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ほら、そこにもここにも。
始まりを示す小さな欠片が散っています。
見えていないのか、見えない振りをしているのか、どちらでしょう?
どうやらこの中には、村人が5人、占い師が1人、霊能者が1人、智狼が2人いるみたいですよ?
[空っぽのはずのランタンは蛍火に似た光を宿しています]
[伸びて縮んで揺れる影は、誰が誰かは分かりません]
[ただそうであることだけを影絵のように映すのです]
[魔法のランタンの話もホラントの御得意の一つ]
[けれど本当に影が映ったのは、初めてなのでした]
晴れた夜空にきらめく星は、とっても、きれいですよね!
〔ベリエスの言葉にアナは大賛成。
星よりきらきらしていそうな目で、言うんだ。〕
夜は、ほんとうは、人は夢を見る時間だから。
眠るほうが、良いんですよね。
夜は、ほんとうは、他のものたちの時間だから……。
良かったのう、嬢ちゃん。
[ドロテアが油を持ってきたのを見て、おじいさんは目を細めます]
さて、わしはそろそろ帰るぞい。もう腹がなりそうじゃ。
……うむ、今日は宿屋でご馳走になるのもいいかもしれんのう。
[言って、二人には背を向けて歩き出すのでした]
そうじゃの。
獣や、歌う虫や、それから……
[アナの言葉に背中を向けたまま答えました。
最後に何と言ったのかは、きっとアナには聞こえなかったでしょう]
〔戻ってきたドロテアが差し出した入れ物を、アナは両手でしっかり、受け取った。いったん地面に置くと、小さなリュックにしまって、背負い直そう……として、零れてしまうかと考えたんだろう、抱えていくことにしたようだった。〕
ありがとうございます、ドロテアお姉さん!
きちんと、お返し、しますね。
やれやれ、羊達が落ち着かないから、すっかり遅くなっちまったよ。
宿屋にチーズと羊毛を届ける約束だったけど、明日でもいいかな?まあいいか。
[ふわあ、と大きな欠伸をひとつ、羊飼いは固いベッドの上にごろりと横になりました。ちび羊のフリーが羊小屋から抜け出してベッドの傍に蹲っているのも気付かずに]
あらあら、お引き止めして申し訳ありません、御隠居様。
[帰っていく御隠居に、ぺこり、とお辞儀をしました。]
ええ、でも、慌てなくていいからね?
[アナの言葉にはまた、にっこりと笑います。]
お腹がすいた、お腹がすいた。
やせほそった爺さん一人じゃ、全然満足出来ないぞい。
[おじさんに化けた狼は、仲間に向けてささやきました]
そうだな。
気をつけて。
[のしのしと去って行く男にひとつうなずいたあと、旅人は彼を見送ります。
もっとも、大男に気をつけるなんてことばは不要なのかもしれませんけれど。]
さようなら、ベリエスお爺ちゃん。
〔それから。
その後はアナの耳には届かなかったようだけれど、その先を尋ねる前に、ベリエスは道の先へ歩んでいってしまった。〕
それじゃ、アナも、そろそろ行かなくっちゃ。
ドロテアお姉さんは、まだ、お仕事ですか?
――宿屋――
ばあさんや、ゼルマばあさんや。
今晩はここでご馳走になっても良いかのう?
[玄関から入るや、おじいさんは奥に向かって声を掛けます]
ううむ、良い匂いじゃ。
[そういうおじいさんのお腹は、ぐうぐうと鳴り始めていました]
お仕事は、一段落した所なの。
牧師様は書斎にこもったままだから、ちょっと、蛍を見に行こうかと思って。
アナちゃん、帰り道、気をつけてね?
[聞き覚えのある声にうたたねから目覚めました。]
あらあら、眠ってしまったみたい。
あの声はベリエス?
[急いで迎えに出ていきます。]
牧師さまは、書斎に?
……お昼、やっぱり、邪魔しちゃったかな。
〔ちいさく呟くアナは、反省している様子だった。〕
お姉さん、ひとりで、危なくないですか?
お姉さんこそ、気をつけなくっちゃ。
蛍は、きれいだけれど……。
[背にかけられた声に、大男の背が小山のように揺れました。
腰に巻いた布に挟んだ斧がぎらりと光ります。
いつでも仕事が出来るよう持ち歩いているのでした。
やがて宿に着くと、先客が扉を潜るのが見えました。]
……爺さんも来てたのか。
オイラ邪魔者?
[いかつい顔の大男は変な気を回しましたが、お腹が大きな音を立てて訴えます。]
[それから、旅人もまた森に向かって歩きだします。
しばらくすると、さらさらと小川の流れる音が聞こえて来ます。
木々に紛れて、ちらちらと何かが光るのも見えました。]
やあ。今晩はここにお邪魔しても良いかのう?
[出迎えるゼルマににこにこと微笑みます。
後ろからやってきた大男には]
おお、ドミニクか。
何を言うとるんじゃ、飯はみなで食う方が美味いんじゃ。
早く入った入った。
[そう言って、彼を促すのでした]
昼間?
……ええと、多分、アナちゃんが気にする事はないわ。
牧師様、本を読み始めるとすぐに時間を忘れてしまう方だから。
[反省している様子に、安心させるように笑います。]
ええ、大丈夫、奥までは行かないし、すぐに戻るつもりだから。
……灯りも、忘れずに持ちますしね。
[食卓はきれいに片付いていました。ルイさんと言ったかしら、行儀の良い旅人さんで助かるわ、と思いました。]
ああ、いいのよ二人とも入って頂戴。まだたくさんあるのよ。食べてくれたほうが助かるわ。
まあ、あなたたちの場合お酒も目当てなんだろうけど、度を越さないなら適当に出して飲んで構わないわ。
〔ドロテアを心配するアナの顔には、さっき自分に言ったのに、って、ちょっと拗ねた感じが出ていたに違いない。
でも、説明にいちおうは納得したようで、こっくり頷いた。〕
……わかりました。
蛍、どんなきれいだったか、教えてくださいね!
〔最後にそういって、お辞儀をすると、惜しむきもちを振り払うみたいに、家へと向けて駆けていくんだった。〕
ホホ、さすがばあさん、良くわかっとる。
[ゼルマに笑い掛けると、おじいさんは酒蔵から、麦酒の瓶を取り出しました]
では、遠慮なくいただくぞい。
[金色の麦酒をグラスに注ぎ、まずは一杯。
それから、食卓に並んだお料理へと、手をつけるのでした]
[にっこりとそれだけ言うとゼルマはくるりと踵を返して台所に入ります。二人のためには食事よりもお酒のつまみのほうが必要なのです。
勝手は二人とも知っていますので飲む分には困らないでしょう。]
さてと、腸詰はまだあったし、玉葱、クラッカー、昼間にルッコラ摘んどいて良かったわ。マッシュルームは大きめだからオリープオイルで揚げてみようかしらね。
[なにやら2、3品作って温めなおした料理とともに食堂に運びます。]
…わかった、邪魔するぜ。
[ベリエスとゼルマの誘いに空腹の木こりは逆らえません。
むすっとした顔のまま扉を潜りました。
それでも先に手を洗いに行くのは食事が楽しみな証拠。]
そうか。ツィンカがもう行ったんだったな。
旅人が言ってた。
[ゼルマに言うと木こりは席に着きます。
そして麦酒に相伴しようと杯に注ぎました。]
[拗ねたようなアナの表情に、あらあら、と思いながら、それは言わずに。]
ええ、約束するわ。
おやすみなさい、気をつけてね?
