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王同士の関係故に、知っているに過ぎぬよ。
[ 親しいとの言葉を言外に否定しつつ、天竜の、氷竜へと向ける言葉を聞く。届いたのは竜都を案じる科白のみではあったが。]
せめて竜都以外ならな。
[ 恐らくそういう問題でも無いのであろうが。
十五竜王の力が混ぜ合わさり、外へ漏れるような事態となれば、何処の地よりであろうと、ドラゴンズランド全域にまで被害が及ぶのは必死だ。]
……イズマルームに苦労して貰うか。
過労死しかねないが。
竜王が風邪をひいたとなれば、
ある意味、前代未聞だ。
氷に焔となれば、気温変化は烈しかろうがな。
[ 続いた言葉は明らかに間違いだろう。
幼児の手前、はっきりと口にする事は無かれど。]
……異なる属が一堂に会すというのは、そういう事だな。
[ 会議の時から酷かったのではなかろうか。集合前から、あの有様であったのだから。そんな思いすら、過ぎった。
微か光の零れる外、安定せぬ天気の下の方が平和に思えてくる。]
[ 連れて来はしたものの、幼児には度し難いであろう言葉の行き交いは、仔を夢路に至らせたらしい。舟を漕ぐ頭を己の胸に寄せて、落ちぬよう抱え直す。
不意に訪れた沈黙に、人の界では天使が通るなどと言うのだったかと思う。生命の竜の軽い口調と、裏腹な視線が思考を掠めた。輪転、その意味は。]
側近殿の見解も御聞きしたいところだな。
[ 思考を払うと同時、此処には居ない者を思い浮かべる。恐らくは、王の不在の間の処理を担って動き回っているのであろうか。
ともあれ仔を休ませる為、そして解れた覆いを編み直す為、*踵を返した*]
それなりに。…ようは俺がパシられてるわけだ。
[天竜から聞こえた言葉にへらりと返す。
命竜王のお使いで影竜王に会いに言った先でまた用事を、といった悪循環は過去何度体験したものか。
そもそも各地を移動する影竜王捕まえるのに一苦労なのだが。
その辺はおそらくどちらの竜王も考慮しちゃいない。]
[遠くを見た帰りに重ねた視線の先の影竜には、にぃと軽薄に笑ってみせた。言葉の真意を隠すように。
ノーラの腕の中で眠る幼児には穏やかな笑みを浮かべる。
可愛いもんだと目を向けるそれはおそらく、新たな生命を歓迎する生命の老竜のそれ。]
ああそうだ、そういやギュン爺何処だ?
[うっかり騒ぎで忘れていた、クレメンス内で3番目の爺さまを思い出しながら。
暫くの後、自身も結界の前から*遠のくのだろうか。*]
[封じられし西殿から各々散開するのを見送り。己もその場から離れ行く。その先向かい行くは竜都・大図書館]
さぁて、それらしき書はあるや否や。
[向かうブースは竜郷の歴史などに関わるもの。目ぼしい書を見つけると、幾つか手に取り、内容を確認。終わると棚へと戻し、再び探す。それを何度か繰り返した。書の出し入れで伸ばす左手。しわがれたその手首に見慣れぬ腕輪が据えられているのに気付く者は、果たして*居ただろうか*]
[ノーラとクレメンスの否定に、はぁ、と答えて。
困惑こそ顔に出さないものの、そのまま沈黙の内に沈んでしまった]
お休みになられるなら東殿を使われるとよろしいかと。
このままでは西殿の部屋は使えそうにありませんし、あちらにもそう使える部屋はありますので。
誰かに用意を頼んで参ります。失礼。
[翠樹の仔竜を気遣うノーラへと言うと、軽く頭を下げてその場を後にした。東殿へと入れば、丁度そこには手配を進めるギュンターの姿があった]
養父、いえギュンター様。
[他者もいる場所だったので呼びかけを直し、忙しそうにしている養父に近寄る]
「虚竜王様のお力に敵うものはそうない。王ならばまだしも、我らでは干渉に干渉するが精々となってしまう。
だからお前はそれよりも自分の成すべきことを」
…はい。
[ローブの左腰、布の下に慣れない硬い感触。
三度確かめるように触れて、確りと頷く]
[西殿前にまだ人影があるようなら、それらを伝えにも戻ろうか。ギュンターの居場所を尋ねられれば、東殿で出会ったこと、だがあちこち動き回っていることも*伝えるか*]
―東殿の一室―
[十五竜王の封印による『混沌』は、いっそ見事とも言えるものだった。中も外もである。中に精神の竜王が居る為に平和、というわけでもないのは青年にもよくわかっていた。
必要不可欠と判断した休息を一室で取りながら状況を整理する]
現在時点において内側からは破れる事は無い。
ただし交信は不可能ではない様子。
外側からは単純な物理攻撃は効かず、結界を解くには氷破をもってしても一定時間が必要。
[記憶に刻んだ会話から必要な情報だけを抜き出していく]
[その頃、封じられた会議場では十五竜王の暴走による竜都もしくはそれ以上の破壊を恐れた有志により、完全に決着が付くまで開かないよう内部からの強化が行われていたとか。
それに伴い微かに外側から窺えていた備品破壊の様子も曇り硝子で隠されたように見えなくなった。それが竜王の品性の評判を守る為のであったかどうかを知るのは内側に居る十五竜王のみである]
─竜都・大通り→都の外れ─
あー……もう。
[走りながらも、義兄の暴れっぷりは伝わるわけで]
マジでねーさんじゃなくてよかった……胎教悪すぎ……。
[そんな事を考えつつ、たどり着いたのは竜都を巡る城壁の側。
そこまでたどり着くと、周囲と、それから上を見上げ]
よっ、せい!
