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[白猫は、エーリッヒとは逆方向に首を傾げ返す。
芸術家と自称する割には、何だか理屈っぽい少女――ミリィの傍までいくと、つん、と鼻先で突っついて、白金の眼で見上げてみた]
[アベールの視線と含みのある言葉。
意味する所は容易に知れたので、半ばああと、気にしなくてもいいんだと安心したような、諦めたような、そんな曖昧な事を思いながら、ふるふると緩く首を振った。]
平気です。…いつもの事だから。
[向ける微笑は透明なもの。
だから気にしないで下さいという前に、屁理屈言ってないでさっさと運びなと女将がアベールを娼館へと引っ張り入れ、今度は逆に宿への届け物なんかを押し付けたりするのを少し楽しそうに、小さく笑いながら見ていた。]
[二日酔いが酷く、今はまだ酒場に行く気にもなれず、ぼんやりと空を眺めて酔い覚まし?も兼ねてブラブラと歩く]
…こういう時になんか言葉がふわっと浮かんでくるもんなんだろうな。詩人て奴は。
[言葉を掘り出すとっかかりに空を見上げてはみるけども、特に何も浮かんではこず]
あー……あったま痛え…。
[出てくるのはそんなボヤキの言葉だけ。視点を前に落としてみれば、珍しい組み合わせの三人組が居るのが見えて]
うむ、適当な木陰ができるのは知ってるが。
……一体、どれだけ寝ていたのかによっては、やっぱり色々と問題だと思うんだけど。
[無頓着さでは定評のある自分だが、さすがにここまでできないな、などと自慢にならない比較をしつつ、ユリアンにこう返す。
それから、視線はこちらにやって来て、ミリィを見上げる白猫へ]
むむむ。
[エーリッヒの言葉に、ミリィが唸る]
と、とにかく、散歩ではないの!
[無理矢理に締めくくる。
そして、次の言葉には、腕組みをして考え込んだ]
それ、父さんにもよく言われるんだけど、うーん。
難しいよ、それ。まだ数式を解いているほうが簡単かな。
……のんびりとやってるつもりなんだけど、さすがに時間かかりすぎてるから、ちと、気にかかるかなって。
何しろ、あれってユーディットさんが村に来てからすぐに描いたやつだから……わ。もう1年経ってるじゃん。
まあ、だろうね。
[透明な笑みと共に返された言葉に、返すのは労いでも何でもなく。
それだって、「仕事」の一つ程度にしか思っていないという言い様]
強引だねえ……、使用人じゃないんだけど?
[往復便となったことに口応えをしつつも、女将に言われる侭に動く。足を踏み入れたのは一度や二度ではないから、慣れたもの。
一通り終えると、荷物を足元に置き、腰に手を当てて一息吐いた]
他にやることあったら、使われますけど。
イレーネは今日はもう休み?
……ティッシュあげたのに?
[優しくしてないと言い切られてこれも違うのかと訊ねかけた。
実際、興味の向かない者に対しては常にこの調子だと言うのは、興味ある者に対する態度の違いを見ない者には分からないだろう。
あれこれ言われるのが煩わしくなってきたのか、ほんの少しだけ眉根が寄る。
注意力云々の話はスルーして、高い木に登ったと言う話を聞くと]
……それ、落ちてるだけじゃん。
[すぱ、と言い切った。
ティッシュが返されると再びそれはポケットの中へと仕舞う]
うひょお!?
[白猫が近づいてきたのに気づかなかったミリィが、いきなり鼻先でつつかれたので、飛び上がった]
何かいる!?
へ、蛇!?
[視線をずらすと、そこには、少しずつ暗くなっていく帳の中でもなお目立つ、白い毛を持つ猫の姿]
……猫?
わあ。なんだ。驚かせないでよ。
足音も立てずに近づいてくるなんて、このお茶目さん。
[ユリアンに驚かされたのとは真逆の反応で、猫の鼻をつんつんとつついた]
生憎と、エサは私持ってないよ?
[会話に耳をすませてみれば、何やら芸術の話らしく。あまり興味を持てなかったが自称詩人なりの矜持なのか、その会話から詩のヒントでも得ようと思ったのか、少し離れたところから]
こんな所に人が集まってるってのは珍しいな。
揃ってなんの話をしてんだ?迷惑じゃなけりゃ俺も混ぜちゃくれねーか。
[会話に混じろうとすると同時に上着からメモとペンを取り出してしまうのは記者をしていた時の癖がまだ抜けきっていないからか。]
……陽が傾く前には目は覚ました。
[どれだけ寝ていたのか、との言葉に、目が覚めた時の陽の位置を告げる。
どちらにせよ、呆れられる時間帯であることは間違いない。
エーリッヒの視線が下に向くことで、ようやく白猫の存在に気付いたり。
何かじーっと見つめている]
……そうなんですか。
[これ以上は堂々巡りだな、と思い、散歩の話題は打ち切って]
数式って。
感覚とか感性は、理論的には解析できないものだから、公式的に当てはめるのが問題なんじゃないかな。
ん、もうそんなになるんだ。
……早いもんだなあ……。
[一年、という言葉に、妙にしみじみと呟いて]
でも、焦って仕上げて、本当に自分の作りたいものじゃなかったら、それはそれで辛いんじゃないかな?
