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……なに、それ。
[感想は短かった。いや、実感がなく、感想にすらならない。
本来ならば、話が始められた時点で食事を止めるのが礼儀だったのかもしれないが、僕にとっては、彼らより、作り手にはらう敬意の方が重要だった。
もっとも、食事の最中に聞きたい話ではなかったが]
[話の終わった直後、駆け出していくアーベルの姿が見えた]
シスター
いやしませんよ、人狼なんて
[にこりと笑いかけて、安心させるように]
[しかし響いた割れる音に立ち上がる]
レディ…!
大丈夫ですか、お怪我は?
[あわててそちらに駆け寄ろうとし、がんと机に足をぶつけた]
[連続殺人犯、は聞いていた。]
[だから多少、驚かなかい部分はあったが。]
[それでも人狼という言葉は突飛で。]
[辺りをきょろきょろと見回す。]
この中に人狼が、いる…。
[口にしたものの。][未だ信じられずに。]
[椅子から立ち上がり、追って、外へ。
本来なら止められていただろうが、アーベルに意識の向いていた自衛団員たちの反応は遅れたために、何とかすり抜けられた]
[口論の声]
……僕も、納得がいかないな。
人狼、なんて、お婆のヨタ話だと思っていたよ。
大体、なんで、僕らなのさ?
基準は?
疑惑って、どういうこと。
[それに対しても、望む答えは得られないのだろうが]
[アーベルが出て行くのが見える]
[しかしぶつけた足をまた前に踏み出し、ノーラの方へ]
[だが届いたマテウスの声に、小さく笑って答えた]
寝てない寝言なんて本当にただの迷惑なだけですよね。
まあアーベル君がしっかり言い聞かせてくれることでしょう
…亀の甲よりなんとやらともいいますが
[それからノーラを見る]
[エーリッヒの動きはすばやかった]
[顔色が青い]
アベル。
[飛び出してゆくアベルの後を目で追ったが。]
[駆け寄ることも出来ないままに。]
[つまりはそれほど、自分も衝撃を受けたという事で。]
[食器が落ちる音に、びくりと身を竦ませた。]
[強張っている。][全身が。]
…なんだ、お皿割れただけかぁ。
[たはは、と肩を竦めて見せて。]
お怪我はありませんで……
そちらも、お怪我は?
[更に響いた鈍い音に、首だけ向けてぽつりと。]
…ありませんよ
[しっかりとエーリッヒに頷いた]
ええ。
本当にこのドジなのをどうにかしたいもんです…
人狼が実在するのか否かも大事ですけれどね。
連続殺人、ねえ。
子どもつれてきて、その被疑者だなんて。
頭おかしんじゃないのかしら。
[騒然としている部屋を見回すと、ぱんぱん、と手を叩く]
で、子どももいんのよー。
落ち着きなさいなー。
[間延びした声を作って、その場の空気を納めようと]
ですが、この村には…ご存知ですか?この村にある慰霊碑を。
……もうずっと昔、この村に現れた、といいます、人狼が。
その時の犠牲者のもの、だというんですよ?
[ずっと、ずっと、ただの昔話と聞いていた。
あれが、事実だとは]
[食器の割れる音に、男は立ち上がった。目前で駆け出していきなり机に衝突している神父の姿に頭をかく]
おいおい、すでに被害者続出ってか?
奥さん、怪我ないかい?
[とりあえずノーラに声をかけてみる]
[響いてきた甲高い音。
声にならない悲鳴を上げて耳を塞いだ]
知らない…。
何も知らない…!