[代わりに、いつもと変わらない笑顔で、駆けて行くアナを見送るのでした。]
〔家にたどり着くまでもなく、その途中で、アナはホラントと出くわした。
油はないはずなのに、そのランタンには光が灯っている。
普通のものとは違うって、アナは、気づいただろうか。
不思議だと首を傾げるアナに、ホラントがどんな話をしたのかは、そこにいたものだけが知ること。
ただ、きっと、おしゃべりなホラントのことだ、聞き手という名の獲物を見つけたなら、誰かれ構わずに話してしまうに違いなかった。
妹の心配をよそに、どこかへ行ってしまう兄。
やきもきしながらも、眠気に勝てなかったアナは、暗い闇の中で現を知るのでなくて、白いベッドの中で夢を見ることにしたみたい。
* おやすみ、良い夢を。*〕
[ふいに、茂みががさりと揺れました。
旅人が目をぱちぱちとしていると、ランプを持った男が一人出てきました。]
おや。
ホラント殿、だったか。
[だれかが言っていた名前を思い出して、旅人は言いました。
名前を言われたことに、ホラントはおどろくこともなく、ただなんだか楽しそうです。]
おや、早速つまみの登場か。気がきくのう。
[パスタをぺろりと平らげると、今度は腸詰をお皿に運びます]
ツィンカ? はて、初めて聞く名前じゃのう。
いつぞや見掛けた旅人さんのお名前かの?
[隣で麦酒を注いでいるドミニクに、そう訊ねました]
[食道に戻ると早速ドミニクと麦酒の杯を交わすベリエスに呆れた様子です。]
まあ、素早いこと。女将さんが居ないから無礼講にしかならないのは分かるけど……、おつまみを少し追加しておいたから、あとは任せるわよ。
できれば使った食器は洗い桶に突っ込んでおいてくれると助かるわ。明日の朝まとめて片付けるつもり。
[老猫のヴァイスが追従して同じ調子で啼きかけます。]
さて、それじゃ、わたくしも出かけましょうか。
[アナの姿が見えなくなると、小さなランプを用意して。
小さな声で歌いながら、蛍の居る場所へと*向かうのです。*]
[それは、少女がどこかでホラントにでくわしてから、しばらく後のことでした。
散々思わせぶりにしても黙っている旅人にしびれを切らしたのか、やがてホラントは話しはじめます。]
狼と、占い師に、霊能者。
どこかで聞いたような話だけれど。
[魔法のランプが映す影のお話。
ホラントがまたどこかに行ってしまったあとで、旅人は首をかしげて彼のことばをつぶやくのでした。]
ベリエス? 昔村にいたツィンカがちょっと前に戻ってたのよ。
今は旅芸人としてあちこち回っているみたいだわ。
あまり詳しいことは分からないけど、書置きにも急な用事が出来たってなってたわ。
[一応は宿のお客さんのことですから、ゼルマも抑えめに話ます。]
ゼルマさんの料理はやっぱり旨い。
酒も進む。
[真っ先に揚げきのこに手を伸ばします。
心づくしのつまみにドミニクは舌鼓を打ちました。
それから冷めない内にとパスタもかきこむのです。]
旅人は、ルイだ。
爺さんは…ツィンカ知らなかったかな。
[一応、ちゃんと名前は覚えていたのでした。
呼ばないのは短い付き合いだと思っているからです。
ベリエスが来た頃、ツィンカがまだ村にいたかは酔った頭では出てこないようでした。]
なあに、ここに来たらする事はひとつじゃ。
ばあさんも知っているだろうに。
[おじいさんは、麦酒でとろりとした目をゼルマに向けました]
おうおう、勿論じゃ。わしを片付けも出来ない駄目じじい扱いするでない。
[そして、足元で鳴いているヴァイスにも酔った目を向けるのでした]
ドミニクったら。明日になってあたしの料理のせいで飲みすぎた、なんて言い訳は聞かないからね。
じゃ、少し早いけど今日は休むわね。
*明日も平穏無事でありますように。*
昔村にいた……?
[ゼルマとドミニクに言われて、おじいさんはむむむと頭を捻ります]
そうじゃ、そう言えばそんな娘がいたかのう。
わしがここに来てそう経たんうちに、村を出てしまったようじゃが。
そうか、もう旅立ってしまったのじゃな……。
[おじいさんは残念そうに呟くと、また麦酒をあおります]
[気をとりなおして、旅人は小川のそばに座ります。
一つ、二つ、三つに四つ、光がちかちかと星のようにまたたいています。]
きれいだな。
[ホラントのことばなど忘れてしまったかのように、旅人は蛍を見つめていました。
そうしているうちにドロテアと出くわしたか、それともすれちがったかは、*当人たちだけが知るお話です。*]
旨いから飲む、飲むから旨い。
[ほうれん草サラダで野菜もちゃんととりながら、ベーコンを少しヴァイスに投げてやります。]
片付け、ちゃんと水につけとく。
オイラが洗うと欠けちまうからなあ。
[ベリエスに追従して木こりも杯を重ねます。
この勢いだと明日は忠告にもかかわらず二日酔いでしょう。]
残念じゃのう。
まだ村に残っていたのなら、ご馳走が一人増えたのじゃが。
[おじいさんのふりをした狼は、普通の人には聞こえない声でひひひと笑いました]
それにしても危ない所じゃった。
わしが本物のじいさんではないとばれる所じゃったよ。
凄く化けてたぞ。
見てないなら残念だったな。
まあ、飲もうぜ爺さん。
[女性が美しくなったにしては酷い評し方で御隠居の杯に麦酒を注ぎます。
そうして木こりにしては珍しく宿で酔い潰れてしまうのでした。
ただし、食器はちゃんと水につけてから。**]
おばあさんはもうお休みかい。
[ゼルマを見送ってから、ドミニクの方へ向き直ります]
ほう、そうなのか。しかし、化けてるというのは、いまいち褒めてるように思えんぞい。
[しかし、この木こりはいつもそのような言い方をするので、おじいさんも特に気にしてはいないようでした]
おぬし、よく呑むのう。明日も仕事はあるのじゃろう?
[おじいさんの心配もむなしく、やがて木こりは酔いつぶれてしまいました。
おじいさんは木こりに上着をかけてやると、自分の食器を言いつけ通りに片付けて、宿屋を後にしました。
夜風の冷たさに、体を震わせながら**]
[本を読んでいた牧師が、忘れていた時間を取り戻します。
書斎を出て、食事の匂いにつられるように食堂へ行くと、
机の上にドロテアの書き置きを見つけました]
おや、お散歩ですか?