[掛け声一つ、風を捉えて垂直な壁面を文字通り『駆け上がる』]
[たどり着いた城壁の上に腰を下ろし、やや晴れた空を見やる]
本格的に荒れ始めちまうと、オレにゃどーにもなんないんだよなぁ。
[他の風竜たちよりは多少強い力はあるものの、しかし、エインシェントならざる身には大掛かりな干渉はできず。
それでもできそうな事は一つ、思いついたので、実行しにきたのだが]
……上手くいきゃいーけど。
どっちかっつーと、オレは『風鎮め』よりも『風招き』に向いてんだけど、ま、しゃーないか。
ピア、フォロー頼むな?
[肩の小猿に声をかけると、ピアは任せて、と意識に声を返してくる。
それににい、と笑い返し、音色を紡ぎ始める。
風の流れを鎮める、『風鎮め』の旋律。
少しでも、天気の崩れを遅らせるために、と。
広がる旋律は、多少なりとも風の乱れを鎮めるか。
それと共に自身の気も鎮まり、常にもまして感覚が研ぎ澄まされる事になると気づくのは、*もう少しだけ先の事*]
後は若焔次第のようですが、さて。
[火炎の若竜が封印管理の任についており、その際に怪我を負って今は休職中である事は一部において周知の事実。
二つの力が結界を支えているのは間違いないだろうと目を伏せる]
― 東殿・回廊 ―
[ 忙しなく動き回るギュンターを呼び止め、得られた情報は、西殿で聞いたものとさして変わりはなかった。
ただ、今後の方針として、内側よりの強化、干渉へと干渉する手立て、もしくは「繋ぎ」と成り得るものを捜すこと――それらが挙げられた。結局の所、仔細が判明していないために、無難な案ではあれど妥当でもある。他の者にも同様の事を告げるのだろう。皇竜王の側近は、端的に述べるとまた執務へと向かった。]
……また厭な間に、事が起こるものだ。
[ 声に苛立ちが含まれるのが分かった。
己の顔の右半分に手を当てる。感触は、何とも言い難い奇妙なものだ。
駆けはせねど早足に歩を進める途中、影竜王からの通信が届いて足を止めた。]
[ 暫し言葉を交えていたが、不意に、始まりと同じ様に雑音が混じり、声が遠くなるような感覚が過ぎった。聞けば、封印のみでなく内部からの強化により、そのうちに通信は出来なくなるかも知れぬという。]
なれば矢張り、我等の手で解決せよということか。
[ 返らぬ答えは即ち肯定だ。
完全に途絶える前にと、一つの問いを投げた。
ある物の所在を。
しかし。落とされたのは先程とは異なる沈黙であり、直後に雑ざる音が酷くなった。均衡が、との短い声を最後に、ふつりと声は聞えなくなったのであった。]
……。
[ 内部で何かしら起こったのではあろうが。
蟀谷に力が篭る。声にせぬ代わり、壁に一つ蹴りを入れて歩を再開したのだった。仮にも皇竜の住まう宮殿だ、其の程度では傷はつくまいから。音はさておき。]
[部屋という壁に区切られていても完全に心の動きから離れられるわけでもない。
だが風を鎮める音色は気を静める効果もあるのか、それとも紡がれる旋律の美しさゆえか、再び伏せた瞼はやがて閉じられ短い白昼夢へと*誘われていく*]
―――西殿・外観
……。
[15人もの竜王が集まり、そして、結界により封印されている西殿を、ゆったりと見つめた。
その壁をゆるりと触れてみれば、手の先からはピリピリとした感触]
……「変化」
なるほど。これは、もしかしたら私が望むものだったのかも知れない。
これこそが私がここにいる理由だったのかも知れない。
主様。
このような変化を望んでおりました?
[表情は無表情。
静かな湖面を表すかのような、ただただ静かな表情]
―――そんなはず、無い。
この変化は一時のもの。常に変化し続けるが、我が属性のあるべき姿。
望んで―――いません。
水は流るるもの。
高きから低きへと。
それこそ、我が望み。
[最後まで静かに呟いたまま、ナターリエは*その場を後にした*]
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