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そうよ。
それがついているかぎり、貴女に悪魔がとりつくことはない。
[心配いらないわとリディに笑い、エーリッヒに]
つまりね、
彼女は外に出してあげることができるんじゃないかしら。
自衛団にかけあってみようと思うんだけれど。
[言いながら、エーリッヒの手帖を眺める。
似たような覚書を持つものは、意外に多いのかもしれない]
[クレメンスのボタンはネズミに持ち去られたようだ]
[手当てを受けているクレメンスに向かって]
予備のボタンをお持ちでしたら、つけて差し上げますわ。
あるいは、似たようなボタンでよろしければ。
安物しか持ち合わせておりませんけれど。
[アベルの謝罪にはふるふると首を振る。]
アベルが謝る事なんて無いよ?
ごめんね、私は平気だから。
[浮かべる笑みは、表情を覆うように。]
[穏やかだが、年相応とは言いがたい。][慣れてしまった隠すようなもの。]
[それでも微笑んでいれば、胸に沸きあがったものはゆっくりと消えていく。]
俺にとって、不要な……モノ?
[掠れたコエで呟く。
それが何を意味しているのかの認識は、ない。
それだけに、恐れは募る。
低い声の漏らす笑みや、余裕に満ちた態度も、それに拍車をかけてゆく。
……枷から解き放たれ、動き始めた獣の本能。
その鼓動もまた、今は、恐れだけをかき立てて行く]
でも、個性と言うのは大事だと思うのですよ?
クレメンスさん。
[励ましになっていないような気もするが。
エーリッヒが手帳をめくりながら話すのを耳に留めて]
…やはり人狼に関係する事なのですか?
それでは…でも、きっとこれは偶然です…。
[最後の言葉が消えそうなのは、
そうあって欲しいという思いと、そうなのかと言う確信が混ざり合った結果で]
……それが本当なら……。
[その先は、口に出来ない]
予備、ですか。
…あったかな。
[眉を寄せて考える]
[右手は出したまま]
似たようなの、あるのでしょうか?
もしよければお付け願えませんかねえ。
[ボタンに刻まれた剣と満月の模様はきっと今頃齧られて欠けているだろう]
[ノーラの申し出に、申し訳なさそうな声と顔になった]
ほら、こうだとちょっと見目が良くないでしょう?
気にするような身分でも年でもありませんけね。
[クレメンスに頷いて。差し出された右手の、少し色が違うような場所に布を貼り、上から白い布で丁寧に巻く。]
そうですね、でもあの時はもっと、酷い怪我だったから。
あんなじゃなくて、良かったです、けど。
[包帯を巻きながら。]
[アベルの家に運ばれて。][治療を手伝った時のことを思い出す。]
[腰と首、には苦笑して。はいと笑顔で応え、包帯の端を切り、腕の治療を終えた。]
でも気をつけて下さいね。
小さい傷でも、積もり積もれば大事になる事もありますし。
[最後にそう、一応の釘を刺しながら。][無駄になるかなぁとは心の中だけで思ったわけだが。]
もう落とさないようにします
[力ない声だった]
[どこか遠くを見てしまった]
[理想郷とかが見えた]
アーベル君も言うとおり、一応、動けますけどね。
怪我くらいちょろいもんですけど。
しかし個性というのも。
…やめておきましょう、ちょっと悲しくなりました。
花模様の痣…。
[フルリ、と肩を震わせる。
どこかで見たことあっただろうか。
いや、何故そんなことを考えるのか]
…釦、全部無くなったら困っちゃう。
[意識を向けられる別の方向を探す。
アマンダの笑み。それに合わせて少しだけ笑いながら]
その前に勝利しなくちゃですね、クレメンスさん。
[皆の話を聞いている限り。
次で勝てるとはやはり思えなかったようで]
まて、何だその『大変』ってのは。
[思わず突っ込みつつ。
後の言葉を無視されれば、さすがに顔をしかめて]
……スルーするなっ!
[さすがに、声には怒気が交えられた。
キッチンへ向かう肩から、カラスが舞い上がり、しばしの悩む素振りの後、ブリジットの側へとちょこん、と舞い降りる。
相棒の代わりに慰めるつもりなのか、他に意図があるのかは、わからないが]
んー、とはいえ自衛団の連中が信じてくれるかは保障できないなぁ…。
同組織の捜査資料のひとつには、絵の具で捏造した証で人々を騙したって事件の資料もあるわけで…。
[使い古されて煤け、擦り切れたり、汚れの染み込んだ革張りの手帳。
若者が持つには、あまりに年季が入りすぎているようにみえるだろう。]
うん。
無理しないでね。
[クレメンスには真顔で告げた。アマンダの言葉にこっそり頷くのは彼から見えただろうか。
暖炉の前に移動する間も、無意識に左肩を撫でていた。]
[キッチンに向かうユリアンを手伝おうかと思ったが]
[クレメンスに頼まれれば]
ええ、わかりましたわ。
ちょっとお洋服、お借りしてもよろしいでしょうか?
