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[私がそれに気付くより早く、時は再び刻まれ始める。
無意識に菫青石を指先でなぞりつつ、青年の笑みを見返していた]
[「機精と雷精は、対ではない」「ですが縁が深いもの」
天聖(わたくし)を縛る、時空の気を帯びし機鋼の結晶たる腕時計。
刹那の邂逅は、如何なる影響を*及ぼすや否や*]
[触れて間も無く]
[結晶から][雫へ還る][小さき花]
[指先から伝わる体温が故に。]
[極寒の地なれど]
[力無きものなれば]
[完全では居られず]
……。
[掌に僅か残る液体][すぐに固体へと変わる]
[表情に詰まらなさそうな色が滲んだ]
[にこやかに手を振り駆け出していく姿を、私は潤む瞳で見送る。
彼の精の呼びかけに、ようやく名乗ってないと気付くも時遅し]
……こちらこそ、大変な失礼を…。
[既に影も形もない青年へと、そう呟いて。
私は気を払いつつ腕輪の揺れる手を伸ばし、静かに窓を閉めた]
[ごそりと懐から取り出したのは、試作の弾丸。
それを手の上で転がしていたが]
…………まずは、こっちとあっちに行き来出来る存在をどうにかしないと
実験にもちょうどいいし、ね
[ぱしんと弾丸を手の中に収める。]
―屋敷・屋上(天球図)の部屋―
[ゆるりと伏せていた蒼を開く。
実際に探しに行く程の体力は、己に持ち合わせていない以上
せめて、ある程度のあたりを付けることが出来ればと思ったのだが]
――…、あぁ。無理ね。読取れない。
…心へ直接働きかけるなら、兎も角。
[特定の気配を辿るのは、”あたし”の得意分野では無い。
況してや、不自然にまで多くの属性が揃う機鋼界では尚更精度は落ちる。
均衡を司る影輝の力が強いこの場所なら、と思いはしたものの]
――動きませんか、エテルノ。
貴女が、今外部に干渉したがらないのは、承知していますが。
[応える声は、無い。]
傍観するのも結構ですが――時竜の力も及ばないのです。
事を終えれずに暫し留まる事になったら、ノイは弱る一方ですよ。
それは貴女の本位では、無いでしょう?
[廊下を行きつ再び気配を探るは、嘆きし彼の仔を心配する故に。
やがて気配を見つければ、扉を軽く叩き。返事なきに柳眉を寄せて静かに扉を開ける。
そこに在るは健やかな眠りに包まれた仔と、傍らの無限の輪]
…未だおやすみでありましたか。
なれば、また後ほど窺いましょう。
[眠りを邪魔せぬよう、頭を垂れて静かに扉を閉めて。
私は一度、部屋へと戻った]
[同じ動作を幾度か繰り返す]
[指先が触れても]
[花を模った結晶は]
[その形を保ったまま]
[氷により奪われる体温が故に。]
[代わりに生白い肌は朱に染まるけれど]
[幾らか満足げにも見えるか]
…………私も動きますか。
[どの程度ぼけーっとしていたのかはわからないが、ぽつりとそう呟くと、ぴょいと枝から飛び下り、枝から枝へ飛び移りながら下へ。]
―二階個室→一階広間―
[昨夜残したままであった果を食べ、皿を手に下へと降りる。
一階にある気配に怯えを抱きつつも、『人は二人のみ』と告げた彼の精の言葉をよすがに広間へと入ろうか]
[ふと、蒼を瞬く。
底で揺らぐ気配に漸く、と溜息を零した。
暫しの間とは言え、ほんの微量生気を取られただけで昏睡するなんて。
呆れはするものの、少し、安堵する。]
……起きた? ノイ。
――どういたしまして。
じゃあ、変わるよ?
[返る声が思いのほか確りしていることに、小さく笑む。
体力の事を考えれば、もう暫し代わってやっても好いのだが、
どうやら、今の状況ではノイの方が向いているようだし。
一呼吸、するりと蒼を閉じる。
静かに意識を閉ざして]
[シャワーを浴び、着替えてタオルを肩に掛けた。
風呂上がりにはなにか飲みたいと思う。肉体的な欲求ではなく、習慣的な欲求でしか無いので、別に水分が必要な訳でも無いが。特にいまは、先程生気を得てきたばかりだった。
タオルで無造作に髪を拭きながら……短い状態に違和感を感じる。広間へ]
あ!
えーっと……誰だっけ
[ぱちり。目を開ける。まだ寝起き?の所為か、少しだけぼうっとするけれど、
少し”下”で休んだら随分と楽になった。]
――…、メーア、多分何も食べてないな。
[彼女は暫く表に出ていなかったから、…忘れがちなのは仕方ないけれど。
無理しちゃ、ダメ。先ほど入れ替わり様に言われた言葉を思い出して
こくりと頷きながら、天球図を模った部屋を後にする。]
[私は萎縮しながら頭を垂れて、広間へと入る。
視線を向けられても、小さく礼をするのみで隅へ逃げて――]
…っ!
[唐突に差された声(動きが連動していたかは背後から故に不明)に驚き、私は肩を跳ねて振り返った]
逃げることないじゃんー。
ていうかオヤジの顔は結構怖いけど、リディって顔怖い?
やだなあ、似てたら。
[頭を拭いていた手で、自分の頬をぐにぐにと弄った。
そう言いはしたものの、結構無頓着だ]
ねえ、その足どうしたの?
[氷の花を一輪摘み取り洞穴を出る]
[流れる水は此処では存在出来ず]
[滝も][湖も]
[真白の中に聳えるオブジェの如くに映る]
[ちらちら]
[空より舞い落ちる][白の花びら]
[吐き出す息も、尚、白い。]
[降り積もる白は穢れも無い]
[其処に足跡と][鎖を引きずる痕を残して]
[青は、色の無い世界から去っていく]
[て、て。ゆっくりゆっくり階段を下りる。
とたまにふら付く気がするけれど、大丈夫。こけない。
最後の一段をぴょい、と飛ぶように降りて。
べしゃ。]
…痛ー。
[こけた。 広間の床に膝をぶつけた。
…ちょっと調子にのったかも。無理よくない。]
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