広間 ─
エーファ、勝手口なんだけど。
金具新しくした方が良いみたいだ。
一旦戻って金具取りに行ってくるよ。
あ、もちろんお茶とパイ貰ってからな!
[そう状況を伝えてちゃっかりと広間の一席へと座り込む。
お茶とアップルパイを貰うと、頂きます、と一言告げてから手づかみでパイを食べ始めた]
んー、うめー! お茶も合うな!
[イヴァンに凝った感想など言えるわけもなく、けれど思ったことをストレートに言葉にしてエーファの腕を賞賛した。
やがてアップルパイも欠片のみになり、それを口に放り込んでお茶で喉に流し込む]
ごちそーさん!
さぁて、もう一仕事すっかぁ。
[パン、と膝を一つ叩くと、立ち上がり広間の外へと向かう]
金具とってすぐ戻ってくっから、もう少し我慢してくれな。
[エーファにそう言い残して、やや慌しく屋敷を出て行った**]
5人目、仕立て屋 ユリアン がやってきました。
─ 小島の館・主の私室 ─
[白髪の元自衛団長 ギュンターに仕立てた冬服は、彼の存在と年齢を示すように質感と落ち着きのある色だったけれども、気に入ってもらえただろうか。]
脇の具合はいかがでしょう?
[後ろに立って肩や脇の皺を検分する。
自分ではなかなかの出来栄えだと思うが、自画自賛しているだけではやっていけない。
仕事として請け負った以上、客であるギュンターに評価してもらわなければならないのだ。]
襟を別布にしたのはよかったですね。
眼の色によくお似合いです。
上品でお洒落に見えるのではないでしょうか?
[営業用の口上を述べながら、相手の顔色を窺う。
控え目な、傍目には困っているようにしか見えない微笑を浮かべて。]
─ 小島の館・3階廊下 ─
[挨拶し、仕立て道具を抱えてギュンターの私室を辞去すれば、
扉の前で休んでいた黒い犬が起き上がり、ぱったぱったと尻尾を振った。]
お待たせ、ビルケ。
[シラカバと名付けた愛犬に声をかける。]
─ 回想 ─
[もう10年も昔になる。
森の中の小道でこの犬に助けられたのは。
林業で生計を立てる小さな村は森に囲まれていた。
隣町への行き来には、ただ1本の小道しかない。
母のお使いでその道を通ったユリアンは、追い剥ぎに襲われた。
殴られて昏倒したユリアンは、金目のものを奪われ、上着まで剥がされた。
あのまま藪の中に打ち捨てられ、夜を過ごしていれば、間違いなく凍え死んでいただろう。
どこからかやってきたビルケが寄り添い、寒さから守り、吠えて村人にユリアンの位置を知らせてくれたのだ。]
[母は怒るばかりで現実的な対処のできないひとだった。
ユリアンは寄り道をするような子ではない、探しに行かなければと兄が主張してくれなければ、
ユリアン・トラウゴット
ここに眠る
という墓碑が村の墓地に建てられていただろう。
酷い風邪で半月近く寝込みはしたものの、ユリアンがそういう最期を迎えずにすんだのは、ビルケのおかげだ。]
[村役場の記録には、その後のユリアンが父の馬具職人の仕事を継がず、仕立屋になったことが記され、綴じられている。]
―――――――――――――――
■名前:ユリアン・トラウゴット Julian Traugott
■年齢:22歳
■職業:仕立て屋
■経歴:亡父は腕の良い馬具職人だった。仕事を継いだ兄は町で工房を構え、母もそちらに移ったので、今は村の小さな自宅で一人と一匹暮らし。独身。
愛犬はビルケ、12〜3歳の雌の老犬。
―――――――――――――――
─ 現在 ─
[意識を取り戻したユリアンがいの一番に訴えたのは、命の恩人ならぬ恩犬を飼うことだった。]
あれから10年になるんだな……。
[3階の廊下を歩きながら、すっかり老いて白い毛の増えた雌犬の顔を見やると、ぽつりと言った。]
[話しかけられたとわかって、ビルケが黒い耳を動かす。
大きな立ち耳や尖ったマズルのりりしい顔立ちだけを見れば、狼に似ているかもしれない。
ふさふさした巻き尾や、癖のある毛を見れば、狼との差は一目瞭然なのだが……。
間違われて猟師に撃たれるのではないかと、子どものころは本気で心配していた。
首輪の代わりに派手な色合いの端切れで作ったスカーフを付けているのは、その名残だ。]
[その後に聞いた話を総合すると、山向こうの牧羊犬が輸送される途中で逃げ出したのではないかと思う。
そして、森の中をさまよううちに、怪我で意識も定かならぬ子どもを見つけ、自分が保護してやらなければと思い込んだのだろう。]
寒くないかい?
[愛犬にそう声をかけながら階段を下りた。
小さな村では全員が顔見知り以上だ。
廊下を歩けば、遠目にも見知った顔を見つけたかもしれない。]**
─ ギュンターの屋敷・広間 ─
あ、そうなんだ。
[特に好き、という言葉>>48にほんとにタイミングよかったんだなあ、なんて思いつつ]
んー、お菓子とかは、食べたかったら自分で作んないとなんないからね。
それやってたら、なんか、身に着いた。
[冗談めかした口調でそう言って。
名を褒められた黒猫がにぃ、と鳴くのに一つ息を吐いた。>>49]
お前、そういう言葉には反応いいよな。
[なんて呆れた口調で呟くものの、おいしい、との声が届けば自然、口元も綻ぶ]
お口にあったようで何よりでーす。
[そんなやり取りをしている内に、厨房の様子を見に行ったイヴァンが戻ってくる]
あちゃー、そこまでかぁ……。
うん、それだと俺じゃお手上げだからお願いねー。
[専門職に頼む事が大事なのは、自身も専門職を目指しているからよくわかる。
要求に応じてお茶とお菓子を用意して、こちらからも素直な感想が聞こえればやはり掠めるのは嬉し気な笑み]
はーい、了解了解、ちゃんと待ってるから、慌てなくていいよー。
[お茶とパイを綺麗にたいらげ席を立つイヴァンを軽い言葉で見送る。
黒猫も、続くようにににぃ、と一声鳴いた。*]
……と、そう言えば。
[さて、それじゃ自分も一休み、と。
思った所でふと思い出すのは祖父から聞いていた来客の事]
そろそろ、来る頃だって言ってたけど、どーなんだろ。
[服の仕立てを頼んだから、近く届けに来るだろう、と。
祖父から聞かされていた仕立て屋は来ているのかどうか。
先に確かめに行くかどうか、しばし、逡巡する。
当人が祖父の部屋を辞して降りてきている事>>60には、さすがにここにいては気付けない。*]
―ギュンターの屋敷・広間―
[相槌のように声が返る>>61のに頷いて、続いた言葉に、あー、と小さく零す]
そうだよなぁ……うちの店だとたまに日持ちのする飴とかが入る程度だし。
必要だから身につくのはあるもんな。
[小さな村の雑貨屋なんて扱う物は限られている。無い物は取り寄せか自分で町まで行くしかない。
今実家がどう商いをしているのかは男の知るところでは無いけれど]
モリオンも、この名前が気にいってるんだよな?
[にぃ、と自慢げに鳴く様子にそう言って、パイを口に運ぶ。
素直な感想を伝えれば、喜色が浮かぶのに口元を緩めた。]
[やがて、仕事の下見に行っていたイヴァン>>51が戻ると仕事の段取りを口にする。
その様子に、本当に一人前になったんだなとしみじみと感心してお茶を飲む。
自分以上に素直に感想を口にする様子に自然と笑みが浮かんで]
おいしいよな、これ。
[と相槌を打つ。
仕事が控えているからかさくっと食べ終わって席を立つのに、忙しいんだなと思いつつ。
依頼を早くこなそうと言う責任感は昔と変わっていないな、なんて思ったりもしていた]
あ、もしおじさんがいたら、伝言よろしくね。
[先ほど頼んだ事をもう一度お願いして、慌しく出て行く背中>>52を見送った]
ん?
