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[じっと、何時から心話を聞いていたのか。
二人の話す声を聞きながら、途切れた所で口を開いた。]
アーベル。
聞き忘れたけどよ、そっちの望みってのは何だ?
[口調は存外軽いものの。
探るようなものは隠さなかった。]
[再び戻した視線は月闇の指先を見て、問題ない様子に流れるように問いを向ける彼女の喉元へ移ろう]
……えぇ。
触媒を使って何か――恐らくは結界からの手掛かりを追っているようでしたから。
[若焔が結界の専門家である事と回廊に漂う香りの説明をする。
そうして結界つながりで影輝竜から内側からの強化の話を聞けば僅かに安堵の気配を滲ませて頷き、眼鏡のブリッジを袖から半ば覗く指先で軽く押し上げた。銀鎖と透明な青玉の付いた封印の指輪が煌きを零す]
何を手掛かりに探すにしても、結局は目的次第かもしれませんね。
[呟きは西殿を向いて、夜の砂漠のように静かに*零された*]
[大丈夫である事を確かめて口元に笑みが戻り、不意に届いた生命竜の心話にも変わらず笑み続ける]
――…自由に。
私の『願い』はただそれだけ――…
[探るような響きにも、心の声はいっそ穏やかなまでに*静かに*]
[ゆらゆらと。
たゆたう水の流れに身を任せるがごとく、当ても無く歩いてみれば、その先には、3人の随行者が集まっているのが目に入る]
……誰も彼も、全員お硬そうな人達ばっかりだねぃ。
これもまた流るる水の導きか。
[呟き、その歩みをゆるめることなく、月、影、精神の属性が集まる場所へと進んでいった]
御機嫌よう。みなさぁん。
そちらのほうで、此の方の原因は突き止めておられます?
触媒ですか。
……なるほど。結界からの。
結界から、読み取れるものがあるのでしょうね。
[知らずに光る腕輪に目は動き、]
そうですね。
[そのまま目を離した。
一度西の方へと、つられて向いて。
そこにいるであろう王の言葉は、今はないけれど、内部の様子を思えばため息が零れるのは仕方の無い話だった。]
―中庭―
[やってくる気配に気付くのは、少し遅く。
声をかけられる直前にそちらを向いて、立ち上がると頭を下げた。]
流水の随行者殿ですか?
原因を何であろう、探ろうという話をしておりました。
[今までの話(それにはギュンターからの情報も含まれる)を、ナターリエへと伝える。]
[答えを聞いた後、どれくらい沈黙していたか。
暫くの後、ふっと息をつくと同時に力を抜いた。
それは観念した風にも、何か覚悟した風にも聞こえるだろう。]
…いいだろう。
俺も力を貸そう。
[はっきりと、その一言を口に登らせた。]
だが知ってるだろうが、俺は他人を傷つける事が一切出来ん。例え『本性』になってもな。
だから荒事には手を貸せない。
代わりに俺から引き出せる『力』は、自由に使うといい。
癒し手も、優先的に二人に回す。
尤も他の連中を癒さんわけにはいかんだろうから、そこは目を瞑れ。
イザというときまでは、な。
[それは、万一事が露見した場合、二人以外は癒さないと。
言外に宣言したようなものだった。]
ほっ。なるほどねぃ。
まだ私と同じくほぼスタート地点ってわけですわねぃ。
[オトフリートから返ってくる言葉に、軽い笑い声を上げた]
……通常状態なら、此の方の変化楽しむだけなのだけれど、水を堰き止められるのは、幾分、機嫌が悪くなりそうですわぁ。
ぶっちゃけ、ムカつく。
[感情の変化を止めることなく表情に出す]
嗚呼。
何も無ければ、今頃、貴方にモーションの一つや二つかけたいところなのですけどねぃ。
そこ行く、精神のも、そそる顔立ちしてますわねぃ。
[ぺろり。上唇を舐めて、アーベルを見つめた]
うふふ。
ことが無事に済みましたら、一夜のお相手申し込みましょうかしら?
影のは……ふられましたけれども。
[それでも、ノーラを見つめる目つきはどこか艶かしい]
はい。
まだ、詳細は。
[眉を寄せる。そのまま、すと目を影輝の竜へと移したけれども、言葉を促すことはなく。]
――竜王様方は。
確かに暴れていらっしゃいました。
[こえを聞き、ほっとしたような感情は、心の会話を伝ってゆく。]
――荒事には、あなたを望むようなことはしませんよ。
あなたが怪我をするだけになりますから。
[いつもよりも幾分か、言葉はおとなしい。]
ご遠慮させてください。
[言葉はそう作られた上に、腰が引けているのは、本能ゆえか。
そして影輝の竜に目を移したナターリエの様子に、ほっとため息を吐いたのだった。もちろん、そのすぐ後に、心配そうに見るのだったが。]
……。
暴れて、ね。
竜王様達が暴れて、それでも、結界が外れないということは、よほど、強力な力が絡んでいる、ということですわねぃ。
その原因をつきためたとて、それを解消できうる手段は、此方にあるのかしらぁ?
[少しだけ、目つきが険しくなった。
が。次のオトフリートの言葉を聴くと]
うふふ……。
そう言わずに、何事も試してみるのが良いかもですわよ?
少なくとも、ユーディットとクレメンスは、私の誘いに応じてくれたのですからねぃ。
[笑みを作り、しばし、その時の行為に思いを馳せた]
―中庭―
おす全員。
ナタ、そっちの王様は元気か?
[オトフリートの背後から、彼女の腰にタックルかます風ににょっきり現れた。
片手は離して、ナターリエへひらひら振りながら、さり気無く彼女の王の様子も伺う。
今日も全く反省してません。]
若焔殿――随行者殿ですが。
[アーベルから聞いた話を伝え]
その手段以外、私が知ることはとくに。
[締めくくりはそれだったが、続いた言葉にふるふると首を横に振った。]
……いえ。
私は遠慮します。ええ。
[ほっとするようなオティーリエの安堵の感情がこちら側にも伝わる。いつもより細やかな心情が伝わる気がするのは、精神の竜の影響か。
それに一拍、間を開けてからへらと常の軽薄な笑みで応えた。]
まぁな。負けるつもりは無いが。
[どれだけ痛めつけられようが、クレメンスが本当の意味で倒れる事はない。
たとえ今の肉体が消滅しようとも、復活する―否、復活"させられた"し、実際過去それをやった事は数度ある。
暫く動けはしなかったが。]
エインシェントが二種、本性は一回しか使えない。
そのうち一種が荒事の出来ない俺だし。
オティーリエへの負担は大きいだろうな。
まぁ頑張れ?
[むけた笑みは本当に応援してるのか、軽いまま。]
あらぁ、言っているそばからクレメンスじゃない。
[ひらり手を振る]
私の主様?
さぁ?どうなのかしらぁ?
いつもながら、掴みどころの無い人で、真意は私には分かりかねるわぁ。
―――もっとも。
[そこで、ナターリエが遠くを見つめた]
海が、荒れ始めている。
それが、何かの前兆なのかも知れないですわねぃ。
インドア派ですから、そこまで頼られるのも困りますけれど。
[肘が出たのはもう条件反射だ。
そして、向けられた笑みを睨む。]
そういうことはしないで下さいと何度言えばわかるんですか。
ナターリエ殿に抱きつけばいいじゃないですか。
[誘いに乗ったというのを受けて、心の声で文句をいう。]
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