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……?
[何処からか、鈴の音が聞こえてきた気がした。
相変わらず、二人の後ろからこっそりと、だが普通にばればれな動作で辺りをきょろきょろと伺うと、そこにいたのは先程出会ったぶち猫一匹]
あ。ぶち。
[目の前に置かれている食べ物を食べつつも、またうるさいのが来たとばかりの老獪な顔つきで、ぶち猫もまたこちらを見つめる。
ちょこちょことした歩き方でそちらに一直線に向かって歩き出して、その目の前でしゃがみこむと、楽しそうに話しかけた]
いいもの食べてるね。
何もしないで美味しいもの食べられるんだから、いいね、君。
―宿屋―
あらぁ、あなた…雑貨屋の店員さんよね?
[ひきつった表情を知ってか知らずか、そちらにも手をふってみる。
実はそのちかくに、ふるくからの顔なじみもいるのだが、それには未だ気付かぬまま]
あぁん、シェリーすきなのよぉ。
あ・り・が・と。
[語尾にハートをつけつつ、給仕の青年に投げキッス。
料理のほうには、目をまるくして]
…めずらしい料理ねぇ。
[ふ、とユリアンの言葉が耳に入ると]
細工師か?
そこに居るヴィリーも腕は良い方だぜ。
[店の隅に座り料理に手を付けているヴィリーを親指で指し示し。アーベルの言葉には]
おめぇがもう15年早く産まれてりゃ一緒に回る機会もあったかも知れんがな。
今はもう陸に上がった老いぼれだ。
[言ってやはり肩が竦められる。
少女──リディの頷きを確認するとその場を離れ、厨房へと入り。ヨーグルトに蜂蜜を和えたデザートを皿に盛り付け持ってきた]
嬢ちゃん、ほれ、持ってきたぞ。
[ツィンの傍にしゃがみ込むリディに声をかけ、デザートはライヒアルト達の席へと置く。止まり木の上からツィンに話しかけるリディをヴェルトが見つめていた]
平和ボケ、って。
旦那、今でもじゅーぶん気迫あると思うよぉ?
[肩を竦めるフーゴーに冗談めいた口調で返し。
ぶち猫に話しかけるリディの様子に、動物好きなのかな、などと思いつつ]
あんね、そいつ一応、『ツィン』って名前あるんよ。
良かったら、名前で呼んでやってな?
[こんな言葉をかけておく。
当のぶち猫は、言われた言葉の意味がわかっているのかいないのか。
ただ、ゆら、と尾を揺らすのみ]
そうだね。
まあどうしても聞かないとってわけじゃなし。
今回は時間持て余しそうだから、平気そうならそのうちにね。
しっかりしてるよ、クロエは。
叔母さんも安心して任せられるだろう。
俺らとは大違いだ。
[炊き込みも食べ終わり、再びソーダを口にする]
そうか?
まあそうしておこう。
[誤魔化そうとするのにそう頷いて。
聞こえるか聞こえないかの小さな声で付け足した]
…今は。
[投げキッスをされたリッキーは慌ててカウンターの奥へと引っ込む。どちらの意味で戸惑っているのかは……不思議なものを見る目でヘルムートを見ている辺り察することが出来るだろうか]
[一方フーゴーはさして気にした様子が無いのだが、それは単に気付いていないからなのかも知れない]
[なんてやっていたら、引きつりの元に手を振られ]
あー、ええと。
先ほどは、お買い上げありがとうございまし、た。
ええと、ルーミィさん。でしたっけ。
[妙にかくかくしつつ、挨拶を返してみた]
[フーゴーの言葉に振り返ると、少しだけ不安そうな顔をして周りをきょろきょろと見渡して、ライヒアルトの姿を見つけてから]
……う、うん。
[とだけ答えて、デザートが置いてある席に戻っていった]
……んー?
[そして、デザートを見つめて頭の上で疑問符を浮かべるように四方八方から見つめてから、不器用にスプーンを握って、おっかなびっくりそれを食べる]
───美味しい!!
