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[リィン]
[鈴を鳴らしながら歩み、女は緑の髪の少女の下へ]
ごきげんよう。
それとも、はじめましてですかしら。
[花に良く似た緋のドレスを摘み、首を傾げて一礼を]
私も客の身にすぎませぬゆえ。
ご挨拶は番人殿に。
[笑みを模した表情で頭を振る]
[後退る様を見、くれないの口唇は不思議そうに開かれた]
……どうか、なさいましたの?
はじめまして、でしょうか。
番人なる方には今しがた。
[小首を傾げて女性を見上げる。
小柄なのも相まってか、どこか幼さすら感じさせるように]
…靴を、失ってしまって。
お見苦しい姿で、申し訳ありません。
[何時、何処で失ったのかは記憶の霧の向こう側。
ただそれを恥ずかしいとは思った。
スカートの丈は踝まで。赤黒い痕を隠すことも叶わない]
ああ。貴女も記憶をお持ちではないのですね。
[さして問題はないとでも言うように、口ぶりは軽い]
私はキャロルと。貴女は?
[気まずさの漂う口調を気に留める事もなく、女はその赤黒い痕を見た]
…きたない。
これはあの花を踏んだのでしょうか。
[口許を指先で覆う]
[小さく鈴の音が響いた]
ええ、気が付いたら此処に。
私は…。
[唇に軽く指を触れる。僅かな間を開けて]
ネリー。そう、ネリーとお呼び下さい。
キャロル様。
[きたない、と言われれば顔を俯ける]
はい。途中、花の中を抜けて参りました。
あんなに奇麗な花なのに、踏んでしまったからなのでしょうか。
[困惑を交えた声で答えた。
割れた爪を、少しでも隠そうと足先を丸める]
番人の方。
何処か洗えるような場所はありますでしょうか。
[男に場所を聞くと、小さく感謝を述べ]
キャロル様、一度失礼を致します。
せめても汚れだけは落としてまいりますので。
[キャロルに頭を下げて聞いた場所へと*向かう*]
ええ。では貴女のおっしゃるとおり、ネリーと。
[女は、踝の位置に有る色を、唯見つめるのみ]
[手を差し出そうとはせず、くれないを開いた]
水か湯で洗い落としては如何です。
水場は、分かりますか?
[靴のヒールも相俟って、女は少女を見下ろし、首を傾げた]
ふふふ、うつくしい花でございますものね。
それゆえにあれには毒がありますから。
お気をつけになられないと。
[少女が番人に尋ねる様を、女は見る]
[一礼の後、立ち去る背に向け緩やかに手を振った]
いってらっしゃいませ。
[リィン]
[そうして女はまた、城の中を*歩む*]
見習い看護婦 ニーナ が参加しました。
見習い看護婦 ニーナは、狂信者 を希望しました(他の人には見えません)。
[わたしは眼を開けました。]
――?
[見えたのはただ、赤。
わたしはびっくりして、何度もぱちぱちと瞬きます。
こんなに赤い色が広がる場所を、わたしは知りません。
そうと手を伸ばして、その形に触れました。]
花…?
[広がる花弁、その下に細い茎。
そうして漸く、それが何かを知りました。
わたしの眼は色を知ることはできても、形を捉えることはできないのです。]
[それにしたって、不思議なことです。]
どうしてわたしは、此処に?
[理由は、そして移動手段は。
記憶が何か薄いベールに阻まれたかのように、思い出せそうで思い出せません。
この眼では独りで知らない場所になど、来れる筈もないのに。]
――様…
[少しだけ怖くなって、両腕を抱きます。
無意識に呟いた名の主を、しかし一瞬後にはどんな顔だったか、そもそも誰だったかすら覚えていませんでした。
わたしは途方に暮れて、ただ上を見上げます。
重く軋む音が、遠く耳に届きました。**]
わかっている奴の方が少なそうだった
ここではそれが、"普通"なんだろう
[上を見る様子>>77に、火のない暖炉へと方向を変えた]
[実際の寒さより、この場は空気を冷えさせて見える]
[ここには、人の気配が無い――]
靴は?
[視線を感じてか、男は再びラッセルを見た]
[それから、広間にやってきた二人と、クッキーの香りにそちらを向く]
[ベルと呼ばれた女と共にやってきたのは、先程挨拶をしたシャーロット]
……紅茶か
もらえるか?
[クッキーには手を出さず、男は注がれる紅茶に*目を細めた*]
[カップを手に取り口元へと運ぶ。紅茶を淹れる手つきもそうだったが、カップやクッキーを口元へと運ぶ手つきはどこか優雅さを帯びていた。冷えた部屋に漂う湯気は温かみを示し、飲み下した紅茶は冷えかけた心と身体を温める。落ち付いたように息を吐くと、クインジーからも紅茶を頼まれ、笑み返した]
ええ、もちろん。
[もう一つティーセットを用意し、一度カップを温めてから淹れた紅茶を注ぐ。ミルクと砂糖はお好きに、と付け加えて、カップをクインジーへと*差し出した*]
靴? ないよー。
なんだろう、好きじゃない気がするんだ。
[軽く答え最後の一滴を飲み下す]
ごちそうさま。
[器を受け止めるソーサーが、高く音を鳴らした。
大きく伸びをした拍子、
また椅子を倒しかけつつ立ち上がり]
他の人にも会いたいし、ちょっとうろついてくるね。
[置いていた画材を拾い上げると、
手を振り広間を出ていく]
[廊下の寒さは一層増す。
屋外とは異なる冷えた大気が満ちていた。
ゆったりとした足取りに惑いはなく、
小さな焔が照らす路を歩む。
静寂に沁み渡る鈴の音が、微か耳に*届いた*]
[宛てなく歩く城の中。
ふと、耳に届いたのは澄んだ音]
……鈴?