[漸く落ち着きそうだったエーファが小さく零す>>63のを耳が拾う]
他に誰か来る予定なのかい?
[時期的に来客が増える時期というのは知っている。
もしも客が多くなるようなら、部屋を借りるのは控えた方がいいかもしれないと内心で思った。
懐かしい顔>>57にまた一つ出会うことになるのは、まだ少し後の事。
尤も、お互いに覚えているかどうかはまた別の問題だ。*]
―ギュンターの屋敷・広間―
うん、それに、御師様が色々教えてくれるからさ。
試してみたくて、ってのもあるかな。
……あ、御師様ってのは、薬作りの師匠ね。
俺、一応薬師の見習いやってんの。
[亡くなった母が病がちで、世話になっている内に自分でも薬が作れるようになれば……と。
そんな思いから弟子入りして数年。
薬作り以外にも、学んでいるものは多い。
昔は引っ込み思案だった少年がここまでからっとした態度を取れるようになったのは、大体師匠の影響だ]
あ、うん。
じっちゃんが、新しい服の仕立てを頼んでて、それがそろそろ届くはずだって聞いてたから。
ユリさん、そろそろ来るかなって。
[来客の予定を問われ、答えながら扉の方へと視線を向けた。*]
―ギュンターの屋敷・広間―
御師様?
[聞こえた物>>67にぽつりと零したら、続いて説明と今の仕事について教えてくれた]
へぇ、薬師の見習いか……専門家がいてくれたらみんな安心できるな。
試して、失敗しても得る物はあるから無駄じゃないしな。
いい御師さんみたいで何より。
[エーファの家族の事まではあまり覚えてはいないし、態々触れることでも無いけれど。
籠もっていた、と言う彼が変わるきっかけの一つだったのかもしれないと。
村を離れていた月日はそれぞれを成長させるのに充分な時間だったと改めて実感して。
来客の予定を尋ねたなら、仕立て屋が来る予定と聞いて、その名前に首を傾げた]
ユリさん?
[やっぱりすぐに思い出せなかったのは、馬具職人の息子と仕立て屋が結びつかなかったからかもしれない。*]
─ ギュンターの屋敷・広間 ─
まだまだ半人前以下だ、って良く言われるけどねー。
ま、火傷切り傷の手当てくらいはできるけど。
[向けられる言葉>>68は苦笑い。
人命に関わる技術は、それ故に妥協を許されない。
半人前扱いにすら、いつ到達するやら、という感じだった]
ん、ああ……ユリアン……ユリアン・トラウゴットさんね。
わんこ連れた服屋さん、じっちゃん、結構お気に入りみたいなんだ。
[大雑把な説明をすると、黒猫がぴくり、と身じろぐ。
それまでのお澄ましはどこへやら、何やらそわそわと落ち着かない様子は、少年には見知ったもの]
あ……モリオンがなんか感じてる。
もう来てるのかな?
[黒猫がそわそわするのは、大抵は仕立て屋の愛犬が来ている時。
だから、来てるのかな、と首を傾げた。*]
―ギュンターの屋敷・広間―
半人前以下とは厳しいね。
でもそれくらいじゃないと薬師とか職人は務まらないのかも。
俺もよく怒られるし。
[音楽なら多少のミスも味の一つで誤魔化せるが薬はそうは行かない。
そう考えれば彼の師匠の厳しさも納得が行くところだ]
ユリアン……トラウゴット…
[告げられた名前>>69を反芻して記憶を探って]
って、馬具職人さんのところの、かな?
そうか、あの子は仕立て屋になったのか……
[男が村を出た十年前は、ユリアンはまだ少年だったし歳も少し離れていたから、あの頃と今を比べてしみじみと時の流れを実感する]
ギュンターさんのお気に入りか、お得意様が居るなら安心かな。
んー?
[話している最中に黒猫がそわそわし始め、それが件の来客の印と聞けば頷いて。
もうそこまで来ているのだろうかと、扉の方へと視線を向けた。**]
6人目、画家気取り カルメン がやってきました。
─ 自宅 ─
…悪いけれど、私はここを離れる気は無いの。
帰ってもらえるかしら。
[油絵特有の臭いが鼻につくらしく、眉を顰める相手を見遣る。
キャンバスに向けた絵筆を止めないままに投げかけた言葉も、相手の気持ちを逆撫でた様だった。
無言でこちらを見据えるのを幸い、自分も口を閉じて筆を動かし続け。
痺れを切らした相手が再度口を開いたのと、絵筆を置いたのはほぼ同時]
─ 自宅 ─
…申し訳無いけれど。
お客様の所に届けに行かなければいけないから、そろそろ帰って頂けるかしら。
[相手が話し始める前に、描きあがった肖像画を手で示しながら退室を促す。
納得いかない様子の相手に、それでも女は態度を崩すこと無く]
そろそろお帰りにならないと、雪で道が塞がれるかもしれなくてよ。
[日が暮れれば帰路が危うくなるかもと言外に告げると、男にも意図が伝わったようで。
二度、三度と何か言いたげに口を開き、閉じた後]
─ 自宅 ─
「わかった、今日はこれで帰ろう。
……しかし、君程可愛げの無い女は初めてだ。
なるほど、婚約者に逃げられる訳だな。」
[そう言葉を吐き捨てて相手は出ていった。
その背中が閉まる扉で隠れると、ただ深く、長い息を吐き出して]
……お父様達も、これで懲りてくれると良いのだけれど。
[両親が選んだ見合い相手を送り返すのはこれで何度目か、と遠い目をした後緩く頭を振った]
─ ギュンターの屋敷・広間 ─
ん、すげー厳しいよ。
でも、なんていうか……楽しい?
だから、続けてられるんだ。
[厳しいけれどそれだけではなく、料理や菓子作りも教えてくれるから、と。
楽しいと思える理由を説明して]
んーと、そうなのかな?
そこらはよくわかんないけど。
家族の誰かが馬具の職人さんなのは知ってる。
[自分の家庭事情を話したがらない少年は、他者の事情も詮索したがらない。
故に、その辺りの事には疎かった]
まー、石頭のじっちゃん相手に、良く頑張るなあとは思うけどねー。
[さらっとそんな事を言いながら。
落ち着かない黒猫の様子に、やーれやれ、と思いながら立ち上がって]
ちょっと見て来るから、モリオンお願いしまーす。
[さらりと告げて、広間を出る。
黒猫はしたぱた、落ち着かない様子で尻尾を振っていた]
─ ギュンターの屋敷・廊下 ─
[ぱたぱたと、急ぎ足に広間を出て廊下へ。
階下へ降りる姿>>60とは、どこで出会えたか。
ともあれ、見知った姿を認めたなら]
あー、やっぱ来てた。
ユリさーん、お茶飲んでくー?
