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[返ってきた言葉は、ある程度予測していたもので。
ふう、と一つ、息が零れ落ちる]
……さすが『裁定』の領域の御方。正論言わせると最強ですこと。
[続いた言葉は、どこか軽口めいて]
確かに、手分けした方が効率いいのは確かかな。
俺も、火山やら雪山では、さすがに動きが鈍るし。
ぐぐ、ぐぐぐぅうぐ?!
[沈んだ小さな影に両手を伸ばし、沈まないように抱き抱えようと。
言葉は魚をくわえているため言葉は紡げず]
[小さな軋みを立てて、窓が開く。
私は話し声の聞こえる方へと顔を出した。白金の髪が風に煽られて頬にかかる]
……。
[淡い菫色が見下ろすは、黒と青の色彩。
艶やかな黒は、彼の竜。
バンダナに覆われた青に、一つ瞬く。彼に見覚えはあったろうか]
まあ、行くと言っても、二度と帰ってこないってんでもない訳で。
[返す言葉は、努めて、軽く]
いない間の子守は、申し訳ないけど、お願いしますよ、と。
相方の話じゃ、セレスも大分、懐いてたようだし。
正論吐かれてため息ついてるようじゃ、オトさんも見た目程元気じゃありませんね。
[軽口には軽口で応じて、にっこり]
ま、個人的にも、とっとと収拾してもらわないと困るんですよねえ。
[主に家出娘が何やらかすか心配で、とは口に出さず]
それじゃ、協力してもらえそうな方には、手分けして得意領域をお願いするってことで。
火山はダーヴ殿に任せればいいんでしょうけど、地下を探すなら大地の方…ああ、さっき出掛けて行ったな…僕がそっちは探します。
竜族の方々には、オトさんお願いしてくださいね?
[仕切る気みたいです]
[返された軽口には、苦笑で返し。
個人的に、という物言いには、不思議そうに首を傾げる]
ま、動きたい、と思えば、独自に動きそうな面々も多い気はするんだけどね。
特に竜は、個で動く事が多いし。
[自分が極端なのはさておいて]
ともあれ、やるだけやってみますか。
[仕切るのを止める気はないようです]
お戻りにならぬであれば、行かせはしませぬ。
[戻るを信じて送り出すのだと、告げる言葉は少々きつく。
なれど、直ぐにそれは消えて。返すコエは、信頼に応えるもの]
ええ。彼の仔の事は、お気になさらず。
セレスは…私が側に。
[柔らかな響きは、彼の仔への慈しみに満ちて]
ああ、確かに。
[くすくすと笑い声をあげて]
でも事情は説明してあげないと。機鋼竜の存在自体、ちゃんと知らない方が多いだろうし。
[そこまで言って、ふと気付いたように頭上を見上げる。感じるのは天聖の力…本にあったデータと、前に見かけた優美な姿を思い出す]
……麒麟殿?
[瞬間宿ったきつい響きには、ただ、苦笑。
その様子は、二階の窓からも見て取れるか]
そう言ってもらえると、助かる。
[セレスへ向けられた想いの温かさに、安堵しつつこう返し]
……セレスがどれだけ安定できるか。
それも、この件の解決には、重要になりそうだから、ね。
[枷の青年とは違う気配に、目を眇めてバンダナの青年を見やる。
強い日差しに光る髪は、よく見れば黒に近い紫であったか]
[少々身を乗り出しすぎたか、蓬髪が風に攫われる。
私は乱れる髪を片手でかき上げ――動きを止めた]
……ああ、そうか。
元々、アレの件は、竜郷でも一部にしか知らされてなかったくらいだし……な。
[つい失念していたその事実に、とぼけた声をあげ]
んじゃま、人が集まった頃に、まだ話してない面々にも説明しますか。
……その前に、俺はもう一度中央塔を見てくる。
色々と、引っかかる事もあるんでね。
[静かな声でこう告げ。
ユリアンが上を見上げれば、つられるように窓を見上げ、やあ、と言いつつ手を振り、歩き出す。
見上げた瞬間に異眸に宿った色彩──信頼のそれに、果たして雷精は気づいたか否か*]
[視線に気付いたのか、件の青年が頭上を見上げた。
私は手をそのままに――動かせぬを知られるは恥かしきゆえ――青年へと首を傾ける]
…えぇ。
そなたは…誰そ?
[彼の竜と親しげな様子に、人ではあらぬだろうかと。
距離があるを幸いに問いかける]
ふはは、げほっ くすぐったいよ
[結局岸まで運ばれてしまい、そそくさと服を拾う。
マテウス(昨日屋敷に居たような気がしなくもない)の口にくわえられたままの魚を見て]
ええと、た、食べても美味しく無いから!
一人で無理はしちゃダメですよー、オトーさーん!
[歩み去る時空竜に、明るく(あ軽く?)声をかけてから、改めて上を見上げて微笑む]
こんにちは!僕はユリアン。
雷撃王の使い走りを勤める雷精です。
[問いかけは、名を聞くためだけのものでは無かろうと察して、答える]
−北部:氷結洞−
[周囲に張り巡らせられた鏡の如き氷の壁]
[結晶は合わさり透き通る花のように咲く]
……、
[吐き出す息は白い。]
[何時から其処に居たのか]
[少なくとも洞穴の外に足跡は無く]
[かと言って]
[薄手の上下は寒さに耐え得るとは見えず]
[時間の経過は不明瞭で]
[短く手を振り、歩き出す黒髪の青年を私は黙して見送る。
その背へと投げられた呼びかけに絶句していた訳ではない、はず]
…ユリ…ァン……… 雷精殿…?
[やはり上手く発音できず、口の中で幾度か繰り返して。
なれど終に口から零れたのは、名ではなく青年の属せしもの]
そなたは…何か王の命を受けていらしたのかえ?
[己の名を名乗る事を忘れたまま、私は問いを重ねた]
―西部・広葉樹地帯―
[森の中でもひときわ高い樹の上。
その上の方の枝に腰掛け、そこから一望出来る界を見ている。]
…………さて、どうするかね。
とにかく、誰かが入り口を見つけないと始まらないかな。
[ぼんやりとしながら、呟く。]
呼びにくければ、ユリでも、ユリりんでも、構いませんけど。
[なんとなく、そんな気がして、にこにこと付け加え]
ええ、この機鋼界に新たな竜が生まれるという話が伝わったので、様子を見に来たんです。
機精と雷精は、対ではないですが縁が深いものですから。
まあ少しでも関わりのあるものを見過ごしに出来ないのは、雷撃王の性癖でもあるんですけどね。
[聞かれないことまで、ぺらぺら]
リディと魚を一緒に食卓に並べようとしたって無駄だし!
食べても美味しくないって言ってんじゃん……って違うの?
[撫でられたら何となく落ち着いてきた気がしたので、ごそごそとスカートを穿きながら、魚とマテウスの(厳つい)顔を見比べた]
[彼の竜の苦笑に、私は少々言いすぎたかと僅かに柳眉を下げる。
なれどその想いはまこと心からのもの故に、謝罪する事はなく。
安堵の響きが返れば、こちらも安堵に包まれようか]
……セレスが。
彼の仔の心が…潰されぬように、お守りいたしませう…。
[未だ幼き仔の肩にかかる重圧を想い、私は心を零す。
この事態を収める為に行くかの竜の信頼に応えるべく、見上げる異眸へ小さくも確かな頷きを返した]
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