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……ま、彼女は、ね。
[ため息をつくオトフリートに、向けるのは苦笑い。
同じ村の生まれであり知らぬ相手ではないが故に、自分は「彼女はああいう性質」と割り切ってはいるのだが。
こちらは、そうもいかないんだろうな、などと考えつつ]
ええ、それでは行きますか。
[軽い口調で言いつつ、宿へと]
[ミリィの背中を見送った後、くる、とアーベルに向き直る。]
あんまり困らせたら駄目でしょ。乙女は繊細なんだから。
[自分も好奇心が疼いたことは確かなのだが、そこは少しだけ棚に置いてアーベルを諌める。]
情報に、観察眼……ねえ。
いつも思うけど、貴方ってまるで探偵ね。
何でも知ってるように見えるし……実際に知っているし。
[くすくす、と口元に手を当てて笑う。]
ええ、じゃあ今度からはよく見てみようかな。
探偵助手ぐらいの観察眼は養えるかもしれないし。
[尋ねられた質問には、きょとりと瞬きひとつ。
それから、面白そうにアーベルの顔を覗き込んだ。]
さて。……探偵さんにはどう見える?
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頑張りますと言えばいいでしょうか[きょろきょろしている。]
騙るのはこっちも問題なしです。
狂だし、表にはうっすら出ようかとは思ってたりしてましたが、基本は二人のやりたい方優先でどぞう。
[ティル、エーリッヒと共に宿へと入る。
最初は努めてブリジットを無視しようとしたが、女将、そして自衛団長の様子に目を細めた]
とりあえず食事を頼みましょう。
何がいいですか。
[適当な席を確保しつつティルに尋ねる。
その間も耳はブリジットの声を拾う]
[いつもと変わらぬ上着に髪形で何気なしにぶらりと宿に入ってはみたが。]
おおん、なんだか今日は随分と、賑やかなんだかなんだかわかんねー様子だねえ、こりゃ。
[ドアの傍の壁にもたれかかり、中の様子を観察しながら、そっとメモとペンを取りだした]
[宿に入り、最初に目に入ったのは自衛団長の姿]
あれ、ギュンターの爺さま……。
[つい、口をつくのは子供の頃からの慣れた呼びかけ]
珍しいんじゃない、こんな時間にここにいるなんて?
[何かあったの? と、ごく軽い口調で問いかける。
問うた事を後悔する事になるのは、一通り話を聞いた後の事だろうが]
そう?
そう言われたのは、初めてかな。
探偵にしちゃ、少し口が過ぎるよ。
[諌める言葉には、はいはい、と気のないのが丸分かりの返答をしたものの、己を指す単語は予想外だったらしく、ぱちりと青の瞳を瞬かせた。酒場の主としての素質は――軽口さえ止めればあるかもしれない、などと、上の姉にはよく言われたもので。
覗き込んでくるさまには、退くでもなく、ほんの少し首を傾けて]
うーん?
王道だと、主に恋焦がれる召使、が綺麗な形なんだけど。
まだ読みきれないな、残念ながら。
[姉の幼馴染の事を思い返しながら、そう返した]
[集まりだした面々を見ると腰を上げ、ギュンターは重い調子で話し出した。一番先に話されたのは、村が閉鎖された、という事。宿の中にいる人物にはその声が聞こえただろう]
[宿の中へと入ると、この場には珍しい団長に小さく頭を下げ、ユリアンの隣へ座った。
酒場の空気が少し硬いのはブリジットのせいか、それとも他の何かか。
彼女の声を不安げに聞きながら、続いてギュンターの話を黙って耳に入れた。
聞きなれない単語一つ一つに、表情を固くしながら。]
閉鎖? 祈りのためかい。違うかね。
それなら何が。
[続けて原因――「人狼」の存在について、容疑者が十一人いる事と――その名前、自衛団についてと、自信の行動についてが、ギュンターの口から語られた]
[宿の中の騒ぎを壁にもたれかかったままメモに取る。そう事のときはまだ自分は傍観者のはずだったから。宿の中で一際賑やかなところに目をやると、見慣れた女性がいつもの様子で騒いでいた]
あいつは…いっつもあーなのかねえ。
まあ、見てて退屈はしねーけどな。
[ブリジットに視線を送りペンをパタパタと振って挨拶をする]
ハインリヒもこんばんは。
[聞こえた声に律儀に振り返った。
浮かべる笑みは普段と変わらぬようで、どこか違和感がある]
……はい?