[軽い口調でこう呼びかけた。**]
─ 自宅 ─
…気落ちしても仕方ないわね。
遅くならない内に届けに行きましょ。
[そういって目を向けるのは、今しがたまで筆を動かしていたキャンバスの中の男性。
かつて自衛団の団長として采配を揮っていたに相応しい威厳と柔和な微笑みを描き写して欲しいと頼まれたのはどれ程前だったか。
いつもならば月単位で時間をかける所だが、出来る限り早く仕上げて欲しいと願われたものだ。
何故そんなに早く欲しいのかは分からないが、望まれているならば少しでも早い方が良いだろう、と。
まだ乾ききっていないキャンバスに仮縁を宛がい、ベニヤで覆ったそれを更に布で覆い包んで湖上の館へと持ち運んでいった**]
[女の住民票は、以下のように記載されている]
──────────────────
■名前:カルメン・マシューズ Carmen=Mattews
■年齢:25歳
■職業:画家
■経歴:村に住んでいた資産家の娘。
両親は5年前に屋敷を引き払い利便の良い都市に移転した。
同時期絵画を教わった男性と婚約までしていたものの、相手側からの申し出により破棄。
現在は結婚後に住む予定だった一軒家にて一人暮らし。
肖像画や本の挿絵など、知己の伝手からの依頼で生計を立てている。
──────────────────
7人目、修道士 ライヒアルト がやってきました。
[湖の畔に開けた小さな村の教会に赴任したのは六年前。
ほぼ全面が凍結する湖を見て感嘆したのを覚えている。
随分前に亡くなった母の故郷であると知ったのは、
司祭として以前よりこの村にある彼と打ち解けてから。
母の家名であるヴァレンシュタインの響きが印象に残っていたらしい。
そんな縁もあり、この村に馴染むのにはそう時間も掛からなかった。
本格的な冬はもう間近。
もう六年になるのかと感慨深く思いながら、小島の館の扉を叩いた。]
―――――――――――――――
■名前:ライヒアルト・ヴァレンシュタイン Reichard Wallenstein
■年齢:26歳
■職業:侍祭
■経歴:6年前に村の教会へと派遣された修道士。
ミサ聖祭にて奉仕する役割を担う侍祭。
そろそろ助祭にとの話も出ているがまだ未熟な事を理由に辞退している。
村の外からの来客が月に数度あり、送られ書簡も多い。
身寄りはないとされているが、どこかの権力者の落胤との噂がある。
―――――――――――――――
[村役場にある更新されたばかりの住民票にはそう記される。**]
─ →自宅 ─
[エーファとオトフリートに見送られ一度辞したギュンターの屋敷。
もう一人訪問者が居た>>60ようだが、こちらの姿を見られても、イヴァンは気付かずに出て行ってしまう。
そうして向かった自宅では、父親もまた一段落して戻って来たところであった]
ただいまー。
え? 途中で放り投げてきたんじゃねーって。
後で完成したの見て吠え面かくなよ。
じゃなくて。
もう一箇所、勝手口の立て付け直して欲しいって言われたから部品取りに来たんだ。
蝶番の予備まだあったよな?
[疑う父に言い返し、部品を収めている棚から金具を引っ張り出す。
あそこの扉の蝶番ならそっちだ、と部品の種類まで把握している父の言葉を受け、勝手口につけられているものと同じ形の金具を二つ拾い上げた]
あ、そーだ。
オトフリートが帰って来てたんだよ。
ほら、ベッカーさんとこのオトフリート。
今楽団に入っててあちこち行って演奏してるみたいだぜ。
ん、今はギュンじっちゃんのとこ。
居る間に挨拶に来るっては言ってたぜ。
[次いで、オトフリートが来ていることと、彼からの伝言を父に告げる。
それを聞いた父は最初こそ驚いていたが、オトフリートが元気そうであると分かれば嬉しそうに笑っていた]
他の人にも伝えといてくれな。
そんじゃもっかい行って来る。
[最後にもう一つ付け加え、イヴァンは再びギュンターの屋敷へと向かった]
[テラスへ続く扉を少し開けると、湖からの冷たい風が廊下へ流れ込んできて、思わず身震いする。
ビルケも嫌そうに後退ってしまった。]
誰もいない……あれ?
[何か小さなものが足元へ転がってきた。
拾い上げると、指ぬきだった。
ごくありふれた真鍮製の。]
[ユリアンはしばしそれを見つめたが、]
でも……?
[困惑した顔をリネン室の扉へ向ける。
同じ形のものを何個も持っているが、細工が違うように思えた。
ならば、この館の誰かが落としたのだろうか。
テラスへの扉を閉めると、後退ったビルケに近づいて首元の毛を撫でつつ、ささやいた。]
これ、誰のものだろう?
[館の使用人のうち数名はごく最近入れ替わったばかり。
ひとの顔を覚えるのが苦手なユリアンには、落とし主の顔を思い浮かべることはできなかった。]
─ ギュンターの屋敷・廊下 ─
え? 落とし物?
あー……んじゃ、後で聞いてみるね。
[差し出された指抜き>>88に、こてり、と首を傾げる。
薬師の勉強で泊まり込みの時に雑事を頼む使用人は、こちらが戻ってくると殆どが休みで出払ってしまうから、すぐには確かめられない。
だから、と一先ずそれは預かる事にして]
あー、ぼちぼち来てる感じかなあ……。
ま、いつもの事だし、賑やかでいいけど。
[なんて、軽い口調で言ってはいるけれど、ほんの少し複雑そうなのは伺えるか。
引っ込み思案は大分解消されたが、根っこは変わっていないから]
……月?
[広間へ向かう途中、出てきた話題>>89に首を傾げる]
あ、そだね。
……そういや、こないだから来てる歌い手さんが、月が見える夜に、演奏会やりたいって言ってたなー。
演奏家さんも来てるし、賑やかになるかも?
[氷の堤を観に来た、という旅の歌い手が言っていた事を思い出す。
当の本人は、早朝に外に出て、戻ってから客室に籠もっているらしいが]
[そんなやり取りをしながら広間へ向かう途中。
玄関から聞こえた扉を叩く音>>80にふと、足を止めた]
ありゃ、誰か来たみたい……っと。
ちょっと待ってて。
あ、先行っててもいいよ、わんこ辛そうだし。
[そう言い置くとくるり、方向変えてぱたぱたと玄関へ向かう。
扉を開けた先に佇むのは、見知った姿]
あ、侍祭さん、いらっしゃーい。
じっちゃんに用事?
[問いかけに返る言葉は如何様か。
何れにしろ、次に取るのは扉を大きく開いて来客を迎え入れる事。**]
─ 広間 ─
[暖炉のある広間の空気は暖かく、ユリアンはほうと息を吐く。
元は誰か権力者の別荘だった>>13というこの建物のそこここに、田舎の小さな村には不釣り合いな装飾が施されているが、広間もそのひとつだった。
地味ながら、職人の誇りを示すような細工が柱や窓枠を飾っている。
ガラス窓の向こう>>11はエーファご自慢の庭園>>4だ。
ソファーの片隅に腰掛け>>3た男へちらと視線を送り、手元に譜面>>11、足元に大きめの鞄とバイオリンケース>>1があることを見て取ると、
エーファの話していた「演奏家さん」>>91は彼だろうと思った。
ユリアンは無言で会釈して暖炉へ近づいた。
十年余>>1も前に村を出た相手の顔には気づかない。]
─ 屋敷へと向かう少し前 ─
[金具を手に家を出たところで村役場の人に呼び止められる]
え? 住民票の更新?
あれ、やってなかったっけ?
[けろっ、とすっかり忘れている顔でイヴァンは役人を見た。
その様子に役人は呆れた表情を浮かべる]
あはは、悪い悪い忘れてた。
今ここで書いちまえば良いよな?
