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[平和な騒がしさをあたたかく見守りつつ。
ハインリヒの問いには、簡潔に。]
イレーネさんが、人狼と人間が見分けられるって。
そういう力があるそうなんです。
[しかし、若干興奮気味に答えた。]
[騒がしくなって来た店内をぐるり見回し、人数を数え。
ふと、気にかかった事が一つ。
そしてそれを問えそうなのは、取りあえずここには一人]
……ところで、アーベル君や、一つ聞きたいんだが。
ノーラ、大丈夫なのかね。
[青年に近づき、昨日、大分ショックを受けていた様子の幼馴染の事を問いかけて]
[薪。その意味するところは何か。
掌に文字を書いていく様を、数歩離れた場所で、視界の端に留める]
イコールでなくとも、イコールに繋がる。
辿る道は違えど、向かう先は唯一。
つまりは結局、
僕らが為すべき事は一つという事でしょうかね。
[問いとも言えぬ、淡々とした言葉]
[ユーディットの笑顔に、戸惑うような照れたような、そんな顔をして俯いた。
凄くない、と言いたかったが、この状況下でこれ以上の力は無いように思えたので、何も言えぬまま。
ふとミリィの声が聞こえたので顔をあげると、何やらハインリヒと楽しそうだったので、少しだけ、ほんの少しだけ、笑った。]
なるほど、とは?
[ティルの視線を追ってミリィに辿り着き]
何を期待していますか、君は。
まあ、お邪魔すると約束していましたしね。
[僅かに早口になっていることは本人だけが気付いていない]
…イレーネに見分ける力が?
[興奮した様子のユーディットの声に、イレーネを見た]
――さあ。
[エーリッヒの問いかけに、声の温度は若干下がる。
敢えて、思考の外に置いていたことだった]
昨晩、旦那様が御迎えには来ましたがね。
疲れているみたいだったから、未だ休んでいるのかも。
…今は無理なのか…。
それでも、手段があるだけマシだ。
ずっと疑いをかけられたまま、ってのも、な。
[イレーネの説明を静かに聞いて。
光明が見えてきた、と言わんばかりの口調]
[ユーディットがハインリヒに向ける説明。
それに、視線は一瞬、イレーネの方へ]
……見分ける、力?
[小さな呟きの後、右手がまた、何かを抑えるように左の腕を軽く、掴む]
[ふと顔を上げるとティルの方を見、やあ少年、とペン先を上げて挨拶を。それからイレーネを見遣り]
御伽噺に伝わりしは、異形。
狂えしに、視えしに、聞こえしに、守りし――
果たせるかな、ざわめき。
喧騒は増して訪れん。
喧騒!
[耳と頭とを押さえて一度俯く。それからよろめいているミリィには、いつものよう]
大丈夫かい。大丈夫でないかね。それは残念。
二人とも楽しそうでよい事だ。
ん、んーにゅ?
イレーネが、どうかしたーん?
[いまだに目がぐるぐるとしてまっすぐ歩けなかったが、そのままイレーネの方向へと歩いていった……つもりが、あらぬ方向へどーん]
うひょお!?
[イスにけっつまづいて、こけた]
ん……そっか。
ま、こんな状況じゃ、気疲れもするな。
[返された言葉に、小さく息を吐く]
……あいつも、辛いっちゃ辛いんだろうな、この状況。
[ぽつり、零れた呟きが、もう一人の幼馴染の事をさすのは言うまでもなく伝わるだろうが]
[そっぽを向くユーディットに、くつりと笑う]
悪かった。
まあ、たまには余所の味を知るのもいいんじゃない?
後でいいから、手伝って貰えると嬉しい――
ちょっと、話したいこともあるから。
[後半の声は自然と潜まり、それ以降は、周囲と同じ様にイレーネへと意識を向けた。特に口も挟まず、少女の動向を一つ一つ、観察するように]
……辛い、ねえ。
信じられないようなら、止めときゃ良かったのに。
[視線は動かぬ侭、エーリッヒの呟きに対して返す台詞は、突き放したよう。
本人の目の前は無論、他者の前ですら、反対する素振りなど微塵も見せずにいた。そんな言葉が漏れたのは、この状況だからだと言えた]
ノーラ?