そんな落ち込んだ顔、クレメンスさんには似合いませんわ。
ボタンがなくなったら、また新しく付け替えればいいだけですのよ。
[しょげたクレメンスに微笑んだ]
ところで、スティグマですか。
[エーリッヒを見る]
[が、ブリジットの声に、彼女を見た]
[自分の手に綺麗に巻かれていく包帯を見てほうとため息を吐いた]
何であんな怪我をしたのかも覚えていないんですけどねぇ。
困ったものです。ここまでしっかり落とし物が多いと…やっぱり年ですかねえ。
[己の怪我を思い出す]
[今はもう癒えているその怪我]
[拾ってくれたアーベルや、ブリジット、そして手紙のあて先だったギュンターは見ただろう]
[靴はなく、足の裏に切り傷]
[擦り傷や打ち身などは体にたくさんあった]
[しかし倒れていた理由は食料と水が無かったことだと、たくさんの人に知られてはいるだろう]
だって、アーくんより料理上手くないといけないんだよ?
大変じゃない。
[キッチンに引っ込みかけたところで、アーベルの声が強まる]
……そんな大げさにしなくたって、平気だって。
てか、細かいこと気づきすぎ、アーくん。
[それだけ答え、鍋の中身を確認する。
やはり、心もとない。
小さめの器に分けて、後は、何か別の物を作って貰えばいいか。蓋を閉めて、アーベルに振り返る]
皆、お腹空かせているみたいだしさ。
[台所に向かったユリアンを少しは手伝おうと。
そちらに向かって歩いてゆく。
クラリ。足もとが少し覚束なくなった。
倒れるほどではなかったので、直に体勢を立て直して]
何か、手伝います。
食べてばかりじゃ悪いから。
[リディの傍を抜ける時、一際強くなった違和感。
一度ギュッと肩を掴んで、ユリアンへと声を掛ける]
ありがとうございました、ブリジット君。
君の手当てはいつも早くて、丁寧で、ありがたいですよ
[手当てを終えてくれた彼女にそう告げた]
[そして体ではなく服の手当てをしてくれるというノーラに、頷いて]
ありがとうございます。
もう本当にねえ。
年ばっかはどうにもなりません。
…いえ、昔もやってたんですけどねえ。
[照れたように笑って、上着のボタンに手をかけた]
自分でつけると、どうもゆがむものでねえ。
本当に有難いのですよ。
[白いワイシャツの上、黒い神父服――左胸のロザリオがないだけのそれを差し出す]
神。
[呟く。けれど言葉は意識の上を滑る。
なにかが過ぎった気はしたけれど、イメージとして捉えることはできなかった。]
でも。
・・・嫌な感じ。
[先程より微かな声。暖炉の前だというのに、僅かに身震いした。]
[それぞれの話を聞きながら、
彼らの動きを気に留めながら]
[どうか彼らに悪しき事が降りかからないように、と]
[静かに目を閉じて、*そっと祈る*]
ま、こういう資料の収集が、専門分野なもんで。
[ぱたりと手帳を閉じ、胸ポケットに仕舞う。
ちらりと窓の外を確認。
木の影から見えただけなので確実ではないが、
月が満ちるのは…明日あたり?]
……そーゆー問題かよ。
[『大変』の理由には、思わず呆れた声。
いや、今はそれよりも]
というか、怪我隠すなバカ。
腕ついてしかめっ面してたって事は、どっか傷めてんだろ?
こっちは俺に任せていいから、ちゃんと手当て受けろって。
[諭すように言いつつ。
リディ相手と同じ感覚で、ぽむ、と頭を撫でようと]
イレーネ。
アーくんいるし、大丈夫だよ。
[肩に置かれている手を見る]
それより、頭痛、平気?
[問いかけは別だったけれど]
そうよね…。
でもそれなら、なんのためのスティグマだっていうの。
見分ける知識もなくただ閉じ込めるなんて、どうかしてるわよー。
……まあ、あとで掛け合ってみるわ。
[言葉は明るさを貫いていたまま、そう不満を述べて]
あなたのも、家に伝わるものなのかしら?
[エーリッヒの手帖を見て、そう呟く]
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