[そう言って書類を受け取り文字を走らせた。
立ちながらだと言うのもあるが、字はお世辞にも上手いとは言えない]
──────────────────
■名前:イヴァン・アルホフ Iwan=Allhoff
■年齢:28歳
■職業:大工
■経歴:村で代々大工を営む家の息子。村人が住む家の建設や修理を始め、村で採れる木を使って家具を作ったりもする。製作する家具は村の収入源の一つ。
細かいことは気にしない性質で大雑把な性格に取られがちだが、仕事への姿勢は真摯で自分なりの拘りを持つ、いわゆる職人気質。
両親健在で大工の師匠でもある父とは喧嘩することもあるが、家族仲は良い方。
──────────────────
これで良い?
よし!
[役人は微妙な表情をしていたが、とりあえず良いと言うことになり。
イヴァンは書類を役人へと返し豪快に笑った]
そんじゃな!
[急ぐから、と役人に告げてイヴァンは湖の屋敷へと急ぐのだった*]
[玄関で待っていれば扉が開きエーファの姿>>92が見える。
迎える言葉に表情をやわらげて]
こんにちは、エーファ。
ああ、ギュンターさんに、これを。
[両手に抱えた木箱を軽く掲げてみせる。
蓋のない木箱の中には葡萄酒の瓶が詰められていた。
赴任したばかりの頃、彼には世話になったこともあり
日頃の感謝をこめて新酒を贈るももう五度目となった。
大きく開かれた扉を会釈して通り抜け]
地下に運んでおいていいかな。
[許しを請うて、地下に続く階段の方へと足を向ける。]
─ 自宅 ─
…にしても。
痛い所、ついていったわね。
[持ち運びが楽な様にと、結び目で持ち手を作りながら先に出ていった男の捨て台詞を思い返す。
婚約者に逃げられた女。
正しくもあるが間違いでもある自身のレッテルは、今も尚両親にとっての汚点であり、娘に対しての後ろめたさを抱かせるものなのだろう。
娘の家庭教師でもあった若い画家──彼に今後も援助を望むならと破棄を迫ったのは両親だから。
けれど、それはお門違いな話だと娘は思う]
─ 自宅 ─
…お父様達が何もしなくても、あの人に結婚までする気は無かったし。
[きっと彼はパトロンである両親からより多くの援助を得る為に、私を利用したかっただけだ。
それを見抜けなかった私が一人熱を上げて婚約なんて話になって、引くに引けなくなっただけだった、と。
事実、両親からの反対を受けたあの人は、見るからに安堵した顔で婚約破棄を申し出ていた。
今も覚えている。
離れるのは嫌だと、好きなのにと言い募る私に、向けられた冷たい視線と]
『画家気取りのお嬢さんのご機嫌伺いは、もう終わりだ』
[別人の様に冷めた声で、投げ捨てられた言葉を]
─ 自宅 ─
[結局、彼はより活動しやすい拠点を求めて村を出ていった。
また両親も、娘の醜聞を避けて村を離れ、利便性の高い都市へと移転した。
二人は娘も一緒に来るものだと思っていたらしいけれど、私は彼らに付いていかぬまま、今に至る。
以来、離れて住む両親が幾度となく見合い相手を送り込んでくるのも、また共に暮らしたいからだろう。
娘を想ってくれる気持ちは嬉しいが、けれどもう、諦めて欲しい]
悔しいけど、あの人の言ってたことは間違っていないものね。
[絵で生計を立てる様になった今ですら、女は自身を画家と称したことは無い。
入る仕事は殆どが親の伝手だし、自分自身の絵に惚れ込んで来てくれる人はどれ程いてくれるかもわからない。
せめて、胸を張って画家だと名乗る事が出来るまでは、この意地を通したい。
そのためにも、両親の側から離れている現状を維持したいのだが、どれだけ続けられるだろうか。
そんな思いを深いため息に乗せて吐き出すと、綺麗に包んだキャンバスといつも持ち歩く鞄を持って家を出た]
─ ギュンターの屋敷への道中 ─
…そういえば、久しぶりに外に出たわね。
小父様の所の堤、今年も綺麗に出来てるかしら。
[ぎゅ、ぎゅ、と雪を踏みしめながら毎年この時期の風物詩でもある氷の堤を思い浮かべる。
いつもと変わらぬ様に見える所から細やかな変化を見つける事は、密かな楽しみでもあって]
…ご迷惑でなければ、今年も写させてもらいたいものだけど。
[毎年内外から客人を迎えている屋敷だから、余程でない限り断られる事は無いだろうけれど、と思いながら歩いていたら>>84後ろから声が飛んできた]
─ ギュンターの屋敷への道中 ─
あら、イヴァン。
お前もってことは、貴方も?
[振り向くと早足で向かってくる青年の姿が見えたので、こちらも歩く速さを緩め隣に並び歩くのを待って。
差し伸べられた手から頭一つ分以上高い顔を見上げると、先程自宅で男性に向けていた無表情とは正反対の表情で微笑み]
ありがとう、お願いできる?
重いものじゃないけれど、ちょっと嵩張って持ちにくくって。
小父様からの頼まれものだから、落としたりしたらどうしようって思ってたの。
[なんのてらいもなく包みを手渡すのは、相手がイヴァンだからだ。
子供の頃のお転婆も知っていて、婚約する前も後も変わらない数少ない相手だからこそ、素直にその厚意を受け取れるのだ、と彼は知っているかどうか]
─ ギュンターの屋敷への道中 ─
[イヴァンから頼まれものについて詳しく聞かれたなら、小父様に描いて欲しいと頼まれていた、と答えたりもした後]
イヴァンは小父様の所に何の御用?
やっぱりお仕事?
[歩く速度は緩めぬまま、大工である彼が向かう用事はやはり大工仕事だろうと首を傾げて問いかけ。
その他にも他愛ない話をしながら、湖上の館へと向かっていった**]
─ →ギュンターの屋敷 ─
へぇー、じっちゃんが絵を。
カルメン上手ぇもんなー。
あ、仕事で行くのもそうなんだけど、今じっちゃんのところにオトフリートが来ててさ。
覚えてるか? ベッカーさんとこの。
今楽団に居るらしくて、演奏聞かせてもらおうと思ってんの。
カルメンも一緒にどうだ?
[荷物の中身を聞いたり、問いに答えたりして。
その中でオトフリートのことも話題に出す。
演奏鑑賞に誘いをかけ、返事を貰ったところでギュンターの屋敷へと辿り着いた]
─ ギュンターの屋敷 ─
ほい、到着。
[扉を開け、カルメンを先に中へと通す。
自分も玄関へと入ったところで、脇に抱えた荷物を両手で持ち]
なんならじっちゃんのところまで運ぶけど?
