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[扉が開く分には離れていたため、直接ぶつかることはなく。
背後で扉が開いた音>>35にヘンリエッタは振り返る]
ヒューバートさん!
[姿を見て、ヘンリエッタの表情がぱぁっと明るくなった。
訪れる頻度は多くは無いが、ヘンリエッタはその男性──ヒューバートにとても懐いていた。
彼の描く絵───目の前の光景をそのまま切り取ったかのようなそれは、ヘンリエッタにしてみれば魔法か何かに思えたのである。
ヘンリエッタは、彼の描く絵がとても好きだった。
以前、自分を描いて欲しいと強請ったこともある]
いらっしゃいませ。
今回はどのくらいお泊りになるの?
[喜色を滲ませた笑みを浮かべ、ヘンリエッタはヒューバートの傍へと駆け寄る。
先程までと変わり、紡ぐ言葉に緊張は無く、淀みも少なかった]
― 広間 ―
そのようだな。
[申し訳なさそうな呟き>>32に、一つ頷きと共に返す]
なに、また熟れた頃に来るまでだ。
家人も流石に青い実を持てとは言うまい。
……子を宥めるのが大変だが。
[此処の林檎は今勤めている家の、特に子供が気に入っている。
だだを捏ねられた時には流石の彼も手を焼いているとか、そんな様子は今は微塵も見せないが、少しだけ遠くを見るような目をしていた]
ここより北の地方でかね。
ならば、我が家の事だな。
[家名についての話>>33は、やはりあっさりと肯定する]
気にせずとも良い。
いずれ我が手で再興させる。今はその準備期間だ。
[言い澱む相手は何処までを知るものか、けれども片手をひらと振った。
口調も態度も揺らぐことは無い]
─ 広間 ─
ごめん、なさい。
…え、と。
おみやげ、お菓子か何か、用意します、ね。
[子を宥める、と聞いて>>39やはり申し訳なくなり、代わりになるものを用意しようと。
使用人にお願いすれば、手作りのお菓子を用意してくれるはずだ。
代わりとなり得るかは分からないが]
[返される片目を髪に覆わせた男からの会釈に笑みを浮かべる。
名前、と聞けば自己紹介の折だろうかとは思いもしたが]
[其の先に花開くように表情の色合いを変えた少女>>38に笑みを返す。駆け寄る姿に膝を床に付き、目線を合わせ、いっそ自分の方が低くと]
お邪魔します。
そうだね、……もうすぐ林檎が熟すだろう?
そのスケッチをするまでは、と思っているよ。
[得手とするのは風景で、あまり人物は得意では無いと言い訳を置いた上で描いたスケッチは幾年前に残して行った。
あの頃から人物画の上達は見られないまま、何処か曖昧な輪郭になってしまう傾向も変わらぬまま。
其れでも今より幼かった少女は喜んでくれたはずだったけれど]
[其れから、少女に合わせた目線のままで、改めて彼らの方を向く]
……はじめまして、で、恐らく間違いはないだろうかな?
名の無い画家をしている、ヒューバート・グリーンウッドと言うよ。
良ければ宜しくしてやってくれるとありがたいね。
― 広間 ―
遠慮するな。
[そして新たに姿を見せた、如何見ても年上の男性>>35に対しても先までと同じような態度。
ヘンリエッタが嬉々として傍へ寄って行く>>38のを横目に、残った茶を飲む]
……うむ。ありがたい。
[なお、ヘンリエッタの申し出>>41は断らなかった。
変わらなく見える口調にも、ちょっとだけ哀愁のようなものが漂っていた、かもしれない]
[冷めてしまった茶を飲み終える頃。
自己紹介の声>>42が聞こえ、そちらに目を向けた]
ラッセル・イザードだ。
[先と同じ名に続けて同じ職を名乗り、如何様な反応が返ってもやはり気にした様子は無く]
ヒューバート殿は、アーヴァイン殿とは長いのかね。
[娘との様子>>41>>42を見た為か、そんな疑問も続けた]
[歳には負けて懲り張り詰めた肩をぐるりと回す。
とんとん、と軽く右手で叩いて]
ラッセル、だね。
短い間になるけれど、よろしく頼むよ。
[イザード、は。もしかしたら知って居たのかもしれないが。
目の前を有りの侭に受け止めるが信条。
過去の知識を引き出す意は無い]
……さて、如何程から長いとなるのかな。
恐らくそろそろ10年くらいだとは思うのだけど。
[はて、と首を傾ぐ。
肩から降りた右手がゆるりと顎髭を撫でた]
─ 広間 ─
[膝をつき、目線を下げてくれるヒューバート>>42。
未だ背の低いヘンリエッタにとって、距離を縮めてくれるその仕草はありがたいもの。
好意抱く相手の顔を間近に見ることが出来た]
リンゴが赤くなるまで?
じゃあ何日かは居るのね。
また旅のお話や絵を見せてくれる?