夜遅くにならなければ良いのですけれどねぇ。
[ドロテアの作った夕飯を食べ終えて、
帰ってこない彼女の身を案じ、窓の外を見ます]
迎えに行きましょうか。
[牧師はランプを手にして、外へと向かいました]
[村の外れ、遠くで灯りがゆらゆらと影を伸び縮みさせています。
牧師は近づいて、男に声をかけます]
こんばんは、ホラントさん。
こんな時間に一人出歩いていると、狼に食べられちゃいますから。
妹さんがとっても心配されていましたよ。
[「ほうほう、ほうほう」
男は楽しそうにランプを翳して、牧師の姿を眺めました]
[もったいぶるようにホラントが紡ぐ不思議なお話を
牧師は真剣な顔で聞いていました。
やがてホラントは次の聞き手を求めて、
牧師の傍から離れて行きます]
村人、占い師、狼……
あの本のお話にそっくりですね。
[牧師が教会で読んだ物語に出てきたのは
人に化けた狼を見破れる人たちのお話でした]
[暗い暗い、森の入口。
牧師は森へと続く道を見つめて、困った様子です]
……大丈夫です。
神様がついていますから。
[牧師は聖なるシンボルをきゅっと握り締めると
小川へと続く森の中へと、足を踏み入れるのでした]
おや、こんな所にごちそうが。
いただきます。
[森の中へと迷い込んだ牧師は
あわれ、旅人に化けた狼に食べられてしまいましたとさ。
*めでたし*]
[森の中、牧師はドロテアを探しているうち、小川のほとりに出ました。
さらり、さらりと流れる小川のせせらぎは、昼も夜も無関係です。
少し離れた場所に、蛍の光に照らされている銀の髪が見えました]
こんばんは、ルイさん。
綺麗ですね。
[牧師はそう声をかけると、旅人の隣に座って蛍を眺めます。
旅の話をせがみながら、
しばらく川の周りに浮かぶ魔法のような光を見ていたことでしょう**]
[どろん、どろん。
狼は今しがた食べた牧師の姿に化けました]
どうだ、うまく化けられたろう。
[狼は水面に映る自分の姿を確かめようと、小川へ向かいます]
あれは宿に泊まっていた旅人だな。ちょうどいい。
化けていることに気付かれないか、話しかけてみよう。
なあに、気付かれたら、食べてしまえばいいのさ。
[喉をくつくつと鳴らすと、旅人へと近づいていくのでした**]
[旅人が小川のほとりに座っていると、蛍とは違う光が近付いてきました。]
牧師殿。
[そこにいたのはメルセデス牧師でした。
ふたりはしばらく一緒に座って、蛍を眺めていました。]
旅の話か。そうだな。
いつだったか馬車に乗ったとき、流れの吟遊詩人と一緒になって・・・
[その時聞いたお話を思い出しながら、ぽつりぽつりと旅人は話します。
西の国に大喰らいの女王様がいただとか、東の国では空に花が咲くだとか。
その中には、いつか村でホラントが話したものと似たお話もあったかもしれません。]
ところで、牧師殿も蛍を見に来たのかな。
[話が一段落したところで、旅人は首をかしげて*牧師を見るのでした。*]
蛍や蛍、こっちへ来い。
此方の水は、甘いぞ。
[牧師は古い童唄を口ずさみます。
淡い光は、空中に幾何学的な模様を描いていました。
牧師は旅人の不思議なお話に、
ひとつひとつ、驚きや笑いの声を上げながら
とても嬉しそうに聞いていたのでした]
旅の生活は、楽しそうですね。
私もいつか、他の国を見て回ってみたいものです。
[どこか遠くを見るような瞳をして
しばらく小川のほとりに座り、蛍の光の方を向いていました。
旅人の問いに、牧師は思い出したように手を叩きます]
ああ、そうでした。
ルイさん、このあたりでドロテアさんを見かけませんでしたか?
お散歩に向かったそうなのですけれど。
[牧師は旅人の視線を見つめ返して、問いかけました]
[この狼は、狼の中でも賢い狼。
食べた人が何者なのか、
その記憶の断片を知ることができるのです。
狼は旅人に気づかれないよう、ぺろりと舌を出しました]
次の獲物はどうしよう。
この旅人も美味そうだ。
あの木こりも食べでがありそう。
羊飼いには羊たちがもれなくついて来るな。
[狼はご飯のことを考えて、よだれを垂らしそうになります]
ああ、そうだ。
あのホラントとかいう男にしようか。
いろいろと嗅ぎ回られるのは、厄介だ。
おかしな噂を広められては、たまらない。
[森の中を歩いて行くと、目に入ったのはゆれる灯り。]
あら、ホラントさん。
……また、新しいお話ですか?
[灯りはホラントのランタンでした。
勿体ぶりながら語られるお話。
ほんの少し、首を傾げて聞くのです。]
……本当に、どこから聞いてくるのかしら。
狼と、それを探せる占い師……なんて。
もう。
[ホラントが行ってしまうと、小さなため息がもれました。]
……御伽話は、御伽話のままがよいと思いますのに。
[小さく呟くと、少しだけ考える素振りをして。
森の奥へと向かいます。]
[やがてたどり着いたのは、森の中の花畑。
不思議なひかりに包まれたそこには、釣り鐘型の花が咲き、蛍のような光がいくつも舞っています。]
……使う必要なんて、ないといいのですけれど。
[小さく小さく呟いて、薄紫の花を一歩、手折りました。
きら、きら。
光の粉がこぼれて消えます。]
いけない、遅くなってしまうわ。
アナちゃんとの約束もあるし、蛍を見に行きましょ。
[別れ際の約束を思い返すと、小川の方へと向かいます。
そこに牧師様がいらっしゃるなんて、思ってもみませんけれど。**]
いいや、見ていないが。
[メルセデスにたずねられたことに、旅人は首を横に振りました。]
村人なら迷うことはないだろうし、きっとどこか寄り道でもしているのでは。
もしくは・・・おや。
[旅人は続けて何か言いかけたのですが、ちょうどその時足音が聞こえてきました。
そちらのほうを目をこらして見ますと、どうやら探し人が来たらしいのでした。]
うわさをすれば、だ。
[その後すぐに、旅人は小さくくしゃみをしました。
マントの前を合わせながら立ち上がります。]
少し冷えて来たな。
ボクは宿に戻るとするよ。
[旅人はそう言って、小川を*立ち去って行きました。*]
そうですか。
単なる寄り道ならば良いのですが。
[旅人の「もしくは」との言葉に、牧師の眉間に皺が寄ります。
旅人の視線が逸らされると、牧師もそちらを見やりました。
普段と変わらぬドロテアの姿に、牧師はほっと胸をなでおろしました]
ドロテアさん、遅かったですね。
一人で出歩いては危ないですよ。
[宿へと戻る旅人に、牧師は気をつけてと告げます。
しばらく蛍を眺めた後、ドロテアと共に教会へと*戻っていったのでしょう*]
〜 ホラントとアナの家 〜
〔夜が明けて、朝になる。
知らん顔で昇った太陽の光は、地上に目覚めをもたらす。
眠い目をこすって起きたアナのすることは、朝ごはんの支度。ちいさくたって、よく教わっているから、これぐらいはそれこそ当たり前だ。
パンに苺のジャム、ハムとチーズ、それからミルク。
コーヒーを淹れる準備をして、兄を起こしに部屋へ行く。〕
お兄ちゃん、おはよう。
お寝坊さんは闇に目を食べられちゃうよ。
〔しぃん。
中から返事はない。
何度ノックをして、何度声をかけても同じ事。
それも近ごろはよくあることだったから、疲れているんだろうと決めつけたアナは、さっさとごはんを食べて、お手伝いとお勉強のために出かけてしまった。〕
[それは、昨夜のお話。
やって来た小川には、先客がいらっしゃいました。]
あらら?
ルイさんに、牧師様。お二人も、蛍を見に?