[そう問いかけて、返答の是非を聞いてから次へと行動を移した*]
─ 廊下 ─
[テラスから、という言葉になんでそんなとこから、と訝りながらも指抜きはポケットへ。
こちらのぼやきを感じたのか、何度も頷くユリアンの様子>>94に、この人も人付き合いしない方だよもんなー、なんて思ったのは許されてほしい。
自分も前はそうだったから、その心境はわからなくもないわけで]
うん、他じゃ中々見れない、っていう人多いよね。
……毎年見てると、そうなんだー、って思うけど。
[氷の堤は綺麗だとは思うけれど、この小島で暮らすようになってからは実は死活問題にもつながる事に気づいて、ちょっと見方が変わっている。
場所によっては孤立する、なんて、冗談交じりに教えられて。
その夜は、氷の割れる音が怖くて眠れなかったくらいだった]
ん、たまにはそういう賑やかなのも悪くないしね。
……まあ、寒いのに、っていうのは同意、同意。
[呟き>>95に同意して視線を追えば、共に歩く老犬が目に入る。
経緯は詳しくは聞いていないが、大事な存在だから、と。
そう聞かされているこの犬、自分は別に気にしていないがこちらの相棒的な存在である黒猫は苦手視しているらしい。
理由はわからないのだが]
ん、寒かったら、お茶、好きに飲んでていいからねー。
[ユリアンたちと別れる前にはこう付け加え。
その後はぱたぱた、玄関へと急ぎ足。*]
─ 玄関 ─
あ、じっちゃんに、いつものか。
[示された木箱>>103に、来訪の理由は即知れた]
うん、ありがとね。
置き場は、いつもと同じで大丈夫。
あ、じっちゃん、まだ部屋にいると思うよ。
[広間には降りてきていないから、そう告げて]
そだ、用事終わったら、広間に来てよ。
さっき焼いたばっかりのアップルパイ、まだ残ってるからさ。
[力仕事は手伝うどころか邪魔になる。
故に、ちょっと情けない笑みと共にそう言って。
地下へと向かうのを見送った後、改めて広間へと足を向けた。]
─ →ギュンターの屋敷・厨房 ─
[カルメンとのやり取りを終えて、自分の仕事へと戻る。
途中、エーファに会うことがあれば、今から作業する旨を伝えた。
広間にも寄り、置いていった仕事道具を回収。
ユリアンが居れば、「おー、居たのかー」と声をかけて厨房へと向かった]
さぁて、やるかね。
[一言呟いて道具を手に取り、先ずは金具の歪み具合を確認。
扉側の取り付け部分も劣化してきているようであるため、固定する部分は場所をずらすことにした。
古い金具を取り外し、正しい位置で新しい金具を取り付け、劣化していた以前の取り付け部は補強を兼ねて新しい板を打ち付けておく。
何度か開閉してみて上下左右共にぶつかったり隙間が空いたりしていないことを確認。
勝手口の下部、人が通るために磨耗しやすい場所も、折角だからとテラス修理で余った木材を使って新しいものにしておいた]
こんなもんかなー。
エーファに確認してもらわねーと。
[ひとまず隙間風はなくなった、はずだ。
けれど修理は依頼主に確認してもらうまで終了とはならない。
居るなら広間かな、と考え、片付けた道具を手に広間へと向かった]
─ ギュンターの屋敷・広間 ─
エーファ居るかー?
勝手口の修理終わったぞ、確認してくれ。
[扉からひょいと顔を覗かせ、エーファの姿を見つけるのもそこそこに目的を告げた*]
― 玄関 ―
[いつもと同じでとエーファが言えば>>115頷き]
ああ。
……じゃあ、後で部屋に寄らせてもらうよ。
[ギュンターが在宅である事を確認すれば
挨拶に寄る旨を軽く伝える。
続く言葉に瞬きをしてから、淡く笑み]
――ン。
アップルパイか、それは愉しみだな。
[是非、と嬉しそうな声を向けてから、
木箱を抱えなおして、地下へと向かった。]
─ 広間 ─
[広間に向かう足は急ぎ足。
戻った先には、先に別れた姿も見えて]
あ、やっぱさむ……っと!
[寒いんだなあ、と言うのと、黒猫がこちらにすっ飛んでくるのはどちらが先か]
あー、ほらほらモリオン、落ち着けよ。
大丈夫だろってば、別に意地悪してくるわけじゃないんだし。
[自分の周りをうろうろする猫に軽い口調で言いながら、新たな来客のためのお茶の準備を始めた所で、戻って来たイヴァンから声をかけられた。>>116]
あ、うん、お願いしまーす。
[軽い口調で言いながら、それでも、誠意を込めてぺこりと頭を下げる。
それから改めてユリアンのためのお茶とパイを用意したり、次に使うカップを温めたり、と動き回って]
あ、終わったの?
さっすがにーさん、はっやいなあ。
[再び顔を出したイヴァン>>118に向けて、にぱ、と笑う]
じゃ、お菓子の追加もしたいし、見に行くよ。
ほら、お前もこい。
[イヴァンに頷いた後、黒猫をひょい、と抱え上げる。
黒猫は、にー、と鳴いて、大人しく腕の中に納まった。*]
― 食糧庫 ―
[冬を越す準備ももう佳境か、
食糧庫には十分な備蓄があるように見える。
飲料が並ぶ一角に持ってきた葡萄酒を木箱ごと置いて]
はぁ……。
[重かった、と言わんばかりの息を吐いて
軽くなった肩をならす。
所属する修道院で作られた葡萄酒が
赴任先の教会に届くのは養い親である院長の配慮だろう。
血のつながりこそないが、兄弟と呼ぶ彼らの事が懐かしくなる。]
暫く帰ってないな。
[時間を見つけて帰ってみるか。
そんなニュアンスの呟きを漏らし食糧庫を後にする。]
─ 広間 ─
あ、そうなんだ。
んじゃ、もっと早く相談すればよかったかなぁ……結構、きつかったんだよね。
[難しくなかった、という言葉>>123にはあ、とため息一つ。
くすぐられた黒猫は心地よさそうに喉を鳴らし、取りあえず機嫌は治ったようだった]
……おま、ほんと現金……。
あ、じゃ、ちょっと行って来まーす。
[猫に呆れた口調で突っ込みを飛ばした後、広間に来ていた人たちにこう言い置いて厨房へと]
─ 厨房 ─
[やって来た厨房の隅に一先ず猫を下ろし、勝手口の前へと向かう]
……お。
……おー。
[前ははっきりそれとわかる、冷たい風が吹き抜けてきた扉は今は何も通す気配はなく]
さっすがにーさん!
あんがとね、これなら夜食作る時も寒くない!
[はしゃいだ声で告げる礼は、ちょっとばかり突っ込み所があったかも知れない。*]
─ 厨房 ─
[思わず言ってしまった言葉に問いで返され、あ、と短く声を上げる。>>127]
あー……うん。
たまにー、だけどね。
眠れなくて、薬学の本読み始まって、そのまま本格的に勉強始めちゃったりした時とか。
[きまり悪そうに答えつつ、戸棚を開けて作り置きの菓子類を物色する]
冬はどーしてもさー。
氷の音気になって、眠れなくなる事あるんだよ。
[少年の父は15年前、氷の割れる予兆に気づけず、突然できた亀裂に飲まれて湖に消えた。
それが今でも少なからぬ影を落としている事は、付き合いのあるものなら気づいてもいようか]
……あー、と。
ま、毎日つまみ食いしてるわけじゃないし、基本的には残り物の後片付けみたいなもんだから!
[ふる、と首を横に振った後、明るい声を上げる。
もしゃられている黒猫がもの言いたげな視線を投げるが知らぬふりをして]
えーと、どっしよっかなー、ビスケットでいいかなー。
[棚のなかのお菓子物色で誤魔化しを試みた。*]
─ ギュンターの屋敷への道中 ─
あら、そんなに?
あそこ湖の上だし傷みやすいのかしら。
特に勝手口の方は風も冷たいでしょうし、早めに直して貰いたいでしょうね。
[>>110部品を取りに行っていたというイヴァンに笑みを返して、包みを渡す。
脇に抱えながら任せとけと笑うのを見上げながら、頷き]
大丈夫、イヴァンは手も大きいから落としっこ無いでしょ。
[そんな事を言いながら鞄を持ち直した後、包みの中身について話した]
─ ギュンターの屋敷への道中 ─
ふふ、ありがと。
…って、オトフリート?
ベッカーさんって雑貨屋さん…って、オトフリート?
帰ってきたの?
[>>111絵の賛辞に礼を言った後、十年前から村を離れていた雑貨屋の兄の名を聞いて目を丸くした。
あの頃は丁度自身の恋心を自覚したばかりで己のことで手一杯になっていたから、詳しい事情は知らなかったけれど。
>>21よくバイオリンを演奏していたその姿は、記憶の中にあったから]
そう、楽団に…えぇ、私も聴かせて欲しいわ。
一緒にお願いさせてくれる?
