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[さすがに煩くなったのか、ティルが来た事もありミリィのコメカミから手を離す]
ったく、口のへらねー嬢ちゃんだな。
その余りまくった言葉の片隅でいいから謝罪の言葉を混ぜやがれってんだ。なあ?
[と、周りに同意を求めた後で。ユーディットの言葉に気がついて]
ん?イレーネの何が凄いって?
そう都合よく、いるものかねえ。
[“占い師”と呼ばれる存在が二人、同じ場所に居る。
有り得ない話ではないだろうが。
そも、己がそう呼ばれるに相応しいのかすら、確信はない。
とは言え]
――面白そうだ。
世が塔ならば黒き影は怒りである。
塔でなくともそれは同様。
だが黒き影が本質でなく実体なら?
異形が神の遣いなら祈らねばならない。
その怒りを鎮めんがために。
異形が神の遣いでないなら?
――それも同様!
星を仰いで祈らなければ。
早く薪を用意しないと。
[アーベルに頷き、早口に言ってから荷物より筆入れを抜く。ペンを取り出しては、掌に黙々と何か細かい文字を書き始め]
[けれど思う事があるのか、不意に沈黙を落として、口許に手を添える。
喧騒はやや遠くなるも、向き直ったユーディットの視線に顔を上げ]
――ん?
何か、言った?
[イレーネに明るい表情を向ける様を視界に留めつつ、問うた]
こんちはー。
[挨拶をして、中に入る。途中、エーリッヒには手を振って挨拶をして。
オトフリートの傍に行けば]
オト先生、昨日はご馳走さまでした。
先生も大丈夫…みたいだね。今日は顔色悪くないし。
[そして騒いでいるミリィの方をちらりとみて]
なーるほど。
[にやりとした表情で笑った]
俺達は、ゲイトが撒く種を芽吹かせないといけないな。
疑心暗鬼の隙を突いて、更に広めなければ。
──惨劇の宴を楽しむためにも。
…?…?…
[やっとのことで解放されたが、頭がぐわんぐわんする。
目がちかちかとして、星が出ているような気もする]
と、扉の近くでぼーっと、ちてるのが、わ、悪いのさね。
[ふらふらよろめく]
[ユリアンにこくりと頷く。]
うん…あ、でも。
[と、少し間をあけて。]
まだ今、見えるわけじゃないの。
いつ見えるかは、具体的には分からなくて…。
それに、見分けることが出来る人数も限られてて。
一日に、一人だけ。って。
[そう、指を折り、口伝を思い出すようにしながら口にする。]
[平和な騒がしさをあたたかく見守りつつ。
ハインリヒの問いには、簡潔に。]
イレーネさんが、人狼と人間が見分けられるって。
そういう力があるそうなんです。
[しかし、若干興奮気味に答えた。]
[騒がしくなって来た店内をぐるり見回し、人数を数え。
ふと、気にかかった事が一つ。
そしてそれを問えそうなのは、取りあえずここには一人]
……ところで、アーベル君や、一つ聞きたいんだが。
ノーラ、大丈夫なのかね。
[青年に近づき、昨日、大分ショックを受けていた様子の幼馴染の事を問いかけて]
[薪。その意味するところは何か。
掌に文字を書いていく様を、数歩離れた場所で、視界の端に留める]
イコールでなくとも、イコールに繋がる。
辿る道は違えど、向かう先は唯一。
つまりは結局、
僕らが為すべき事は一つという事でしょうかね。
[問いとも言えぬ、淡々とした言葉]
[ユーディットの笑顔に、戸惑うような照れたような、そんな顔をして俯いた。
凄くない、と言いたかったが、この状況下でこれ以上の力は無いように思えたので、何も言えぬまま。
ふとミリィの声が聞こえたので顔をあげると、何やらハインリヒと楽しそうだったので、少しだけ、ほんの少しだけ、笑った。]
なるほど、とは?
[ティルの視線を追ってミリィに辿り着き]
何を期待していますか、君は。
まあ、お邪魔すると約束していましたしね。
[僅かに早口になっていることは本人だけが気付いていない]
…イレーネに見分ける力が?
[興奮した様子のユーディットの声に、イレーネを見た]
――さあ。
[エーリッヒの問いかけに、声の温度は若干下がる。
敢えて、思考の外に置いていたことだった]
昨晩、旦那様が御迎えには来ましたがね。
疲れているみたいだったから、未だ休んでいるのかも。
…今は無理なのか…。
それでも、手段があるだけマシだ。
ずっと疑いをかけられたまま、ってのも、な。
[イレーネの説明を静かに聞いて。
光明が見えてきた、と言わんばかりの口調]
[ユーディットがハインリヒに向ける説明。
それに、視線は一瞬、イレーネの方へ]
……見分ける、力?
[小さな呟きの後、右手がまた、何かを抑えるように左の腕を軽く、掴む]
[ふと顔を上げるとティルの方を見、やあ少年、とペン先を上げて挨拶を。それからイレーネを見遣り]
御伽噺に伝わりしは、異形。
狂えしに、視えしに、聞こえしに、守りし――
果たせるかな、ざわめき。
喧騒は増して訪れん。
喧騒!
[耳と頭とを押さえて一度俯く。それからよろめいているミリィには、いつものよう]
大丈夫かい。大丈夫でないかね。それは残念。
二人とも楽しそうでよい事だ。
ん、んーにゅ?
イレーネが、どうかしたーん?
[いまだに目がぐるぐるとしてまっすぐ歩けなかったが、そのままイレーネの方向へと歩いていった……つもりが、あらぬ方向へどーん]
うひょお!?
[イスにけっつまづいて、こけた]
ん……そっか。
ま、こんな状況じゃ、気疲れもするな。
[返された言葉に、小さく息を吐く]
……あいつも、辛いっちゃ辛いんだろうな、この状況。
[ぽつり、零れた呟きが、もう一人の幼馴染の事をさすのは言うまでもなく伝わるだろうが]
[そっぽを向くユーディットに、くつりと笑う]
悪かった。
まあ、たまには余所の味を知るのもいいんじゃない?
後でいいから、手伝って貰えると嬉しい――
ちょっと、話したいこともあるから。
[後半の声は自然と潜まり、それ以降は、周囲と同じ様にイレーネへと意識を向けた。特に口も挟まず、少女の動向を一つ一つ、観察するように]
[父が、その父が、残した口伝はこの場においての必要な情報を、完璧に伝えてくれていた。
ブリジットの言葉に、狂えし―に、微か息を呑む。
知られてはいけない。
だが、確実に一人だけ、この場で私が『違う』のだと知る者が居る。
エウリノの楽しそうな声に、微か頷きながら。]
でもまずは…本物の見分ける力を持つ者を、探さなければいけませんね。
それに、守り手も。
[そう囁いた。]
……辛い、ねえ。
信じられないようなら、止めときゃ良かったのに。
[視線は動かぬ侭、エーリッヒの呟きに対して返す台詞は、突き放したよう。
本人の目の前は無論、他者の前ですら、反対する素振りなど微塵も見せずにいた。そんな言葉が漏れたのは、この状況だからだと言えた]
ノーラ?
ああ、今の彼女には特に…
[アーベルとエーリッヒの会話を拾ったところで、微妙な音が聞こえてきた]
っと、危ない!
[慌てて距離を詰め、ミリィへと伸ばした手は届くかどうか微妙な所]
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