[思わず、あまりの衝撃に叫んだ]
店?へえ、なんか商売やってるんだ。
でも俺、金ないから遊びにだけ寄らせて貰うな。
ところで名前も聞いてなかったな。俺はユリアン。宜しく。
[次いだアーベルの声には一瞬何のことかと首を傾げたが、俺って信用ないなあと笑った。
皿もすっかり空にして、満たされたといった顔で。
と、こちらに手を振る人間に目が止まった]
……まさかね。
[念の為、さっと顔を隠すように]
親父さんの船に乗ってか。
鍛えられただろうなぁ。
[残念、と笑う]
ま、でもその代わりにこうして美味い飯が食える。
どっちがいいかは甲乙付け難いな。
[老いぼれというのは敢えて何も言わない。
似たような言葉は海に出られなくなった者達がよく口にする。
そうした言葉はあまり好きではなかった。まだその心を理解するには少々若すぎるのだった]
[平気そうなら、という言葉には頷きで同意して]
そっかなぁ……そんなら、いいんだけど。
でも、アーベルも伯母さんも自分のやりたい事頑張ってるんだし。
ウチは、二人も凄いと思うんよ?
[大違いという言葉に、真面目にこう返して。
小声の付け加えには、何とも言えない表情を浮かべたやも知れず]
わ!すごい!
何これ!?
[感嘆の言葉を上げつつも、夢中でそれを食べ続ける。
───気づけば、あっという間に容器は空になっていた]
美味しい!もっと欲しい!
[言いながら、またきょろきょろと辺りを見渡して、フーゴーの姿を見つけると]
もう1個!もう1個食べたい!
[と、先程までの借りてきた猫状態はどこに捨てたのやら、大声でそんなことを言った]
[そりゃ同類と思えばな、とユリアンに笑う。
風来坊的な意味で]
…良かったな。
[いきなり叫んだ少女には何事かと思ったが。
意味を理解すると、軽く吹き笑って一言だけ投げた]
そぉかぁ?
ま、船を繰ることに関しちゃまだまだそこらの船乗りにゃ負けねぇ自信はあるがよ。
[クロエの言葉にそう返して、ふふん、と鼻を鳴らし胸を張った]
気迫があっても物忘れはどうにもならんからな。
そこらは流石に、歳だ。
[言いながら、とんとんと指で側頭部叩いた。顔には苦笑が浮かぶ。
そんな仕草をした後に聞こえる、リディの叫び声。驚きも覚えたが叫ばれた言葉に笑みが浮かぶ]
美味いか。
ああ、分かった分かった。
もう一つ持って来てやるから落ち着け。
[作ったものを美味しいと言ってもらえるのは、作り手としての至上の喜びである。せがむリディに少し苦笑を浮かべながらももう一つデザートを持って来て、リディの前へと置いた]
[さきに買ったハンカチをナプキンがわりにひざに敷く。
出された食事を口に運び、また目をまるくした]
いい腕なのねぇ。
うちのお抱えにしたいくらいだわぁ。
[没落しかけとはいえ、立場上、舌は肥えている。
そのうえで称賛は惜しまない]
ん、あ、ええと。
すぐそこの、雑貨屋やってるんよ。
ウチはクロエ、こっちはツィン。
よろしゅうに、ね。
[ユリアンの名乗りに、こう返し]
冷やかしはいいけど、ツケはナシだからね?
[金ないから、という言葉には、さらりと釘を刺しておいた]
またまた。
そういう事言ってると、余計に早く老け込んじまうからね?
[フーゴーの苦笑には、こんな軽口めいた言葉を投げて]
あー、まぁ扱き使っただろうな、一緒に船に乗ったならよ。
俺の船は商船でもあったから積み荷の積み下ろしもしなきゃならんし、商船が故に海賊にも襲われやすかった。
専ら意表を突いて逃げてたんだがよ。
[残念そうに言うアーベルに、がははと笑いながら告げて]
そんなら飯が食えることを良しとしとけ。
今は船を長期で乗り回すなんてこたぁ出来ねぇからな。
自分のやりたいこと、か。
自分のやりたいことしかやってない、けど。
[卑下するような言い方ではないが、複雑な声だった。
自分を生んだ港町から滅多なことでは離れようとしない母。
近年ではこの島にすら来なくなってしまった。
そして自分は。一つ所に居つけないよな性質で]
ま、ありがとうな。
[ただその言葉も嘘ではなく。
どこまでも真面目なクロエに返す微笑は柔らかい]
[ぎこちない反応には慣れっこだったりするわけで、笑顔にはよどみがない]
そぉよー。ルーミィ。
ちゃんづけでも、かまわないわぁ?