―回想/バウム家―
はい、新しい薬です。
朝と晩には欠かさず飲んでくださいね。
少しでも症状を抑えてくれますから。
[教わったとおりにカップへと水を入れ、その朝の分を飲ませた。
もう一人の住人はまだ寝ているようだった]
ああ、それは後でハインリヒから。
大丈夫ですよ、ちゃんと取り立てておきますから。
[すまなそうに謝る老女に首を振り、最後は軽口めいて答えた。
鞄を抱え直すともう一度穏やかな笑みを向け]
今日はこれで失礼しますね。
また伺います。
[村の往診は他にも何箇所か。
全てを回り終えれば診療所で怪我人や突発の腹痛を訴える者などを診て。一段落すればいつものように本を開く]
[ユリアンの言葉に]
それとこれとは、話が別!
[きっぱりはっきりと言い切った]
それに、ちゃんとお礼言ったじゃん。
え?何?もっと、強いお礼必要だった?
何よもー、意外に、恩着せがましいんだから。
[意地悪く笑いながら、うりうりとユリアンを肘でつついた。
最後の言葉には]
落ちてないの。降りてきたの。
ちょっと、骨折しただけ。
人間、歩いただけでも足の骨折れることあるんだもん。それと同じよ。
[自分に対しての反応と全く違う反応を猫に返すミリィを見て、訳分からん、と思ったのは言うまでも無く。
ハインリヒがこちらへと向かってくるのを見れば、軽く会釈だけはした]
…何の話って…雑談?
[見も蓋も無い]
……と。
やあ、こんばんわ。
[やって来たハインリヒに会釈を一つして]
何の話……と言われても。
感性と感覚の話と、夏場に木の上で寝る事の危険性に関する考察?
< 白猫、蛇呼ばわりされて、なぅ、と抗議の鳴き声。
しかし突かれ、ぎゅ、と鼻上に皺を寄せつつ尻尾を揺らす。
餌を持っていない事は気にしていないようで、
背後からのユリアンの視線に、今度はそちらを振り向いた。
じーっと見つめ返す、白金 >
[理解されるも追求もされず、ある程度の距離を置いた会話は、自分にとって楽でありがたいもので。こくと小さく頷いた。]
[女将はついでなんだからと何処吹く風で。
他にやる事、と言われて少し考え始める。
運良く何か思い出せば折角だからの一言で押し付ける気満々だ。]
はい、今日は特に。
[ですよねと、一旦女将へ確認しながら。]
そっちで夕飯、食べようと思ってました。
[ハインリヒの言葉に気づいて、振り向くと]
おや。ハインリヒのおじさん。
うんと。まとめて言うとなんだろう?
井戸端会議?
まー、取り留めの無い話だよ。
それよりも、おばさんの様子はどう?
少しは元気になった?
……礼より罵声が多かった。
[相手が言い切るのには既に諦めた様子。
肘でつつかれても反応は薄く、無表情のままで「…別に」と返すだけ。
落ちたことを否定する言葉には]
……ああ、カルシウムが足りなかったんだな。
[暗に怒りっぽいもんな、とか言ってますこの人]
……まあ、外での転寝は程ほどに。
[返って来た答えに、何となく諦観めいたものを感じて。
自身の日常を良く知る者が聞いたなら、説得力皆無な一言をユリアンに向けた。
ちなみに、白猫をどこで見たかはまだ思い出せていないらしい]
[エーリッヒの言葉に、少しだけ頬を膨らませた]
もー。だから、難しいって言っているんじゃない。
エーリッヒさん、意外に人の話聞いているようで、ちゃんと聞いてないことあるんだから。
駄目だよ。そんなんだから、いっつもユーディットさんを困らせてるんだよ?
[最後の言葉には少しだけ顔を曇らせて]
……あー。うん。
分かってるんだけどさ。
でも、1年も何の進歩も無いと、やっぱ才能無いのかなあって思っちゃうわけよ。
これも芸術家に家に生まれた運命ってやつ?わはは。
[見つめ返してくる白金をしばし見つめて]
…………。
[不意に手を伸ばし白猫の頭を優しく撫でた。
何を言うでもなく、ただそれだけを何度か繰り返す]
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