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いやいや、イチ君程では。
[手をひらひらと振る。からりとコップの中の氷が鳴った。]
海かぁ…そいや一回、海が良いか山が良いかで言い争ってたっけ。
俺クーラーの利いた室内派っつったら怒られた。
[小学生並だ。]
ん。むしろ友梨残るから残ったよーなもんだし。
なかなか会えないけどねー。
[避けられてんのかな、と肩を竦めながら、僅か残る天カスを口に入れた。]
[戻って来ると、けらけら、笑って]
何だよソレー、スケさん、ヒッキーだなぁ。
オレは、海も山もいいケド、プールもいいなー。
ほら、流れるのとか波のとか、スライダーもいいし。
っても、あんまり行ったコトないけどさ。
[こちらもある意味、レベルが低い。]
あれ、そーだったんだ?
兄妹って、羨ましいケド、妹相手は大変そ。
大切にしろよー。
[軽く言って、身体を解すように、伸びをする]
[ケンは僅かに俯いていた顔を上げると]
「……ウミ。ひとつ聞きたいことがあるんだけど」
…………何?
[真剣な顔に、僅かに目を細め、短く促す言葉を返す。ケンは僅かに回りを気にした後、言い難そうに頬を掻くと]
「あー……えっと……その、ウミってさ。付き合ってる人とか……いるの、かなって」
…………はぁ?!
[あまりの想定外の言葉に目を丸くして声を上げる]
どーせなら現代っ子と呼んでくれ。
……確かにプールは良いかもな。しょっぱくないし。
[どっちにしろあまり変わらない。プール肯定の理由も。]
ん、お年頃って悲しいねぇ。小4くらいから全然構ってくれなくなってさ。
大切にゃしたいんだけど。
[ちなみに会えないからこそ一部――先程まで同じ場所にいた2年生の少年や、三つ編みの少女の義兄にいろいろ聞き込むわけだが。苦手とされている辺り、ついでに威嚇でもしているのかも知れない。
コップにもう一度麦茶を注ぎ、殆ど一気に飲み干した。片付けようと席を立ちながら、ふと]
…ってあれ、イチ君ひとりっ子だったっけ。
しょっぱくないケド、塩素臭くね?
[あの臭いだけは苦手、と表情を歪めた。]
小4って、…かれこれ8年くらいじゃん。
うわ、さみしー。報われないねえ。
[そんな彼の行動を殆ど知らないショウは、そう返すだけ。
被害に遭っている者からすれば、当前と言いたくなるかも知れず。
伸びに続いて腕のストレッチまでしていると、
流石に、寮母によそでやりなさいと注意を受けた。
はぁいと気のない声を返して、外に出ようかと身体を反転させ、]
んにゃ。違うよ。
[背を向けたまま、問いへの否定は、短い。]
―競技場・フィールド―
あ、ーぢー…。
ってか、砂が固くなりすぎ、た。
[頭からタオルを被って、芝生の木陰に寝転がる。
手探りで、最早土だらけになってしまったスパイクを脱ぎ捨てて
乾いてこびり付いた砂を適当に払いながら、ぽつりと独りごちる。
自主錬だから、全て自分でやるのは判っていたが水が多すぎた。
それはもう、前の比とは比べ物にならないぐらいに。
マネージャーの偉大さをしっかり思い知って、反省中。
ちなみに昼ごはん?何それ美味しい?
と言わんばかりに、口にしたのは10秒チャージゼリーですが何か。
一部の人に知られれば、怒られそうな食生活。]
「おっつかれーん。ホイ、差し入れ」
っうわ、冷た…っ!
…って慎かよ。ビックリさせんな!
[タオルの覆う白い視界をぼんやり眺めている内に
首筋に当てられたひんやりとしたものに、思わず飛び起きる。
(マネージャー代わりに付き合え、と無理矢理連行してきた)肝心の相手は、
「ひんやりとしたもの」…缶ジュースを持ってけらけらと笑うばかりで。]
「ほい、差し入れ。そこの自販機で買ってきた。」
……うっわ、慎の奢りとか珍しすぎる。むしろ怖ぇ。
明日もしかしたら、台風来たり落ち葉が舞ったり
吹雪が起こったり桜が咲いたりするんじゃねーの…。
「最後のとか、どこの怪談話だよ。」
[軽く投げ渡される缶ジュースを受け取りながら、
うっわぁ怖い、とか大げさに怖がって見せる。
そういう互いの顔は、笑顔が浮ぶものでしかないが。
とはいえ、折角の頂き物にありつかない理由は無い…況してや炎天下。
さっそく戴きまーす、と勢い良くプルタブをあける。]
[瞬間、
激しくシェイクされ、勢い良く噴出した炭酸水を浴びながら
…怪奇現象が起こる事はねーな、と前言撤回の決意を*したとかなんとか*]
アズマは、オーシャンズ13と仮面ライダーが憎いんだ、ぜ…!(バイト)
あー、そだな。
俺やっぱり室内で良いや。
[顔を顰めるのを見ればまた小さく笑い、]
なー。昔はべったりだったのにさぁ。
それ言うとまた怒るし。
[トレイを運びつつ、首だけがくりとうなだれるようなポーズをしてみせた。]
?…そか。
おう、またー。
[短い返答にはやや首を傾げるものの、振り向いた笑顔に誤魔化されたか、言及することはしなかった。此方も軽く手を振って見送る。]
「あっ、いやその……付き合ってる人居ないんだったら、俺と付き合ってくれないかなって。昔からさ、えっと……好き、だったんだ、ウミのこと」
