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[がり、と。ペンで引っ掻くようにして空の頁に文字を綴っていく。怪奇話の続きから、時折、妄言じみた呪術か何かのような文字列が混ざり。確かな意味のとれないそれは段々とただ絡まった線になり、塗り潰しになって]
崩れたるは塔か?
否か! 塔ならばそれは結構。怯え畏れねばならない。
塔でないならばそれも結構。――変容の違いだ!
[自問らしき言葉を零す。そんな事を繰り返し、気付けば室内を明るい陽が照らし始めていた]
そうさ。
邪魔者さえ居なくなれば。
[ロストを唆すように。
そして己を昂ぶらせるように。
常では抑え込んでいた享楽の感情が浮上する]
……宴の始まりだ。
狂乱渦巻く惨劇の宴。
ああ……久々の気分だ。
ふ、はは、ははははは!
[狂気に浮かされ高らかな笑い声を響かせた]
-娼館・自室-
[目が覚めてから暫くは、娼館の掃除やら、いつもの日課をこなして過ごす。それくらいは、女将からも許された。
時折姉さんたちから感じる視線は冷たかったが、何時もと大差ないと思って表向きは普通に過ごす。
粗方仕事を片付けた後で、再び自室に篭る。
そしてテーブルの隅に置かれていた小箱を開け、薬をとり飲んだ。今は、痛み止めだけを。
小箱の中には他にも幾つかの、古い小瓶に入った何かが収められていたが、それには一瞥しただけで、再び箱をしまう。]
…人狼。
[ぽつりと、呟いて。
小袋の中身―親指ほどの大きさのブラックオパールを手に握った。]
はい、わかりました。では一緒に参りましょう。
ええと、お支度が終わりましたら玄関まで来てください。
[部屋の内から聞こえる声にそう返して、見えるわけもないのにぴょこんとお辞儀をしてその場を去る。
エーリッヒが部屋から出る頃には、玄関先で花の様子をしげしげと見ながら彼を待つ、ユーディットの姿があることだろう。]
さ、行きましょうか。
[エーリッヒの姿を認めれば、そう言って酒場への道を共に歩き出すだろう。]
エウリノ…。
[高らかとワラうエウリノを、じっと見つめていた。
ユリアンと違う事への戸惑いと。
彼こそが人狼であるという確信と。
それに対する、歓喜が。
その内側に渦を作っていた。]
―――。
[深い眠りから覚め、目を開けてみると、そこはいつものような天井が見えた。
少しだけ頭が重い。
今、何時くらいだろうと、窓の外を見ようとすると、傍らにオトフリートがいるのが目に入った]
……先生?
どうしたんですか?こんなところで?
あ。もしかして、夜這い?
いけません!私には、10を頭に2人の子供が!
―――なんて言ってみたり。
[笑みを浮かべながら、ぺろりと舌を出す。
その様子は、いつもの通りであり―――いつもの通りではない。
今まで、オトフリートの前ではまともに話せなくなっていたのが、普通に話せるようになっている。
それは良い変化なのか、悪い変化なのか。今はまだ、誰にも分からない]
[ふらり、宿屋へ向かうために広場へと足を踏み入れる。
ちらほら村人も居たが、こちらに向けられるのは不安げな、憎らしげな視線。
気にしない素振りをしながらも歩を進める。
時折、見回り中らしき自警団の一団とすれ違ったりもした。
もちろん向けられる視線は疑わしげなもの]
…………。
[常のやる気なさげな様相で視線を返す。
自警団の視線はこちらから外れず、広場を歩く間ずっとそれは付きまとった]
ああ、わかった。ちょっと待っててくれ。
[最後に向けられた声に返し、鍵盤の蓋を閉じる。
身支度を整え、窓を閉め。
譜面を片付けるついでに、先ほども見ていた箱にまた、視線を]
…………。
[微か、逡巡するような気配。
右手が銀色の箱の蓋を軽く撫で、結局、離れる]
……俺には。ないし。
[低い呟きの後、部屋を出る。
玄関で待つユーディットが、先日持ち帰った花を見ている様子に、ふと笑みが零れた]
気に入ってもらえたなら、何より、かな?
