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―広場から少し離れた細い路地―
[怒声が聞こえたものの、どうやら犯人の特定は出来ていない模様。
自分を探す声追う声が聞こえなかったので、
少女は満足げに手の中の筒を一度空へと放り投げ、キャッチした。
真っ黒な手で握った為外は汚れた万華鏡。
それでも内側は何時覗いても綺羅綺羅と綺麗だったから、
にこにこと笑みを浮かべてゆっくりと歩く。]
あ、いけね。
爺っちゃん今日帰り遅いって言ってたな。
何か買って帰らないと。
[花祭りで賑わう人達の対応に追われ、自警団は忙しいらしい。
少女は今晩の食べ物を準備すべく、市場の方へと*足を向けた*]
[口に楊枝を咥えながら、レナーテが大股で町を闊歩している]
う〜い。食った食った。
あの兄さんの言ってたとおり、メシはうまいし、メシは多いし、メシは安いし、最高だったな。
[メシの感想だけか]
にしても、あの親父はほんっとうに神出鬼没だな。
いつの間に、先回りしていたんだか。
[あれから、その宿屋へと向かうと、どうやら父親がちゃんと二人分の宿を手配していたようで、名前を言うだけで、すんなりと入ることが出来た。
変人であり、得体の知れない人物でもあるのが、彼女の父親という存在だ]
ま。いいか。
手続きしなくて楽できた程度の問題だ。
[言いながら、肩に手を当て、腕をぐるぐると回し、首をこきこきと鳴らした]
ふう。
久しぶりに鎧脱ぐと楽でいい。
さすがにあんなのを四六時中つけてると、肩がこってしょうがねえからな。
[現在は鎧を自分の部屋に脱ぎ捨てて、風の吹くまま気の向くままに気楽に街中をぶらぶらと散策中]
―広場・露店―
何事ですか。
[露店から上がった騒ぎに、彼がそう言って首を突込んだのは少し前のこと。
盗難という言葉と、盗まれた品の情報を得、少し考えた後で、代金を支払うことにより取り敢えずその場を収めた]
─練習所─
[戻って来た練習所で最初に会ったのは、飛び出す時に「後はよろしく」と言い置いてきた同じパートの仲間。
ぽかんとした彼と、姉の様子をしばし無言で見守り]
……ふぉーるーかーぁー。
教えるに事欠いて、誰に教えてんだよ、おまっ!
[姉が行ってしまうと、八つ当たり気味に彼の首を抱え込んで軽く絞める。
自業自得とか、いつまでも子供なんだから、とか。
定例と化した突っ込みや野次にるっせぇな! と返した所にやって来たのは]
あ……楽団長。
[にこやかな笑みに、引きつりながら仲間を解放し。
とつとつと投げられる小言の後、居残り練習を言いつけられたのは、いつもの事。
……ついでに、本来ならば参加予定のなかった『本番』への強制参加も付け加えられた]
……?
[―――と。
歩みの先から怒号の声。
同時に派手な打撃音。
レナーテが音の正体を探るべく足を速めると、何のことは無い。
男が二人対峙して、罵声を浴びせあって、顔に青あざを作ってる最中だった]
お。
ケンカかい。
活気があっていいね。
[ぴゅう♪と口笛を吹くと近くで開いている店の親父さんから串に刺さった味噌田楽を一本買い、それをほおばりながら、のんびりと見物]
―大通り―
…やれやれ。
ぼくもそれ程裕福じゃないんだがね。
[その割に壺を買った件はさておいて。
露店から離れ孤児院へと向かう最中、息を吐いた]
さて、誰だろうな。
ヨハンか、トニーか…
[孤児院の子供の仕業かと見当をつけた故の支払い。
大人がわざわざ盗むものとも思えないし、親がいるなら親にねだれば良い話だからだ。
所謂問題児の名前を指折り挙げて考えるも、まさか『元』孤児院出身が犯人だとは思い至らないようだが]
えー……強制ってなんですか、強制ってー。
[ぶつぶつと文句は言うものの、逆らう様子はなく。
その後の練習にも、真面目に参加していた。
奔放な風を思わせるハーモニカの演奏の時とは異なり。
銀のフルートから零れる音色は水の流れを思わせる。
音色は連なり、多種のそれが絡んで旋律となる。
音の創り出す一体感は、不意の報せに破られて]
……何だ、それ?
なんか、不都合でもあったん?
