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『加われない』ね…
そう思うなら、きちんと稽古を積むことをお勧めするけどね。ぼくは。
[そうは言いながらも、長々と説教を垂れる気はなかった。
話の合間にも降って来る花弁に片手を伸ばし、掌で受け止める]
まあ、折角の花祭。
楽しんだ者勝ちであることは確かだ。
だって、他に上手いのいっぱいいるし。
俺が無理に頑張らなくてもさ?
[問題ないじゃん、と事も無げに言って、笑う。
『他に上手いの』が、青年の身内の事を示すのは親しい者の間では周知の事]
そーそ、せっかくのお祭りなんだし、目いっぱい楽しまないと、ねっ!
[意を得たり、と言わんばかりの楽しげな笑みを浮かべ。
ひょい、と立ち上がると、下に降りるべく軽く、跳んだ]
……ととっ!?
[いつもの調子で跳んだはず、だったのだが。
屋根が濡れてでもいたのか、跳び際、軽く滑った足は体勢を崩させて]
っと、わっ……。
んなろっ!
[空中回転、強引な姿勢制御の後]
……いよっ、と!
[石畳に片手をつき、そこを基点に一回転する事で、どうにか着地を決められた]
[広場の隅にあるベンチにどかりと座り]
[短くなった手巻きタバコを指で摘むと、手の中で跡形もなく燃やし尽くす]
[胸ポケットからセルロースペーパーとスタッドオートマールスムの葉を出すと、補助器具を使ってくるりと新たな手巻きタバコを作り上げた]
[再び手巻きタバコを口に咥え、指を鳴らしその先に火を灯す]
[ひらり舞い落ちた花弁が、巻き添えを食って空中で燃え尽きた]
随分と平和なこって。
にしても何を思って呼び出しやがったんだか…。
まさか祭りの取材してくれ、なんざ言い始めるんじゃねぇだろな。
[態度でかくベンチに座り足を組み、周囲を見回しながら眉根を寄せる]
[周囲に苦みの強い紅茶のような薫りが漂った]
/*
手巻きタバコ作成の補助器具はローリングマシーンと呼ばれるらしい。
しかしマシーン言われると何か機械仕掛けっぽいイメージになるんで言い換え。
ちなみにスタッドオートマールスムは、「喫味はとにかくずっしりと重く、どこまでも濃い。辛さを通り越して、舌に軽い痺れを感じることさえある。薫味は紅茶か日本茶。日本茶に近いということから、渋みが強いと思われる」らしい。
酷いヘビースモーカーですね(色んな意味で)。
きみも充分上手いと思うよ。
[直後飛び降りてくる様子に眼を円く見開き、手の隙間から花弁が落ちる]
…おお。
いっそのこと、曲芸師でも目指したらいいんじゃないか。
[まさか途中でバランスを崩したとは思わなかったらしい。
のんびりと拍手などしながら、着地した青年を見た。
風で舞い上がった花が再びはらはらと落ちて来る]
[舞い落ちる花弁、それと共に降りてくる翼ある友を差し伸べた手に招いて止まらせる。
ふわり、と周囲を巡るのは、自然のものとしてはやや不自然な風]
んー、そーかなあ?
[上手い、という言葉には、軽く首を傾げ]
あっは……楽団追い出されたら、それもいいかもー。
[拍手とともに向けられた言葉に、屈託なく笑って見せた]
[ふ、と紫煙を吐いた直後]
[視界の隅に屋根から落ちる何かが見えた]
…あン?
[隻眸を細めその様子を見やると、落ちた影──人はバランスを崩していた割に無事着地]
[舞い落ちる花弁の中、空より降りるものに腕を伸ばしている]
…ああ、さっき屋根ん上走り回ってた奴か?
なぁアンタ、あいつぁ何もんだ?
[近くで祭りの準備をしていた者に声をかけ、その正体を探る]
[簡単な答えが返って来ると、短く礼を言って再び隻眸を降り立った青年へと]
楽団の『サボり魔』ね。
茶飯事なんだったら、大したネタにゃならんな。
[特ダネにはならないため、すっかり興味は失せたらしい]
7人目、店員 ベッティ がやってきました。
店員 ベッティは、村人 を希望しました(他の人には見えません)。
― 広場 ―
[広場の中心から少し外れた場所。茶色のシートが地面に敷かれ、その上に古ぼけた壷や剣、水晶玉やアクセサリーその他雑多な物が並べられている]
はいはーい。ねね、そこのいけてるオニイサン。ちょこーっと、見て行かない?
[澄んだ明るい声に足を止めた旅人風の男を見て、声の主は商売用の笑顔を作る]
ほら、これこれ、珍しいでしょう?遥か東の島国で掘り出された、二千八百年前の貴重な壷なんだよ。
どうよどうよ。ちょーっと重いかもしれないけど、持ち歩けば無病息災交通安全、おまけに金運アップ間違いなしだよー。今ならうーんとサービスするからさ、買ってってよ。どーんと三割引で、このくらいかなっ。
じゃあじゃあ、おまけにこの錆びたナイフもつけちゃうから。髭剃る時にも肌が切れない逸品だよ。あ、ねえ。ちょっとー。
……ちぇっ。けちんぼー!
