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エウリノ…。
[高らかとワラうエウリノを、じっと見つめていた。
ユリアンと違う事への戸惑いと。
彼こそが人狼であるという確信と。
それに対する、歓喜が。
その内側に渦を作っていた。]
―――。
[深い眠りから覚め、目を開けてみると、そこはいつものような天井が見えた。
少しだけ頭が重い。
今、何時くらいだろうと、窓の外を見ようとすると、傍らにオトフリートがいるのが目に入った]
……先生?
どうしたんですか?こんなところで?
あ。もしかして、夜這い?
いけません!私には、10を頭に2人の子供が!
―――なんて言ってみたり。
[笑みを浮かべながら、ぺろりと舌を出す。
その様子は、いつもの通りであり―――いつもの通りではない。
今まで、オトフリートの前ではまともに話せなくなっていたのが、普通に話せるようになっている。
それは良い変化なのか、悪い変化なのか。今はまだ、誰にも分からない]
[ふらり、宿屋へ向かうために広場へと足を踏み入れる。
ちらほら村人も居たが、こちらに向けられるのは不安げな、憎らしげな視線。
気にしない素振りをしながらも歩を進める。
時折、見回り中らしき自警団の一団とすれ違ったりもした。
もちろん向けられる視線は疑わしげなもの]
…………。
[常のやる気なさげな様相で視線を返す。
自警団の視線はこちらから外れず、広場を歩く間ずっとそれは付きまとった]
ああ、わかった。ちょっと待っててくれ。
[最後に向けられた声に返し、鍵盤の蓋を閉じる。
身支度を整え、窓を閉め。
譜面を片付けるついでに、先ほども見ていた箱にまた、視線を]
…………。
[微か、逡巡するような気配。
右手が銀色の箱の蓋を軽く撫で、結局、離れる]
……俺には。ないし。
[低い呟きの後、部屋を出る。
玄関で待つユーディットが、先日持ち帰った花を見ている様子に、ふと笑みが零れた]
気に入ってもらえたなら、何より、かな?
[冗談めかした言葉を投げつつ、酒場へ向けて歩き出す]
[それは父の形見であり、伝えられていたものの一つだった。
大切な、その時がくるまで大切にと、父に重々言いくるめられていたもの。
それを使うのは今だった。
だけど果たして信じてもらえるか。
異能者は忌み嫌われるから隠れていなさいと。
それも、父がのこした言伝。
だけど。]
今が、父さんが言っていた『その時』、なんだよね…きっと。
[ぽつと呟いて、黒くそして鮮やかに光るオパールを手に握り、部屋を出た。
女将に断りをいれて、外へと。]
――はふ。
[欠伸を噛み殺したアーベルの足元で、白猫が大口を開ける。
人気の少ない酒場の前、箒の上に手を乗せて、更に顎を乗せるという、何ともやる気のない格好で、彼は其処にいた。
一応は掃除の途中ではあるものの、時折通りすがる人々の視線が煩わしい]
……暇だねえ。楽だけど。
…気分悪…。
俺が何したってんだ。
[容疑者として名を挙げられただけでこの対応。
気分が良い訳が無い。
苛々が募り、宿屋の扉を開ける勢いがつきすぎて、大きな音が立つ。
やべ、と思ったが後の祭り。
宿屋の女将に怯えた視線を向けられた]
[笑顔を見せるエーリッヒに、こくりと素直に頷き笑った。]
ええ、エーリッヒ様が下さった大切な大切な花ですからね。
気に入るどころの話じゃありません。
[と、こちらも冗談めかして返し。
酒場への道のりをゆっくりと歩き出す。
途中、通りすがる人々の視線は気にしない。気にならない。
視線だけでは人は死なない。]
……そういえばエーリッヒ様。
[道中、ふと思い出した、といった調子で切り出す。]
昨日はああ言ってくださいましたけど、私が人狼なんじゃないか、とか、正直不安になりません?