[疑問の呟きは、周囲のざわめきに飲まれ。
ともあれ、この件については協議の上で、という団長の言葉により、ひとまず場は静まった]
─広場隅・ベンチ─
[観察していた者達は散って行き]
[己を避けて戻ろうとする行商人にはニヤニヤと笑みを浮かべて視線を向ける]
[これ以上面白そうなことがないと判ずると]
[組んで居た脚を戻して徐に立ち上がった]
…別の騒ぎが起きそうだな。
巻き込まれる前に退散だ。
[露店の一角で上がった声に状況を察し]
[近付かぬようにしながら移動を始めた]
[そうして、アーベルが連行されカヤが走り去っていくと、別所で上がった怒声もあってか辺りにいた人は散っていく
ふぅ、とひとつ溜息をつくと]
……じゃあ私たちも一度部屋に帰ろうか
「ダナー」
[そう言って部屋に帰っていった。──ここまでが昼の出来事]
[周りで人垣が出来て、思い思いにレナーテと同じく楽しいことが起きたとばかりにはやし立てる。
そんな中当人達は]
『ちっくしょー!お前の母ちゃんでーべーそー!』
『なんだとー!?お前こそでーべーそー!』
『て、てめえ!親の悪口はいいが、俺の悪口を言うな!』
[……なんだか、非常に低レベルな口げんかを繰り広げている]
あっはっは。
先に言ったほうが言い負かされてるんじゃねーぞー!
[三本目の味噌田楽をほおばりながら、適当に野次を飛ばしておいた]
― 孤児院 ―
[りんごの差し入れを届け、院長と子供達に久しぶりの時間を過ごす。苛々した気分も晴れた所]
あ、いっけなーい。もう戻らなくちゃ。
……ほら、そんな顔しない。お祭りが終わるまではいると思う。また来るからー。
[小さな子供たちの頭を撫で、元気いっぱい]
師匠、心配してるかも。急げー
[孤児院を出ると、とたんに駆け足。人と人の間をすり抜けながら、風のように広場へと戻っていく]
[再び起こる怒声。
瞬き、途中で道を逸れそちらに向かう]
ああ、喧嘩か。
専門外だな。
[しかし音の正体を知ると、あっさりそう結論付けた。
野次馬の横を通り抜けて行こうとし]
おや。
[少し前広場(の噴水内)で見かけた女性の姿を眼に止めた]
─大通り─
[相変わらず手巻きタバコを咥え、両手をジーンズのポケットに突っ込み]
[ゆったりとした歩みで通りを歩く]
……こっちでも騒ぎか。
[前方に見えた人だかりにそんな呟きが漏れる]
[喧嘩のようだが、周囲の野次の方が賑やかだ]
[少し足を止めて喧噪を耳に入れる]
……アホらし。
[聞こえて来たのは低レベルな口喧嘩だった]
[とはいえ、ざわめいた状態での練習は長くは続かず、早めに打ち切られ]
んじゃ、居残りしてくから。
あー、夕飯は何とかするよ。
遅くなるようなら、そのまま世話になってくるからさ。
[解散の後、姉にこう告げた。
こう言って帰宅した試しはほぼ皆無のため、いい顔はされないだろうが。
何か言われる前に、最初に飛び出してきた三階の練習室へと逃亡する]
あー、もー、にしても。
……本番、かぁ……。
[人気のない練習室に駆け込み、零れた呟き。
長く伸ばした前髪の陰の表情は、薄暗さもあって窺い知れず。
しばしの沈黙を経て、ふる、と首を振った後、譜面台に向き合いフルートを構える。
紡がれる音色は、やはり、水の流れの如く静かなもの]
[音色紡ぐ事数刻、さすがに疲れを感じた所で居残り分は切り上げる。
片付けの後、残っていた楽団長に挨拶をして、外へ]
……ん。
[外に出るとすぐ、待っていたらしい隼が肩へと舞い降りてきた]
さぁて、と。
メシ食いにいくか。
[翼ある友を軽く撫ぜた後、大通りへと向かって歩き出す]
[―――低レベルな口げんかだった。
低レベルな殴り合いだった。
だが、周りを人で囲まれ、ヒートアップしてくる当人達はそれだけでは終わらなかった]
『―――てめえ……!!』
『ああ!?やるのか、コラ!!』
[何処に隠して持っていたのか、ケンカしている二人が同時に懐からナイフを取り出し、相手めがけて切りつける]
『―――ヒッ!?』
[野次馬から、息を呑む声が聞こえてきた]
[―――しかし、その行為は途中で止められた]
……おいおい。
ケンカで刃を抜くのは、感心しねえなあ。
[いつの間にかレナーテが二人の間に立って、二人のナイフを同時に受け止めていた]
[立ち去ろうとして聞こえて来る、野次馬からの息を飲む声]
……抜いたか。
[何が起きたかは察しがついた]
[再び隻眸は人垣へと向き、その合間から喧嘩の当人達を見やる]
[血を見るかとも思ったが、それがなされることは無かった]
…ほぅ。
腕が立つのが居たか。
……ん、ああ。
あの時噴水に飛び込んでた。
[甲冑は着て居なかったが見覚えはある]
[右手をポケットから出し、咥えていた手巻きタバコを摘んで]
[口の端から紫煙を吐き出した]
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