[しどろもどろに告白の言葉を告げるケンに、僅かにため息をつくと、しっかりとケンの目を見据え]
……気持ちは嬉しい。付き合ってる人も居ないよ。……けど、ごめん。その気持ちは受け止められない
[それだけ言い残すと、その場から立ち去ろうとする]
−体育館−
〔バッシュが床を擦る音。ボールが地を叩く音。
夏期休暇中にも変わらず、幾人かの部員が、今日も早くから練習に励む。
――― 1on1。
オフェンス側の沢口 遥仁は、自ら手に確りと意識を向けつつも、眼差しは全体を捉えていた。対峙する少年は、学年は下でありながら体格は上。まともにぶつかり合えば不利、真正面から打っても止められる。
視線が彷徨って、一瞬、動きが止まりかける。規則的なリズムの変化。
即座に、スティールを狙って、手を伸ばすディフェンス。
それに動揺もせず、…ふっ、と。遥仁の口の端が、持ち上がる。
フェイク。手は止まる事なく、ボールは彼の背後へと逃げた。目測を見誤り僅かバランスを崩す相手を横目に、動きは既に、次へ。球を操る手を左に移しながら、身体を捻り自らを盾にして一気に抜き去る。ボールが強く、跳ねた。
後ろは見ず、今、見据えるのはゴール。
地を蹴り、高く伸び上がるイメージを持って、両手を添えボールを空に解き放つ。
球は、遮るものもなく、弧を描いて輪の内へと収まった。〕
〔幾度かの遣り取りを終えて、笛が鳴る。終了の合図。
コートから戻って来た2人は、タオルを受け取り、呼吸を整える。
外から聞こえる蝉の声が、煩い。生き急いでいるようにも思えた。…実際彼等の生は短いのだから、その通りだろうか。
それに、夏の陽は長いと言うけれど、1日はやはり、短く感じる。
幾ら練習しても、遥仁にとっては、足りなかった。
強いですね。感嘆の声をあげる練習相手の1年生に、遥仁は少し照れたような表情を返した。
特訓して貰ってるしね、との言葉は極々小さく。視線を移して、外を見やる。
「―――折角。
先輩から引き継いだポジションだから。
頑張らないと、ね。」
そう言う遥仁の浮かべる笑みは、僅か、*苦いものだった。*〕
〔翔が部活を辞めた理由が、アルバイトだけではないのは、薄々、というか、感づいているけれど。
遥仁に、それを直接問う事は、出来なかった。
別に、気にする必要なんて、なかったのに。
バスケットが楽しいと言って笑った、彼の先輩。
馬鹿だなぁ、と思った。
自分も、相手も。〕
[少女からの食器洗いの申し出は丁重に断り、軽く水で濯いで元の場所へ。]
じゃ、お先に。
「あ、佐久間君」
…はい?
[部屋を出ようとして、ふと寮母に呼び止められる。曰く、妹にも食事はちゃんと取るように言っておいて欲しい、と。]
…会えたら注意しときます。
[昔から少食だったからなと軽く苦笑いを零して、食堂を*後にした。*]
[立ち去ろうとしたのだが]
「……もしかして、マコト?」
[その言葉にピタリと足を止める]
「やっぱり、ウミってマコトのことが……」
……違うよ。好きとか、そんな綺麗なものじゃない。これは私の我侭……エゴだよ
[振り向かずそれだけ言い残し、アーチェリー場を後にした]
[朝早くに寮を出て、戻って来たのは、もう昼の日差しも大分落ち着いた時間だった。その足で寮母の部屋へ向かう]
こんにちは。俺に荷物が…ああ、届いてましたか。ありがとうございます。
[預けられていた段ボール箱を受け取り、昼食は食べたのかという問いには、はい、と頷く]
外で済ませて来ました。夕食はお願いします。
[ぺこりと礼をして、箱を抱えて自室へと戻っていく]
―寮・自室―
[窓を開けると、僅かに湿った風が流れ込んでくる。夕立が来るのかもしれなかった。きっちりと着込んでいた学生服を脱いで、Tシャツに着替える。炎天下に出掛けていた割には、余り汗もかいてはいないようだ]
…………
[段ボール箱を開け、一番上に載せられていたメモを無言で読むと、小さく溜め息をついた]
[ケンから見えない位置まで来ると、ガンッと壁を殴りため息]
……何やってんだろ。わざわざ言わなくていいこと言って……最悪
本当に昨日からおかしいな、私
[トンッと額を壁につけ、*自嘲*]
[メモをズボンのポケットに捩じ込み、箱に入っていた数冊の英文のテキストを引っ張り出す。窓の外、まだ暮れる様子も無い太陽を見遣って、暫し、思案する]
…明日でもいいか。
[取り出したテキストをまとめて自分の机の上に置くと、箱の中に残っていた菓子折りを手に部屋を出る]
[階下に降りると、再び寮母の部屋へ]
………すみません、これ、実家から送って来たものなんですが。
はい、水羊羹らしいです。
[ゆうに40個は入っていようという重い菓子折りを渡す]
はい…もちろん構いません。
[寮生達にも食べさせていいかという問いには、当然に頷いた]
[ついでに冷やしておいて、と頼まれて、水羊羹を10個ほど給湯室まで運んでいくと、冷蔵庫に入れた]
…………
[暫し考えて、電話の横に置いてあったメモに「水羊羹あり、御自由に」と書いて、冷蔵庫の扉にマグネットで留めておく]
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