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[月闇と陽光の間の微妙な空気に、ちょっと気をとられつつ、大人しく紅茶を飲み干す。何か、身内が、ざわめくような気配…気のせいと言ってしまえばそれで済みそうなもの、ではあるが]
呑気だなあ。
[ずっと、という火竜の言葉に、苦笑]
竜族って、我慢強いよねえ、ダーヴ殿といい、オトさんといい。
[確か、以前、結構な力を、この若い竜は使った筈で、まあ、それも余り気にしてなさそうなのだが]
ま、無理はしないでね。
[軽く付け加えたのは、社交辞令というわけでもないようだ]
「生まれたところ……故郷……掛け替えのない場所
それを奪った彼が憎い?」
(…………君はダレ? 何を知ってるの?)
「(くすり)……君の知りたいこと」
(っ!? …………本当に?)
[今居る場所とは対岸とも言うべき方向、]
[屋敷の入り口側に従魔が存在したのは偶然か]
[隠された天青石の睛は何を思うか定かならず]
[一瞬だけ睨む視線には平静を装いながらぼそり。]
ぼっこぼこって……穏やかじゃないわね。
[属性もさながら、性格的にも合わなさそうだな……などと思いながら。]
─機鋼界中央塔・管制室─
それから、しばしシステムを動かして。
どれほどの時が過ぎたのか。
機鋼王はぴたり、動きを止めて。
「いずれにせよ……仔を止めねばならぬようだな。
……時空竜殿にも、助力を願うか」
決意を込めて、そう呟くのと。
下から、力が駆け上がるのは、どちらが早かっただろうか。
唐突過ぎる、力の波動──それは、機鋼の王を取り込み、捕えようと。
「……仔かっ!? 一体何を!」
問いには、果たして答えはあったか、否か。
確かめる間もなく、機鋼王は絡め……。
「……『魂』を持たぬ、『器』の竜が! 仮にも、精霊王たる我を押さえ込めると思うてか!」
/*
機鋼竜は感情薄いのではないかなと思って、
ああいう口調になっていますが、
実際には共鳴したものの鏡だと面白いかもしれない。
そうならば、ミリィに聞こえる声の調子が違うのにも理由がつく?
*/
却下。
[即答。
性格の悪さは、依然彼をボッコボコにした時よりも悪い方向に磨きがかかっていたに違いない。
元々、素性を調べられるのが気に入らなかったのと、調べられた理由が気に入らなくてぼっこぼこにしただけだったのだが。
遊んでいた相手に一人置いていかれてしょんぼりとした黒猫は尻尾を引きずったままようやくヘルガのもとへと戻ってくる。
白磁のカップをソーサーの上に丁寧におろすと猫を両の手で抱え上げて]
取られなかった。
鋭い声が響き、縛は跳ね除けられる──が。
次々と放たれるそれに、機鋼王は舌打ちする。
「この、過剰な力……く、このままでは、他の界にも影響を及ぼすか……やむを得んな!」
苛立ちを込めた言葉と共に、機鋼王は力を用いる。
それは、機鋼界自体を閉ざす、力。
界の王たるクロムのみが扱える。
ただし、その間、クロム自身は全ての動きを封じられるのだが。
「……ギュンター、報せを! 時空竜殿に、この事を!
彼の仔を……機鋼の仔を、止めてくれ、と!」
鋭い声は、側近と頼む機精に届いたか。
確かめる間もなく、幾度目かの波動が襲い掛かり──。
──穏やかでいられないような理由があったもんでね。
[ひざの上に尻尾の長い黒猫をおろすと対の女を見る。
不機嫌さマックスの視線は少しだけゆらめきを見せたライデンと生命の子のほうへと向けられただろう]
あくまー。
ごめん、じゃあもう言わない。
[ユーディットをちらっと上目遣いに見て、小さく頭を下げた
それからユリアンに、耳打ちするように首を伸ばして]
ねね、ライデン。
何か変な感じしない
[鴉が地面へ着地と同時に、その姿をするりと大型の黒犬へ変える。
慌てる少女の言葉に、鴉が僅か溜息を零して。]
…別に、俺に使用することは構わないんだが。
あの餓鬼が、あまりにも疎いのでな。
[既に妖精ともバレているし、隠すことも面倒になったらしい。
平然と人語を話し始める。駆ける少年の後は、特段追う気は無いようで。]
[頭を下げた状態で届く無情な声。心に去来するのは、ああやっぱり、と言う一種諦めの念だっただろうか]
…もうやらねぇってだけじゃダメなのか?
どうすりゃ良いんだよ、ったく。
[頭を上げればその表情は困惑に近いものになっていて。右手でくしゃりと前髪を掻き揚げた。左手はジーンズのポケットに捻じ込まれ、立った状態でソファーの背凭れへと腰を下ろすように寄りかかる]
そっか、季節が全部一緒に来てるようなものよね。
そう考えると違和感あるかもなぁ。
あっ、いってらっしゃい。
[ミリィにはどこかズレた答えを返し。
イレーネが駆け出すのを見送って]
あ、うん。ありがとう。
イレーネに対して不用意すぎたのかな?
[良くそうやって怒られるの、と苦笑い。
話しかけてきた鴉より変じた黒犬にそう笑いかけようとして――]
へんなかんじ?
[リディの言葉に、首を傾げかけ…て、]
……て、おい?!
[今までのざわめきとは違う感覚が襲う。機鋼の力が…いや、機鋼界そのものが、動いた、と感じた]
勘弁しろ…よお…
[そして、この界が閉ざされたことも]
[雷撃王の気より産まれ出で、別個の存在となった今でも、根幹の繋がりは断たれずにいた、その気の断たれた故に]
[中枢から感じた、力の波動。それは、辿るまでもなく]
……っ!? 機鋼王!?
[届かぬのは承知の上で、叫ぶ。
それに答えるように弾ける機鋼の力。
だが、現れたのは、今呼んだ王ではなく、その側近と頼まれる機精]
機精殿、一体何が……!
[問いに、機精は珍しくも取り乱した様子で答える。
機鋼王に起きた異変。最後の言葉。
そして、界が閉ざされた事を]
……って……何の、冗談っ!
――……………、
[天を仰いでいた眼差しが地に下ろされる]
[傍から見えるのは凪いだ海の青ばかり]
ん、
[追ってきた少年の姿を認め]
[不思議そうに首を傾げる]
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