[なんて、呑気に尋ねます。
そうして無事を安堵されてようやく、心配をかけた事に気づくのでした。]
あら、あらら。
申し訳ありません、わたくしったら……。
[少し慌てて謝って。
ルイを見送った後、蛍の舞を眺めてから、教会へと戻ったのでした。]
[そうして、次の日。
いつものように、ご飯の支度から始まって、お掃除、お洗濯、と仕事は続きます。]
さて、後はお買い物ね。
[呟きながら手に取る買い物籠の持ち手には、薄紫の花が一輪、挿されていました。]
[翌朝、ドミニクは頭の痛みで目を覚ましました。]
ぐうう、飲みすぎた……。
つまみも酒の話も旨かったもんなあ。
[老人二人のせいにして、億劫そうに起き出します。
二日酔いの頭にゼルマのお小言はたまらないからです。]
[真夜中、おじいさんのベッドに潜った狼は、不思議な遠吠えを聞きました。
それはきっと、彼のお仲間の声でしょう]
ホラントか、それは良い考えじゃ。
最初に人狼の話を始めたのはあいつじゃよ。
何やら感付いておるかもしれぬ。
[しかし、そんなことよりも。
狼の頭の中は、今晩の素敵なご馳走のことでいっぱいなのでした]
――ベリエスのおうち――
ふああ、良く寝たのう。
[おじいさんが目を覚ましたのは、まだ夜が明けて間もない頃のことです。
どこかの木こりさんとは違い、おじいさんは頭も体もしゃっきりとして、ベッドを抜け出すなり朝の体操を始めました]
まだまだ、若いもんには負けられんからのう。
[そんな口癖をつぶやくと、おじいさんはかまどに薪をくべて、朝ごはんのパンを焼く準備を始めました]
ええと、買い足さないとならないものは、と。
[頭の中で色々と考えながら、村へと向かって歩きます。]
またお菓子を作りたいし、その材料も揃えないと、かしら。
[木こりはいつもよりものっそりのっそり歩きます。
頭に響くからです。
朝の体操なんてとんでもない状態なのでした。]
ゼルマさんのスープ貰えばよかった。
だけど、お小言もついてくるのはたまらんしなあ。
…帰ってチーズでも齧るか。
〜 村の道 〜
ん……っしょ!
〔ちいさな両手におおきな荷物を抱えて、アナは行く。
積み上がった荷のおかげで前は見えないし、ふらふらするし、危なっかしいこと、この上ない。
危ないよ、
そんな、すぐそばのお店のひとの声にも、アナはだいじょうぶって言い張るんだった。〕
[お菓子作りの事を考えながら、歩いていくと、のっそり歩く大きな人影が見えました。]
あら? あれは……。
ドミニクさん?
具合でも悪いんですの?
[いつもと違って元気のない様子に、ちょっと首を傾げます。]
[しばらく行くと、首を傾げるドロテアの姿が見えました。
しかしいつものような大声で挨拶すると頭に響きます。]
…ぉぅ。
[軽く片手を挙げての挨拶は、とても小さなものでした。]
――村の小道――
[朝ごはんを美味しく頂いた後、おじいさんは朝の散歩へと出かけました]
おお、朝は冷えるのう。
[マフラーを首に巻きつけて、おじいさんは道を歩きます。
と、道の向こうから、お日さまの下だというのにランタンを持った男がやってきたのでした]
おや、ホラント。相変わらずふらふらしておるのか?
[お小言を言おうと近寄ったおじいさんは驚きました。ホラントのランタンが、火もないのに光っているように見えたのです]
「狼だ、狼だ。やっぱり人狼はいたんだよ」
[ホラントは、またいつもの噂話を始めました。
けれど今日は、そのお話に続きがあったのです]
「だけど占い師も、霊能者もいるんだ。
不思議な力を持つ人二人。
この村にもいるんだよ」
占い師? 霊能者?
そいつは一体……。
[不思議に思ったおじいさんはたずねますが、ホラントはそれ以上教えようとはしないのです]
「そいつは後のお楽しみさ。きっとびっくりするんだから」
――宿の戸口にて――
[ゼルマは手紙を握りしめて扉に寄り掛かっていました。女将さんの出先のこころあたりに出した連絡はかたっぱしから期待外れのものばかりで、ついさっき一番遠い村からの返事が届いたのでした。
どこであれ女将さんは行っていなかったのです。]
困ったわねぇ。あたしは唯の年寄りだってのに。
[老猫のヴァイスも寂しげに、尻尾まで所在なさげです。]
[小さな声での挨拶に、きょとり、と一つ瞬きます。]
なんだか、元気がないみたいですけれど。
……どうか、なさいましたの?
調子がよくないなら、お医者様にかかった方が。
〔ふらふらとした足取りのアナは、別の意味でふらふらの木こりに、知らず、近づいていく。
誰かの注意する声とぶつかるの、
さて、どっちが早いだろう?〕
いや、ちと飲みすぎただけさ。
薬は効くけど苦えからなあ…いらねえ。
[ドロテアに苦笑交じりに声を返します。
が、無精髭で三割り増しくらい無愛想に見えるのでした。
後ろからの危機にも気付きません。
アナの小さな足音よりも、頭痛の音が大きいのです。]
[翌日になりました。
復活したとんがりぼうしとマントを身に着けて、昨日のように目的地はないのですけれど、旅人は村を見て回ります。]
こんなときは、まず落ち着くことだわね。
お茶で一服するに限るわ。
[誰にともなく呟くと扉を閉めようとして、ゼルマははたと*外を見やりました。*]
螢……?
あらあら、二日酔いですの?
いけませんよ、お酒はほどほどにしないと。
飲み過ぎは、体に毒なんですから。
[一見すると無愛想な言葉に、少しだけ怒ったような口調になりました。]
ドミニクさんは、早く見張ってくれるひとを見つけないといけませんわね?
[そんな事を言っていると、木こりの大きな身体の向こうに、揺れる荷物が見えました。]
……あら、あらら?
危ないですわっ!
……えっ?
わわっ
〔誰かの声が届いたけれど、驚いたアナは急に足をとめようとして、つんのめってしまう。
ばらばら、ばら。
積み重ねた食べものや雑貨やら、たくさんの荷物が地面に散らばってしまった。
……かしゃん、とちょっぴり、嫌な音も。〕
[ホラントがどこかへ行ってしまった後。おじいさんは何やら考え事をしながら、散歩の続きを始めたのでした]
……おや、あれは?
見ない顔じゃのう。
[おじいさんが遠くに見付けたのは、マント姿の旅人です。
前にも後姿を見掛けていたのですが、結局挨拶はしないままでした]
おうい、そこで何しとるんじゃ。
[ふらふらと歩いている旅人さん。もしかしたら、何かを探しているのかもしれません。
だからおじいさんは、彼に呼び掛けてみたのでした]
酒は百薬の…なんとかって爺さんが言ってたぜ。
いっつもはこんななんねえしな。
見張りなんざいらねえよ。
ドロテアさんはしっかり牧師さん見張らねえとだしなあ。
まーた飯忘れてそうだ。
[そんな風に返してる間にすぐ後ろにアナは来ていました。
ドロテアの叫びにドミニクは、振り返るんじゃなく耳を両手で押さえます。]
ぐああ……
[とても二日酔いに響いたようです。
そして少し遅れてのガチャンとか賑やかな音に止めを刺されたのでした。]
あら、あらら。
[ばらばらと崩れ落ちた荷物と、かしゃん、という音に上がるのは慌てた声。]
大変たいへん、大丈夫……って、あら?
ド、ドミニクさんも、大丈夫ですの??
[なんだかいっぺんに色んな事が起きて、ちょっとおろおろしてしまいます。]
あ、わわわわ……
ごめんなさ、 !!
