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『相変わらずの吹雪の音』
『よく聴こえなかったのか、その人は振り向かない』
『肩でも叩けば気づくだろう』
『触れようと手を伸ばした』
『手が届く前に、伸びた″鉤爪″が触れて』
『いとも容易くシャツを裂いて、その下の皮膚までも深く抉った』
『血が溢れて、落ちて、足元に溜まっていく』
『痛みに歪めた顔で振り返ったその人は、″あたし″の顔を見て』
『悲鳴みたいな声を上げて、逃げるように階段を降りていく』
『残されたのは血溜りと』
『そこに映った、″バケモノ″』
『違う、そんなつもりじゃなかったんだ』
『自分がバケモノになってるなんて、知らなかったから』
『ああでも、そんなことより』
『この事が他のみんなにバレたら、まずい』
『…』
『地下の階段を降りて行く』
『さっきの人は、廊下の隅で動けなくなっていた』
『捕まえて、仰向けにしてのし掛かって』
―― 客室 ――
[客室へ向かい、適当に空いている部屋に入って外套と鞄を置く。
使えるようにしておいたと言うように、部屋は整えられていた。
天候のせいで薄暗いからとランプを点し、行儀悪くベッドに転がった。]
なんだかなー
ギュンじーさんももったいぶらないで言ってくれればいいのに。
丁度仕事が途切れたからいいけどさー
これが忙しい時期だったら師匠がなに言うかわからねーぞー。
[仕事がなくてもやる事はある。
そう考えるとのんびりもしていられないのだが]
『このままじゃバレてしまうから』
『せめて、誰がやったかわからないようにすればいい』
『左胸を深く、抉る』
『弱々しく脈打つ心臓に、止めを刺した』
ま、理由があってのことだろうから仕方ないか。
………ん?
[背筋を伸ばそうと伸びをして……なにやら違和感に気付く]
あっれ? なんだろ、ぶつけたり捻ったりした覚えはないんだけど……
[違和感は左肩、服の上から触れると僅かにそこだけ温度が高く感じた。
シャツの前を少し空けて左肩を見て]
『そういえば、腹が減ってたんだ』
『思い出したら、手の中のものが瑞々しい果実みたいに思えて』
『試しに一口、齧ってみた』
『…』
え? なにこれ
[青年の左肩には生まれつき薄い痣がある。
普段は気をつけて見なければ気付かないその痣が、明らかに濃くなっていて
触れればやはり僅かに熱を持っていることがわかった。]
気付かないうちにぶつけたのかなぁ……
まあいいか、大して痛いわけじゃないし。
[そう言ってシャツを着なおし前を閉じる。
感じた違和感は、今はすぐに忘れてしまうだろう。*]
/*
ところでね、襲撃描写が素晴らし過ぎて無言でGJものなんですけどね。
何がいいってさ、傷の付き方とかその辺りがすげーリアリティあるのがよい。
─ 翌日 ─
[雪の勢いはとどまる所を知らぬようで、夜半には吹雪と言える様相を呈していた]
……対策しといてよかったわー……。
[翌朝、風が収まったのを確認して外へと出て。
最初に口を突いたのがこんな一言だった。
取りあえず、気になっている所──家畜小屋の様子を見て、それから、足を向けたのは橋の方]
…………また雪掻きしろってか…………。
[昨日の努力をあざ笑うかの如く、真っ白な道なき道を愚痴りながら進んで。
ふと、違和感を感じて足を止めた]
……あれ?
[見覚えのある木立の切れ目。
そこまで来て、あるはずのものが見えない事に気がついた]
……いや、えと。
…………落ちてる?
[落ちるかも、とは思っていた。
けれど、実際に姿が見えないとなると……ちょっと、これは、言葉が無くなる]
あー、もう!
なんでこんな面倒が重なるかなあ!