[それが本名でないことは(多少なり自明ではあっても)みずから言うことはせず。
聞かれたなら口にするわけで、隠すつもりはことさら無いのだが]
で、そういう貴女のお名前はぁ?
さっきは聞き損なっちゃったものぉ。
[ヘルムートの所作や口調から平民の出では無いと言うのは読み取れて。それを踏まえての言葉に喜色が浮かぶ]
お褒めの言葉ありがとよ。
だがここを離れるつもりはねぇんでな、お抱えは勘弁だ。
[社交辞令であったとしても賛辞には変わりなく。礼を言い、続く言葉には丁寧とは言い難いが断りの言葉を紡ぐ。
そんな折に返されたクロエの言葉には、またぺちりと額に手を当てて]
クロエにゃ敵わんなぁ。
要は気の持ちようってことかね。
気ぃつけるわ。
[言って、からりと笑った]
[少女の叫び声に一瞬びくりとしながら、
え、あ?とフーゴーの声に応答する。]
お、こんな近くにいたのか。えーと、ヴィリー?
ちょっくら仕事を頼まれてくれないか。
商売道具に細工を頼みたいんだ。
[金はあんまり期待しないでやってくれ、と頭を掻きながら。
徐に折りたたまれたナイフと
前金ね、とポケットに入っていた紙幣を取り出して手渡した]
細工はシンプルで構わない、あんたのセンスに任せる。
[ヴィリーがちょっと引きつり気味な気もしたが、どこ吹く風であった]
[複雑な響きの声に、何か思案するような素振りが掠めるも、それは一瞬で掻き消えて]
どういたしまして?
[笑みと共に向けられた言葉に、返す言葉はいつもと変わらない調子のもの]
やりたい事ができる、いうのは。
いい事だと思うんよ、ウチは。
[思案しつつ、言葉にしなかったのは。
いつも奥底に沈めている、こんな思い]
ハハ、下っ端の頃なんてそんなもんでしょ。
俺は規模の大きい商船に乗ったことは無いけど。
海賊は…ね。商船だと特にリスク高いか。
[半ば無意識に左上腕を右手で押さえる。
スゥと息を吸って吐く。何かを追い出した]
ああ、そうしとくよ。
疾風の親父さん。
[ニ、と笑う。
先達に敬意を表しながら、負けないとでも言いたそうな顔]
あ、ええと。
ちゃんづけは、遠慮しますわぁ。
会ったばっかりですし。
[よどみなく言われて、言われた方が困った。
かも知れない。
やはり、男にちゃん付けは、抵抗がある。
悪意をこめているならまだしも]
ウチは、クロエです。
滞在してる間は、よろしゅうに。
[新たに置かれたデザートを一口入れるたびに、少女は嬉しそうに叫んだ]
すごい!すごい!
なんか魔法みたい!
こんな美味しいのが、あったんだ!
[口の周りをヨーグルトで汚しながらも、少女はそれを次から次へと口に入れる。
やがて、2杯目の容器が空になると、脱力したようにテーブルに突っ伏した]
あー、幸せー。
こんなのがあるなんて思わなかったー。
[チリンと鈴が鳴った]
[おいしいと叫ぶ少女に、すこしうらやましそうな顔をむけつつも、ねだるようなまねはせず。
ただかすめ聞こえたひとつの名前に焦げ茶の瞳をうごかした]
――……、
[ユリアン、と、聞こえた気がする。
そのせなかに視線が留まる]
ん、そうだよぉ。
気持ちの持ち方は、大事だかんね?
[その辺りは、母の世話になっている医者からの受け売りもあるのだが。
からりと笑うフーゴーに、こう言って*頷いて見せた*]
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