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愉しかったさ、ロザリィ。
あァ、わかった。今度、もっていこう。
[愛称で呼んで、カレンの答えを聞いて、狐は白い羽根を広げる。
やがて家に、部屋にたどりつくと、面をはずして、わらった。
額のきずあとが、虚ともいえるものを込められてつけられたそれが、微かにうずいて、よけいに哂った*]
[覗き込めば、珍しく瞳には感情の色が宿っているようで。
けれど、それを指摘する事よりは、他に気を回すようにした]
あのさ…、……何から聞いたもんかな。
具合が悪いようなら、エリカちゃんの家まで運ぶし、少し休んで治るようなら、俺も此処で待つけど…どうする?
[運ぶべき場所がアヤメの家であるとは知らず、そう問いを投げ。
本当は、その羽根の事を訊ねたかったのか、時折そこに視線をずらした]
[ロザリーの意外そうな反応に、肩をすくめて]
ならば、私の人物観察眼が不足しているのだろうね。
……笑えなくって、申し訳ない。元々、笑うのが得意ではないんだ。どうも愛想がないと、よく言われる。
一度、堕天尸に身を堕とした人……
……また、婆様みたいに
[言葉を切ると、深紅の瞳を決意に満たし]
……巫女に……会おう。
[ふわりましろの翼を広げ、聖殿へ向かい飛び立つ]
[ 白い羽根を広げて去って行く姿を見送る。]
いえ、愛想の問題ではないですよ。
私に対する評価がそうであるなら、素直に受け取りますわ。
変なお話をして申し訳ありませんでした。
少し、カレン殿が堕天尸だと確信できました。
…女の勘というやつですわね。
[ そう言って笑ってみせる。]
さて、カレン殿はこの後どうされますか?
ここで構わないのでしたら、目を診て頂いても。
[ 家まで来て頂くのは少し遠慮する。
何より引き止めてしまったこともあり。]
[ゆっくりと、息を吐き出す]
……体調自体に問題はない……はずだから、
あの場から離れたのならば、休めば、治ると、思う。
待たなくとも、平気だと。
[男の移ろう視線の先には、己の翼。
一対目の片側を、ぱさりと動かした]
邪魔なら、仕舞うけれど。
[ 聞こえてく声に怪しく笑みを浮かべる。]
お元気そうで何よりですわ、グレイ殿。
まぁ、どうかご無理はなさらず。
[ そう変に気遣いを見せる。
彼の羽根が染まるのは、やはり時間の問題だろうか。]
[ 相手の怪訝そうな様子に間違いに気付く。]
嗚呼、言葉が違ったようですわ。
カレン殿を疑っているわけではありませんの。
変な風に思わせたなら申し訳ありませんわ。
[ そう言って非を詫びる。]
ああ、じゃあここから離れる事を優先するよ。
…もし飛べたなら、もっと早く運べるんだろうけど……、ごめんね。
[少し自嘲気味に笑う。
小さく動く羽根に、微か驚くも瞬くだけで]
いや…邪魔じゃあないんだけど、さっきみたいに言ってくる奴もいるからね。
周りに知られていないなら、閉まっておいた方が良いと思うよ。
[空を飛んでいると、ぶるっ……と背筋に寒気が走る。目を凝らして周囲を窺うと、遠くに見えるのは夜空に薄く輝く紫紺の四翼の姿]
っ!
……あいつ、だ
[小さなシルエットでも間違えようがない相手。敵意に満ちた瞳で睨みつける。向こうには気づかれただろうか。その影から少しでも遠くへ逃げるように針路を変えて加速した]
[ケイジの広げられた白い翼。飛び去っていくのを、何とはなしに見つめていれば、ロザリーから言葉がかけられて]
いや、特に気にしてはいないけれど……そうなのか?
[首をかしげた。ロザリーの思考について、考え込みそうになる前に、先生から渡されたものを思い出し]
これから行かなければならない所もあることだし、ここで済ましてしまおうか。
[言えば、ロザリーにかがんでもらい、眼の様子を確かめた後、*別れて再び空へと上がるだろうか*]
自分がつけた名前ですが、慣れぬものですね。
[ クスクスと己を嘲る。]
頼もしい限りですね。
壊したい時ですか……。
私は明日にでも巫女姫を封じようと思います。
付き人殿が何とも邪魔です…わね。
[ 如何したものかと、少し困ってみせる。
実際には困ってなど微塵もないのだが。]
……あぁ、えぇと、
[口篭り、後に続く言葉は消える]
いえ、感謝する……
飛べない事は恥じることではないと私は思う、
翔るための翼のみではなく歩むための足があり、
……飛ぶ事により生まれる危険もあるのだから。
[代わりにそう口にして、
後の言葉には首肯を返す]
他者の精神面への影響を考えるのならば、
そうして置くのが賢明な判断に違いない。
付き人、ね。
…上手く、誘導してみようか。
勿論…それによって俺が、危なくない程度に、な。
[自分の利害だけ考えて、何も気を使わずに言葉を綴るのは初めての事で
とても とても 甘美だった。]
……危なかった
[スティーヴの目に止まることがなければ、その後は周囲に気を配り、警戒しながら聖殿のある広場へ向かって飛ぶだろう。ふわり、と広場の端に降り立つと、首を竦めるようにして、翼を翼胞へとしまいこむ。体を小さくひとつ震わせると、聖殿へと*歩き出す*]
[口ごもる様子に眼差しで問い掛ける。
続く礼の言葉には緩く首を振った]
俺が、好きでやってる事だからね。
……ふうん、エリカちゃんはそう考えてるんだ。
[ほんの少し眉頭を寄せ、顔を歪める。困ったような、泣き出しそうな、曖昧な表情。
刹那、瞼を強く閉じれば、すぐにそれは消え去り]
じゃ、仕舞ったら、お家までエスコートさせていただきます。
[おどけて*お辞儀*をする]
[ ここで済ませてしまうと聞けば。]
では、お願い致しますわ。
お手数かけてしまいまして…。
[ 屈んで、眼の様子を診てもらう。
いつもと同じようにそれを終えた後、カレンを見送る。]
ありがとうございました。
カレン殿も無理はなさらぬよう。
お気をつけて。
[ そう言って彼女と別れた。]
[ それから溜め息をつく。]
大した収穫はなし…ですか。
仕方ありませんね。
[ 言ってから羽根を広げ、舞い上がる。
淡い金が、夜空を横切る。
普段外出をしないせいか部屋に戻ったころには、
かなり疲れ*果ててしまっていた。*]
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