[冗談めかした言葉を投げつつ、酒場へ向けて歩き出す]
[それは父の形見であり、伝えられていたものの一つだった。
大切な、その時がくるまで大切にと、父に重々言いくるめられていたもの。
それを使うのは今だった。
だけど果たして信じてもらえるか。
異能者は忌み嫌われるから隠れていなさいと。
それも、父がのこした言伝。
だけど。]
今が、父さんが言っていた『その時』、なんだよね…きっと。
[ぽつと呟いて、黒くそして鮮やかに光るオパールを手に握り、部屋を出た。
女将に断りをいれて、外へと。]
――はふ。
[欠伸を噛み殺したアーベルの足元で、白猫が大口を開ける。
人気の少ない酒場の前、箒の上に手を乗せて、更に顎を乗せるという、何ともやる気のない格好で、彼は其処にいた。
一応は掃除の途中ではあるものの、時折通りすがる人々の視線が煩わしい]
……暇だねえ。楽だけど。
/*
てめぇでやっててなんなんですが。
こいつって、なんつーか色々とあれ(どれ)ですよね。
そして、未だに起きるこの誤字に、俺は突っ込みいれるべきなんでしょうか。
自警団違う、自衛団wwwwww
…気分悪…。
俺が何したってんだ。
[容疑者として名を挙げられただけでこの対応。
気分が良い訳が無い。
苛々が募り、宿屋の扉を開ける勢いがつきすぎて、大きな音が立つ。
やべ、と思ったが後の祭り。
宿屋の女将に怯えた視線を向けられた]
[笑顔を見せるエーリッヒに、こくりと素直に頷き笑った。]
ええ、エーリッヒ様が下さった大切な大切な花ですからね。
気に入るどころの話じゃありません。
[と、こちらも冗談めかして返し。
酒場への道のりをゆっくりと歩き出す。
途中、通りすがる人々の視線は気にしない。気にならない。
視線だけでは人は死なない。]
……そういえばエーリッヒ様。
[道中、ふと思い出した、といった調子で切り出す。]
昨日はああ言ってくださいましたけど、私が人狼なんじゃないか、とか、正直不安になりません?
[小首を傾げて、柔らかな表情で尋ねる。]
― 現在 ―
[どれほどの時が経ったか、そのうちに書斎を出、そのまま外へと向かう。片手には筆入れやノートや紙を十字に縛った物。ゆらりと、ぶつぶつと呟きながら歩く彼女を、いつもより疎らに見える村人達はいつもと同じに避けて通る。よく見ればその視線が普段の困惑や嫌悪とはまた違った、恐怖や好奇を帯びていた事がわかっただろうが。
それに別段注意を向ける事もなく、彼女の足は広場の方へと]
[サボりながらも丁度横側まで到達していた所為もあり、来店客に気付いたのは、扉を開く大袈裟な音によって。昨日の今日、村人が討ち入りに来たということはないだろうと思いながら、表の扉に回る]
……なぁに、やってんの。
[容疑者の一人――ユリアンの姿に、呆れ混じりの声が出た]
[バツが悪そうに宿屋の中に入ろうとしたところで、呆れたような声が聞こえた]
……ちっと苛ついてた。
[すまん、と簡潔に謝る]
[返された言葉には、それなら良かった、と笑む。
周囲から投げかけられる視線は、こちらも気にした様子はなく]
……その質問は、そのまま返してみたい所ではあるんだけれど。
[投げかけられた問いに、最初に口にするのは、こんな言葉]
疑いだしたら、きりがないっていうのもあるから、ね。
そういう考えは、今は、持たないようにしてる。
まあ……信じたい気持ちもあるし……ね。
[村人の目が何時もより厳しいのは仕方ないことで。
視線を避けるように小走りに、広場を通って宿の方へと向かう。]
あ…。
[途中でブリジットに会い、遠くからだが小さく会釈した。
そういえばこの人も名を呼ばれていたと、思い返しながら。]
信じたいというか。
疑いたくないというか。
……人狼というものの存在を認めたくないだけなのかも、知れない、けれど。
そ。
まあ、仕方ないか。
[厭な話ではあるが、今となっては同じ境遇の者。
向けられる視線などは、容易に想像がついた]
実力行使に出ないだけ、マシだけどね。
そのうち、後ろから刺されても可笑しくなさそうだ。
[肩上に箒を乗せて、両手を引っ掛ける。
白猫は事態をまるで知らぬ様子で、暢気に毛づくろいをしていた]
おはようございます。
[目を覚ましたミリィに、窓の外を見ていた顔を向けた。
その言葉を使うには外れた時間だったが、穏やかな挨拶を送る]
おや、随分と信用がありませんね。
7つの時のお子様に怒られるようなことはしていませんよ?
[普通に会話をしてくれることが嬉しかった。
そして同時に少し不安だった]
お腹、すいていませんか。
[夜が明けて、長時間は離れないようにしながら何度か部屋を離れた。ミリィがまともに食事をしていないことにも気付いている]
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