[両手を上に上げ、去っていった男に捨て台詞。こちらを向いた男と目が合えばイーッと舌を出した]
素人の耳じゃあ、信用できないかな?
[風に揺れる髪を空いたほうの手で正しながら、降りて来る隼に眼を向ける]
…だからと言って、自ら追い出されるような真似は止めとくれよ。
ぼくの責任になりかねない。
[冗談めいた台詞を零しながら、彼の視線はふと広場の方向を向く。
先程の風の影響か、花のものでない匂いが届いてきた]
あは、そんなことないよー?
ライさんは教会の演奏にも接してるし、聴き分けとかできる人じゃない?
ま、そこらはアレ、俺の気分の問題、ってコトにしといてよ。
[くすくすと楽しげに笑いながら言って。
冗談めいた言葉には、わかってるわかってる、と頷いた]
……ん。
[そこでふと、こちらを見やる視線に気づいて。
瞬き、一つ]
[視界からサボり魔を外そうとして]
[彼と話をしていたらしい青年がこちらを向いた]
……元凶発見、てか。
[自分を呼び出した張本人を発見して呟き一つ]
[それと共に紫煙が宙へと消えて行った]
[組んでいた脚を戻し立ち上がり]
[両手をジーンズのポケットに突っ込んでそちらへと歩み寄る]
よぉ、元気そうだな。
[手巻きタバコを咥えたまま、お決まりの挨拶]
[周囲に渋みを感じる煙が漂った]
そうかな。
本職には敵わないさ。
[謙遜か本気か、態度からはやや後者よりとも取れるか。
その後の言葉には承知した、と頷き]
あれ。
[巡らせた視線の先に、街では『異質』な姿を見て、眼を瞬かせた。
但しそこに、所謂余所者に対する警戒心などは存在しない]
ヴィル!
来てくれたんだね。
[こちらに向かって来るのを見ればむしろ嬉しげに、自らが呼んだ旧知の友に手を振った]
[向けられていた視線の主らしき見知らぬ男。
こちらにやって来た彼とライヒアルトの親しげな様子に、ゆるく首を傾げるも束の間]
……ぅぇ。
[漂う煙に、露骨に嫌そうな声を上げて、一歩、二歩、後ずさり。
三歩目と同時、くるり、踵を返して場を離れ]
来いっつったのはてめぇだろうが。
[紫煙交じりの小さな嘆息]
[不機嫌さを隠しもせず振り撒いている]
[負の感情も隠さず表に出すのは青年の常ではあるのだが]
んで、古臭い手紙で呼び出した理由ってのは何なんだ?
[訝しげな表情を浮かべて友人を見つめる]
[ふと、視界の端で後退りする気配]
[横目で見やれば屋根を駆けて居たサボり魔が己の出現と同時に逃げの体勢]
[上げられた声に煙が原因と言うのが予測出来たか]
………はン、ガキにはきつかったかね。
[鼻で笑い、薄い笑みを浮かべた]
……っと。あれ? あそこにいんのは……。
[そのまま、花弁を舞わせる風を引き連れるよに移動した先。
目に入ったのは、茶色の髪。
腕から肩に移った隼と顔を見合わせた後、露天らしき空間へと足を向けて]
よ、祭りに合わせて出戻りか?
[呼びかける声は、ごく軽いもの]
─広場─
(もきゅもきゅ)ひとひごとひたあとのごはん、やっふぁおいひー
[紙袋に詰められたパンを幸せそうに歩き食いしながら、広場を通り過ぎようとすると、アーベルが逆方向に駆けて行く]
あれ? あれってたしか楽団のひとだよね
凄い勢いで走っていったけどどうしたんだろ?
[そう言って首を傾げる。頭の上のアーニャも同じように首傾げ
とそこで、ベンチの近くで見知らぬ男性と話すライヒアルトを発見]
って、あー。ライく〜ん。やっほ〜
[そう言ってブンブン手を振って走り寄る。アーニャも手をブンブン]
そこのお髭の似合うオジサマー。いい剣あるよ。かの英雄ブリンナーの使ってた剣のレプ……っと。
きょ、強度も持ち心地も保証するよ。これで今日からオジサマも英雄気分。あ、お願い。ちょっと触ってみるだけでもいいからさー。ぶー。
[頬を膨らませていると、優しい風が頬を撫でる。吹いて来た方向を見やると、視線に蒼の髪]
ひっさしぶりー!
ねね、いい壷あるんだけど、買わない?どうよどうよ、この形。
[挨拶もそこそこに、横に置いてあった壷を持ち上げてアピール]
古臭くなんかないさ。
心を伝えるのには手紙が一番だって、師も言ってたし。
[不機嫌そうな顔にも古い付き合いで慣れている為、動揺は無い。
代わりに少しズレた反論を返すのも、またいつものこと]
ああ、そのことなんだけど…
って、あれ?
[本題を切り出そうとして、思い出したかのように隣を見れば青年の姿はなく。
逃げて行く背中が見えて、首を傾げた。
友の言葉を聞いても尚理由に思い至らないのも、また慣れだろう]
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