ああ、今の彼女には特に…
[アーベルとエーリッヒの会話を拾ったところで、微妙な音が聞こえてきた]
っと、危ない!
[慌てて距離を詰め、ミリィへと伸ばした手は届くかどうか微妙な所]
[エーリッヒとアーベルが交わす、ノーラに関する会話に自然と注意が向く。
いつも幸せそうに、朗らかに笑っていた彼女が姿を見せないのは――寂しい、以上に、気がかりなことではあったから。
と、ふとアーベルがこちらを向く。]
うーん、まぁ、エーリッヒ様はこのお店の味の方が好みみたいだし、それは私も認めるし……作り方を教えて貰えるのは嬉しいけれど。うん、じゃあ後で……
……え?
[囁くような台詞には瞬きひとつ。
探るような視線をアーベルに向けながらも、]
……わかった。
[こくり、頷いた。]
そう、言いなさんなって。
[突き放すような物言いをするアーベルの様子に、浮かぶのは苦笑。
信じられないなら、という言葉。
直前から直後まで、色々と付き合わされた身としては色々と思う所はあるらしいが、言う事はせずに]
―自宅前の小道―
[謝罪の言葉を口にする夫へと、返す微笑みは儚げで。]
…仕方ないよ。
わたしだって…アナタが疑われたら、最後まで信じていられる自信…ないもの。
大丈夫。
ちゃんとまた、いつもの平和な暮らしに戻れるわ。
じゃ、行くね。
[離れゆく二人は、視線を合わせることもなく。
お互い、別々の方向へ歩き出す。]
[ユーディットの説明を聞いて、ペンが指からこぼれそうになる]
な…マジかよ?
マジなら最高の話じゃねえか。
サクっと俺を…いや、まあまずは女子供が先ってもんか、ここは。
[ふらふらしながら、まだ愚痴をこぼすミリィを呆れ顔で見ながら]
…こんな奴でも、まあ一応な。
ミリィ、大丈夫?
[転びかけた親友には、そう遠慮がちに尋ねる。
近づこうと思ったが、足は動かなかった。
先にオトフリートが居たから、というのもあったが。
心なしか嬉しそうにするユリアンの傍らから、離れることが出来なかった。
胸中にあるのは、怯えだろうか。
震えはないが、表情は少し翳っていた。]
[結果的に言えば、オトフリートの手は間に合わなかったと言える。
だが、オトフリートが手を伸ばしてくれたおかげで、勢い良く転ぶ真似だけはせずに済み、ケガをするようなことは無かった。
―――ただ、一箇所を除いては]
あ…たたたたた…。
[左手の甲についていた傷が開き、そこから血がにじんだ。
少しだけ、かぶってた仮面が外れる]
……店の物は壊さないように。
後、それはまだ、あまり他言して欲しくないんだけど。
そうも言っていられない状況かな。
[騒ぎの中では、届くか怪しい声。
前半はミリィ、後半はオトフリートへと向けたものだった。
姉が自ら明かそうとするまで、秘密にしておこうと思ったことだったから]
ありがと。
[ユーディットの視線を受けれど、返すのは、真意を悟らせないような笑み]
……その前に、一仕事が出来そうだけど。
[腕を組み、見やった方向は言うまでもなく]
[色は、一時としてそれを留めず、移ろい変わりゆくもの。
それは空の色も、土が生み出す虹色の石も同じ。
そう、人の心も。]
[それ故に色に魅せられ、芸術に傾倒する者達が引き寄せられると…]
遅くなってごめんなさいね、姉さん。
[こんな日にもいつものように居る姉に、勝手口から小さな謝罪。]
[ミリィに声をかけつつも傍に行こうとしないイレーネを見ると、その表情が翳りつつあることに気付く]
…………。
[不安を覚えているように見えるイレーネの肩に手を回し、そっと抱き寄せた。
人狼の正体を暴けるとなれば、イレーネの身に危険が及ぶかもしれない。
何があってもイレーネを護ろうと、そう心に*決めた*]
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