[そんな答えを返して程無く、ギュンターの屋敷に到着した]
─ ギュンターの屋敷 ─
ありがとう、イヴァン。
荷物任せちゃって悪かったわね。
[>>112イヴァンが開けてくれた扉を通り、温かな中へと入る。
運んでもらった包みを受け取ろうと手を伸ばしかけた所で、ギュンターの所まで運ぼうかと申し出られたが]
ううん、ここまでで大丈夫。
イヴァンは早く修理に行ってあげて。
日がある内に済ませた方が良いでしょう?
[仕事で来ているイヴァンの手間を取らせる事は流石に遠慮して、包みを受け取り彼と分かれた]
─ ギュンターの屋敷 ─
[修理に向かうイヴァンを見送り、受け取った包みをもう一度落とさぬ様にしっかりと抱え]
さて、小父様はどちらにいらっしゃるかしら。
エーファに預けてもいいと思うんだけど…どちらにしても探さないと駄目ね。
[元団長と孫息子、どちらかに渡せば良いだろうと思うが居場所が分からない。
部屋も知らぬことだしと、まずは人の声が聞こえる方へと向かおうかと踵を返した。
だが、窓の外、見える氷の堤を視線に捉えると、あ、と声をあげて]
やっぱり、今年も綺麗に出来てる。
[届ける前に少しだけ、と。
氷の堤を見に、テラスへと出ていった**]
─ 厨房 ─
[氷の音を忌避する理由について掘り下げられる事はなく、漏れるのは小さな安堵の息]
それはわかってるよー。
でも仕方ないよ、頭使うと甘いもの欲しくなるし。
[食べ過ぎの注意>>135にはこんな言葉を返して]
そだね、じゃ、ビスケットにしとこ。
これなら、なくなってもすぐに補充がきくし。
[そんな理由で選び出し、振り返った先にあったのは二段重ねの顔]
ちょ、何やってんの、にーさん、モリオン……。
[思わぬそれにく、と笑みが落ちる。
黒猫は少年が笑う様子に取りあえず満足そうにしていたが、姿勢に飽きて暴れ出すまでそうそう時間はかからないだろう。
ともあれ、新たに運ぶものが定まったら準備をして広間へ戻る事になるのだが。**]
[首に掛かる十字架を無意識に握る。
恙なく、静かに、穏やかに過ごせるように
そう願う事情を詳しく知る者は少ない。
母は十五で村を出てどこぞの侍女になったらしい。
形見の品は母の生家であるヴァレンシュタインの家紋が入った指輪と
それとはまた別の家紋が彫られたペンダント。
それらは革袋に入れ懐に忍ばせている。
見覚えはあれど家名を知らぬ紋が刻まれた書簡を
初めて手にしたのはこの村に来て暫くしてからだった。
父を名乗る者からの手紙に断りの返事を一度したが
それからも手紙や人を寄こしてくるのは止まない。]
[一度、力尽くで連れてゆこうとした使者が居た。
それを制して助けてくれたのがギュンターその人で
彼の事を恩人と思い、こうして時折挨拶に館を訪れる。]
――……。
[エーファから聞いた焼きたてのアップルパイにも
心惹かれ広間の方に行きたい気持ちがわくものの、
そちらは挨拶を済ませてからの方が良いだろうと
ぐっと堪えて、館の主のいる部屋に向かった。]
俺の分、残ってるといいが……
[ぽつと小さく独り言ちてから、ノックをして
扉が開けば挨拶をして近況を伝え
日頃の感謝と彼の健勝を祈り部屋を出る。
当初の目的を果たすと一息ついて広間のある一階へと。**]
数日前から滞在していた旅の歌い手が、月夜に演奏会を開きたい、と。
屋敷の主人に正式に申し出た。
前から口にしていたそれは主人に受け入れられ、主人は屋敷を訪れていた者たちも共に、と誘い引き止める。
──その夜、月下に紡がれるのは『幻燈歌』と呼ばれるもの。
──ひとと、ひとならざるものたちの歌。
──冴え冴えとした空気の中、月下に響くその歌に。
──重なるように、どこかで氷の割れる音が響いて、消えた。
[その後やってきた大工のイヴァン>>118や、戻ってきたエーファ>>120とは、
何か言葉を交わしただろうか。
抱え上げ>>121られた1匹とふたりが厨房へ行く>>123、>>124のを見送ると、
ユリアンはソファに深く背を預けた。
イヴァンの豪快な笑い声>>126はいつものことだ。
自分が困ったような笑顔でいるのも、また。
しかし、妙な胸騒ぎがするのはなぜだろうか。
何か大切なものが欠けているような、あるいは不自然に加わっているような気がして、どうにも落ち着かない。
ユリアンは不安な面持ちで周囲を見渡した。
演奏家らしき男>>70と目が合えば、控えめな挨拶を返しただろう。
馬具職人だった父の話を持ち出されれば、思い出話に短く相槌を打ったかもしれない。]**
─ 厨房 ─
……っ……なに、それ。
[得意げな言葉>>139に笑っていたら、黒猫が飛び出した。
飛んでくる文句に黒猫は素知らぬ顔で毛繕い。
それにまた、笑い声をあげながら、戸棚から出したビスケットを器に入れたり、おかわりに備えてのお湯を準備したりと一通り支度を整えて。
運ぶのを手伝ってもらいつつ、広間へと戻った]
─ 広間 ─
たっだいまー。
おかわり欲しい人います?
[広間に戻り、明るい口調で問いかける。
要望があればそれに応じて動き、祖父への挨拶を終えたライヒアルトが顔を出したなら、「ちゃんととってありますよー」なんて、軽い調子で言いながらお茶とパイとを出して。
それでも、もう一人の来客が顔を見せたなら、それまでとは一転、緊張が態度に滲む。
志すものがものなので接する機会も多いのだが、どうにも女性、それも年上相手には緊張してしまう事が多かった]
[そんなお茶の時間は祖父の訪れによって一段落する]
夜に演奏会って……。
[月が綺麗な夜に、というのは聞いていたから、今夜辺りか、という話はしていたが]
ん、ま、いいけどさぁ。
[この人数なら、自分だけでも食事作りはなんとかなるだろう、と。
抱えていた別の心配は、そう割りきった。**]
[冬は苦手だ。
指がかじかんで、針仕事が捗らないから。
暖の取れる場所が限られているため、否応なしに集まらなければならないから。]
[追い剥ぎに頭を強く殴られたせいか、
はたまたその後の酷い高熱のせいか。
ユリアンは仕立て屋として生き、そして死んだ……無念にも殺された……とある女性の記憶を、
はっきりと、疑いようもなく思い出してしまった。]
[湖畔に拓けた小さな村だ。
湖と森に挟まれ、漁業と林業で細々と生計を立てるひとがほとんどの。
冬場は雪と氷に包まれ、他所との行き来も簡単ではない。
住人は最低でも顔見知り。
数世代をさかのぼれば、隣人は当然のように血縁者で。
若い世代は少ないから、何をしても年寄りの間で話題になるのだ。
秘密にしておくことは難しかった――
――けれども、]
[ユリアンは誰にも言わなかった。
否、言えなかったのかもしれない。
自分の中でゆるがぬ事実として認識されている記憶が大切だから、
悩むことも迷うこともなく、ただ黙っていた。
曖昧に、困ったような微笑を浮かべながら。]
[ベッドから起きられるようになると、彼女の知識と技術を思い浮かべながら針を持ち、布を断った。
記憶が甦っても、指は思うように動かない。
きれいな運針ができるようになるまでは雑巾と付近を大量に生産し、母にずいぶん小言を言われた。
息子が以前とは決定的に変わってしまったことを、彼女は薄々察していたのかもしれない。]
村の設定が変更されました。
そーだ、オトフリート。
演奏、いつなら時間空いてる?