〔謝ろうとしたアナは、こっちを見た木こりの顔に、さっきより、もっとびっくり。
まるい眼がおっきく見開かれたかと思えば、じわじわ涙が浮かんできた。〕
[しばらく歩いていると、遠くのほうから声が聞こえました。
旅人が辺りを見渡してみますと、一人のお爺さんがいるのが見えました。
旅人にとっては初めて見る人です。]
村の人か。
[旅人はそちらに向かって歩いて行きました。]
少し前から、村の宿で世話になっている。
ルイという。
特になにをというわけでもないんだが。
村の見物をさせてもらっていた。
[宿屋でのことは知りませんから、旅人はまずお爺さんに向かって自己紹介をします。
それから、さっきのことばに答えました。]
[宿への道をてくてくと、肩には羊のチーズと羊毛の入った袋を提げて、のんびりのんびり羊飼いは歩きます。その横をちょこちょこ子羊も歩きます]
おやおや?あれはアナとドロテアとドミニクじゃないか。なんだかちょっと大変そうだよフリー。
[道にばらまかれた荷物を目に止めて、羊飼いはちょっと早足になりました。子羊もとことこ駆け足です]
あらら、あらあら。
ドミニクさん、そんな怖い顔をしては……。
[言いかけた言葉は、泣き声に遮られてしまいます。]
ああ、アナちゃん泣かないで。
ごめんなさいね、驚かせてしまって……。
大丈夫じゃねえよ…。
[地響きのように唸り返し、木こりはアナの涙に顔を顰めます。
女子供の泣く声ほど頭に響くものはないと思ったのです。]
………泣くんじゃねえ。
[無理やり浮かべようとした笑顔は変な凄みがありました。
誰が見ても逆効果でしょう。]
[どうしましょうか、と思っている所に聞こえた声。
目に入ったのは、目深な帽子とふわふわの子羊でした。]
ああ、アルベリヒさん。
怪我は……ないと思うのですけれど……。
〔木こりのドミニクのことは、よく知ってる。
だからこわくないってわかっていただろうに、一度、零れてしまった涙は止まらないようだった。
その場にぺたんと座りこんで、わんわん泣き続ける。
それがちょっと収まったのは、アルベリヒ、……の子羊が近づいていて来たときだった。〕
ルイか。そういえば、そんな名前もどっかで聞いたような気がするのう。
わしゃベリエスじゃよ。この村に隠居しておる。
[おじいさんは、今度こそきちんと名前を覚えていたようです]
旅の人か。この村の様子はどうじゃ?
何か困ったことはないかのう?
[旅の人には親切にして、いい気持ちで旅立ってもらわなくてはなりません。
だからおじいさんは、そんな風に問い掛けます]
[次の朝。牧師は珍しく朝から教会を出て、墓地へと向かいました。
そこには沢山の石のお墓が並んでいます。
いくつかのお墓には、お花やお供え物が見られます]
おやおや。
随分と汚れてしまっていますね。
[数日前に降った雨のせいでしょうか。
汚れたお墓を、牧師は静かに掃除しています]
[ドミニクは泣き声にがんがん響く頭を押さえて落ちた物を拾います。
泣き止ませる一番の近道はこれしか思い当たらないのです。]
…オイラ、何も悪くねえぞ。
[やって来たアルベリヒにも、木こりはぼそりと呟きます。
顔が怖いのは生まれつきなので不可抗力と言いたいのでした。]
やあ、ドロテア。怪我がないなら良かったけどね。
しかしこいつはちょっとした惨状だ。
[言いながら、羊飼いは散らばったものをひょいひょいと拾い上げます。子羊が少女の傍にとことこと駆け寄って、めええ、と鳴きました]
あっはっは、その顔は二日酔いだなドミニク。
[ぼそりと呟く木こりの様子に、羊飼いはからからと笑いました]
悪気が無いのは知ってるが、そのしかめっつらは、そりゃあ怖いよ。
二日酔いに良く効く薬草を分けてやろうか?
とってもとっても苦いけどね。
[大丈夫じゃない、という返事に、ようやくドミニクの二日酔いの事を思い出し、いけない、と小さく呟きました。]
ええ、多分、びっくりしただけでしょうから……。
でも、こんなに一度に抱えたら、危ないでしょうに……。
[アルベリヒに一つ頷くと、荷物集めを手伝います。]
……ところで、さっきの何か壊れたような音……は。
……フリー?
〔子羊の鳴き声がしたとたん、アナはぴたり泣きやんで、ふわふわのからだに手を伸ばす。
ぎゅうと抱きしめたら、ほら、泣いたカラスがもう笑った。
割れてしまった油の入れ物のことなんて、頭にないだろう。……すごいニオイ、しそうだけれどね。〕
おや。
うわさにでもなっていたかな。
ベリエス殿か。
[お爺さんが旅人の名前を知っている風だったので、旅人はぱちぱちとまばたきをします。
お爺さんがベリエスと名乗ったのには、ひとつ頷きました。]
とてもよくしてもらっているよ。
宿の食事も美味しいし、蛍もきれいだった。
[問い掛けられたことには、不自由などないと首を振るのでした。]
[少女に抱きしめられた子羊は、ふかふかの頭をすりつけて、また、めえと鳴きました。どうやら少女を友達だと思っているみたいです]
アナは、フリーとエリーをちゃんと見分けるんだなあ。たいしたもんだ。
ととと、割れたってのはこれかな?わあ、こりゃ、ことのほか悲惨だねえ。
……笑うな。
[図星過ぎて言い返せないので、代わりにドミニクはアルベリヒから拾った荷物を取ろうとしました。
配達途中だろうと見当をつけたからです。]
薬草もいらん。舌が壊れる。
どうせならチーズを後で分けてくれ。
切るだけで食えるのがいい。
[牧師はふと、寂しい気持ちになりました。
見ず知らずの旅の人も
飲んべえのお医者さんも
気立ての良い、馴染の店主も
牧師はたくさん、たくさんの人を見送ってきたのです]
皆様、どうか安らかにお眠りください。
[ちょうど掃除を終えた頃、お腹がくぅくぅと鳴りました]
そういえば、この間は女将さんいらっしゃいませんでしたね。
どこかへお出かけされてたんでしょうか。
[女将のご飯を求めて、牧師は宿屋へと向かいます]
……よかった、落ち着いたみたい。
[子羊を抱きしめたアナの様子にほっとするものの、]
ことのほか悲惨……って。
あら。あらら。
[アルベリヒの言葉に、眼鏡の奥の瞳がまぁるくなりました。]
〔だいぶん落ち着いてきたらしいアナは、目を何度も何度も擦って、ゆっくりと辺りに視線を巡らせる。〕
ふえ……
木こりさん、ドロテアお姉さん、アルベリヒさん。
〔それから、ほかの村のひとたちも、何事かって顔でちらちら。〕
……ごめん、なさい。
アナ、びっくりしちゃって……。
ドミニクという木こりの男に教えてもらったのじゃ。
わしが知らん顔を見掛けた、という話をしたからのう。
[旅人が質問に答えるのを聞くと、そうかそうかと満足そうに頷きました]
そりゃあ良かった。まあ、ゆっくりしていっておくれ。
それと、おかしな噂には耳を貸さんようにするのじゃぞ。
[おじいさんの言葉の意味は、果たしてルイに伝わったのでしょうか]
……アルベリヒさん。
だって、フリーとエリーじゃ、
見た目はそっくりでも、ほかが違うもの。
〔当たり前のように、アナはいう。
抱きしめたままだった子羊を解放して、ね?と首を傾げるんだ。〕
ああ、いいの、気にしないで。
驚かせてしまったのは、わたくしですもの。
アナちゃんに怪我がなかったなら、よかったわ?