[嬉しそうな笑みを浮かべて、ヘンリエッタはヒューバートへと問いかけた。
以前自分を描いてもらった絵は額縁に入れて大事に部屋に飾ってある。
ヒューバート自身が言っていたように風景画ほどの出来ではなかったけれど、魔法を紡ぎ出す手で描かれたそれはヘンリエッタの宝物となった]
[断られなかった申し出に、ひそりと安堵の息を零す。
ほんの少し、いつもと違う雰囲気>>44を感じてヘンリエッタは微かに首を傾いだけれど、言葉にするまでには至らなかった]
[嬉しそうな少女の笑み>>50を間近に、何処か微笑ましい色を宿して男は笑う]
そう、林檎が赤く、風に揺れるまで。
そうだね、前に見せた時よりもスケッチは大分増えているよ。
伝承も幾つか新しいものを聞いているから、そのお話もしようか。
[伝承は多岐に渡る。少女である彼女に聞かせられないような物も数多にあるが、其処はものがたりの柔らかさの出番になろう。
嘘に隠すのではなく語られない、めでたしめでたしの先に]
[額縁に収められた其の絵を見る事が叶えば、きっと何処か照れ臭げにしながら、人物画の練習を本格的にしようかと思う事もあるのだろうけれど]
……その前に、一度アーヴァインに話をしてこようか。
『親しき仲にも礼儀あり』、主には挨拶をせねば、ね。
[さて、主の書斎から客人は既に離れていようか。
それも確認せねば判りもしまい。故に]
では、私は一度失礼させて貰うよ。また後程に、ね。
─ 広間 ─
わぁ、ありがとう!
[絵も話も増えている>>54と聞いて、ヘンリエッタは両手を胸の前で合わせて喜びの声を上げた。
近隣以外の外の世界を知らないヘンリエッタにとって、来訪者から伝え聞く話はどれも新鮮で。
中でも伝承は不思議な話も多く、聞くのが好きな話の一つでもあった]
あっ、お父様へのごあいさつがまだだったのね。
いってらっしゃい。
[目線をヘンリエッタのものから自らのものに戻すヒューバートを見上げ、近くから一歩身を引く。
お楽しみはまた後で、そう自分に言い聞かせて、広間を去るヒューバートを見送った]
わたしも、ちょっと離れますね。
[広間に居る者にぺこりと頭を下げて、ヘンリエッタもまた広間を後にする。
廊下に出て探すのは菓子作りが得意な使用人。
ラッセルに持たせるお土産をお願いするため*だった*]
[暫しの歓談の後、広間から一人、二人と姿が消えて。
それぞれに言葉を送り見送って。
それを見計らうかのように、先ほどの使用人が部屋への案内を申し出る]
そうですね、書庫に向かう前に荷物だけでも置かせていただく事にしましょう。
[そう言って、カップに僅かに残っていたお茶を飲み干して]
それと、書庫への案内もお願いできますか?
一度場所を覚えれば、後は大丈夫かと思うので。
[この屋敷を訪れた本来の目的を果たすためにそう頼んで。
とりあえずは、と使用人の後をついて用意された部屋へと**]
― 客間 ―
[案内された部屋を見て、使用人を振り返る]
いいのですか?このような立派な部屋を使わせていただいても。
[思わずそう言ってしまうほどに整えられた部屋に驚いて。
それに対して使用人は慣れたように言う。
「お客様はみな平等に、というのが旦那様のお考えなんですよ」と。
今までにも、多くの家に一夜の宿を借りた事はあったが、彼の様な旅人を見下す者も多かったから、こういう扱いは新鮮で、慣れていなくて]
ありがとうございます。では、暫くの間使わせていただきます。
[そう言って軽く礼をして、部屋の中に荷物を置いて]
それでは、お忙しいとは思いますが書庫の場所を教えていただけますか?
[相手も自分の仕事があるだろうから、雑事は早めに済ませてしまおうと声を掛け
これもまた快く引き受けてくれた相手の後をついて、書庫へと]
― 広間→書庫 ―
― 書庫 ―
[書庫へと案内され、中に入って思わず嘆息する。
予想以上の蔵書と、見ただけでわかる古い貴重な書物の数々]
これは、思った以上に素晴らしい物と出会えそうですね。
[知らず、声に楽しげな色が乗れば、傍らで待つ使用人も誇らしげに頷く。
ほんの少し歩を進めて、書架に並ぶそれを眺め……そうして、ふと気がつく]
……ずいぶん、人狼関係の伝承や研究のような物が多い、ですね。
[書架を一つ埋める程度に集められたそれ。
使用人によれば「旦那様の昔のお仕事の関係と、後は半分は趣味」だという]
ここのご主人はそういう関係に明るいのですか……
そう言えば、確かお名前はアーヴァイン様と……
[ふと目を伏せて記憶を探る。そうして、瞬き一つ、使用人へと向き直って]
そう言えば、ご主人様へのご挨拶がまだでした。
まずは、そちらを通さなくては……礼を欠くとは迂闊でした。
ご挨拶と、此度の滞在のお礼を述べたいのですが、お会いできるでしょうか?
[使用人は「ああ」と笑って、「今日はお客様が多いけれど、今なら旦那様の元に来客は居ない筈です」と訪問への是を返し。
それならば、と案内を頼んで、舘の主の元へと]
― 書庫→主のいる場所 ―
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