カルメンも聞きたいってさ。
[一息ついた後、戻って来る前に話したことをオトフリートへと告げる。
カルメンについて思い出すのに時間がかかっているようであれば、家名も伝えた。
流石に彼女に何があったかまでは言わない]
[そうして広間に来る人を出迎えたりいくつか話をしていると、ギュンターが演奏会を行うので一緒に聞いていくと良いと告げてきた]
演奏会?
へぇ、旅人さん来てたんだ。
んー、暗くなる前に帰る心算だったんだけど……ま、ここに来てることは伝えてあるしなー。
[冬の湖には十分気をつけろ。
幼い頃から聞かされてきたことは今でも身に染み付いている。
故に夜に湖に近付くことは避けるようにして来た]
そんじゃあ部屋一つ借りて良い?
[居場所は知れているし、と一泊して行くことを選択。
ギュンターに願うと、構わない旨を返してくれた]
─ 演奏会 ─
[大きな拍手>>160に振り向けば、音の主は大工 イヴァンだった。
ユリアンは不安な面持ちで彼と旅の歌い手の顔を見比べる。
数時間前の広間で、「おばあちゃんになっちゃったなぁ」>>159と、
しみじみした声でビルケに語りかけた彼は、
『幻燈歌』にも、数ある歌の中からこれを選んだ歌い手にも、違和感を感じていないらしく。
ビルケを撫でて良いかと問われた>>159こと、自分が笑顔で頷いたことを思い出すと、
ユリアンはしばし思案した。
この胸騒ぎを彼に伝えてみようか、と。
けれども、素直に楽しんでいるイヴァンを暗い気持ちにさせてしまうだけかもしれないと考え直し、
結局、いつものように口を閉ざす。
その場に他の者がいるならば、ユリアンの落ち着かない様子に気づいただろうか?]**
―少し前/ギュンターの屋敷・広間―
楽しんでやれているならそれが一番じゃないかな。
一人前の薬師になるの、期待してる。
[彼はいい師匠にめぐり合えたんだな、と、会ったことのないその人を思い浮かべる。
そうして、ユリアンについて口にした事には、やはりどこか曖昧な返事が返った>>75]
なるほど……ここに来ているなら顔を見たら思い出すかな……
[無理には詮索せずにそう考えて、石頭の、と言う言葉にくすくすと笑う]
ギュンターさんも変わってないな。
そのギュンターさん相手に頑張るから気にいられてるのかもね。
[と推測を交えて、様子を見てくると言う言葉>>76に]
ん、ちょっとくらいなら大丈夫だろ。な、モリオン?
[と返して広間を出て行くのを見送って、落ち着かない様子の黒猫をそっと撫でた]
― 広間 ―
[広間に入ると暖かな空気が肌に触れる。
暖炉の火がはぜる音も冬らしさを感じさせる。
誰かが暖炉の薪を調節したばかりか>>140
形よく赤が揺らめくのが見える。
先にその場にいた仕立屋のユリアンや演奏家の男に
軽く会釈し、挨拶をして
エーファの声>>143にゆると目を細めた。]
良かった。
もう残ってないかもしれないと心配してたんだ。
ありがとう、頂くよ。
[あたたかなお茶とアップルパイを受け取り
感謝を口にしてからお茶に呼ばれる。
パイの優しい甘さにほろと表情が緩んだ。]
[イヴァンからの声>>156に軽く頭を下げて]
こんにちは、イヴァンさん。
人が集まるのは、ギュンターさんの人徳ゆえでしょうか。
[和やかな空気の中、話をしていれば
当のギュンターが現れ演奏会の話>>#5>>144がなされる。]
それは興味深い、――ですが、
長居してはご迷惑では……
[館の者――エーファの負担にならぬだろうかと
遠慮がちにギュンターとエーファを交互に見遣る。
結局、厚意に甘えてその夜は館に滞在することとなり、
月夜の演奏会に観客として参加することとなった。]
[暫くして、一人の青年が犬を連れて広間に現れた。>>97
という事は、彼が仕立て屋のユリアンなのだろう。
無言で会釈をして暖炉の前で仕度を始めるのに、やはり覚えていないかと内心で思う。
男が村を出たとき、ユリアンはまだ怪我をしていなかったし、その後一度だけ親に宛てた手紙に返事がくる事は無かったから、彼の事情を男は知らないままだ]
えっと……さっきエーファから聞いたけど、君がユリアンでいいのかな?
覚えてないかもしれないけど、雑貨屋の息子のオトフリートだよ。
[名を知っていることに驚かれないようにエーファの名を出してから一応の自己紹介をする。
もちろん忘れていたからといって気分を悪くする事は無いけれど。
大人しい犬とは対照的に落ち着かない様子の黒猫は、玄関で来客を迎えていたらしいエーファが広間に戻ってくる>>120とそちらに駆け寄っていく
それから少し遅れて、戻ってきたイヴァンが仕事道具を取りに顔をだし、すぐに仕事に向かうのを見送る>>116]
なかなか落ち着かないな、みんな。
[なんて他人事のように言いながら、それでもどこか懐かしい空気にほっと息を吐く。
イヴァンが帰ったと言う事はおじさんに話は伝わっただろう。そうなると、実家に伝わるのもすぐで、それを思うとほっとした息が溜め息に変わりそうだったけれど。
少しして、イヴァンが作業を終えたと顔を出し、確認を求めた>>118なら]
え、もう終わったのか?仕事早いな。
[と驚きと関心の声を落とし、エーファと共に厨房へ向かうのを見送った。
エーファの腕に納まった黒猫に小さく手を振って、見ればどこか不安げな面持ちのユリアン>>141と目があって首を傾げた]
何か気になることでもあるのかい?
そういえば、仕立て屋になったって聞いたけど、ご家族は元気なのかな?
[問いはするけれど深く問い埋めるつもりは無く。気を紛らわせるために彼の家族へと話題を移す。
どんな返事が返ったとしても、深く入り込むことはしないけれど]
[厨房からエーファたちが戻ってきたなら>>143、お茶のおかわりを頼んで、新たに客が増えたなら自己紹介をしただろう。
イヴァンから演奏について訊かれ、カルメンと言う名を聞いてはたりと瞬く]
カルメンって……あの?
[十年ぶりに村に帰った男には、その名は「資産家のお嬢様」と言う印象しかないが、その彼女が覚えていたと言う事にまず驚いて]
こっちに居る間ならいつでも大丈夫だよ。
村の皆に挨拶して回るくらいしか予定ないし。
[他に聴きたい人がいれば、いっそみんなの前で演奏するのもいい、なんて提案もしてみる。
カルメンの今の話は、当人が聞かせてくれるまでは男から問う事はないだろう]
[やがて、広間にギュンターが現れ、一つの話を持ち出す]
へぇ、旅の歌い手さんが?
それはぜひ聴いてみたいけど、この寒いのに外で?
[旅の歌い手が演奏会をする>>#5と聞けば、音楽を仕事とするものとして興味を惹かれないわけが無く。
いずれにせよこの屋敷に泊まるのだから問題ないと決めて]
俺も?