[謝るアナに、にっこり笑って言いました。]
[宿屋につくと、一人の老女が牧師を出迎えます]
こんにちは、ゼルマさん。
女将さんは、いらっしゃいますか?
[話を聞くと、どうやら女将さんは留守のようです。
牧師は残念そうな顔で、肩を落としました]
おう。
[アナの謝る声に木こりはただ一言答えました。
顔が怖いとドロテアやアルベリヒに言われたので、出来るだけ見ない振りをしているのです。]
……ちっちぇえアナにはちと荷が多すぎるだろ。
どうせ帰り道だ、半分持ってやらあ。
[無愛想なりに泣かせたことを気にしているのでした。]
なるほど。
ドミニク殿か。
[当の本人がちょっとした騒動にまきこまれているなんて知らず、旅人はうなずきます。]
そうさせてもらうつもりだ。
おかしなうわさ、というと。
ホラント殿のいっていた、人狼の話かな。
[ベリエスの忠告に、思い当たることはひとつしかありませんでしたから、旅人はそう言いました。]
〔ドロテアにはなんていったらいいか困った様子だったけれど、アナはちいさく頷いた。それから、おそるおそると立ち上がって、ドミニクを見あげる。〕
木こりさん、ごめんなさい。
こわい、顔、って思ったわけじゃないの。
ほんとうよ?
〔あちこちうろつく視線は、嘘って、きっと、ばればれだ。〕
……ちょっとだけ、ほんのちょっとだけは、思ったけれど。
でも、アナ、木こりさんが優しいって、知ってます。
ほいほい、チーズね。それなら丁度宿屋に届けるところだ。余分にあるから後で分けてやるよ。
それを肴にまた飲むんだろう?
[木こりに応えて、にやりと羊飼いは笑いました]
全然違うかい?おいらは自分の羊なのに、その違いが判らない。
アナはすごいよ、やっぱり。
[牧師は宿の中を見回しました。
老女の近くで、老猫ヴァイスの金色の眸が輝いています。
何かを誘われれば、無下に断るのも気がひけて]
すみません、それでは
お茶を一杯いただきますね。
[牧師は近くにあった椅子に座って、お茶を飲み始めます。
熱いお茶に舌をちょっぴり火傷しながら、牧師は口を開きます]
あの、ゼルマさんは
人に化ける獣のお話って
聞いたこと、ありますか?
ほんとう? 木こりさん。
でも、今度は気をつけるから、アナ、だいじょうぶよ?
〔ぱちくり、ドミニクの申し出にアナはまたたきをする。
それからようやく、ぷぅんと漂う油のニオイに気づいたみたいだった。〕
あ……っ。
入れ物、割れちゃった? 中身、だいじょうぶ?
〔全部はだめになっていないようだけれど、いくらかは零れてしまっているようだった。〕
……ごめんなさい、ドロテアお姉さん。
油、お返しするの、遅くなっちゃいそう。
〔アルベリヒに褒められると、アナは恥ずかしそう。
荷物を受け取ろうと両手を差し出しながらも、頬はまっかだ。〕
ううん、羊のお世話ができるアルベリヒさんのほうが、
やっぱり、ずっとずっと、すごいです。
そうそう、そのことじゃよ。
もう耳に入ってしまったのじゃな。
[おじいさんはルイに頷いて、少し残念そうに白いまゆげを下げるのでした]
あいつはいつも、根も葉もない噂を仕入れてきよるから……。
余り、気に病まんようにの。
[おじいさんはすまなそうに言いましたが、旅人の様子を見れば、そんな心配はご無用なのかもしれません]
……オイラも帽子、被るかあ。
[視線を感じて見たアナの態度に、木こりは下手な冗談を言ってみせます。
しかし優しいと言われると、むすっとなるのでした。
それが照れているのだとは知っている人は知っています。]
優しかねえ。
それにホントだ。ついでだからな。
[遠慮するアナに、矛盾したことを言います。
そして、先に配達してしまおうと歩き出すのでした。**]
ドミニクは、アナを手伝った方が気持ちが楽になるんじゃないかな?
だから手伝わせてあげるといいと思うよ。
[羊飼いは拾った荷物を半分だけ少女に渡して、残りは木こりに渡しました。子羊は少女の足下でおとなしくしています]
[ドミニクとアナが仲直りできそうな様子に安心したのか、ほっとしたような笑みが浮かびます。]
油? ……慌てなくてもいいのに。
それに、入れ物が割れてしまったのは、わたくしも悪かったのですから。
本当にごめんなさいね、いきなり大きな声を出して。
[そういえば、と狼は思い出します。
昨日聞こえた不思議な声を。
近くに仲間がいるのかもしれません。
獲物を先に獲られては、大変。
でも一日に沢山の狩りをしては
人間たちにとっても警戒されてしまいます。
狼は、その仲間と一緒に狩りをしよう、と考えたのでした]
……わかりました。
それじゃ、お願いします、木こりさん。
〔ふたりにお辞儀を、ドロテアにはもう一度ごめんなさいを言って、ドミニクと一緒に、アナは、家へと戻っていく。
でも、帰っても家には誰もいなくって、食事は手つかずのまま。
どうやら、ホラントは昨日から家に帰っていないみたいだった。
そんな事実を知ったアナはぷんすか怒りながらも、ついて来てくれたドミニクに、お礼を言ってお茶をごちそうする。二日酔いには効くのかな。
ありがとうと言うアナは、もう、こわく思っていないみたいだった。**〕
−夕方−
[女将さんの行方が分からずだんだん心配になっていたゼルマはノックの音に戸口にいそいそと出向きます。]
おや、メルセデス牧師様、お珍しい。女将さんはまだなんですよ、でもせっかくですからお茶でも上がっていってくださいな。
[とるものもとりあえず牧師を中に招き入れます。]
大丈夫だ。
いつものことなら、心配はないんだろう。
それに、どこにでも似たような話はあるからな。
[ベリエスがすまなそうにしているので、旅人は首を振りました。
来たばかりの頃に聞かされて、早足で村に来たことは内緒です。]
[ゼルマは急いで牧師にお茶とありあわせのスコーンを出しました。
熱いお茶に牧師がとまどっているのを見て女将さんがいつも牧師にはぬるめのお茶を出していたのを思い出しました。
一息ついて牧師の発した言葉はとても意外なものでした。]
人に、化ける、ケモノ?
[聞きなれない言葉にゼルマの目が宙を泳ぎました。]
……大丈夫、ね。
[一緒になって戻っていく二人の姿にちいさく呟いて、横に置いておいた買い物籠を拾い上げます。
持ち手に挿した薄紫の花の裏側が一瞬だけ、光ったように見えたかも知れません。]
さて、と。
わたくしも、用事を済ませてしまわないと。
それじゃ気をつけてな。
[羊飼いは、少女と木こりを見送って手を振りました。子羊もめええ、と鳴いて見送ります]
さてさて、おいらも仕事仕事。宿の女将さんがきっと待ちくたびれてる。
そうか、それならば安心じゃ。
ところでルイどの、これからどこかに行かれるつもりはあるのかのう?
わしゃちっとパンにのせるチーズを切らしてしまってのう、羊飼いの所から手に入れて来ようと思っとるのじゃよ。
[この村の食べ物は、ほとんど村の中でまかなう事になっています。
おじいさんも、小さな畑で育てた野菜を皆に分けているのです]
ええ、お買い物に。
女将さんが戻られているなら、ちょっとお聞きしたい事があるから、宿にも寄りますけれど。
……どうか、しました?
[首を傾げるアルベリヒに、今度はこちらが、首を傾げました。]
牧師様まで、ホラントに感化されてしまったのですか?
