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[どうやら花にも近付いているようだ。
伸ばした根を地面に手を当て、体内へ戻す。
それから再び歩いて、そちらに向かった。
"自分"ではない"前任者"の記憶に残った顔が、そこにあるなどとは考えつくわけもなく。]
[目にした光景に、少し離れた位置で足が止まってしまった。]
[見知らぬ獣(麒麟なんて生き物知らないので、
ユリアンにとってそんな認識)が突如喋り、頭が真っ白]
うわっ!僕の想像力、物凄く豊かなんだな。
は、はい!怪我はありませんでございます!
だから、食べないで!食べても美味しくございません!
それなら何か作ってあげるから、そっちを食べて!
[袖口を咥えられ、ますますパニック。言葉使いが滅茶苦茶]
[袖を咥えた状態では口が利けず、とりあえず立つ様にと促して。
やけに慌てる様子にそこはかとなく共感を抱きながら、首を振った]
……いえ、食べたりなどいたしませぬ。
お怪我がなければよろしゅうございました。
少々急いでいたとはいえ、申し訳ございませぬ。
[未だ花びらを追うつもりであった為、人の姿に戻る事なく。
深く首を垂れてから、再び蝶を探して視線をさ迷わせる。
そうして、捉えた微かに笑う声に、麒麟となっても長い白金の睫毛を瞬かせた]
[目の前の獣さんに謝られれば、ユリアンも少しは落ち着き
立ち上がって、頭を撫でようとする]
あ、ごめんね。驚いていろいろ叫んじゃったけど。
食べないんならいいんだ。うん、ごめん。
[そしてその麒麟の視線を辿り、目に入った人物をみて
ユリアンは目を見開いた]
――ティル。
[思わず自然に口にでた名前だけど。
よく見るとティルとは全然違う人で]
あ、ごめん。知り合いによく似てたから、
間違って呼んじゃった。こんにちは。
[心の琴線に何か触れつつも、ユリアンは
深く考えずにそのまま挨拶した]
似てるんだ?
うん、気にしていないよ。
[記憶との違いはなく思え、どこかほほえましい。]
迷い込んだの? 二人とも。
それとも、招待状を持って?
[姿を現した少年は、人とは異なる気配を宿していて。
翠樹王の眷属であろうかと、内心で首を傾けた。
伴侶の顔を怖いなどと言われては返事も出来ず、ただただ首を振るしかなかったことも走馬灯のよに思い出されたが。
故に、伸びてくる手に反応は遅れ。
撫でる手には滑らかな毛並みの感触と震えが伝わったろう]
――…?
[やがて流れる、知り合いのよなそうでないよな不可思議な空気。
なんとはなしに邪魔をしてはいけない気がして、私は花びらの蝶を探す。果たして蝶は未だにそこにあり、ひらひらはらりと舞っていた]
初めましてにござりまする。
なれど先を急ぎますゆえ、私はこれにて失礼いたします。
[待っている者もいるのであるからと、刹那の邂逅に暇を告げる]
[麒麟と呼ばれた獣さんを撫でると、
震える感触がして、直ぐに手を引っ込める]
あ、ごめんね。麒麟さん。突然触られたら、嫌だよね。
急ぐのに引きとめちゃってごめん。
[暇を告げる麒麟に謝ると、友によく似た少年を見る]
多分、迷い込んだ方なのかな?
夜道を歩いていた筈なのに、いつの間にかここにいたんだ。
正直ここがどこだか全くわからない。
ていうか、「招待状」ってなに?
[疑問だらけの顔で少年に尋ねる]
迷い込んだとはいえ、何か御縁あらば再びお会いできましょう。
いずれ、また――… ――…
[高く澄んだ嘶きを一音残し、消えぬ内に蝶を追おうとして。
その場に佇む蝶に蹄を向ける先に戸惑い、長い首を傾げる。
霧に濡れてやや重くなった鬣が、少し遅れて項を滑り落ちた]
……そなた…?
[問う声は、何処へか]
16人目、機魔 アーベル がやってきました。
機魔 アーベルは、聖痕者 を希望しました(他の人には見えません)。
僕は落ちていたのを拾っただけだけれど。
招待状は――お茶会のだね。
君も違うんだね。
[風の子と、ついで麒麟も見て。]
迷い込んだのなら、大変だね。
僕は送ってもらったのだけれど、帰り道はどこだろうね。
[そっと手を伸ばす。]
でも、それが行こうとしていた方向はわかるよ。
こっち。
可愛らしい影の精だったと思う。
[花は指の動きに従うよに、ひらりと舞い始める。]
……、
“また”、か?
[其処は知らぬ大気に満ちた世界]
[なれど覚えのある感覚]
[機鋼の魔たる彼は声を洩らす]
否、
[視界を覆うはノイズではなく白霧]
[記憶(データ)に破損は見られず]
[代わりに、]
違う、か。
[呟き右手で長く伸びた前髪を掻き上げる]
[露なる右の眼は闇夜][現れる左の眼は蒼穹]
[乱雑に羽織った外套は傷み、左肩より先は失く]
[滴り落ちてゆく、赤。]
[痛みは忘れて久しい身なれど血は未だに流れる]
少なくとも、面倒なのは確かかな。
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