[自衛団長の言葉に一瞬静まり返った宿。
小さな疑問符はどこまで聞こえただろうか]
……閉鎖?
一体、なんでっ……。
[問いの答えも兼ねた説明に、思わず上がる、上擦った声。
続けてなされた説明に、緑の瞳がゆっくりと瞬いた]
……なんの、冗談……。
ああ、そうか。探偵は依頼人の秘密は守らないといけないから。
……でも、アーベルが探偵だったら楽しそうなのに。
カインが犯人の証拠探しに一役買ったりしてね。
[楽しそうに、想像(妄想?)を語り聞かせる。
首を傾げたアーベルには、こちらも逆側に首を傾げてみせ。]
そうなの? でもそれはお話の中の出来事じゃない?
それに、んー、エーリッヒ様に恋焦がれる私……。
………。
[暫くその体勢のまま考える。ややあって、首を戻して。]
……どうだろう。私も読みきれないな、残念ながら。
あ、でも面白いことはわかった。
[にこり、と笑う。]
アーベルって、私とエーリッヒ様のこと、そんな風に見てたのね?
[ギュンターから伝えられる言葉。
村の閉鎖、その原因及び容疑者が絞られていること。
表情は変わらねど、その身体に緊張が走る]
……その、容疑者、って。
[疑問は直ぐに解答された。
己も含まれていることに息を飲む]
……大丈夫です、落ち着いて。
[落ち着いていないのは、少年よりも彼自身だったかもしれない。
注文の為に立ったままの姿勢で、ティルの肩を軽く何度か叩く]
本当に。
何の冗談、ですか。
[声をかけられたのに気がついて]
ああ、こりゃ先生さんもこっちにきてたのかよ。
…どうにも変な雰囲気ですぜ、こりゃ。
あの爺さん、俺らを孫と間違えて御伽話を始めた…ってわけじゃないようだし。
[ペンで額をコツコツと叩き『人狼』という言葉を思い出す]
ゴシップ専門の奴らがたまにネタには使っちゃいたが…マジなのか?
[家に戻ったら母親に戸締りをきっちりするようには言っておくか…などとぼんやりと考える]
……どっから、尻尾掴まれた、かな。
ここじゃ大きな騒ぎは起こしてなかったはずだけど。
[声にならぬ声が漏れ出る。
その声色に危機感はほとんど無い。
同じように漏れ出たような言葉が聞こえると、探るように感覚を研ぎ澄ます]
…俺の他にも、居たのか?
[人狼―その単語に顔が青くなる。]
人狼、なんて。御伽噺だったんじゃ。
[震える声でギュンターに尋ねるも、これは事実であると首を振られた。
そして続いて告げられた容疑者に。]
…わたし、も?
[自分の名前が入っていた事に、怯えた。]
楽しそう、かねえ。
俺は真実を暴くより、自分の興味で動くと思うけど。
[己の事ながら他人事のような言い草。
否定も肯定も、明確にはしなかったが。
ユーディットが首を戻すのに合わせて、アーベルも首を真っ直ぐにする]
どっちかっていうと。
エーリ兄が無自覚に何かしらやっていて、
それに惚れ込んでいたら大変、って心配かな?
[何処まで本気かわからない調子で言って、それから、あ、と声を漏らした]
買い物、頼まれてたんだ。
そろそろ戻らないと、またどやされるな。
[ハインリヒに気付けば、ひらひらと手を振り返し。ギュンターの傍で続く説明を聞いた女性は、まず、ほう、と一言。短く、それ自体は気のないような声を零し]
寓話として伝わりし異形。
人に化け人を喰らう怪物。
それが村の閉鎖の原因。
そしてその容疑者は十一人。
中にはこのブリジット=フレーゲも含まれている。
そういう事かね。
[ギュンターがそれに頷けば]
実に恐ろしきかな、――凶兆!
暗き影は――変容を経て来たれり!
[叫ぶように言いながら、ニ、三歩後ろによろめき]
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