[こう口にしてから、ずいぶんと失礼な尋ね方だと反省したのか、ゼルマは言いなおしました。]
ええ、実のところそういう話は聞いたことが無いわけではありませんわ。ホラントがここのところ言っていること?
いいえ、ずいぶん以前からそんな話を聞いたことはありましたよ。先代の牧師様はそういったことがお嫌いでそのような話をすること自体禁じてしまわれましたし、あたしも忘れてはいましたが。
[ゼルマは牧師にお茶のおかわりを注ぎながら話し始めました。
ヴァイスの目がかすかに光ったように感じたのは気のせいでしょうか。]
[牧師はお皿に置かれたスコーンには手をつけませんでした。
お茶をふぅふぅと息を吹いて冷ましています]
ええ。
ホラントさんが言っていたのですけれど。
最後には国中のお菓子を食べ尽くしてしまった西の国の女王様のお話や
年に一度のお祭りの日、空一面に咲き誇る艶やかな花のお話。
そんな話に比べると、ちょっと怖くて、笑えませんね。
きっと、作り話ですよね。
[なにせあのホラントさんですから、と苦笑い。
老女の目が宙を泳ぐのを見て、牧師は少し不思議そうに首を傾けました]
いや、いまなんだか、光ったような?
でも、花が光るなんてことはないよなあ。
[こしこしと羊飼いは目を擦ります。子羊がめえと鳴きました]
……そうなのですか?
それで、ゼルマさんがご存知なのは、どんなお話なのでしょうか。
[先代の話を出されると、牧師は少しだけ悲しそうな顔をします。
何かと引き合いに出されては、肩身の狭い思いをしていたからです。
注がれるおかわりのお茶を見つめた後、
話をせがむように老女の方へと向き直りました]
[まだ小さい頃に聞いた話なので、うろ覚えなところもあるのですけど、と前置きしつつゼルマは話をつづけます。]
昔はなんでも、神罰で人が獣の姿に変えられてしまうことがあったとか。
そうした、獣に姿を変えられた者たちが償いの長い時を過ごす間に、悪魔にそそのかされて更なる罪へと足を踏み入れてしまうことがあったのだそうですわ。
[封印していた記憶を探りながらゆっくりとゼルマは記憶の糸を手繰っていくのでした。]
いいや。特に行く宛はないが。
羊飼いか。
[この村では初めて聞く情報でした。
旅人は少し考えます。]
そちらのほうはまだ見ていないな。
もしよければ、同行させてもらっていいだろうか。
荷物持ちくらいにはなれるだろう。
[首を傾げながら、旅人はベリエスに言いました。]
ホホ、ならばそうするかいの。
[おじいさんは、旅人に笑って頷きます]
荷物持ちとはありがたい。ならばパンとチーズの一切れくらいはご馳走せねばなるまいのう。
わしのチーズの焼き加減は絶妙じゃぞ。
[そうやって調子の良い事を言いながら、おじいさんは牧場へ向かう道を歩き始めました。
黒い帽子の羊飼いは、果たしてその先にいるのでしょうか]
神の罰ですか。
どんな悪事をしたら、そのような罰が下されるというのでしょうか。
おお、恐ろしい。
[牧師は老女の紡ぐ話に、両の手をぎゅっと組みます]
神に祈りを捧げましょう。
そうすれば、そんな災いはどこかへ消えてしまうことでしょう。
ああ、蛍か。そういやそんな季節だねえ。
[羊飼いはあっさり納得したようでした]
さて、それじゃおいらは、そろそろ行くよ。宿で飯を食べていくから後でまた会えるかもしれないな。
ええ、昨夜見てきましたけど、とても綺麗でしたよ?
[アルベリヒの言葉に、光の舞を思い出してにっこりと笑いました。]
ええ、わたくしも宿にはお邪魔しますから、また後で、かしら。
フリーも、またね?
牧師様、神に祈る前に私の話をもう少しだけ聞いてくださいませんか。
[牧師の話を遮って一息に続けました]
悪魔にそそのかされた者たちは、悪魔との約束通り、昼間は人間の姿に戻ることができました。ですが夜になると元の獣の姿にやはり戻ってしまったのだと。
そうした者たちは悪魔に、早く人間に戻りたいという気持ちを利用されてしまったのだそうです。
そして、いつしか人間を憎むようになっていったのだと、聞きました……昔聞いた話です……人間に戻れないもの達のことをなぜかウェアウルフ、と呼ぶのだそうです。
[そのウェアウルフ(ジンロウ)、と言葉を発した時のゼルマの声は擦れてやっと聞き取れるほど小さなものでした。
そうして老婆は自らの話に青ざめて十字を切ってその場で祈るのでした。]
なに、案内の礼はしなくては。
おや、それは楽しみだな。
チーズは好物なんだ。
[ベリエスのごちそうの話に、旅人はぼうしの下で目を細めました。
それから、ゆっくりと後について歩きはじめます。]
――宿へ向かう道――
[それから、おじいさんは牧場への道を歩こうとしましたが、遠くに子羊の声を聞いたような気がして少し道を変えたのでした。
羊飼いのアルベリヒは、いつも子羊と一緒にいるのです]
おおい、アルベリヒや。
どこへ行くのかね。
[羊飼いの背中を見付けたおじいさんは、大声で呼び掛けます。
しかし歳のせいでしょうか、その声は少々かすれ気味です]
[ゼルマはしばらく祈り、牧師に慰められ、なんとか落ち着きを取り戻しました。]
申し訳ありません、女将さんもいつ戻るとも知れず、取り乱しました、ごめんなさい。
牧師様、村のみなにはこの話は伏せておいて下さい。私が黙っていればこんな話はこれ以上広まることはないと思いますから。
[ゼルマは自分から話しておいて今更のように牧師に懇願するのでした。]
其の者たちは、人間に戻りたがっている、のですか。
[牧師はお茶を飲むのも忘れ、老女の話の続きを聞きました。
ホラントさんのお話は作り話かもしれないと思えましたが
老女の話は真に迫っていたように感じました。
ごくり、と牧師の喉が音を立てます]
昼は人間で、夜は獣の、ウェアウルフ……。
なるほど、そんなお話があったのですね
やはり、ゼルマさんは物知りです。
[闇色の中で金色に光る眸を気味悪そうに見やった後
牧師は今度こそ、神に祈るような格好をするのでした]
やあ、こんにちは、ベリエスさん。
今から宿屋にチーズと羊毛を届けに行くんですよ、ついでに飯も食べさせてもらおうと思ってね。
[問いに答えた羊飼いは、老人の隣にいる見知らぬ旅人に気付いて、会釈しました]
ええと、見ない顔だね。はじめまして。
[旅人は牧場の場所を知りませんから、ベリエスの後について歩くだけです。
そうしていると、ベリエスが大声を上げました。]
おや。
[旅人が見てみますと、そこには黒いぼうしの男の人と、小さな小羊がいました。]
大丈夫、大丈夫です。
ただの昔話ですよ。
[自分の手の震えを抑え、怖がる老女を落ち着かせようとします]
ええ、わかりました。
ゼルマさんと私と、二人だけの秘密にしておきましょう。
[口の前に人差し指を立てて、片目を瞑ります]
それにしても、女将さんはどこへ行かれてしまったのでしょうか。
[木こりはのっしのっしとアナとホラントの家まで歩きます。
きちんと荷を家の中に運んでから立ち去ろうとして、お茶の誘いに唸りながら頷きました。
断りきれなかったのは、手付かずの食事が見えたからです。
