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[目の前の青年が手を振る先を追えば、彼女は未だ其処に居た。
控えめに手を振るのを見、やはり見覚えがある気が。
不意に、ぽん、と手を打つ]
ああ、あの時の。
[微妙に手綱を引っ張られた馬がまた不機嫌になった]
ていうかさー、何をどうすれば迷えるのか、聞いてもいい?
大通り真っ直ぐ行きゃ、目の前じゃんっ!
[俯く男に、呆れたような声で言う。
多分、力の限りの追い討ち。それが与える打撃はきっと、考えてない。
いや考えてやれと誰か突っ込まないと無理だろうが]
[それから、手を振り返すイレーネを振り返って]
やほ、今日も寒いなー。
これから、酒場いくの?
[軽い口調で問いかけ]
[視線を感じ、柳眉を顰める。すたすた、と其方に歩み寄り]
じろじろと見るな。
[先に見ていたのは彼なのだが、何処吹く風だ。
相手が顔半分を覆い隠した、不審な格好であったのも、気に障る]
……馬の扱いは、ちゃんとしろ。
[不機嫌そうな馬が目に入り、代弁するようにぼそりと言った]
[手を打つ男に一つ瞬きをする]
…お客、さん…
[しかないよね。
街で会って…騎士さんと知り合いになるなんて…
お世話になるようなことはしたことがない]
…うん、寒いね…
今から、ご飯、行くトコ…
[マフラーの下でもそもそとしゃべると、うなだれる男を見て…]
…知り合い?
[追い討ちは見事に決まった。
古典的表現ならばその文字が書かれた大岩が降ってきて潰されているような心境か。
思わず座り込む。
片腕は手綱に引っかかって情けなく垂れているが]
…私も聞きたいよ…
[声は地を這うが如く沈み込んでいた]
[と、また新たな声がして顔を上げる。
身なりから何となく彼の身分は察した]
これは…申し訳ありません。
[す、と立ち上がれば一礼を]
[こっちに歩み寄ってきた少年に一つ瞬きをし…]
…ごめん。
でも…珍しいな、って…一人で居るの。
[やはり、マフラーの下でもそもそとしゃべった]
そか、奇遇だなー。
俺もしばらくは酒場で手抜きする予定だったりして。
[肯定の返事に、軽い口調でこう返し。
続けての問いには、ふるふる、と首を横に振る]
いんや、今初めてここで見た。
[それから、凹み→立ち直りの連鎖を決めた男を見やり。
更なる連鎖で、全く見たことのない、金髪の少年に気づいてきょとん、と。
それからまた、男を見て]
……まあ、宿に行きたいなら、案内してもいーけど。
どーせ、俺もこれから行くとこだし。
[赤いマフラーの女性の言葉に表情を緩め]
ああ、以前ランプを買わせて貰った者だよ。
持ち帰ったら同僚が気に入ってしまってね。
危く奪われそうになったよ。
[その時を思い出してかくすくすと笑い]
君は此処の人だったのか。
[知り合いかと云う言葉に首を横に振る。
記憶の限りではそうではなかった筈。
方向音痴を織り成す記憶力では怪しいものだが]
[赤髪の男の礼に、些か気を良くしたか。
解ればいいと言ったふうに、頷きを一つ返す
[が、もそもそと喋る女の台詞を聞けば息を吐いた]
……僕だって、好きでこうしている訳ではない。
[皮の手袋を嵌めた右手を、額に当てる]
[宿に行きたいならと云う言葉に安堵したように頷く]
それなら是非お願いしたい。
いい加減休ませてやらないと更に機嫌を損ないそうだ。
[苦笑して馬の鼻面を撫でる。
馬はふん、と鼻で思い切り息を吐き出した]
/中/
鼻から息を吐くって文章おかしい…orz
ていうかまた弄られ系か!自業自得だけど!!