いや、俺は外での演奏は遠慮する。
バイオリンは元々室内楽用だし、この寒い中じゃ指が上手く動かないからね。
[暖かい部屋でならいくらでも、と、最後に付け加えて]
―演奏会―
[そうして、月夜の演奏会が始まる。
冴え冴えとした月明かりの下、朗々と歌われるは『幻燈歌』
その内容を、男自身もよく知っていた。
古くから伝わるお伽。子供の頃、祖父が聞かせてくれた昔語りの一つだった]
(こうして聴くと、なんだか不思議な感じがするな)
[胸騒ぎにも似たそれがどういうものかは今はまだ知らず、同じ音楽家としての興味が赴くままに耳を傾ける。
時折聞こえる何かが軋む音>>#6も、演出であるかのように感じながら]
………そういえば、満月ですね、今夜は
[ぽつり、呟く声は誰かに聞こえただろうか。
それが、何かに符合すると、気付くものはまだいない。*]
─ 演奏会 ─
[お茶の時間の片付けと、予想外に増えた夕飯の支度やら何やらが一段落ついた頃、月を背にした演奏会が始まる]
…………。
[この歌い手がちゃんと音色を紡ぐのを聞くのは初めての事だ。
普段の語り口から、声がいいのは察していたけれど]
……すご。
[零れ落ちるのは、小さな呟き。
『幻燈歌』と呼ばれるその歌は、詩として読んだ事はあるけれど、こうして聞くのは多分初めてで]
……こんな歌だったんだなぁ……。
[感慨深く呟く意識は、目の前の音に向けられている。
遠くから聞こえる自然の音、そちらには意識を向けたくはなかったから。
そのためにいつもより強く集中していたから、ユリアンの落ち着きのなさ>>161に気付く事はできなかった。]
[演奏会が終われば、黒猫を伴って三階の自室へと戻る]
……なぁ、モリオン。
[ベッドに寝転んで、黒猫を呼ぶ。
月明りの下の猫は、その名の由来となった黒水晶の如く煌めいて見えた]
今日、寒くなりそうだよなぁ。
[なんて呟くと、意を察したのか黒猫は隣に潜り込んでくる。
その温もりに安堵しつつ、氷の音を意識しないようにしながら眠りに落ちて──。*]
[旅の歌い手が月下にうたうは『幻燈歌』。
おとぎばなしのように、その詩をきいたことはあるけれど
綺麗な月がそう思わせるのか
それとも歌い手の見事な歌声がそうさせるのか
重なり消える自然の音色も相俟って
幻想的なその歌に、引き込まれる。]
――……。
[歌声が止んで、しばらく茫としていたが
惜しみない拍手>>160にはっと我に返った。
遅れて、控えめな拍手をして]
見事だった。
[と、歌い手に賛辞をおくる。]
─ 翌朝 ─
[少年の朝は早い。
館に戻っている間は休みの使用人たちの代わりに、家事の一切を取りしきるから仕方ない。
休みなのに休みじゃないなんて理不尽だとは思うが仕方ない、なんて割り切っているのは余談だが]
さて、と。
朝ご飯どーしよっかな……って、さむっ!
あー……まずは、広間の温めからだなぁ。
[なんてぼやきながら着替えを済ませ、黒猫を伴い階下へと下りていく。
いつもならそのまま広間へ向かうのだが、その日は何故か、その前に外を見よう、という気になって]
……ふうっ……昨夜も冷えたから、どーなったかなぁ。
[呟きながら玄関を開けて外に出る。
気になるのはやはり、庭園の薔薇たち。
そちらへ向かうべく歩き出そうとして]
……え?
[何気なく、橋の方を見やった蒼い瞳が見開かれる]
ちょ……なんで?
[村へと続く唯一の道。
それがあったはずの場所に見えたのは冷たい真白の──氷の堤]
え、え?
えーーーーーーっ!?
[何が起きたのかの理解が追い付かなくて。
上がったのは、言葉にならない大声だった。*]
[演奏家であるオトフリートの呟き>>170に、
夜空を仰ぎ、僅かに目を細めた。]
月、綺麗ですね。
[自然の美しさに感嘆するようにぽつと呟く。
ユリアンの落ち着かない様子>>161は
感じ取ってはいたものの、
大丈夫ですか、と案じる言葉をそっと掛けるくらいに止め、
寒さに凍える前に室内へと戻り、
広間で少し暖をとってから、客室で夜を明かす。**]
[朗々と歌い上げられたその声が夜空に溶けて消える。
耳に痛いほどの静寂が戻る前に拍手の音>>160で夢幻から現へ引き上げられた]
見事ですね……
『幻燈歌』をこのように歌い上げるのを聴いたのは初めてです。
[演奏家としてまだ未熟だからこそ、その歌声の素晴らしさが身に沁みた。
自然の美しさと音の調和。同じように感嘆の声を零す青年の呟き>>176に小さく頷いた。
もしも時間があるのならぜひ音楽について語ってみたいものだ、なんて思いながら、惜しみない賛辞を口にする。
そうして、演奏会が終わったなら、ギュンターにどの部屋を使えばいいかと尋ね、返事を得たなら礼を言い、広間に置いた荷物を持って指定された部屋へと向かった]
―二階・客室―
[用意された部屋へと向かい荷物を下ろす。楽器の扱いは特に慎重に。
流石にこの時間では練習をするには少し遅いと、ケースを軽く撫でて]
あの人たちに聴いてもらえたなら、少しは認めてもらえるんですかね?
[などと一人ごちる。
会わずに離れる、と言うわけには行かないだろう。今更引き止められるとも思わないけれど]
明日は、イヴァンが帰るなら一緒にご挨拶にでも行きましょうか。
[と、とりあえずは前向きな予定を立て、寝巻きに着替えてベッドへと入る]
……今日は特に冷えますね……
[呟きながら目を閉じる。
演奏会中に感じていた胸騒ぎにも似た何かを抱えたまま……――*]
―翌朝/二階・客室―
[慣れぬ寝台でもしっかり眠れるのは、性格と言うよりは普段の旅の多い生活のせいだろう。
移動の疲れと、普段会わない人々に会ったという気疲れは、男を程よい眠りへと誘い
それが、唐突に破られた>>175のは、まだ早朝とも言える時間だった]
……何があったんです、こんな早い時間に…
[もそりと起き上がり、声の主を確認しようと窓から外を見て……]
――…え?
[屋敷を取り巻く氷の堤、それがひときわ大きく成長しているのがわかる。
そして]
は?って、え?ちょっとあれ、どういうことです?
[視線をめぐらせた先、その場にあるはずの橋が壊れ、代わりに見えるのは氷の白。
見えているのに答を探すのは、その状況をにわかに受け入れられなかったせいだ。**]
村の設定が変更されました。
8人目、旅人 ゼルギウス がやってきました。
[その男が小島の屋敷に担ぎ込まれたのは、一週間ほど前の事。
橋を渡り切った辺りで倒れていた所を使用人が見つけ、そのまま主の命で保護された。
旅の途中で何かに襲われ、命からがら逃げてきた……という事情の断片は聞きだせたものの、それ以外は錯乱気味のためにわからないまま、落ち着くまでは、と主が面倒を見る事になった]
…………。
[月下の演奏会には、そんな彼の姿も片隅にあった。
主に誘われて出てきたのだが、やはり、どこか落ち着かぬのか。
『幻燈歌』が終わると同時、他者への挨拶もそこそこに宛がわれた客室へと戻っていたのだが]
……つきのうた……。
[演奏会の最中に漏れた小さな呟き、それに気づいたものは果たしていたか]
[男については、身上書という形で、屋敷の主からこんな内容が自衛団に提出されていた。**]
──────────────────
■名前:ゼルギウス
■年齢:20代半ば
■職業:不明・旅人らしい
■経歴:ギュンターの屋敷の近くで倒れていた所を保護された。
何かに襲われたらしいが、そのために錯乱気味になっており、どこから来たのかなどの詳細は不明。
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