[取りあえず、管理人や皆に相談すべきか、と。
そう思って踵を返す。
こちら側からできる事は限られているが、何もしないわけにはいかないだろう、と。
そう、思いながら、施設へと戻って]
おっちゃん、おはよー。
起きてるー?
[施設に戻り、隣り合う管理人の私室のドアを叩く。
いつもなら起きている時間のはずだが、何故か返事はなく。
何故か、人の気配もないような気がして]
おっちゃーん?
[首を傾いで、ものは例と扉を開けてみたら、あっさりとそれは開いて]
あれ、いない。
[見やった室内には人の姿はなく。
起き出して何かやってるのか、と思いあちこち一巡りしたものの、姿は見えなくて]
下、かな。
[何か備蓄か道具を取りにいったのかも、と灯り片手に向かったのは地下へ降りる階段。
その扉を開けて、何気なく踏み出した足が、何かを弾いた]
……へ?
[下を見る。
何か溜まっている。
あかいような、くろいような、みずのような、それにしては固いような、ナニか]
…………血?
いや、ちょっと、待て? なんで?
[反射的に足を引いたものの、靴の裏にはしっかり跡がついている。
手にした灯りで照らしてみれば、あかの跡は点々と階段に残っていて]
………………。
[立ち込めるにおいに顔を顰めつつ、そ、と階段を降りて行く。
進んだ先には、毛布の掛けられたナニカが見えた。
端から突き出した足には、見覚えがあり、す、と蒼が細められた]
……なんか、ものすごーく、やな予感しか、しないんだけどー……。
[掠れた声で呟いて、毛布を捲る。
その下にあったのは──倒れた管理人の姿で]
……おっちゃん……。
[ぐ、と。何かがこみ上げてくるのは気合で抑え込んだ。
頭がやたらとくらくらするのは、さて、一体何故なのか──なんて、考える余裕は。
管理人の身に刻まれた跡と、欠落しているものの存在の前に綺麗に消し飛んだ]
……ぁー…………もう、なんだって、コレ。
[気がついた。
思い出した。
『識って』いる。
これが何によってなされたものなのか]
……サイアクでしょ、コレ……なんで、こんなタイミングで揃うワケ?
……ないわー……。
てか、永遠に忘れてた方が絶対平和だったんですけど、俺……。
[一通り、愚痴を連ねた後、一つ深呼吸をする]
ま、『始まっちまう』んなら、腹くくるっきゃないかなぁ。
イタイの、嫌いなんですけどー。
[ぼやくような言葉を連ねた後、管理人の亡骸に毛布を掛け直して、ひとつ、息を吐き]
……せーの、で。
[くるり、踵を返して、走り出す。
階段上の血だまりでちょっと転びかけたが、何とか踏みとどまって]
だんちょーさんっ!
団長さん、起きてるー!
てか、寝てても起きろ!!!
[先ほどまでとは一転、取り乱した様子で団長のいる部屋へと駆けて行く。
大声と、遠慮なく扉を叩く音は施設中に異変を伝えられるだけのもの。*]
[>>32橋を気にするシスターの言葉には少し顔を強張らせる。
古くからある橋だ。
大雪になれば、どうなるかも分からない。]
此処にいれば、安全でしょ?
[仮に、橋が壊れてしまったとしても建物の中にいれば安全だろうと。
備蓄を確認しに行った青年の様子からして、食物が全くないようであるし。
長期間、閉ざされる事になった場合の恐れは抱いていなかった。
幸い、此処には手先の器用な幼馴染もいる。
皆が泊まる部屋を確認しに行く。
女は眠る事が出来れば何処だって良かった。
夫がいないなら、何処だって一緒だ。]
ちょっと、本を借りに行ってくるわ。
[女はそぞろな気を逸らす為の本を求めに図書室へと向かった。*]
/*
ユリアンさん聖痕ですか…!!
PC視点でも一番近しい人だったから疑う必要なくてよかった。
しかしこれはどうなっていくのか…。
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