[うわ言のように呟きながら小さく首を何度も振る]
ご、ごめんなさい。
[直後、机に足をぶつける鈍い音が聞こえた]
[エーリッヒとハインリヒに声をかけられれば]
ええ、平気ですわ。
[注視されれば、ややひきつった笑顔を向ける][手はかたかたと震えている]
[床に散らばる、割れた食器のかけらを慌てて拾い集めはじめた]
[様々な声。][動揺、苛立つような、そんな感情が広間に一気に広まって。]
[その雰囲気に流されない人も中には多々居たけれど。]
[怪我、に少しだけ意識が戻ってくる。]
[何か割れる音。][怪我をしていないだろうか。]
[のろのろと食器を置いたまま、薬草の入った薬袋を取りに、台所へと足を向けた。]
[もう食事を続ける気分にはなれなかった。]
[叫ばれた言葉は、場に沈黙を呼び込んで。
いつもは心地よい静寂も、今は、重苦しく。
それを取り払ったのは、集会所に戻れ、という短い言葉]
戻るのはかまわねぇよ。でも、ちゃんと説明しろよ!
最善手がどうのとか、そんな綺麗事が聞きたい訳じゃねぇんだよ、俺は!
[苛立ちを込めて言いつつ、詰め寄ろうとすれば、自衛団員に阻まれる。
今までにはない剣呑さは、彼らが本気で、この馬鹿げた『隔離』を行おうとしている意思の現われだろうか。
それに戸惑う間に、自衛団長はまた歩き出す。
誰の問いにも、答えようとしないまま]
[子供でももっとマシな嘘をつく。とばかりに嘆息をしているうちにアーベルが出て行った。それを見送りながら、ようやく出入り禁止。隔離。という言葉が脳に染み入っていったところで、食器が響く音がしたほうを見る。]
怪我はないようだが…無理にでも落ち着け。そのような手つきでは本当に怪我をする
[と、かたかたと震えた手で食器を拾い集めるノーラに言った後。自分と同じような感想を抱いているクレメンスに頷いて]
だな。しかもそれで隔離だとか怒りを通り越して呆れた
…大げさな話じゃないんだよなぁ…、コレが。
『奴ら』だとしたら…だけど。
子供だから違うとか、ずっと昔からの知り合いだからとか、そういう問題じゃない。
…奴らは人に化け、人に巣食い、人を喰らう。
死せる時も魂の色以外正体を現すことはない。
[呟く様に語る言葉は、低く冷徹で真剣で。]
…なーんて言い伝えもあるから、ねぇ。
[男はノーラの傍に近付いて、軽くその肩を叩いた]
奥さん、みんなの言う通り、その手つきじゃほんとに怪我しちまう。ちっとあっちで座ってなよ。
あぁ、怪我しちゃいけないから、うん。
手伝うって、ほら…危ない危ない。
[皿を片付けるノーラと一緒になってしゃがみ込んで欠片を拾う。]
[取り乱すイレーネの傍に寄り、宥めるように]
大丈夫、大丈夫だから。
[声を掛けるけれど、それ以上に自分の手が震えているのには気付かない]
…
…本当に。
[マテウスを見て、頷いた]
だいたい13ですからねえ。
あんまり嬉しくない数字ですよ。
まるで俺たちに何があってもいいというような口ぶりでしたよ。
[一瞬の間の間に何かを考えていたが]
[それは言葉になる前に霧散した]
[そしてしゃがんで、割れた食器の破片を丁寧に取る]
―集会所・外―
[言いたい事は、山ほどあった。
でも、口にしたとして、無駄だ――冬の寒さのせいだけじゃない、冷えきった空気が、何よりも雄弁に、それを物語っていた。
去り行く老人の背を、見送る]
それで、いいの――?
[呟きは風に攫われて、闇に融ける。
降り積もる雪に、あっという間に、覆われた]
…
おや失礼。
[エーリッヒの取ろうとしていた破片の方に手を伸ばしかけ、立ち上がる]
集める袋でも取ってきましょう。
台所にはあるんじゃないですかね。
[クレメンスとハインリヒ、エーリッヒに窘められた]
・・・すみません、ありがとうございます。
[落ち着こうと深呼吸]
[大きなかけらを拾い集めた後、ふらふらと立ち上がった]
[三人にお辞儀をする]
[キッチンへ箒を取りに向かった]
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