借りてきた熊のように縮こまって御馳走になったのでした。]
……茶、旨かった。
ありがとさん。
[お茶のおかげで幾分か二日酔いもましになりました。
少しだけ厳つさの減った顔で礼を言い、木こりは去ります。]
[実のところ、可愛らしい小羊に旅人の目は奪われていたのですけれど、アルベリヒと呼ばれていた羊飼いの挨拶が聞こえて、顔を上げました。]
これは失礼。
少し前から、この村の宿で世話になっている、ルイという者だ。
[旅人はぺこりと頭を下げました。]
こんにちは。
[おじいさんは、羊飼いに手を振り返します]
おお、それは丁度良かった。
実はわしも、チーズが欲しいと思っていた所なのじゃ。
また、一つか二つ分けてくれんかのう。
[そう言って、アルベリヒがルイへ挨拶するのを見れば、そちらへ譲ります]
ルイか、おいらは羊飼いのアルベリヒだ、よろしくな。
[羊飼いは遠慮の無い口調で旅人に自己紹介しました。子羊が見知らぬ人を見上げて、めええと鳴きます]
ああ、チーズなら、沢山持って来たよ。さっきもドミニクに分けてやる約束をしたとこだ。
[にこにこと羊飼いは笑います。自慢のチーズをみんなが楽しみにしてくれているのは嬉しいことでした]
まったく、ホラントの野郎。
妹ほったらかして何してやがんだ。
[木こり小屋の近くまで戻った時、当の兄の姿が見えました。
ドミニクは今度は怒りで怖くなった顔で迫ります。]
……おい、ホラント。
何噂して回ってんだかしらねえが、妹を泣かすな。
そんな暇なら荷物持ちぐらいしてやれ。
[最終的にアナが泣いたのはホラントのせい。
勝手に結論付けた木こりは不機嫌さを隠しません。
それに気圧され、ホラントは例の噂話を話したのでした。]
[どれくらい時間が経ったのでしょうか、思い切ったように膝をぽん、と叩いて立ち上がりました。]
牧師様、すっかり時間を取らせてしまって申し訳ありません。よろしければ夕食も上がっていってくださいな。私はちょっとだけ用事を済まさせていただきますので。
[ゼルマはその場を取り繕うように台所へスープの煮え具合を確かめに行きました。]
ええと、足りない材料はなんだったかしら。
[呟きながら、雑貨屋さんへと歩いて行きます。]
喜んでくれるひとがいると、作るのも楽しいのよね。
[ツィンカが急用で発った事はまだ知りませんから、彼女が喜ぶのがみたい、という気持ちが強いのでした。
外に飛び出した友達は、とてもとても、大切なのです。]
ホホ、そうかそうか。
[おじいさんは、ニコニコしているアルベリヒに頷きます]
ドミニクもチーズを欲しがっていたのかい。
あやつ、昨晩は酔い潰れておったようじゃが、今朝はどうであったかのう?
[そんな風に考え事をしているから、気がつきませんでしたけれど。
買い物籠の持ち手の花、その裏側には小さな光。
それはちらちらと瞬いた後、ふわり、と花を離れてどこかへ飛んで行きます。
でも、全く気づいていないみたいですよ……?]
アルベリヒ殿。
短い間だが、よろしく頼む。
[アルベリヒに挨拶を返します。
足元で小羊が鳴いたので、旅人はまた地面を見ます。]
この羊も飼っているのか。
可愛らしいな。
[旅人は言って、目を細めました。]
ああ、二日酔いで大変そうだったな。
[くすくすと羊飼いは笑って、少女を泣かせて困っていた木こりの話を老人と旅人に披露しました]
いいえ、とんでもありません。
面白いお話を聞かせていただいて
ありがとうございました。
[牧師はお茶を飲み終えて、老女に礼を述べました]
……よろしいのですか?
[台所へと消える老女を見送ります。
女将の姿のない宿屋に、
牧師はなんとも言えない居心地の悪さを感じていました]
……お前なあ。
それが本当なら何でうろうろしてんだ。
ちっちぇえアナを一人にしといていいのかよ。
[それはホラントも少々痛かったらしく、さっさと逃げ出していくのでした。
とは言っても、あのホラントです。
まっすぐ帰るかははなはだ怪しいのでした。]
あんな兄じゃ、そらしっかりするわな。
[ぼそりと呟き、木こりは小屋で仕事を始めます。
夕食までにするべきことは山のようにあるのでした。]
ああ、こいつは春に生まれたばかりの子羊さ。双子の一匹でフリーっていうんだ。
おいらのとこの羊だから、小さくてもいい毛並みだよ、ほら、触ってみな。
[ひょい、と子羊を抱き上げて、羊飼いは旅人の目の前に差し出しました。白いふわふわの毛をした子羊が旅人を見つめてきょとんとしています]
ホホ、そりゃあなんともあやつらしい……。
[木こりと少女の話を聞いて、おじいさんはのんびりと笑っています]
酒のやめ時がわからんとは、あやつもまだまだじゃのう。
そんな時に出くわすとは、嬢ちゃんも災難じゃ。
いつもより、楽しそう?
あら、きっと気のせいですわ。
でも、お菓子作りの事を考えると、わくわくしませんかしら?
[雑貨屋さんと、交わす言葉はちょっとだけ冗談めかしたもの。]
ええ、それだけですわよ?
他に、何かありますかしら?
[お菓子だけかと問いかけられて、本当に不思議そうにこう返します。
雑貨屋さんの、呆れたようなため息の意味には気づいていない様子です。]
ドミニク殿が。
それは災難だったな。
[アルベリヒが披露したドミニクと少女のお話に、そんな風に言いながらも、旅人はぼうしの影ですこしだけ笑ってしまうのでした。]
おや、いいのか。
[それから、抱き上げられて目の前に来た小羊に、旅人はまばたきします。]
ならば、失礼して。
[こちらを見つめて来るフリーを驚かせないように、旅人はそっと触ってみました。]
なるほど。
確かにいい心地だ。
……おかしな雑貨屋さんですわねぇ?
[買い物が済むと、こんな事を呟きながらお店を出ました。
それから、宿屋へ向けて歩き出します。]
女将さんが戻っているといいんですけれど。
〔ちいさなリュックに、手にはランタンをひとつ。
あれからいくらか経った後、眉をきゅっと上げた勇ましい顔つきで、黒い森の入り口にいた。〕
……お兄ちゃんばっかり。
ひとりで、ずるいんだから。
〔理由ばかりは、なんとも子供っぽかったけれど。
まだ月の昇りきらない頃、それでも、黒い森はやっぱり暗い。〕
[ゼルマは曲がりなりにも女将の得意料理に近いものを牧師に出して一休みしています。]
ああ、そうだった。ツィンカの使っていた部屋を片づけておかないといけないわね。
[ゼルマは二階に上がっていきました。]
そうだろう?
[旅人の言葉に羊飼いは自慢気に胸を張りました]
あんたは旅の人なら宿屋に泊まっているんだね。
だったら、うちのチーズの美味さも、すぐに判るよ。
[そうして、老人と旅人としばらく立ち話してから、羊飼いは宿屋へと辿り着くでしょう**]
柔らかくて美味しそうじゃ。
[うっかりすると、じゅるりとよだれの音が聞こえてしまいそうです]
でも、少しばかり小さいのう。
それに、ごちそうは他にもたくさん居る……。
[今夜のえものはいつさらいに行きましょう。
そんな事を考えて、人狼は内心わくわくしているのでした]
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