[小さく呟き、ふと足を止める。
耳をすませど、音色がどこから響くのかは定まらない]
御同輩は、増えている……ってとこか。
[小さく呟き、それから、何気なく近くの窓から外を見る。
一面の緋。
それに何を思うか、それは冷たい蒼氷からは読み取れず]
[ぱしゃりと水の音。
汚れた黒を落とせば、あるべき硬い部分が幾つか失われた爪先。
けれど踝周囲を巡る赤褐色の痕は洗っても落ちることなく]
いたい。
[感情篭らぬ声で呟きながら落とせる色を落として。
乾いた布を借りて冷え切った足先を拭き]
…きたない。
[更に布を借りて足先を包み縛る。
美しいとは言いがたかったが、鮮やかならざる紅は隠せた。安堵の息を吐き、ゆるりとその場を後にする]
[男が見る前で、シャーロットは手馴れた様子で紅茶を淹れた]
[その作法など男に理解はなく、そのまま受け取り、礼を言う]
悪いな
……うまい
[熱い紅茶を飲み、口から吐いた息は白い]
[無骨な指は華奢な陶磁器に似合わない]
[本音か世辞か、飲み終えて言うのはそんな事]
[シャーロットへと目を向けてから、席を立つラッセルを見送った]
まるで統一感が無い
ここに居るので、共通するものは何だ
それとも、単に偶然か――
[黒紅の片目が、再びシャーロットへと戻り、*もう一人へと向く*]
クインジーだ
お前も己より前に来ているのなら、特別に何かあるか検討はつかないか?
[何をすれば良いか分からず、再び番人を探して戻った。
聞けば空いている部屋を自由に使って良いのだという]
それであれば少し休ませていただきます。
他にも客人たる方々がいらっしゃるのでしたら、そちらへのご挨拶はまた後程に。
[番人は寡黙に小さく頷きを返すのみ。
リィンと響く鈴の声を遠くに聞きながら、教えられた部屋の方へと静かに*歩いていった*]
[手探りで見つけた木の棒を杖代わりに、聞こえた音を頼りに歩き。
わたしの赤一色だった視界に、異なる色が飛び込んで来ました。
黒く高く、行く手を阻む壁のようなそれに手を触れると、ひんやりとした硬さが伝わります。]
門…、かしら。
[上へ下へ、その正体を探るように触れて、わたしはやがてそんな結論を出します。
それから思い切って、力を込めて押してみました。
先程聞いたばかりの、重い音が*響きます。*]
[窓辺に立ち、ぼんやりと緋を眺めていた所に響く、重たい音]
また、誰か来た……と。
一体、どれだけ集まるのやら。
[呟きの後、蒼氷を緋から離す。
ここに集まる他者に興味は余りなかったが、全く知らぬというのもいささか不便だろうか、と。
そんな事を考えつつ、また、ゆっくりと歩き出す]
[門から手をずらし探ってみると、人1人が潜れる程度の隙間ができているのが分かりました。
わたしは少し悩んで、中に踏み入りました。
内には高い壁――門の中にあるのですから、きっと何かの建物なのでしょう。
じっとその色を見ていると、物音が聞こえました。]
…あ。
[誰かの住家だったのだろうかと、少し後退りました。]
[城の玄関先までやって来て、目に入ったのは『番人』の姿]
また、誰か来たってのか?
[問いに返るのは、肯定。
特に強い興味があった訳ではないが、『番人』が扉を開ける様子を一歩引いた位置で眺める。
開いた扉の向こうに見えたのは、まだ若い女の姿]
……これで、何人目だ?
[問いは『番人』へ。
蒼氷の瞳は、そこに立つ女へと向けられた]
[声が2つ聞こえて、また音がしました。
建物の中に見えた2つの色。
先程の低い声から察するに、多分男の人なのでしょう。]
…あの、勝手に入ってごめんなさい。
道に、迷ってしまって。
[言葉は2人に向けていましたが、鈍色の眼はどちらとも合っていなかったかも知れません。]
[問いに、『番人』は答えず。
それは自分で確かめろ、という意味合いなのかそうでないかは定かではなかったが。
何れにせよ、この男と話していても埒が開かないのは感じていたので、大げさな息を一つ吐き出すに留め]
道に迷った……か。
どうやら、そちらも御同輩で間違いなし、と。
勝手に入るのは、構わんだろ。
この『番人』とやらも、来る者は拒まず、といった所らしいしな。
[女の言葉に答えつつ。
焦点の定まらぬよな視線に、微かに眉を寄せた]
[緋色の裾を靡かせ、女は軋む床を進み、階段を上った]
[適当な部屋の扉を開け、白の繊手はその窓を開ける]
[リィン]
[また小さく鈴の音が零れた]
絵画のようにも見えますのね。
[碧眼は門の向こうを捉え]
[また、小さな話し声をも捉えた]
[扉も窓も開け放しのまま、緋色の靴は階下の玄関へと向く]
[溜息が聞こえました。
わたしに対してなのかと思いましたが、どうやら違うようです。]
ご同輩?
あの、それはどういう…?
[続いた声は、今度こそわたしに向けられたものでした。
わたしは僅かに首を傾げて、言葉を発したらしき茶色のひとへ眼を向けます。
相手の表情は見えるはずもありません。]
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