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ふふ、うふふ。
やらなきゃならないこと、ってのが、あるのは良い事だわ。
ね、素敵な事なの。
[笑うと、手元に持った袋から綿毛を取り出し。
ぱっと少し掴んで上へと小さく飛びながら投げると、白い雪のように、散る。]
よいこと、か。
[小さく呟いて、撒き散らされる白を見る。
この場所では、雪に接する機会は多くないが。
引き継いできた『記憶』の中には、それが降りしきる様子も残されていた]
綿毛はふわふわ、楽しげだなぁ。
楽しい、楽しいわ。
♪ネッスン ドローレ、
ヴォラレ ヴェルソ イルシェーロ…
[口を開け、目を閉じて高い声をあげて歌う。
この綿毛草の畑では、良く聞く歌声。
彼女は何時も楽しげに、嬉しげに、くるり、回る。
白いスカートの裾がふわり、広がった。]
貴方は、楽しく無いの?
よいことなのに、つらい?
[白の中、舞う、白。
そのひらめきと歌声に、僅かに目を細め]
んー。
絵ぇ、描くのは好きだけどなぁ。
[それから、肩を竦めてこう返す。
問いの答えになっているような、いないような、曖昧な物言いで]
だけど、なの?
それは、残念ね?
[笑みは崩さず、腰を曲げ彼の顔を覗き込むようにして
首を傾けた。]
でも貴方はお仕事をしないといけないのね。
ご飯を、食べる為?
[自宅からは離れた場所。
絵師のアトリエを尋ねた]
兄さん…、いないか。
[中へと声を掛け。
人の気配のない空間に、む、と眉を寄せ]
何処に行ったのかな。
[片腕に下げたバスケットに一度目を落とし、辺りを見回し。
道に出て行く人に尋ねれば、その示すほうに従って]
いやいやいや。
描くこと自体は、楽しいから、それはいいんだ。
[覗き込み、首を傾げる様子に苦笑を浮かべる。
『絵師』が特別な存在であるためか。
絵に関する生業は、都市では成立しずらい、と聞いた事があった]
まあ、飯もあるけど。
俺しかできん事、だからねぇ。
[目線は白から、頭上へ。それから地上に戻り。
漸く、先にいる人に気が付いて]
ああ、いた。
[その方向へ進む。
すぐ傍の花を揺らしながら]
……と。
[違う方向に、人の気配。
軽く瞬いて、振り返る先には、こちらへとやって来る見慣れた姿]
おんや。
よ、散歩か?
[投げかける声は、ごく軽いもの]
一人にしか出来ない事って、素敵。
ふふふ。
[笑みを浮かべ
くるり、回ると目の前の彼と同じような髪の色の
歳の若い少年が目に映る。]
…あら?
あらあら?
[掛けられた軽い言葉に、少し不満気な顔]
違うよ。兄さんを探してたんだ。
どうせ、仕事中はまともに食べてないだろうと思って。
[下げたバスケットを掲げ、目でも示し]
こんにちは。
[傍らにいる少女に向かう時には、笑みを浮かべた]
[素敵、という言葉に、僅かに緑の瞳を細め。
それでも、それに対して何かいう事はなく]
まともに食べてないというか、食べる暇がないというか、だけどなぁ。
[不満げな様子の弟には、笑みで返す]
まぁ、わざわざありがとなぁ。
大事なのは分かるけど。
それで『絵師』が倒れたりしたら元も子もないよ。
[あくまで軽い対応の兄に、やれやれと首を振って。
一歩進み出、殆ど押し付けるようにバスケットを差し出す]
で。
その様子だと、今度のは終わったんだ?
そこまでヤワではない。
……つもりだが。
[妙な間を持たせつつ言って、バスケットを受け取る]
ああ、無事に、な。
[向けられた問いへの答えは、ごく短いもの]
こんにちはぁ。
[現れた少年に、にっこりと微笑む。
エーリッヒの方へと目を向け首を傾けて]
ええと、息子さま?
[笑顔で真面目に聞いた。]
自信ないんだ。
[半眼で見上げ。
渡ったのを見て、手を離す]
そう。
家にはまだ帰らない?
[返す言葉も簡潔に。
二言目には別の質問を]
……はい?
[少女の言葉に、瞬間、思考停止]
……あのねぇ。
こんな息子がいるんだとしたら、俺は一体いくつなんですかと。
[そんなに老けて見えるのか、と。
そちらがショックだったらしい]
……倒れたことは、ないぞ。
一応。
[半眼の言葉に、ぼそりと返して]
……あー。
しばらくは、大丈夫だと思うが。
溜め込んだスケッチの整理とかもしないとならないからなぁ。
もうしばらく、アトリエ篭りかな。
[問いに答えつつ。
少女の問いにショックを受ける様子に、何となく頭をぽむ、とかやりたくなったが、自重した]
あら。
あらあら?
[自分の言葉に、ショックを受けたような二人の様子に
口を白い両手で抑え、驚いた顔をした後
直ぐに、笑顔に戻った。]
違ったかしら?
ごめんなさい、だって雰囲気が似ていたものだから。
一応って。
[尚も何か言いたげに見上げていたが]
…そっか。
[返った答えに、視線を地面に落とした。
撫でられたりしたらもっと落ち込むかも知れなかった]
[そして、エーリッヒの方を向き
じっと見つめ]
あら、だって…
歳は、不詳だわ?
[言ってから笑顔をミハエルに向け]
あら?
年上、なのね…驚いたわ?
[屈託無く、ころころと声を転がした。]
まあ、似てるのは、ね。
兄弟だし。
……まだ27なんだけど。
さすがに、18の子供がいるってのは、無理があると思うんだ。
[少女の言葉にこう答えて]
倒れた事はないんだから、いいじゃないか。
[弟に返すのは、強引な理屈。
視線を落とす様子には、苦笑を浮かべて]
[不詳、の言葉に首を傾げた。
共に過ごしてきた期間が長いだけに、他から見た感覚は分からない]
…え。
そうなんですか。
[年上だというのがこちらも意外だったよう。
瞬いた]
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