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[移ろい行く視界に、彼の竜の姿はなく。
私は焦点が合うのを待ちながら、どこか遠いコエに耳を澄ませる]
目覚…め……嗚呼、おはよう…ございます…る…?
[姿はなく、コエはある。それは遠くて近く、彼の竜と私のよう]
…運ばれ…た…何故…?
私は…歩けるまで少し休もうと、草に横たわって…
[思考を辿ろうと、私は指先を持ち上げて額へと当てる。
腕の輪が頬をかすめ、耳へ届くコエが近くなった気がした]
[シャワーを浴び、荷物から出した新しい服に着替えると、シノを肩に載せて階下へ。
すると、目の前をマテウスとマテウスに抱きかかえられたアーベルが通過。
それを見て、暫しポカーンとしていたが]
……えーっと。
…………どういう経緯でああなるんだろう。
[小首傾げ。]
−屋敷すぐそば−
[黒猫がにゃあとなく]
…あー。はいはい。わかったわかった。
まったく…我侭だししつこいし。
誰に似たんだかね、お前。
[ちょい、と方にへばりつくように乗っかった猫の鼻に指先で触れる。
視線を猫から前へと戻すと建物がそこにある]
…迎賓館、というわけでもなさそうだけど。
[カラクリの世界にしては色々なカラクリでないものの数を感じて首をひねり]
……風呂。
[一拍の間]
[首肯を返して風呂場の中に入り、]
[キュ、][ザーーーーーーーーーー]
[服を着たまま蛇口を捻った。]
何故、って聞かれましても。
俺が戻って来た時には、もう運んで来られた後だったから、なんとも。
[実際、わかるのはそれだけなので、そう返し]
おそらく、休息してるのを、倒れてるのとみて、連れてきたんではないのかと。
あわ、ちょ、おま!
[服のまま風呂場へ入って行ったアーベルを見て、驚愕。
腕を伸ばして熱いシャワーから引っ張り出そうとする。]
いた。
よかった。
< 返ってきた声を聞いて、安心した声がでました。
とびらをあけて、身をおこそうと しているのを見て、あわてて、近寄ります。あんな状態だったから、しんぱいなんです >
ナターリェ、無理しちゃ、駄目だ。
……大丈夫?
…嗚呼、彼の御方が……?
[大きな背は判らなかったけれど、青の髪には覚えがあった。
倒れていたと思われたは、恐らく……]
……っ
[そこで届いた扉を叩く音に、私はコエを途切れさせる。
息を飲む音が、微かに零れたろうか]
ってつめたっ!
[熱い筈と思っていたシャワーが冷たくて、思わず肩をすくめる。
細い肩を掴んだまま、首にかけていたタオルでがしゅがしゅと顔をふこうと手を伸ばす。]
[建物の扉を叩く。
返事がある前にあけてしまったのはなんとなくなのだが。
肩にぶら下がっていた猫は、軽やかに着地すると、我先にと細い扉の隙間からその建物の中へとかけてゆく]
あ、こら。シシィ、待てってば。
[猫は中へと身を躍らせ、くるっと同行者のほうを見るとニャーと泣いてたかたかと進んでいく]
…まったく、あの馬鹿猫は。
[どうすんだ、とつぶやきため息。
その割りに、仕方ないとか言いながらもこちらも気兼ねなく扉の中へと体を滑り込ませた]
[私は、近づく青年に怯える事なく、助けの手を受け入れる。
大丈夫と言う問いには頷いて、次いで声でも答える]
はい…大丈夫です。
またも御心配をおかけしてしまって…申し訳ありませぬ。
[気をやった時を思い起こし、私は細い眉を下げて謝罪する。
半身を起こせば、獣の時と同じく蓬髪を軽く振るい、草を払った。
仄かな草の香りと花の香りが、部屋に漂って消える]
[興味本位でついて行ってみれば、突如服を着たまま風呂に入るアーベル。
果てには、引っ張り出されて怪訝そう。
まあ、何というか]
良くも悪くも天然……ってところなのかなぁ。
[はぁ、と嘆息。]
お前、なんだ?
大丈夫か?
…一緒に入るか?
[濡れてへばりつくアーベルの服を見て、脱がすべきかどうするかちょっとだけ困っている。]
< ふるふると、首を横に振って、猫はナターリエを見ました。
草のにおいは、とてもやさしくて、好きなもの。
だけれど、なんとなく、ふるった頭に手をのばします。 >
大丈夫なら、いいけど。
無理を、してしまうのは、よくないよ。
疲れたら、いつでも、やすまなきゃ、だめだよ。
< そっと撫でて、その顔を見つめました。 >
ああ、どうもそのようで。
[彼の御方、が誰を示すかはおぼろに察知してこう返す。
……その当人は、目の前で惚けた事をしまくってくれているのだか]
……?
どうか……したのかな?
[それから、ふと伝わる気配に訝るように問いを投げ]
[薄く開いた目は男を観]
何、が。
[問われた意味が解らぬ様子]
[周囲の思考も知りはしない]
一緒に?
別に。構わない、けれど。
[風呂は服を脱ぐものという概念が無いのか]
[言われなければ気付きそうにもない]
シーシィ?おーい、シシィってばー。
[不法侵入も気にせず黒い猫の名前を呼ぶ。
その間、呼ばれている猫のほうはといえば好き勝手館の中を移動中。
探すほうにあまり気合が入っていないので、なんともいえない追いかけっこの始まり始まり]
天然というか、なんというか……。
[思わず零れるのは、こんな呟き。
以前、竜郷で会った魔とは、明らかに違う様子に疑問は募る]
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