関係ないけどダーヴィッドって額ひろ(滅殺
…手抜き、と言うか…
ランプ、作ってたら…こんな時間になってただけ…
[…少し情けなさに頬を染めるが、マフラーで良い具合に隠れていた]
…ふーん…
初対面、なのに…へこませてるの?
[瞬きをすると、微かに首を傾げ…赤髪の男の言葉に小さく頷き]
お買い上げ、ありがとう、ございます…
この村に、ちなんで…お店の名前、つけたぐらいだから…
[小さく笑むと、少年の言葉に目を向け…]
…大衆酒場、で、良いなら…風避け、出来るよ?
[なら、何で?
そう思ったが、おなかはすいていたらしい]
[本当に辞めるのか? と口にするほんの一日きりの同僚に困ったように頷く。
理由は…言える訳がない。
言ったとしてもきっと理解されない。
…いや、理解されて…しまう事が怖いのか。
お給料と休暇の契約を反故にされ、縛り付けられることが何よりも怖い。]
…ありがとうございました。
[真新しい靴下をきゅと握り締め、宿を後にする。
片方だけの靴では汚してしまうから、もったいなくて履けないから。]
いい加減休ませてって……一体どんだけさ迷ってたんだよ。
[思わず、呆れたような声が出た。
肩のネズミが、哀れむような視線を馬に向けたかもしれない]
[それから、イレーネの言葉になる、と妙に納得して]
夢中になってると、ついつい時間、忘れちまうもんなー。
俺の場合は、師匠がでかけてるから、ラクするってだけだけど。
……っていうか、素直な感想言っただけだけどー?
[その『素直』がタチが悪いとは、思っていないらしい]
大衆酒場。
……成る程、興味はある。
[下賤の民の食事に。
――と口に出さなかったのは、幸いだっただろうか]
[青髪の男の肩に乗せられたモノに、気付き、緑眼を瞬かせる]
…うん…お祭りの時って…綺麗な、ランプが…売れるから…
作ってて、楽しい…
[同じ、職人の立場の言葉だからか、反発もせず小さく頷いて]
…素直?
[なぜ、素直な言葉が悪いのか…一つ、目を瞬かせる]
…今から、向かうところだから…良かったら。
[少年の言葉には小さく笑んだ]
[少年の視線を感じたのか、ネズミがきゅ、と小さく声を上げる]
ん? どした、ヴィント?
[気づいて見やった肩の相棒は、自分を見ている少年を不思議そうにじい、と見つめ]
『Fairy's fire』だったかな。
名の通り、何処か幻想的な光を灯すように感じたよ。
[おかげで同僚が未だに諦めてくれない、と笑う]
[馬はネズミの視線に溜息のような息を吐いた]
迷ってた時間はそんなに長くなかったと思うんだが、昼に一度休憩したきり休ませてやれてなかったからね…
[困り顔で告げるも、素直な感想と言われてまた凹み、馬の首に軽く伏せた。
馬は『あーもう』と言わんばかりの顔をしている]
[彼は男の肩の上のモノが気になるらしく、見詰め返している。
笑んだ女の声には、ああ、と生返事を]
……まさかとは思うが、それは……鼠か?
[嫌そうな表情]
確かになっ。
今年の祭りもにぎわいそうだし、やりがいあるよなー。
[作ってて楽しい、という言葉に、うんうん、と頷いて]
うん、素直に。そしたら凹まれた。立ち直ったり凹んだり、なんか忙しげ。
[それが自分の言葉のせいとは思ってない訳だが]
……まあ、それじゃ馬もへたばるわな。
んじゃ、行こうかー? 俺もいい加減腹減ったし。
[また凹む男の様子にかりかり、と頬を掻きつつ、こんな提案を]
はい…えっと…
騎士さん、の、買ってくださったのは…
頑張って、作りましたから…
[誉められると素直に嬉しいのか、笑みがこぼれ]
…また、街には、行きますから…
それまでの、辛抱、です…
[小さく笑うと、ふと、ネズミ、と聞こえ…
目を向ければ、おもむろに表情を崩した少年が居た]
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