[小首を傾げて、柔らかな表情で尋ねる。]
― 現在 ―
[どれほどの時が経ったか、そのうちに書斎を出、そのまま外へと向かう。片手には筆入れやノートや紙を十字に縛った物。ゆらりと、ぶつぶつと呟きながら歩く彼女を、いつもより疎らに見える村人達はいつもと同じに避けて通る。よく見ればその視線が普段の困惑や嫌悪とはまた違った、恐怖や好奇を帯びていた事がわかっただろうが。
それに別段注意を向ける事もなく、彼女の足は広場の方へと]
[サボりながらも丁度横側まで到達していた所為もあり、来店客に気付いたのは、扉を開く大袈裟な音によって。昨日の今日、村人が討ち入りに来たということはないだろうと思いながら、表の扉に回る]
……なぁに、やってんの。
[容疑者の一人――ユリアンの姿に、呆れ混じりの声が出た]
[バツが悪そうに宿屋の中に入ろうとしたところで、呆れたような声が聞こえた]
……ちっと苛ついてた。
[すまん、と簡潔に謝る]
[返された言葉には、それなら良かった、と笑む。
周囲から投げかけられる視線は、こちらも気にした様子はなく]
……その質問は、そのまま返してみたい所ではあるんだけれど。
[投げかけられた問いに、最初に口にするのは、こんな言葉]
疑いだしたら、きりがないっていうのもあるから、ね。
そういう考えは、今は、持たないようにしてる。
まあ……信じたい気持ちもあるし……ね。
[村人の目が何時もより厳しいのは仕方ないことで。
視線を避けるように小走りに、広場を通って宿の方へと向かう。]
あ…。
[途中でブリジットに会い、遠くからだが小さく会釈した。
そういえばこの人も名を呼ばれていたと、思い返しながら。]
そ。
まあ、仕方ないか。
[厭な話ではあるが、今となっては同じ境遇の者。
向けられる視線などは、容易に想像がついた]
実力行使に出ないだけ、マシだけどね。
そのうち、後ろから刺されても可笑しくなさそうだ。
[肩上に箒を乗せて、両手を引っ掛ける。
白猫は事態をまるで知らぬ様子で、暢気に毛づくろいをしていた]
おはようございます。
[目を覚ましたミリィに、窓の外を見ていた顔を向けた。
その言葉を使うには外れた時間だったが、穏やかな挨拶を送る]
おや、随分と信用がありませんね。
7つの時のお子様に怒られるようなことはしていませんよ?
[普通に会話をしてくれることが嬉しかった。
そして同時に少し不安だった]
お腹、すいていませんか。
[夜が明けて、長時間は離れないようにしながら何度か部屋を離れた。ミリィがまともに食事をしていないことにも気付いている]
……実力行使って、周りの連中が?
ユーディットが、何かが起きない限りは何もしてこないんじゃ、って言ってたけど。
刺されるような状況にはなって欲しかないね。
[小さく肩を竦めてカウンターへと近付いた。
いつものセットを頼み、テーブル席へと着く]
……そうですか。
[エーリッヒの答えに、ひとつ頷く。]
ああ。私は、エーリッヒ様を疑ってますよ。
というより、疑わないといけないと思ってる……というのが適切なんでしょうか。
これは皆に対してそうなんですけれどね。
[ちょっとだけ笑う。言葉の重さとは裏腹に、口調は軽く、和やか。]
疑わないと、って思ってる割に、頭は言うこと聞いてくれなかったりするのが困ったところです。
信じる気持ちって、コントロールし難いものなんですね。
昨晩一生懸命考えてよく判りました。
[エーリッヒの最後の台詞には、ありがとうございます、とお礼を言い。
そろそろ酒場が見える頃だろうか。]
[広場に着き、イレーネに気付けば呟くのを止めてひらりと大きく手を振り]
やあ、元気かい。憂鬱かね。それもまた自然。
星が落ちてこない限りはね。
星が落ちてきたなら……
落ちてきたならば。
慄然だよ、諸君!
憂鬱はすなわち終末ではないという事だ!
よきかな、しかし、落ちてきたなら……
嗚呼、恐ろしくて仕方がない。
[イレーネに向けてか、周囲に向けてか――無論周囲が聞くわけもないのだが――はっとしたように語り。最後は独り言のように言ってから、宿屋へ歩いていき、その戸を叩いた]
[オトフリートの言葉に、ミリィが微笑む]
私としては、夜這いに来てもらっても、別にいいんですけどね?
ま。先生がそんな人じゃないってことは、重々承知してますから。
そんな人だから……昨日、私を救いに来てくれた。
[少しだけ目を伏せる]
……ある程度は覚えているんだ。昨日の事。
自分の弱さに、嫌になっちゃう。
あ。ちゃんとお礼言ってなかったよね。
ありがとう。先生。
[ベッドの上でぺこりと頭を下げた]
お腹は、空いてない、かな。
あまり、食欲無いんだ。
逆を言えば、何かが起きたら――?
[それ以上を口にすることはなく。
扉の傍の壁に背を凭れつつ、注文を受け、そそくさと厨房に向かう女将を見る]
何か起きたら面倒だけれど、
何も起きなかったら、どうする気なんだろうね。
あるものをあると証明する以上に、
ないものをないと証明するなんて難しいのに。
このままじゃ交易だってままならない、先細りするのがオチだ。
[実際に見ていないものの、厳重な閉鎖の話は聞いている。旅人が寄り付くはずもなかった]
[大きく手を振られれば、一瞬きょんとして、その後で慌てたようにもう一度小さな会釈を返す。
そのせいなのか何なのか、何時もは怖くてあまり内容を聞かないブリジットの声と語られる言葉が、今日はやけに耳に残った。
空を見上げる。星は今日も変わらず綺麗で。]
憂鬱でいられる間は、終わりじゃない…。
[何度か瞬いて見上げた後、小さく溜息をついて、ブリジットの少し後に宿の中へと。]
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